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『大炎上生テレビ オレにも言わせろ』について、オレにも言わせてもらおうじゃないか!

28日金曜日の深夜、正確に言えば29日土曜日の午前0時45分から、TBSで『大炎上生テレビ オレにも言わせろ』というなんだかラディカルなにおいの番組が放送された。

この番組はTBSのソーシャル大臣、じゃないけど、TBSの人気Twitterアカウントの運営者でもあり、ひとりのプロデューサーでもある山脇伸介氏によるものだ。どんな企画かは、ご自身が”あやとりブログ”で【『大炎上生テレビ オレにも言わせろ!』 やって楽しい!見て楽しい!新しいテレビ体験にできるのか!?】と題した記事を書いているので読んでみよう。なるほどそういうことかと。とくにバスキュールが制作した”サッカー日本代表STADIUM”というサッカー応援アプリに感激した山脇氏が、こんな風にスタンプで参加できる番組ができたらいいな、というのが発端らしい。そのできたらいいな、から2か月でそれを具現化したわけで、そのスピードとエネルギーは素晴らしいなあ。

このところソーシャルテレビ委員長的なことをやってるぼくとしては、この番組が楽しみだった。28日はまっすぐ帰宅し早めに風呂入って準備万端で放送を待った。待っていたら同じ時間にNHK Eテレで『ニッポンのジレンマ』をまたやると気づいて慌てたけど。ジレンマの方は0時からだったので、録画しておいて途中まで観るしかないなとかつぶやいていたらジレンマの丸山さんから残念そうなコメントをもらったりした。すんません、丸山さん!録画したやつまだ観てないっすわ。

そんなこんなで、ジレンマを途中で諦めて0時45分、チャンネルをTBSへ。怪しげなムードで『大炎上生テレビ』がはじまった。

TBSの田中みな実アナウンサーを司会役に、カンニング竹山、アンジャッシュ渡部、眞鍋かをり、鴻上尚史、津田大介、アイドリング!!!菊池亜美、AV女優西野翔というメンバー。それぞれが「オレにも言わせろ!」な問題提議をし、それに対して視聴者の賛成反対の投票を受け付ける、というのが番組の大きな骨子。そこにTwitterを駆使し、新たなシステムを開発した双方向の仕組みが使われる。それが果たして、”新しいテレビ体験”をもたらすのかどうか、というのが見どころだ。

例えばカンニング竹山が「結局、女は顔で男を選んでる」と主張。中身が大事だとかルックスだけじゃないとか言いつつ、結局顔なんやろう!と問いかける。これについて、視聴者は賛成か反対かに投票できるのだ。

この番組でもっともポイントだったのが、この投票だ。PCやスマートフォンで特設サイトにアクセスすると、写真のような画面が出てくる。司会の「さあ投票をどうぞ!」のコールに合わせて投票できる状態になり、投票が済むと「賛成に投票した」ことが表示され、その結果が集約される。

つまり視聴者はこういうダブルスクリーン状態で視聴することになる。ぼくはPCだったが、スマートフォンでもタブレットでもいいわけだ。(※以下、番組やサイトのキャプチャー画面を使っています。問題あったら言ってくださいねー)

そして投票時にはこんな画面。賛成か反対かを選ぶのだ。

投票を締め切ったあと、結果がテレビで表示される。こんな感じね。

ちなみに、ニコ生でも同時に放送していた。でもこっちはほとんど観なかったなー。

へー、そうなんだ。ふーん。と、あっさり受けとめるだろう。でもこれね、けっこう大変なことだと思う。

生放送の進行に合わせて出演者の主張が出てくる。それに合わせてネット側もビジュアルを、主張する出演者と主張内容のテキストに変えていく。投票のタイミングには投票可能な状態にし、締め切ったら投票できなくする。そして結果を計算する。この一連がスムーズじゃないと、シラける。テレビの進行にぴったし合わせてネット側が表示を変える、しかもテレビ視聴者がもたらすものすごいトラフィックに耐えながら。

この番組では、見事に最後まで途切れたりトラブったりせず進行していた。まあ途中で主張する人が突然変わったりしたとこには合わせられなかったけど。でも、投票時に動かなくなったりしなかった。

ここは、さすがバスキュール!というところなんだろう。いや素晴らしいよ、朴さん。

テレビとネットを有機的に連携させようとする時に、必ずトラフィックの問題が出てくる。ネットでは一度に数万人のアクセスでも大変なことだろう。でもテレビの視聴者はその10倍〜100倍の規模で動く。その並外れたトラフィックをこなして為すべきことを為すのは相当な技術と経験が必要ではないかな。

少なくとも今回、大きな問題なくテレビとネットがリアルタイムで同期できていた。うん、やっぱすごいぜ!

そういうテクノロジーの面は満足できていたけど、正直言って内容的には何がなんだかわからないうちに終わってしまった感じは否めない。意外にAV女優がハラハラすることを主張するところがいちばん面白かったかな。主張の幅があまりにも広くて、ふざけたい番組なのか討論させたい番組なのか、はっきりしなかった気がする。竹山的な過激な言論にのっかっちゃうか、AV女優のすれすれな方向に走るか、津田大介のジャーナリスティックな方向に行くのか、はっきりしてた方が良かったんじゃないかな。そして、ネット上の皆さんの言ってることは、ジャーナリスティックな方向を望んでいるように思えた。

そうそう、びっくりしたのは、この番組のハッシュタグ(#炎上TV)を追っていると、滝のようにタイムラインが流れていた。ソーシャルに住む人びとの期待は高かったってことじゃないかな。「オレにも言わせろ!」ってみんな思ってるんだろうね。

でもとにかくこの番組の試みは大胆で意義深いと思う。ソーシャルテレビの歴史に確実にマイルストーンを築いたと言えるだろう。こういう、スピード感、とにかく走ってみよう感こそが、メディアの未来を切り開くんだと思うなあ。

この秋から、ソーシャルテレビ的な試みが増えそうな予感がある。思ったより事態は速いスピードで動きはじめているようだ。ほらほら、あなたもウカウカしてられないかもよ!・・・あ、ぼくもだ!

集中解説!ソーシャル五輪を掘り下げる(4)〜感情分析チャート(新しい視聴指標のタネ?)〜

集中解説の4回目は、この感情分析チャート。

4つの競技について収集したツイートを分析した結果をレーダーチャートにしたものだ。

さて今回のインフォグラフィクス作成ではいろんな皆さんのお力をお借りしているのだが、このレーダーチャート作成には、テキストマイニングツールである”見える化エンジン”を使わせていただいた。

”見える化エンジン”はプラスアルファコンサルティング社が提供している分析ツールで、いわゆるASP形式。とあるセミナーでこのツールを知ったぼくは、ソーシャルテレビの分析にぜひ使ってみたいとお願いし倒して今回の分析に使わせてもらうことになったのだ。

実に多様な分析が出来るので、他の手法も次回に紹介したいが、まずはこのレーダーチャートについて説明しよう。

競技別のツイート収集のは、何度かレポートを一緒に作成してきた”みるぞう”の皆さんによるものだ。各競技が放送された時間中に、その放送や競技に添ったハッシュタグを含むツイートを収集している。

そのツイートをデータとして”見える化エンジン”に取り込み、分析していく。

最初に、感情項目を設定してみた。「感動・興奮・賞賛・応援・面白・残念」の6つだ。

そして、”見える化エンジン”を使って、それぞれの項目に見合うキーワードをさらに設定していく。「感動」なら「素晴らしい」「涙」「泣」「うるうる」などといった具合だ。すると”見える化エンジン”の方で、そうしたキーワードを含むツイートを「感動』にグルーピングしてくれる。他のキーワードも同様だ。

キーワード設定の作業が済んだら、あとは”見える化エンジン”の多様なアウトプットで分析結果を出すだけだ。この場合では、グルーピングした数をレーダーチャート化している。そんな作業が数回のクリックでできてしまうから、やはりこのツールは素晴らしい!

そうやってできたレーダーチャートが上のインフォグラフィクスのものだ。なでしこジャパンのカナダ戦では、応援と同じくらい賞賛の声もあり、また感動や興奮も高い。開会式では当然ながら応援はほとんどなく、興奮と感動が高い。マラソンだととにかく応援が高い。そんなことが見えてきた。

ただし、実はこのチャートにはズルがある。数値を入れていないのだが、それぞれで水準がちがうのを同じように見せているのだ。

なでしこカナダ戦の「応援」は3.13%なのに、男子マラソンの「応援」は10.22%もある。単位がちがうグラフを並べて見せているようなことをやっているのだ。

その数値を合わせると、マラソンに比べてなでしこジャパンが抑揚のないものに見えてしまう。そこで、数値を合わせるのをやめたのだ。というより、そんなことをしている時点で、不完全なアウトプットだということだろう。はい、そこは認めます。

だからここでは、こういうチャートもあるかもね、というちょっとした実験をやってみせただけだ。

でも、こういうやり方の延長線上には、テレビ番組の”指標”が見えてくるのではないかと考えている。「感動」にあたるキーワードをもっともっと精査していき、そもそもテレビ視聴の評価項目としては感動なのか興奮なのか、という議論も経ねばならない。その上で、一年や二年の試行錯誤も必要だろう。だから試しにちょいと提案してみてます、という程度の話。

とは言えね、・・・あると思うよ、こういう考え方、捉え方って・・・

集中解説!ソーシャル五輪を掘り下げる(3)〜視聴率との対比・調査結果〜

ソーシャルオリンピックのインフォグラフィクスについて集中解説すると言っておきながら2回目で頓挫していた。今週は立て続けに更新していきたいと思う。今さら感がどんどん増殖するのにもめげずに、はい、がんばりまっす!

インフォグラフィクスではオリンピックの競技別視聴率と大会全体のツイート推移を視覚化している。

まず前回の分析に続いて「やっぱりサッカーだね」というのが明らか。何と言っても視聴率上位5つのうち4つまでがサッカー。ツイートの山も、サッカーの試合のたびに盛り上がっている。

ただ、ツイートの最大の山は開会式でできているのだが、視聴率では上位に入っていない。それから、なんとなくツイートの前半の山の高さが大きく、徐々に小さくなっている。

開会式のツイートの山が高いのに視聴率はさほどでもないということは、それだけ観ている人たちが強く盛り上がったということだ。土曜日の早朝4時から起きてテレビを視聴していた人がかなり高揚していたのだと言えるだろう。そしてその高揚は大会日程が進むとともにやや落ち着いていき、サッカーに焦点が絞られていった、と見ることができる。

ただ、サッカーがない日もとにかく深夜になるとツイートの山はできていて、かなりの数の人びとが毎夜毎夜オリンピックを視聴していたということだろう。

残念なのは、テレビ視聴率との対比はこうしてなんとなくながらできるわけだが、今回BSやネットでも多様な競技が中継されたこととツイートとの関係はまったく追えていない。聞いたところでは、初日に自転車競技はネット中継され、ツイッターでもかなり盛り上がったのだそうだ。いつもはスカパーで自転車競技を見ているファンが、オリンピックではそのままの形でネット視聴にやってきて、スカパー放送時に共有しているハッシュタグを使ってみんなでやりとりしていたのだそうだ。

この現象はすごく面白い。コンテンツがコミュニティになり、その中での放送の役割は重要だ、と前に書いたのだけど、まさにその現象を地でいっている。・・・でもここで分析にたるデータ収集はできていないので詳しく語れないわけだ。奥が深いなあ。

さてインフォグラフィクスではその次に調査結果を載せている。

この調査はソーシャルテレビ推進会議によるものとしていて、具体的な作業は深田さんがやってくれたものだ。

なんとなくわかるのは、このオリンピックを契機にソーシャル視聴をする人がぐいっと増えたようだ、ということ。そしてやはりTwitterが中心なのだということ。

それから、思いの外ツイートの内容は応援が中心だということも見えてきた。ネガティブなことを言うのはごくわずかで、基本的にみんなで応援する。またそれによって一体感を得たことを重視している。あまり情報を得るとか結果について語り合うとかは重要ではないのだ。

これこそ、パブリックビューイングなわけだ。開催地に行ったり、スポーツバーなどに行けなくても、テレビを見ながらみんなと一丸となって応援し、勝利には喜びを分かち合い、敗退には慰めあう。そんな視聴方法がオリンピックを機に根づきはじめているのだ。

ソーシャルオリンピックと呼ぶにふさわしい、多くの人びとにテレビとソーシャルメディアの関係を感じさせる絶好の機会がロンドン五輪だったのだと言えるだろう。

「踊る大捜査線」は最初のソーシャルテレビ現象だったのかもしれない

映画『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』がこの週末から公開されている。まだぼく自身は観てないんだけど、映画館はきっと盛り上がっていることだろう。この映画シリーズの制作会社はぼくが去年まで在籍していた株式会社ロボットだということもあり、思い入れもあり感慨深いなあ。

皆さん知っての通り、いまや大ヒット映画シリーズのこの作品、最初はテレビドラマシリーズだった。土曜日の夜に映画の2作目がテレビ放送されたのを観て盛り上がっちゃったので、VODサービスにあるテレビドラマの全話パックを購入してしまい、ドラマ版の第1話、第2話を続けてみたら、やっぱり面白いんだわ!

実はぼくはこのドラマ、放送時には観ていなかった。当時はフジテレビのドラマのポスター制作の仕事をよく引き受けていたので同局の作品はけっこうチェックしていたのだけど、この作品は視野から漏れていたのだ。それに放送時にはさほど視聴率がよかったわけではない。最終回が23%を記録したが、一貫して10%代後半を推移している。90年代の視聴率の水準としては”まあまあだね”という印象だっただろう。

ところが、むしろドラマ終了後に熱烈なファンたちのメッセージが聞こえてきた。どこから聞こえてきたかと言うと、ネットからだ。Wikipediaには以下のような記述がある。

”劇中に出てくる真下正義のウェブサイトを製作者側が削除せずにいたところ、見つけたファンからの働きかけがきっかけとなり、TVシリーズ本放送終了後にインターネットの公式サイトが開始。これを介してドラマ制作側とファン側が直接接触する機会が生まれた。そして、サイトでやりとりされた制作側・ファン側双方の熱意とアイデアが、このドラマを一大ブームへと押し上げた原動力の一つとなった。”

97年と言えばWINDOWS95登場からまだ数年。会社でようやくPCが使われるようになった頃。番組のホームページなんてある方が少なかった。そんな頃に視聴者側がたまたまドラマ終了後にほったらかしのサイトを発見して盛り上がった。それが大きなきっかけとなった。さらにサイト上で制作者と視聴者が”やりとり”をしたのだ。

それって、ソーシャルな現象だと言えないだろうか?

ソーシャルメディアが普及する10年も前に、掲示板上で視聴者が盛り上り、制作者とやりとりまでしていた。ネットの本質にこうした、マスメディアではつながらない”やりとり”が隠されているのだろう。

そしてドラマは再放送され、スペシャル版もいくつかつくられ、満を持して98年に映画版が公開される。ぼくはこの頃はフリーランスのコピーライターだったのだが、ロボットに遊びに行くと当時の社長が落ち着かずに歩き回りながら「もうすぐ公開なんだが、配収15億は行くんじゃないかと思うんだよな!」と興奮を抑えていたのを憶えている。いよいよ公開日、フタを開けたら各劇場に長蛇の列が出来て、史上稀な大ヒット作品となった。配収15億どころか50億(興収では100億)を超える成績を上げたのだ。

確か98年の秋に公開されたのがどんどんロングランとなり翌年まで引っ張ったのだった。そんな日本映画なかったんだよね!

最近は日本映画の方がお客さんが入るのだが、当時は洋画の方が圧倒的に強かった。日本映画はダサくてくらくてつまらないものだった。その常識を変えたのが『踊る大捜査線』だった。テレビの面白さを劇場に持ち込んだらそれまでのイメージをひっくり返せる。みんなにそう確信させたのだ。

映画界の常識を変えたのは、テレビシリーズのファンたちの声だった。彼らと作り手を結ぶネットと言う広場が登場したからだ。

ソーシャル誕生以前のソーシャル現象。そんな視点で今回の最新作(そして最後の作品!)「踊る大捜査線」を楽しんでみてはどうでしょか?

集中解説!ソーシャル五輪を掘り下げる(2)〜選手ツイート数ランキング〜

さてここからは、昨日紹介したインフォグラフィクスのひとつひとつを掘り下げて解説していこう。

インフォグラフィクスのトップは、選手のツイート数ランキングだ。

見ての通り、内村航平がトップだ。ソーシャル上でも金メダル!何しろ、実際の競技でも金メダルとったし、期待度も高かった。一方、予選で調子を崩しハラハラさせたこともツイート数を増やしたかもしれない。もちろん、さわやかイケメンであることも大きな要素だろう。

そのあと、2位3位とサッカー選手が続いている。インフォグラフィクスでは、メダルを取った選手に金銀銅メダルのアイコンを添えてありわかりやすい。すると、メダリストではない選手は男子サッカー選手であることがわかる。テニスで大善戦した錦織が例外的に入っているが、ランキング上位で非メダリストなのは、ほぼ男子サッカー。

このオリンピックは、日本としてはとにかくサッカーだったのだ。優勝候補だったなでしこジャパンはもちろんだが、男子サッカーも思いの外勝ち進んだ。そこに日本人として興奮していたことがこの結果からよくわかる。

それから、Twitterは、やはり若い世代が中心だ。そしてサッカーが好きな若者は多い。この世代的なシンクロも、男子サッカー選手の順位を押し上げているのだと思う。

そして、これはひとつの仮説だが、サッカーはTwitter向きな競技だ、ということもあるのではないだろうか。1時間半の長い競技時間。陸上や競泳のような他の競技は一瞬で終わってしまう。Twitterで盛り上がるのも、一瞬になってしまう。でもサッカーは1時間半の間、盛り上がり続けるスポーツだ。攻め込まれては盛り上り、攻め入っては盛り上り、ラフプレイに盛り上り、もちろん得点シーンで盛り上がる。

ソーシャルメディア登場以前から、サッカーではスタジアムのスクリーンで海外の試合を観て盛り上がる”パブリックビューイング”がしばしば行われてきた。スポーツバーでワールドカップの試合を観ながら盛り上がっていた。もともとソーシャル的な観戦が根づいていたのがサッカーだった。史上初のソーシャルオリンピックで盛り上がらないはずはない。

もうひとつ注目したいのが、なでしこジャパンの澤選手や宮間選手より、男子サッカー選手の方がぐんとランキングが上位にあること。これも検証できてはいないが、予想外に勝ち抜いて決勝トーナメントに参加できた。そのことがファンを熱くさせツイート数を増やしたのではないだろうか。

今回のオリンピックを盛り上げたのはサッカーであり、サッカーこそTwitterにぴったりな、ソーシャルテレビ視聴にふさわしい競技なのだ。

と、いうことがまずわかったね、ってことで、また次回へ続きますよー。

集中解説!ソーシャル五輪を掘り下げる(1)〜インフォグラフィクス作ったんだぜ〜

あ、もう9月じゃないか!そしてなんと、8月はこのブログ、3回しか投稿してない・・・3回?!人によってはぼくのことを”ブロガー”と呼ぶのに、まずいだろう!というわけで、挽回すべく集中的に記事を書いていこうと思うよ。テーマはね、ソーシャルオリンピック。

ソーシャルオリンピックについては、ソーシャルテレビラボの方でけっこう頑張って書いてきた。そっか、そっち書いてたからこっちあんまり書かなかったのか。いくつかの競技のツイートの時間推移をグラフにして解説したりとかね、してた。そうしたら、いくつかの新聞の記者さんから電話で取材を受けたり、「新・週刊フジテレビ批評」で取材受けてちょろりと画面に登場したりした。

そして、先週にはVOYAGE GROUPさんのプレス向けサイトを借りて、ソーシャルテレビ推進会議としてのリリースを配信した。”ソーシャル五輪プレイバック”ということで、オリンピックのソーシャル視点での分析をしてみたわけ。

さらに、ここがポイントなんだけど、インフォグラフィクス化してみたわけ。ほら、これね!

なんかいいっしょ?!いい感じっしょ?!

そうだね、なかなかいいね!・・・でも、今さら感あるけどね・・・

あー!そこ言われちゃうとね・・・

確かに、海外ではオリンピックに関するインフォグラフィクスがもうとっくにたくさんたくさん出ていた。ごめんね、トロくて。

でも、ソーシャルテレビラボは、それぞれ別々の会社に所属する人びとが仕事の合間にやってる活動だからさ。まあでも今さら感がある分、このインフォグラフィクスについて、さらには、ここにはのっけられなかったようなデータについて、解説していこうと思う。8月にこのブログを怠けてた分を挽回するためにもね。できるだけ、立て続けに書いていこうと思う。

最初は、このインフォグラフィクスを作ったプロセスを語ってみよう。

ソーシャルテレビ推進会議には、VOYAGE GROUPのtuneTV、ニフティのみるぞう、アライドアーキテクツのピーチク、そしてアジャイルメディアの福田さんが個人的にやっているテレビジン、この4つのソーシャルテレビアプリの関係者が参加してくれている。さらにビデオリサーチインタラクティブの深田さんも加わって、オリンピックの分析やろうということになった。

ソーシャルテレビアプリをやっていると、基本的にTweetを収集するので、そこから分析できないかなと。でも具体的に考えていくと、データ収集を一定の基準でちゃんとやらないといかんなとなった。ぼくにはいまひとつ理解できてないんだけど、Tweetの収集は意外と手こずる作業のようなのだ。Twitterは基本的に”APIの開放”をしてくれているので、データを取りに行けるのだけど、一定時間の中で収集できるデータには限度があったりする。

そこで今回、データセクション株式会社の皆さんのお力を借りることになった。同社は、前にもtuneTVと紅白歌合戦でのTweet分析を発表している。今回もお声がけをしてみたら、快く引き受けてくれたというわけだ。ソーシャルメディア上のデータの収集と分析ではこの会社!という存在なので頼もしい限り!

さらにもうひとつ、株式会社プラスアルファコンサルティングの分析ツール”見える化エンジン”も協力をお願いして快諾をいただいた。このツールはソーシャルメディアに限らず多様なテキストデータを多角的に分析できる、いわゆる”マイニング”のツールで、その名の通り何でもパッとわかりやすいアウトプットを出してくれる。こちらも特別に協力をしてくれることになり、百人力!

そして、デザインを井上恵理さんにお願いした。フリーランスでグラフィックデザイナーをやっている。もうこれはデザインを誰にお願いしようかと考えてピン!と来たのだった。彼女なら、素敵で知的なデザインを仕上げてくれるのでは?

そんなメンバーで、やろうとなった。とは言え、手弁当チームだし、インフォグラフィクス作るの初めてだし、けっこう行き当たりばったりの進行。オリンピック開始前に集まって大まかな方向を決め、期間中に集まって事後の作業を話しあい、終了後にえいや!と進め方を決めた。

ようやくインフォグラフィクスが完成しリリースにのっけられたのは30日。オリンピック終了から二十日間弱かかってしまった。でもでもでも、なかなか面白いアプトプットができたと思う・・・んだけど、そんなことない?

というわけで、次回から、個別の詳しい解説や、ここにはないデータなどを紹介していくよ!

8月4日の日経朝刊の記事への補足(というか言い訳的に視聴率とソーシャルメディアの関係について)

今朝(8月4日)の日本経済新聞の朝刊に「五輪応援 つぶやき盛況」と見出しを打った記事が出た。その中でぼくのコメントがとりあげられている。3日の夕方、電話で取材を受けたのだ。

なでしこジャパンの試合中継についてソーシャルテレビラボで書いた記事を読んでくれたらしい。(読んだのは、その記事を転載してもらったin the looopのこっちの記事の方かもしれないけどね)

取材では、視聴率とソーシャルメディアの関係をとくに聞かれた。でもこれに関しては何ら論証的なデータはない。プラスに働いているだろうとは思うが、何しろ視聴率に影響を及ぼすには何百万人も動かさないといけない。ソーシャルメディアはそこまでは育っていないのではないか。視聴率に影響するにしてもせいぜい1%いくかいかないか、と肌感覚的に思っているが。だいたいそんなことを答えたつもりだ。

これを受けて、記事では「境治氏は・・・(中略)・・・結果として視聴率が1%前後かさ上げされたとする」と書かれている。

うーん・・・ウソを書いているわけではない。1%という数字を確かにぼくは言ったのだ。ところが前後の文脈はまったくなく、”せいぜい”とか”いくかいかないか”とかはなくなっている。ニュアンスはけっこうちがうんだけどなあ・・・

まあ、でも、とりあげてくれたのはうれしいし、また取材してくれるとも言ってくれているので、怒ったり恨んだりはしてないけどね。今後はもうちょっと慎重にしゃべろうかな。

それにそれこそソーシャルの時代、取材された記事で誤解が生じそうだったら、ブログで補足すればいいじゃん!

で、まずソーシャルメディアが視聴率を上げたとか上げているとか、論証できるデータはない。それにそもそも、あからさまな影響を与えるには動かすべき人数があまりにも大きい。日本の世帯数が5000万程度として、1%動かすには50万世帯のテレビ受像機をなんとかしなければならない。

一方、去年12月に話題になった”バルス事件”だって、ツイッターの秒ごとのツイート数が記録を更新したが2万8千とかそんなレベルだ。ツイート数から見える人数では視聴率は動かせないのではないか。少なくとも、ソーシャルメディアがもっと普及しないと難しいだろう。アメリカだと3億人のうち半分ぐらいがFacebookをやっている。それくらいだと具体的な影響がありそうだ。日本だとツイッターもFacebookも1000万人台で、まだまだだと思う。

それから、そのバルス事件が起きた『天空の城ラピュタ』。その時の視聴率が15.9%だったんだって、すごいじゃん、と言われたものだけど、2009年に放送された時は15.4%だった。0.5%のアップ・・・それってどうなの?

もうひとつ、NHK大河ドラマの『平清盛』。視聴率がさえないねと言われている中、6月17日の放送で”生清盛”という企画を行った。プロデューサーの方が放送中にドラマのシーンに合わせた解説をツイートするというもので、途中に相撲の場面がありみんな一斉に”どすこい!”とつぶやく盛り上りもあった。

さて視聴率はどうだったか。前の週は11.6%だったのが、”生清盛”の時は12.1%だった。翌週は普通に放送して10.1%だったがさらにその翌週は13.2%に上がっていた。・・・全然わかんないでしょ?影響あったかもしれないしなかったかもしれない。翌々週の13.2%はツイッターはまったく関係ないし。でも生清盛は効果あったかもしれない。

一方で、某テレビ局の某ディレクターはユニークな人物で、フォロワー数が12万人いる。彼は番組中にツイッターで活発につぶやいたら視聴率に影響を与えた”肌感覚”があるそうだ。ある人に聞いたのだが、10万人を超えるアカウントはマスマーケティング上の影響を持ちはじめるという。

また、視聴率と世代の関係も見逃せない。誰でも知ってる通り、日本は急速に高齢化が進んでいる。人口ピラミッドと視聴率でのセグメント分類を重ね合わせると面白いというかせちがらい。
深田さん、勝手に使ってすんまそん
F2F3、M2M3つまり35歳以上がいかに大きな層かよくわかる。一方ツイッターは20代30代つまりF1M1が中心だ。ツイッターがいかに盛り上がっても、視聴率を動かす際にはいかに小さな領域に限られてしまうかがよくわかるだろう。

ことほどさように、視聴率とソーシャルメディアの関係は見出しづらい。あからさまには影響は出てこないのかもしれない。

ただ、ぼくがソーシャルとテレビの関連に見つけたいのは、視聴率をかさ上げすること、ではないのだ。それとはちがう価値が、ソーシャルテレビには出てくると思っている。その方がよほど、視聴率より価値があるはずだと思うんだけどな・・・

はじめてのソーシャルオリンピック、はじまる!

ロンドンオリンピックが始まった。今回のオリンピックはメディアとの関係上、歴史に残る転換点となりそうだ。ソーシャルメディアが十分に普及して初めて迎えるオリンピックだからだ。そしてメディアとオリンピックは重要な相関性を持って発展してきた。

思い返してみれば、前回の北京オリンピックの頃、2008年。少なくともぼくはTwitterもFacebookもやってなかった。mixiはあまりハマらずに遠ざかっていたし、YouTubeも話題になった時に観る程度。ブログだけはgooブログ上でこつこつ、こっそり書き続けていたが。

そっか、2008年と言えば9月にリーマンショックが起こったんだな。そしてその前の8月には、業界各社の第一四半期が出て、何か大変なことが起こりそうだとブログにも書いていた頃だ。その後の兆候はあったものの、まだどこかのどかだったなあ。

さて今回のオリンピックは世界中でソーシャルメディアが普及して迎える。これをソーシャリンピックと呼ぶ人もいる。日本人のテキトーな造語ではなく、英語としての造語らしい。どれくらい一般的かは知らないけど。

ソーシャルテレビ推進会議として集まっているみなさんとソーシャルテレビラボというサイトを起ち上げている。ぼくらはこの”ソーシャリンピック”の機会に、ソーシャルテレビに関する調査研究を行っているのだ。その成果を少しずつ、ソーシャルテレビラボ上で発表していく。

まずは開会前、25日深夜のなでしこジャパンの1次リーグ初戦でのツイートの推移をグラフ化してレポートを作成してみた。サッカーの試合独特のツイートの動きが見て取れる。

続いて、28日早朝午前5時からはじまった開会式でのツイートの推移も追ってみている。こちらも、ベッカムやMr.ビーンなど人気者登場時に盛り上がることがよくわかるグラフになった。

こうした各競技のツイート推移を今後、いくつか注目の競技でやってみる。それから、全体をもう少し掘り込んだ分析をしてみる。こちらは全日程終了後、少し時間をかけてやってみるつもりだ。

先日の「新・週刊フジテレビ批評」でも(いつもながらタイムリーに)とりあげていたが、メディアの進化とオリンピックは強く関係してきた。とくにテレビはオリンピックのたびに技術が進歩し、人びとを惹きつける大きな題材にしてきた。

ヒット映画シリーズ『ALWAYS 三丁目の夕日』の最新作『’64』では東京オリンピックが重要なモチーフとして描かれる。三丁目商店街でちょっとだけ進んでる鈴木オートはテレビの導入も早かったが、東京オリンピックにあたってカラーテレビを購入した。これは非常に象徴的なエピソードだと思う。

第一作では東京タワーが完成し、日本が力強く発展する予感が充ち満ちていた。それが三作目の『’64』では東京オリンピックをカラーテレビで観ることで、大きな達成感に包まれるのだ。テレビで青い空に白い軌跡を描くブルーインパルスを見つめている時、外に出てほんものの空を見上げるとさっきまでブラウン管の中を飛んでいた編隊が駆け抜けていく!

テレビは日本というコミュニティの発展を予告してきたのだが、その典型的な瞬間が東京オリンピックの放送だったのだろう。

そして多様な競技が各種行われるオリンピックは、テレビ放送の醍醐味が凝縮されている。あっちこっちのチャンネルを切り替えて、サッカーを観たり陸上競技を観たり、中継のないチャンネルでもメダルを取った選手のインタビューが放送されていたりと、テレビ中がオリンピックだらけになるのだ。家にいながらにしてスポーツエンタテイメントの粋を多彩に楽しめる!

それがこの夏は、ソーシャルも加わる。いやソーシャルだけではない。ネット配信もあるし、アプリもいろいろ出ている。マルチデバイス、ソーシャル化、アプリ化と、いまのメディア状況の最先端をフルに楽しめるのだ。

オリンピックの視聴は、次のメディアを考える格好の場ともなる。ソーシャルテレビラボのレポートと併せて、みなさん一緒に考えていこうじゃありませんか!

テレビ番組にも”エンゲージメント率”ってもんがある(はず)

仕事上の必要があって、テレビ番組のFacebookページのエンゲージメント率を調べてみた。

エンゲージメント率って知ってる?Facebookページについて、投稿に対する反応(いいね!の数とコメントの数の合計)がファン数全体に対してどれくらいあるかを見るのだそうだ。ひとつの投稿だけを調べてもアレなので、直近の10なり20なりの投稿への反応を見て平均をとる。

(投稿へのいいね!数+コメント数の平均)/(そのページにいいね!を押してる人数=ファン数)=00%

こんな考え方ですわ。

これを計算するには、直近の20投稿へのいいね!数とコメント数を足しあげて20で割る(つまり平均の反応の数を割り出す)。その値を、そのページへのいいね!数で割る。0.043とか出てきたら、4.3%ととらえる。・・・この説明、いいね!という言葉が何度も出てくるからややこしいね。

よくできたもので、この計算を自動でやってくれるページがある。

“Facebook Engagement Check Tool”というそのものズバリの名前がついている。使う際、Facebookアカウントでのログインを求められる。何も悪さしないのでそのままログインして、調べたいFacebookページのURLを入れれば即、計算してくれる。

試しにいろいろ入れてみると面白い。0.64%とか、0.38%とか、結果が出てくる。あくまでその時点での数字なので、翌日みるとまた変わったりしている。大まかな参考値と捉えた方がいいね。それから、1%切ってるからってがっかりすることもない。このページの解説によると、平均0.55%だそうだ。それから、ファン数が増えると平均値も下がる。それは当然かもしれない。10万人を超えるページだと平均は0.22%だというから、巨大に育ったコミュニティほど、みんなに参加してもらうのが難しいというわけだろう。

さて、試しに目に留まったテレビ番組の”エンゲージメント率”を書き出してみたよ。それが、この表。

それぞれのファン数と”話題にしている人”の数も添えた。話題にしている人の数は計算と直接関係ないのだけど、この数字とエンゲージメント率には大ざっぱには相関性があるだろうから参考に添えてみた。エンゲージメント率の方は、単純に比べにくい。上に書いたように、ファン数が10万人を超えているところと、数千人のところはそのまま比較は出来ないからだ。だからこの表はあくまで”参考出品”だと思ってほしい。

いちばん上は、まずテレビ局全体としてのFacebookページを持っている3局を並べている。いいね!数(ファン数)が増えるとエンゲージメント率も下がっていってる。

その下は、主に情報番組のFacebookページの数字を並べている。そもそもFacebookページを開設している番組はまだまだ少なく、情報番組が多いのだ。

ニュース番組として、そしてそもそもテレビ番組のFacebookページの先駆けとなった『ワールドビジネスサテライト』が10万人超えているのに0.48%というのは立派なものだ。番組最後にFBからの質問を取り上げるなど、ソーシャル化が進んでいる結果だろう。

『情熱大陸』や『アナザースカイ』、『FOOT×BRAIN』など質の高い番組がエンゲージメント率も高いのは興味深い。さらにファン数は少ないが『THE 世界遺産』の4%代後半はなかなかのものだろう。『がっちりマンデー』がそれを上回っているのも背景を調べたいところだ。

面白いのがその下だ。『リーガルハイ』は6月末で終了した弁護士を主役にしたコミカルなドラマだ。ぼくも毎週観てハマった。相当面白かったのだが、それを反映しているのか、7%という異様なエンゲージメント率の高さとなった。

そもそもドラマのFacebookは少ない。キャストの写真を使う際の関係者の説得が大変なのだろう。おそらく”番組宣伝”が目的です、という説得で、ドラマ放送中だけの限定的なページなのだと想像できる。つまり『リーガルハイ』は短期決戦のFacebookページで、それはFacebook本来の使い方ではないはずだ。

ところがこのエンゲージメント率の高さ。これはドラマを送り出す側と視聴者の側に幸福な関係が築けた、まさしくエンゲージメントの言葉通りの状況が生み出せたのだと言える。本当は、このままDVD発売まで引っ張った方がまちがいなく効果を拡大できるのだが、そこは難しいんだろうなあ。もったいない!

『勇者ヨシヒコと魔王の城』はその点、放送後も続いているページだ。テレビ東京の深夜枠で昨秋放送されたもので、視聴率はともかく、熱烈なファンに支持された。DVDも売れてるらしいし続編が今年の秋に放送されるらしい。こういうタイトルは、Facebookページを続けていくとまさしくコミュニティになって良い効果をもたらしそうだ。

その下、大木優紀はテレビ朝日のアナウンサー。これがまた異様なエンゲージメント率の高さとなっている。アナウンサーの公式ページは今後のテレビ局にとって重要になるんじゃないだろうか。

最後の2つはBS番組のFacebookページ。BSは濃い視聴者がついていそうだから、Facebookは合うと思うがまだ少ないようだ。

ここでとりあげたのは、決してテレビ番組Facebookページのすべてではない。目に付いたもの、知ってるものをあげていっただけで、ひょっとしたら重要なものを見落としているのかもしれない。あくまで軽い気分で調べた参考データと思ってほしい。また、この番組のFacebookページも面白いよ!というのがあったら、教えてほしい。このブログのコメント欄や、境塾のFacebookページに書き込んだりしてくれればありがたいのだけど。そう言えば、境塾のページも、エンゲージメント率低いんだよなあ。

テレビに入れるのはスマートではない?〜日本マーケティング協会セミナー「TVのちから」より〜

日本マーケティング協会、略称JMAという団体がある。業界関係の人なら知ってるだろう。広告に関係するスポンサー企業、広告代理店、そしてマスメディア企業が参加している。その名の通り、マーケティングについての研究発表などをする団体で、セミナーもよく主催している。

「TVのちから2012」というシリーズタイトルでのセミナーがそのJMA主催で行われるという。このところ、メディア関係のセミナーでよく登壇されている電通総研の奥さん(”奥”という名字の方で、誰かの妻君のことではない)と、境塾でこのところつるんでいるビデオリサーチインタラクティブの深田さんがコーディネイトしている。

その深田さんから頼まれて、最後のパネルディスカッションにぼくもパネラーとして出ることになった。”サプライズゲストとして”なんて言うのだけど、そんなこと言ったらすげえ有名人を期待されて、がっかりしちゃうよ。ま、いいけど。

そのパネルディスカッションも十分面白かった。でもその前のプログラムのジャーナリスト・西田宗千佳さんの講演がぼくにはすごく面白かった。これを聞いただけで、セミナー10回分ぐらいの価値があったんじゃないかな。

西田さんとは、3月に慶應大学のスマートテレビ研究会の公開討論会でお会いしている。また、その研究会の報告書でもインタビューされている。

そしてアスキー新書から「スマートテレビ スマートフォン、タブレットの次の戦場」という本をこの4月に出版している。このブログを熱心に読んでる方なら、この本はお薦めするよ。スマートテレビの現状と課題が網羅されている。それにわかりやすい。

西田さんのこのセミナーでの講演は、その新書に書かれた内容をベースにしながら、さらに新たな要素もふんだんで、スマートテレビに関するすべての事柄が凝縮されていた。とっても濃い内容!

これは本の中でもかなり出てくるんだけど、西田さんは”操作性”をかなり問題にしている。スマートテレビは多様な機能を持つだろう。すると、どれだけ操作しやすいかが普及の鍵を握るのではないか。

いろいろ考えていくとひとつ、出てくる答えを西田さんは提示する。

「テレビに入れるのはスマートではない?」

つまり、操作の部分は結局、スマートフォンやタブレットを活用した方が使いやすいだろう。その上に、テレビのライフサイクルは5年から10年と長い。一方IT機器(スマートフォンやタブレット)のサイクルは12カ月ぐらいからだ!

テレビそのものを中途半端な進化で製品化するより、テレビはモニターと受け止め、進化は外部機器に託した方が、スマートだ、ということ。スマートテレビは、テレビとスマートデバイスで実現した方が、スマートなわけ。

例えばとして話に登場するのが任天堂のWiiU。手元のコントローラーにモニター画面がある、つまりはテレビ+タブレットみたいなゲーム機だ。テレビの今後の姿を先取りしているのかもしれない。

西田さんの講演は操作性の話から、SNS連携つまりソーシャルテレビの話題に展開する。SNS+スマートTVは、言うまでもなく”実況”。リアルタイム視聴+Twitterだ。だけどとくに日本の場合は、録画番組とSNSの連携もきっと具現化する。

何しろ、全録文化はきっとやってくる。SNSと連携することで、番組価値の最大化が図れるかもしれない。最後に、”図”が出てくる。こんな感じ。

(西田さんの配布資料から書き写したもの。もちろん、ご本人の許可を得ているからね)

この図を見た時、ぼくは「そっかー!」と心の中で叫んだ。いや、「そっかー!そっかそっかそっかそっか、そっかー!」ぐらいは叫んだかもしれない。心の中でだけど。

ソーシャルテレビとは何だろう、という問いへの答え方がずっともやもやしていた。テレビをリアルタイムで観ながら、みんなでTwitterでつぶやくことさ、というのが最初の答えなんだけど、VODサービスにある番組について感想を語りあうのもソーシャルテレビだよね、と付け加えていた。この二つを同時に説明するのはけっこうややこしかった。

それが上の図だと視覚的にパッとわかるだろう。同じコンテンツが、放送時と録画後もしくは配信上に並んだ時に視聴のされ方が変わってくる。でもね、同じコンテンツなのね。文章の説明だと、なんだかずいぶんちがう2つの現象をソーシャルテレビと呼んでいる感じなのが、上の図だと、あー確かにどっちもソーシャルテレビよね、と瞬時に理解できる。

さらに西田さんはこの図の右側の部分にマーケティングチャンスがあるのでは、と言う。そうかもしれない。課金なのか、広告の受け皿なのか、わからないけど。でもこの図の中にはこれまでとは少しちがうマネタイズの可能性が隠れていそうだ。

西田さんは、最後のパネルディスカッションにも出演した。ぼくもいたわけなので、なんか光栄だなあ。

さらに終了後、会場に来ていたアスキー総研所長・遠藤諭さんとも話した。西田さん、遠藤さんと話していると、スマートテレビの最前線情報とそれをもとにした最前線アイデアが飛び交って、会話について行くのが大変だ!でもお二人のディスカッションから新たな知見が生まれそうだ。わくわく!

さて、このセミナー「TVのちから」はシリーズになっていて、第二回、第三回と続くそうだ。これはみなさん、見逃せないね。早め早めに申し込まなくちゃ!

Hulu(つまりはSVOD)の功と罪〜あるいは刑事コロンボがやっぱり面白い件について

週末はすっかり刑事コロンボになってしまった。

あ、いや、もちろんぼくが刑事になるって話ではなく、週末になると刑事コロンボを次々に観てしまう生活になっちゃった、ということ。

「うちのカミさんがね・・・」という独特の泥臭いセリフ回しで小池朝雄が吹き替えたドラマが定期的にNHKで放送されてたのは70年代前半。ぼくは小学生だった。よく知らない、って人にはとにかく一度観てみることをオススメする。

物語の冒頭で殺人事件が起こるので観客は犯人を知っている。犯人が誰かを探すのではなく、この犯人にどう証拠をつきつけるのかが焦点。一見サエない刑事が実は敏腕で、犯人のところを何度も訪れ推理の過程をあえてさらしながら犯人を追いつめていく。最後になんと!という形で証拠が提示される。それ「古畑任三郎」にそっくりだね、とか言わないでね。古畑のモデルがコロンボなんだから。

さてコロンボをどうして突然ハマるほど観はじめたのかというと、Huluのメニューに入ってきたから。

Huluって何なの?なんて言うんじゃないだろうね。去年の9月に日本に上陸したアメリカ生まれのVODサービス。月額定額でドラマや映画が見放題。最初は1480円だったのがいまや980年。すんごくおトク!基本はPCとスマホ向けサービスなんだけど、PlayStation3でも視聴可能だ。ぼくはウイニングイレブンから足を洗って以来とんとつけたことのなかったPS3のスイッチを、ここんとこ毎週末オンしているってわけ。

SVODという言い方、知ってるかしら?Subscription Video on Demandの略で、つまりは定額制のVODサービスのこと。AppleTVなどのVODサービスは一本400円とか500円といった単品サービスが基本だが、HuluのようなSVODがアメリカでは伸びているそうだ。

日本でもHuluに刺激されて続々VODサービスが登場している。携帯キャリアがスマホ向けにSVODサービスを出しているし、CATVやひかりTVでも出てきている。

Huluに刑事コロンボが入ったもんで、心置きなく次々に観れちゃうというわけ。シーズン1も2もひと通り観たのでシーズン3に突入なう。40年ぶりぐらいに観ているわけだけど、まったく鮮度が落ちていない。いま観ても抜群に面白いよ!

VODと、映像コンテンツのアンビエント化については何度かこのブログで書いてきた。

映像コンテンツのアンビエント化が進んだら
映像コンテンツのアンビエント化の実際〜AppleTVその後〜

SVODはこの傾向を加速するだろう。なにしろ、このぼくが格好のサンプルだ。

学生時代は名画座をハシゴして”文芸座地下・鈴木清順特集”なんて一所懸命に観たもんだ。ついこないだまではレンタルビデオ店に毎週末通い、映画館で見逃した作品や、「LOST」「HEROES」といった海外ドラマを借りまくった。

でもいまやぼくにはAppleTVがある。DVDでの発売と同時につい半年前にロードショーしていた映画が観たい時に観れる。ハードディスクレコーダーには映画チャンネルで放送された旧作と、地上波で放送された最近作が溜まっている。さあ、どれを観ようか。あれにしようか。こっちも観なきゃね。えーっと、うーんと、どうしようか・・・よし!・・・刑事コロンボにしよう・・・

そんなことになっちゃったのだ。そしてそれで十分満足したりしている。いやー!映画ってホントに素晴らしいですねえ!とヒゲの解説者が出てきそうだ。

いつでも観れると、いつまでも観ない。

どれでも観れると、どれも観ない。

そうやって、ほぼ100%面白いとわかっているコンテンツを選んでしまう。

もうひとつ、コロンボのよさは時間だ。1時間15分。2時間は必要ないのだ。休日に料理をしながら、観るにはちょうどいい。夜中、12時から観はじめて、1時半には眠れるのだ。

SVODにハマっていくと、一体ぼくたち人類にはこれ以上映像コンテンツが必要なの?なんてことを考えてしまう。Huluに入っているコンテンツを、残りの人生かけても見尽くせないんじゃないだろうか。その上に、新しい作品なんてお腹いっぱいで入らないよ。

映画が誕生して100年はとうに経った。学生時代に映画を観ることが習慣になって、名作と言われるものは全部観たいと思ったものだが、それから30年の間に見るべき名作がまた追加されている。もう追いつかないよ。

思うに、こんなにたくさんの映像作品を、人類は必要としていないんじゃないか。もう十分なのかもしれない。新しい推理ドラマをわざわざ作らなくても、刑事コロンボを観ればいいって気がしてくる。

なんて言いながら、この日曜日はTBSのドラマ「ATARU」の最終回をじっくり観て、笑って、涙した。必要ないなんて言ってゴメン!ぼくたちにはやっぱり新しいドラマが必要だね!

・・・と、能天気に終わっちゃえばいいんだけど、やっぱりそうもいかない。SVODがぼくたちの生活に何か新しいものをもたらそうとしている気がする。それが何かは・・・まだわかんないなあ・・・

INTEROPでもソーシャルテレビの足音が聞こえていた

INTEROPという催しが先週後半、6月12日〜15日の日程で幕張メッセで開催されていた。幕張メッセだから大きなイベントだ。正直、ぼくはその趣旨があんまりわかってないんだけど、インターネットに関する技術の展示イベントみたいだ。

大きなイベントだけにその中にはまたいくつか分かれた催しになっていて、IMCというのもある。Interop Media Convergenceの略だそうだ。メディアコンテンツビジネスに関する分科会ということらしい。実行委員にはテレビ局の方々の名前が並んでいる。

で、IMCの中の放送局のブースが並んでいるのが上の写真。実行委員に名を連ねている割にはやや片隅というかあまり”デン!”と構えている感じはない。

今年の展示はソーシャルテレビ花盛り、とまではいかないけど、新技術の中にはソーシャルテレビ関連のものも含まれていた。ソーシャルに限らずスマートデバイス連携の展示が多かった、ということかな。

日本テレビはもちろん、JoiNTV。そして、先日発表したばかりのアプリ、”wiz TV”を展示していた。”wiz TV”はいまリリース中のバージョンにはない、音声認識のデモも見ることができた。放送中の番組をアプリに”聞かせて”あげると、どの局のどの番組かを探し出せるものだ。これは一体どういう仕組みなのかな?

“wiz TV”には明らかにメタデータから拾ったと思われる”番組中に取り上げられた商品”の名前がリストで出てきたりする。これは今後、何らか拡張されるのだろう。うーん、日テレさん、たくらんでるなあ。

NHKは当然、Hybrid Castを展示。技研公開でもたっぷり見せてくれたアレだね。

フジテレビは”テレコアプリ”というのを展示していた。番組の進行に合わせていろんなツールになるアプリ。これも番組で使うのを体験してみたいものだ。


そして、もっとも興味を惹いたのがマルチスクリーン型放送研究会、通称”マル研”の展示だった。これについては1月に一度このブログでも記事にしている。関西キー局を軸に取り組んでいる独自の仕組みだ。

マル研がなんと、デモ用に番組を実際に制作し、その仕組みの新しさを具体的に展示していたのだ。しかも”さわれるテレビ”というサービス名称とキャラクター、マル犬くんも登場している。あれあれ、進んでるぞ、大阪は!

前にも書いたが、このマル研は、スマートテレビ視聴を2画面方式で楽しむ仕組み。放送と連動した画面をスマートデバイスで見ることができ、番組を二十三重に楽しめるし、CMと連動した画面でクーポン取得なんてことも可能。

そしてポイントは。スマートデバイス用のデータを通信ではなく放送で送り届けるところだ。スマート視聴が普及していくと、番組と同時にスマートデバイス上で連動した画面を楽しむ人が増えていくだろう。単純計算でも視聴率1%の番組を見てる人は100万人。その人たちが通信で一斉に番組連動ページにアクセスしたら、すぐにサーバーがパンクすると予想される。

そこでマル研の仕組みは、セカンドスクリーン用のデータも放送で送り、それを視聴者の室内では無線LANで受信する。このやり方ならばアクセス殺到、サーバーパンク、ということは起こらないのだ。送り出し側を全部放送でやっちゃえばOKというもの。

セカンドスクリーン用の受信のための特殊なルーターが必要になるのがネックだが、せえのでみんなが普及させると決めればやり方はいくつかある。

そんな仕組みのために、関西キー局各局の女子アナを動員して数十分の番組を作っている。うーん、これはマジだぜ、ホンキだぜ。

この”とにかくカタチにしてみる”精神はいま、大事だよね。どうなのかなああなのかななどと言ってる間にとにかく具体化して、それ見てまた改良したり、他の人に説明したりする。カタチにすることで周りも巻き込めるし次に進むことができる。

こういう動きは、どんどん、それぞれみんなでやっていかなくちゃね。そしてだんだん、お互いのノウハウを共有して積み上げていく感じ。マル研のこの動きには、みんな刺激されたんじゃないかな。東京も頑張らなきゃね!