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コピーライター→映像製作会社ロボット→広告代理店ビデオプロモーション→再びコピーライター(フリーランス)。 メディアとコンテンツの未来を切り拓くコミュニケーションをデザインします。講演・執筆依頼もお気軽に!

ローカル局の進化はもうはじまっている。〜「新聞研究」2012/5月号・地デジ完成後のメディア環境〜

「新聞研究」という雑誌がある。前に「調査情報」という雑誌に寄稿したことを書いたでしょ。あっちはTBSメディア総研というTBSグループの総研が出している雑誌だった。「新聞研究」の方は、日本新聞協会が出しているもの。「調査情報」も歴史ある刊行物だったけどこちらも1947年創刊の由緒ある雑誌だ。・・・でも、勉強不足のぼくはコンタクトをいただくまで知らなかった。いや、面目ございません。

「地デジ完成後のメディア環境」という特集で、ぼくは「テレビはどう進化するか」のタイトルで、ネットによってテレビがどう変化しはじめているかを書いた。まあ、ここで書いてきたことのまとめ記事みたいなものなので、ここを読んでくれてる人なら、慌てて読まなくてもいいかも。

ただ、テレビ論メディア論が気になる人には、とても充実した内容になっていると思う。電通総研の井上さんという方がVODについて書いていて、噂の”もっとTV”についてふれている。ここに書いていることが”もっとTV”のベースになっているとしたら、けっこう期待しちゃうなあと思いましたぞ。

この特集の中で驚いたのが、ローカル局に関する2つの記事だ。北海道テレビの上杉さんが書いているものと、静岡新聞の大石さんが書いているもの。よく、次の時代を切り開くのは周縁の動きだと言われる。まさしく、いまローカルメディアで起こっている革新がよく伝わってきた。

北海道テレビ、通称HTBはもともと、”進んだテレビ局””成功したローカル局”として知られている。「水曜どうでしょう」という番組を制作し、全国で人気を得たのだ。何それ?という人には、大泉洋を送り出した番組だと言えば少しわかるかも。

この番組については拙著『テレビは生き残れるのか』でもふれたので、読んだ人なら思い出すでしょ。ローカル局制作の番組が、全国のローカル局に買われて放送された。しかも、ネットワークと関係なく売れた。ちょっとした革命を起こした番組だ。

「水曜どうでしょう」はひとつの例に過ぎず、HTBはデジタルコンテンツでも、アジアとの連携でも進んだ取り組みをしている局だ。そして今回の記事では「HTBオンデマンド」を開始した様子が書かれている。ええー?!ローカル局が独自にVODサービスを起ち上げたんすか?!すごいっす!もちろん、「水曜どうでしょう」のようなオリジナルコンテンツを持っているからできることなんだけど、自力でVODを持ったのは画期的、意欲的だ。

また、データ放送を活用した取り組みについても書かれていて、これも驚き。データ放送はBMLという独自の言語を使うのでけっこう手間がかかるのだ。長期的な視点に立たないとカンタンには取り組めない。でも新しいことにはどんどん挑戦、という決意があるんだろうね。素晴らしいなあ!

さらにさらに、静岡新聞グループの取り組みがまたびっくりだ。静岡新聞と静岡放送はグループ会社で、その連携で新聞・テレビ・ラジオそしてネットをうまく組合せたメディアになろうとしているそうだ。”静新SBSグループ”というそうで、例えばグループのウェブサイトでは新聞記事や地域情報、ラジオ・テレビ番組の情報やアナウンサーのブログを発信している。この時点で画期的だ。だって普通、グループ会社だったとしても”いがみあう”ものだからね。グループだから団結しましょう、というのは正しい!

記事を読んで感心するのが、コンセプチュアルな姿勢だ。例えば「ほしいときに、ほしい場所で、ほしい形で」情報提供をする。そのために、メディアごとに役割分担をして情報を送り出している。テレビやネットではスピーディに、新聞は記録性を重視するといった具合。なるほどねー。

「Personal Life Assistant」というキーワードもあって、県民の生活の手助けになるような情報提供をしようということなのだそうだ。メディアとはコミュニティなのだという捉え方があり、ぼくもあやとりブログでそんな記事を書いた。だったらローカルメディアはその土地のコミュニティになれるはず。それがまさしく反映された考え方だと思う。

一方、ぼくは先日、出張のついでにあるローカル局の方とお会いした。ソーシャルテレビ推進会議に参加してくださるというので、たまたま近くに出張した流れでお会いしたのだ。

その方に聞いた話もまたびっくりで、アプリの開発やデータ放送のうまい活用などのお話をうかがった。うーん、すごいなあ。進んでるなあ。

もちろん、すべてのローカル局が”進んでる”状態ではないだろう。そういう指向があり体力も見合う局じゃないと難しいに決まっている。

「新聞研究」の今回の記事でぼくがひとつ、いつもはあまり書かないことを書いた。それは、今後ローカル局で再編がはじまるだろう、そしてそこでは新聞社の力が鍵を握るだろうということ。日本のテレビ局は新聞資本との関係抜きには語れない。県単位でのテレビ局運営が厳しくなっていく中で、新聞社が何を考えてどう動くかが、テレビ局の行く末を握るはずだ。もっと言えば、新聞社も厳しいわけで、ほんとにみんなで”どう生き残れるのか”に真剣に取り組まざるをえない。

そんな中で、”ブロック紙”とそのグループにあたるテレビ局がキープレイヤーになる。のだと思う。

再編の動きの中で、視聴者、読者、つまり市民の視点で考えることがポイントだと思う。まちがっても、会社やグループの中の人間関係ばっか見てちゃダメですよ。市民を真ん中に置き、市民に役立つメディアとは何か、を考えないと。なーんて、えらそうに言う立場でもないけど。

番組名に”ソーシャルTV”と入ってる番組がはじまった!・・・けど・・・

著作権とか肖像権とか、問題あったら言ってくださいねー

なんとなくこのところ、このブログは”ソーシャルテレビ・ウォッチング”って感じになってきた。いや、”クリエイティブ・ビジネス論”ってくらいなんだから、本来はもう少し広い視点でいろいろ書いているんだけどね。ただ最近、ソーシャルテレビ関連の話題が次々に出てくるもんで。

と言ってたら、この土曜日にはまた、そういう番組が始まった。しかも、番組タイトルにそのものズバリ!”ソーシャルTV”というコトバが入っている。

「BSフジLIVE ソーシャルTV ザ・コンパス」というタイトルで、28日から毎週土曜日21時、ということではじまった。元日本テレビ、現トヨタCMレポーター役の西尾由佳理さんをメインキャスターに、「新・週刊フジテレビ批評」でおなじみの石田紗英子さんなどが出演する。タイトル通りソーシャルメディアを通して視聴者と双方向で放送するというふれこみ。毎回テーマを決めてニュースやカルチャーについてみんなで意見交換していこうという企画だそうだ。これは楽しみじゃないか。

当然のことながら番組のFacebookページができている。ぼくももちろん「いいね!」したよ。連動したニコ生番組もあるらしいからますます楽しみだと、放送開始を待っていた。

そうしたら、トラブル発生!妻と娘が「三毛猫ホームズは何チャンネルだっけ?」と言うのだ。ええーー?!あれ観てたっけ?うーん・・・妻だけなら拝み倒すところだが、娘はなあ・・・まあ、いいか、録画予約してあるし・・・

とは言え、ソーシャルTVと銘打った番組を録画で観るのもなあ・・・まあ三毛猫ホームズは1時間番組で、ザ・コンパスは90分だから、途中から観て前半はあとで録画で観よう、と思った。

で、約1時間後、ようやくテレビ画面を妻子から奪い録画を確認したら・・・あれー?予約・・・してなかったの?しなかったっけ?しなかったのか、しまった!

と、しょんぼりしつつも、BSフジにチャンネルを合わせ、TwitterをiPadで眺めつつPCでニコ生を視聴しているのが上の写真だ。

そんな調子だったので、正直言って感想を書くほど番組をちゃんと観れていないの。原発の再起動について是非を問うていたらしいことはわかったし、積極的に視聴者の意見を拾っていたのはわかった。それから、ニコ生の方ではフジテレビ批評のプロデューサー・福原さんが出てきて、あたふたしていたのもわかった(笑)。石田さんがBSのスタジオとニコ生のカメラの前を行ったり来たりするのだけど、想定以上にスタジオにいなければならなかったもので、石田さんがいない状態で福原さんたちが”間が持たない”状態になっていた、それを観ているのが面白かった(失礼!)。そんなとこ面白がるのは本筋じゃないけど、それくらい”出遅れて”しまったのだね、ぼくは。

ひとつびっくりしたことがあって、途中で”原発再起動は政府が決めるべきことかどうか”をアンケートとった。androidならこうしてああして、と言うのだけどiPhoneはダメなの?ソフトバンクの方はメッセージを、と言うのだけどメッセージじゃなあ・・・って感じになってぼくは回答しなかった。しばらくして出てきた集計結果は、61人対67人だった。ろ・・ろくじゅういち人?・・・BS放送を観てる人はまだまだ少ないのか、回答させる方法がやりにくいものだったからか、よくわからない。

よくわからないけど、とにかくとりあえず第一回は放送する側も視聴する側も、あたふたしていてうまくいかないことだらけだった、ってことだろう。

だから、そういうところを楽しんでいく、ということかもね。だんだんうまくいくよね、と。でもきっと、テレビ放送のホントの黎明期もこんな感じだったんじゃないかな。

それにしても、少なくともこのクールは、ぼくは最初からリアルタイムで視聴できないんだ、この番組。もう一回り遅い時間にしてほしかったなあ。やっぱり21時台はなかなか難しいよ。23時。せめて22時にしてほしかったなあ。いまから編成を・・・ってんなの無理なのはわかってますけどね・・・

メディア接触とは、生活習慣なんだな〜Bar境塾をやって考えたこと〜

4月24日に、またAJITOを借りてBar境塾を開催した。

今回は豪華メンバーで、告知ページにも書いたけど、アスキー総研の遠藤所長、SPIDER開発のPTP社の有吉社長、そして東芝でREGZA機器のインターフェイスなどの責任者、片岡部長のお三方をゲストに招いた。

「録画サービスはソーシャルへ向かう」というタイトルで、全録型の録画機器で番組を検索したりソーシャルに結びついたりすることでテレビ視聴はどう広がるかというお話。すごく面白い話続出だったので、ぜひUstアーカイブで観てくださいな。なかなか充実した内容だったよ、ホント。

それから、一応関連サイトとして以下を紹介しておこう。
・SPIDERのページがこちら。
・REGZAのアプリ関連のサイトがここ。
・遠藤さんがこの一年のメディアの急変について書いたコラム。
・こっちはさらにその続編として書かれたもの。

もうひとつ、翌日行われた遠藤さんのセミナーのまとめ記事。境塾のUst映像の中でちょい出てくるデータなどがきちんと登場しているよ。

それからもうひとつ、境塾の内容に触発されて”あやとりブログ”にぼくが書いた記事がこちら。

などなどなどと、いろいろと派生的なことももたらしつつ、盛況だった今回のイベント。あやとりブログに書いたこと以外に、もうひとつ触発されたことがある。しかも録画やソーシャルとは直接関係ないこと。

境塾でのディスカッションの中で一瞬だけ出てきた話題。「映画館の来場者が去年大幅に減った。一度足が遠のいた観客を呼び戻すのはかなり難しい。意外に劇場で観る”予告編”の効果は高く、劇場から離れると予告編を観なくなるしね」そんなことを遠藤さんが言っていた。この話は実は、事前に出演者の皆さんとやった下打ち合わせ(という名の飲み会)で、もっとじっくり話が出たのね。

この話はすごくぼくに響いた。

ロボットにいた時、ちょうど映画業界が日本映画で活性化した頃だったのだけど、その中でも東宝の力が絶大になっていった。東宝とは配給会社。そして東宝の映画の予告編は次の東宝の映画になるわけ。さらに興行会社であるTOHOシネマズはバージンのシネコンを買収したのでもっとも大きな流通網になった。

東宝の映画がヒットすると東宝の映画の予告編をたくさんの人が見る。するとその映画がヒットしてさらに予告編を見るのでまたヒットする。そんな正のスパイラル効果が合ったのではないか。だからどんどん東宝の映画ばかりがヒットするのだ。そんなことが言われていた。

実際に、日本映画製作者連盟のサイトで過去の興行成績を見ていくと、2000年代になってからどんどん東宝だらけになっていくのがわかる。その理由が、予告編の連鎖にある、という見方。

これを聞いた時、なるほどなーという思いと、でもさあ、という思いが交錯した。でもさあ、の方は、「でもさあ、映画のプロモーションって結局直前のテレビスポットでほとんど決まるんじゃないの?」ということね。

だから当時は”予告編効果”が半分はピンと来てなかったのだけど、遠藤さんの話を聞いて、なるほどなー100%になった。そうなんだ!予告編ってそんなに大きいんだ。

人間はメディアとの間に循環関係を築くのだろうね。

この話をその”下打ち合わせ”の場でしている時、有吉さんがぼくにこう言った。「TSUTAYAでレンタルするのが、LOSTとか流行って毎週行ってたのが、ある時プツンと途切れるとずーっと行かなくなったりしません?」

いやー、まったくそうなのだ!

一時期は、いや一時期どころではないな、90年代から何年間も、十数年間も、ぼくは土日になるとTSUTAYAに通ったものだ。そして「LOST」を息子と見始めてからは毎週では済まないくらい通った。

何がきっかけだったかはわからないけど、いまはもうTSUTAYAには滅多に行かない。ケーブルテレビでVODがはじまったからか、AppleTVを手に入れたからか、両方かな?そんなことがきっかけでTSUTAYA詣でが生活習慣から消えたのだ。

去年の映画興行の統計が出た時に書いたように、2010年は史上最高の興行収入2200億円を記録し、2011年はその18%ダウンの1800億円だった。日本の映画興行史上、驚くべき2年間だったのだ。

3Dで史上最高の盛り上がりを見せた映画館が、3Dに飽きられた上に震災の影響で急激に盛り下がった。予告編スパイラルが今度はマイナスに働き、お客さんはなかなか戻ってきそうにない。

ことほどさように、メディア接触とは生活習慣の一部なのだ。人の習慣を変えるのは容易ではない。でも何かの拍子にコロッと変わったりもする。

何かの拍子とは、時代の流れだったりもする。ガラケーをなくした息子に仕方なくiPhoneを買ってやった。初期コストが安いからだ。そしてちょうど普及してきたLINEで友人たちとおしゃべりばかりしている。

何かの拍子はセレンディピティとも言う。だとすれば、ソーシャルも何かの拍子になりえる。メディア接触に変化をもたらすには、ソーシャルメディアは重要なのかもしれない。

いや、そんなことぐらいでは焼け石に水なのかな?

でもとにかくね、重要だと思うよ、メディア接触は生活習慣なのだという見方は。生活習慣”にすぎない”と言ってもいいかも。コンテンツの力とは別に、考えなきゃいけない。コンテンツ力100のものを一回だけより、コンテンツ力10のものを毎週決まった時間に出すことが重要なのかもしれないよ。

何か重要なことを書こうとして、何を言いたいかわからなくなっちゃったけど、まあこんなところで・・・

teledaは、ソーシャルテレビの可能性が詰まっている実験だ!

先週、NHKのシンポジウムにワクワクしながら行ったら肩透かしだったぜ、ということを書いた。ブログを書く前に、twitterで愚痴を言っていたら、「ワクワク感が伝わってこないセッションでしたね」と話しかけられた。ああ、ぼく同様、期待して見に行ってがっかりしたんだなと思い「だよねー」などと返していたら、なんと!teledaの中の人だとわかった。

つまり、teledaのシンポジウムを愚痴っていたら、teledaを開発して実験した当のご本人とつながっちゃったわけ!やっぱソーシャルって面白いなあ、すごいなあ。

そんなわけで、訪問してきました、NHK技術研究所。知ってるかな?世田谷の砧にある。正直言って交通の便は悪いよ。でも80年の歴史を持つ放送技術の殿堂みたいな場所だ。

浜口さんという研究所の方の部屋に入ると、こんな感じ。いかにも”ラボ”って感じでしょ。

teledaについて知る時に、ソーシャルテレビ=リアルタイムでの番組共有、としかとらえられないと話がかみ合わなくなる。先日のシンポジウムがまさにそうだった。

そりゃあいま、テレビ番組を観ながらtwitterでみんなでつぶやきあう、そのことを”ソーシャルテレビ”と呼んでいる。でも、テレビ番組をソーシャルメディアを通じて楽しむことがソーシャルテレビであるならば、もうひとつ別の解釈も成立する。放送後の番組を楽しむ時に、ソーシャルメディアを通じて他の人の感想を参考にする。これも広義のソーシャルメディアだと言えるはずだ。

teledaはそういう実験なのだ。NHKオンデマンドでの番組視聴に、ソーシャルメディアをからめたらどうなるか、という実験をしたのだ。それは少なくともぼくにとって、大いに興味をそそるものだ。

teledaの結果を浜口さんから聞いた中でもっとも興味深いのが、teledaによって番組視聴がどう変化したかだ。カンタンに言うと、他の人の感想によって、自分が知らなかった番組への興味が喚起されたそうだ。視聴率ではさほど高くない番組が、teledaでは視聴数が多かったりする。「ブラタモリ」とか、「クローズアップ現代」そして「セカンドバージン」など、”ハマる”番組。

さらに面白いのは、視聴率との乖離だけでなく、NHKオンデマンドでの人気番組との乖離もある。オンデマンドでは大河ドラマのような”人気番組”がやはり人気があるそうだ。つまり見逃し視聴するわけだ。

つまりteledaを通じて、リアルタイム視聴とも、また通常の見方のビデオオンデマンドとも、視聴番組が変わった、ということだ。

ソーシャルメディアが、番組の序列を変えるわけ。これ、すごく重要なポイントだと思う。

teledaで注目したいのはもうひとつ、そのインターフェイスだ。こんなメイン画面。

番組のサムネイルが並んでいるでしょ。そしてその下にはソーシャル画面、つまり、他の人の書込みが並ぶ。

これだよ、これ!こういうインターフェイスだよ!番組をサムネで選ぶという要素と、ソーシャル的に書込みを読む要素が同一画面に存在している。これが必要なの!

teledaはあくまで、NHKオンデマンド上の番組を選ぶためのインターフェイスであり、ソーシャルメディアなのだけど、いま視聴できるあらゆるビデオオンデマンドサービス上の番組をこんなインターフェイスで選べたら、すごく便利だと思う。でもそれは、NHK一局だけではできない。もちろん民放一局だけでもできない。第三者がやるべきサービスだ。それがいま、必要なの。

teledaについてはもう少し、きちんと書いた方がいいかなと思いつつ、今日のBar境塾とすごく近い話なので、速報的に記事にしてみたよ。

うん、そうそう。今回のBar境塾のテーマ「録画サービスはソーシャルへ向かう」とteledaの実験はすごく近いの。それはまた近々書くからね。

あーやっぱり今日のBar境塾、行くことにすればよかった。という方は、今日(4月24日)20時からここをクリック。Bar境塾はUstreamで配信します。もちろんアーカイブもされるので、あとからでも見れますよ!

ソーシャルテレビ推進会議、設立しました!

今年の初め、元旦の記事でぼくは「今年はソーシャルテレビを推進する活動をするよ」と宣言し、そのための評議会みたいなものを設立すると言ってのけた。有言実行。おれ、えらいね。その言葉通り、先週の金曜日に設立を果たしたよ。

はいそうです、2012年4月20日、ソーシャルテレビ推進会議を設立しました。

もう一度いうけど、”ソーシャルテレビ推進会議”という名称です。第一回会合ということで、10数名の皆さんに集まってもらった。

そこで説明した、この”推進会議”の趣旨や目的などをここに書いておきますよ。

●放送と通信、マスメディアとインターネットの融合の具体としてソーシャルテレビを日本で推進し、活性化させることを大目的とする。
●ソーシャルテレビの推進に興味を持つ者同士で交流し意見交換する。
●具現化にあたり必要な事柄を議論して整理し、共有する。
●社会に対して、もしくは業界や企業に対して提言するなどの形で、具体的な影響力を発揮する。

なかなか大上段でいいでしょ!けっこうマジな目標を持っているの。

ソーシャルテレビを推進していくには、いろんな課題やハードル、わかんないことがいっぱいあるだろう。個々のユニットで努力するのが基本にしても、おのおのわかったこと、見えてきたことを共有することでお互いスピードアップできるんじゃないか。そして、場合によっては”もっとみなさんこうしましょうよ!”と提言していく必要も出てくるかもしれない。そんな時はこの会議が発言していきますよー、というわけですわ。

この活動は、慶應大学メディアデザイン学科中村伊知哉研究室との共同プロジェクトとして進めていきます。同研究室の上杉さんに事務局となっていただくことになっている。

それからこの活動は”会議”であって”組織”ではない、ということにします。業界団体ではないわけです。あくまで、上記の目的に添って意見交換し情報共有する活動。固定したメンバーを持たない活動です。

今後、少しずつ研究発表したり提言したりするかもしれないのだけど、その時は、その時々で、それらに参加した方々に名前を連ねてもらうことになるでしょう。あくまで、その時々で。

会議に参加する際は、会社単位ではなく個人単位で、というのも重要なポイント。会社を代表して、組織を背負って参加してもらうわけではない。A社のXさんが参加したとして、そのXさんの発言がA社の見解だという受け止め方はしません。

まあそんな、ゆるい感じで進めていきます。

参加に関して”資格”があるわけではないのだけど、ソーシャルテレビに関して何らか関与してたりする人が望ましい。”仕事にしている”とまでは言わないけど、「これこれこういう活動をしていて」と言われて、ああそれならソーシャルテレビが関係しますね、と言える人を求めます。

月に一回、会合を開催します。これは事前にオープンにはしません。ぼくから声をかけた人があらかじめ知っている、という進め方。5月ももちろん開催しますよ。まだ決めてないけど。

その5月の会合、参加したいぜ!って人は、ぼくあての連絡をください。

ここをクリックしてメールをどうぞ。あるいは、Facebookでぼくにメッセージをくれてもいいです。

ただしつこく書くけど、「そんなあなたがどうしてソーシャルテレビ?」という人は返信しないかもしれません。どうして参加したいのか、どういう関わりなのかをきちんと説明してくださいね。そもそもやたらと人数を増やすものではないのでね。

逆にこちらからアプローチする方もいるかもしれません。というか、基本的にはそういう集め方にするつもり。でもだんだん、少しずつ、ね。

当面は一年間、活動してみます。その成果を境塾としてなのか、別の枠組みでになるのか、追い追い発表もしていきたいと思っています。

そんな感じで、離陸するからね。レッツ・フライ!

NHK放送文化研究所のシンポジウムに行ったのだけど・・・

19日は前々から楽しみにしていたNHK放送文化研究所のシンポジウムに行った。一カ月前に申し込んであってワクワク待っていて、仕事は建て込んできたけど奇跡のようにこの日の午後がすっぽりあいたので、喜び勇んで見に行った。

その概要はこのPDFに書いてある。「そしてテレビにできること〜メディア激動の時代に〜」と題して、二日間に渡って様々なシンポジウムが企画されている。

その中で何が楽しみだったかと言うと、「VOD・SNS時代の”テレビ”と”テレビ視聴”」のタイトルで、teledaの実験結果の報告が見たかったのだ。teledaはNHKが取り組んでいるソーシャルテレビの実験。VODサービスを活用する際、ソーシャルメディアがどう役立つかを調査したのだそうだ。

その前に「私たちが本当に見たい”テレビ”とは」のタイトルで、40代女性はどんなテレビコンテンツをみたいのか、というシンポジウムもあった。正直、ついでに申し込んだのだけど、そんなこというのが失礼すぎるくらい、想定外の面白さだった。

たぶん、パネラーたちとそれなりの打合せを事前にしていたのだろう。個々のパネラーの方のお話も面白かったし、全体の構成もよくできていた。

気分よく、自分にとっての本命のイベント、teledaの発表に進んでいった。ああもう、ワクワク、ワクワク。

teledaを開発したNHK放送文化研究所の方たちと、パネラー3名が紹介された。東海大学の水島久光教授、フジテレビでデジタルコンテンツ事業を担当している塚本幹夫さん、そして元電通でソーシャルメディア界では著名なコミュニケーション・ディレクター佐藤尚之さん(通称さとなおさん)のお三方。

ところが、それぞれがコメントしはじめると、teledaに対してネガティブなことをおっしゃる。あれー?なんかそういう催しだっけ?

teledaはNHKのVODサービスをソーシャルメディア的な仕組みでもっと楽しくできないか、という実験。Facebookなどの既存のサービスではなくteledaという疑似的なSNSを1000人ぐらいの人にモニターしてもらった実証プログラムだ。だからつっこみどころ満載ではあるだろう。あるいは、ソーシャルテレビとはリアルタイムでのテレビ視聴なのだとこだわる考え方に立つと、VOD×ソーシャルは意義が薄い、となってしまうのだろう。

でもぼくは、teledaという、VODにとりあえず的なソーシャルネットワークを使ってもらったらテレビ視聴がどうなるだろうね、という実験の成果を聞きに行ったのだ。teledaがソーシャルネットワークと言えるのかどうかは正直、どっちだっていいの。teledaでやってみたことをできるだけ詳しく聞きたかったの。

なんだかボタンの掛け違いが起こっている。パネラーの方々が悪いとか言いたいのではなく、このパネルディスカッションの意味合いがしっちゃかめっちゃかになっちゃってるんだ。

1時間半のパネルディスカッションが、結局こうしたちぐはぐさで終始してしまった。をいをい、なんだよこのイベント。1カ月も前から楽しみにしていたのにさ。

これの前の催しがとっても充実した内容だったから、余計に残念。前菜が思わず美味しかったのに、メインディッシュが生焼けだった、みたいな。はっきり言いますが、これは企画した側のミスだと思いますぞ。パネラーの皆さんと下打合せ、できてなかったっしょ。

どうしてぼくがこれほど残念がるかというと、このteledaの実験は、次回のBar境塾の「録画サービスはソーシャルへ向かう」とすごく近いテーマだから。録画した番組を楽しむためのソーシャルがテーマ、ということと、VODサービスのソーシャルな楽しみ方、というのは近いでしょ?だからこそ、楽しみに楽しみにしていたわけ。

それにしても、これほどちぐはぐなシンポジウムも珍しいなあ。ひょっとして「ネガティブなつっこみを入れてください」という企画意図だったのではないかな?ホントはもっと進んだことやりたかったのに上から制限されたので、こんなんじゃダメだって言ってください、みたいな・・・・いやいやいや、んなわけないか。

teledaの成果は、機会があればじっくり聞いてみたいものだ。と、思ってたら、そんな機会ができそうな気配が・・・。もし聞けたら、それはまたここで報告するからね。

ソーシャルテレビにできること満載!ピーチクの人たちにお会いした

ちょっと前の話になるのだけど。前回のBar境塾をやった時、つまり3月1日だね。催しが終わるとそのあとは、AJITOでビールを飲みながらいろんな方とお話をする。初対面の方と名刺交換して話に花が咲いたり。

そんなたくさんの人でごった返す中、ひとりの見知らぬ若者がぼくの前にやってきた。アライドアーキテクツという会社の青年だった。「あのお、うちもソーシャルテレビのアプリやってまして」「あ、そうなの?なんて言うサービスですか?」「ピーチクといいます」「ピーチク!」「WEBサービスでもスマホのアプリでも展開してます」「そうですか、いつ出たんですか?」「ずいぶん前です。テレビジンの次ぐらい前からやってるんです」「あ?そうなの?そんなに前から?すみません、全然知りませんで」「・・・・・」

んー、そうか、うかつだったなあ。ソーシャルテレビだと騒いでるわりに知らないアプリがまだあるとは。というかちゃんと探してこなかったのバレバレ。

そしてどうやらこの青年は、ぼくのブログを読んでくれていて、ソーシャルテレビについてこのところ書いているのも知っていて、少し前にテレビジンについて書いたのも読んでいた様子。tuneTVやみるぞうや、こないだはテレビジンも書いたくせに、どうしてピーチクをとりあげないのか。テレビジンに次ぐ老舗なのに・・・。そんなことを彼が言ったわけではないけど、そんなことを言いたいのかなと感じられた。うーん、ごめんなさい。不勉強でしたー!

そうだね、ここまでソーシャルテレビについて書いてきたのだから、まだ書いてないのはまずいよね。ということで、その後、アプリをダウンロードしてみたりし、それからアライドアーキテクツさんを訪ねたりした。

アライドアーキテクツ社は”モニプラ”で知られる開発会社で、最近はとくにソーシャルマーケティングに役立つ仕組みを提供したり、Facebookの運用も引き受けてくれたりするそうだ。そっちの方でも面白いんだけど、そんなメイン仕事の一方で、ピーチクも育ててきたそうだ。

WEBサービスとしても動いているし、iOS、androidそれぞれ向けのアプリも展開している。

WEBのトップ画面はこんな感じ。各テレビ局名をクリックすると、それぞれの番組のいま動いているタイムラインが表示される。地上波だけでなくBS局もあるでしょ。画面に入らなかったけど、さらに下にはラジオ局も並んでいる。ラジオのつぶやきを表示するのは珍しいね。

まあ実際に見てもらうのがいちばんだから、ここをクリックしてピーチクのサイトをしばし眺めていじってみてくださいな。


これが、iPhoneアプリのメイン画面。WEB同様各チャンネルの番組から選べる。

ちょうどバージョンアップしたばかりで、かなりいろんな機能が使えるようになっている。ソーシャルテレビにあってほしい要素が満載されている感さえあるぞ。

例えば上の画面でもわかるのが「あなたへのお勧め」というタブ。これを押すと、いくつかの番組を勧めてくれる。

さらに、下にある”ランキング”をタップすると、日間、週間、月間でのランキングが表示される。もちろん、つぶやきの盛り上がり度をランク表示するわけだ。

面白いのは、ランキングに入っている番組をタップすると、その番組に関するタイムラインが見れること。リアルタイムじゃなくても番組についてのつぶやきを見れるのはなかなかないことだ。

アライドアーキテクツの皆さんにお会いし、また新たな仲間を得た気分。そして彼らにも、ソーシャルテレビ推進会議に参加してもらえるようお願いした。

あ、そうそう、ソーシャルテレビ推進会議、いよいよ始動します。今月スタート、となる予定。これはまた近々、ちゃんと書きますね。だんだん仲間も増やしていきたいので、参加についてもそのうち発表するからね。

本を出すということ〜電子版「テレビは生き残れるのか」が出た!〜

こないだ、出版社から転送されてきた。共同通信の方から、掲載記事の切り抜きの束が出版社に届いたのだという。それが、これ。

通信社は記事を新聞社に配信する、ということを知ってはいたけど、具体的にはこういうことだったのか。共同通信の方が書いた記事を、各新聞社が掲載している。少しずつ見出しが違ってはいるけど、記事の内容はほぼ同じ。

指南役さんの『テレビは余命7年』石光勝さんの『テレビ局削減論』志村一隆さんの『明日のメディア』そしてぼくの『テレビは生き残れるのか』を並べて、テレビの転換期がやって来ていて危機を訴える本の出版が相次いでいることを伝えている。ふむふむ、なんかうれしいじゃないすか。それぞれ、ぼくはここでとりあげたと思う。あれ?『テレビ局削減論』はとりあげてないかな?読んだんだけどね。

笑っちゃうのは、アマゾンがいまだに時々ぼくにぼくの書いた本をレコメンドメールしてくる。そのメールで一緒に勧めてくるのがこの4冊だったりする。

ぼくの本は去年の7月に出したから、もう半年以上経っている。あれからすごい勢いでメディア状況は変化しているので、ぼくの本も内容的に古くなりはじめている。でもこうして、あらためて記事にしてもらうと、ちょっと息を吹き返したような見え方になる。

ブログをずーっと書いてきたわけだけど、前の会社を辞めるにあたり本の形にしようと思った。プロダクションにいた時はメディアの危機だ行く末だを表立って書くのははばかられた。ブログを実名にした時点でもけっこうハラハラしていたしね。本にするのはそれなりの覚悟というか気合いというかだった。水面の下から上に出るぞ、みたいな。おたまじゃくし君、カエルになっていよいよ陸に上がります、みたいな。

ブログもけっこう読んでもらえるようになって、名刺交換したら「あ、ブログ読んでます!」と言われたりしてたけど、本にするのは正式感というかオフィシャル度というか、もう逃げられないぞ的な、そんな気持ちになった。

いろんな意味で、紙の本を出版することは、ブログを書いているだけとはちがうんだよね。

さて、ちょっと告知が遅れちゃったんだけど、『テレビは生き残れるのか』が電子版でも登場した。3月末だったので、もっと早く書かなきゃいけなかったんだけど。

ディスカヴァー21社のサイトで販売している。同社独自の形式のアプリで読むことができる。iPhoneでも読めるので電車の中なんかで読むにはいいんじゃないかな。半年も経って状況が大きく変わっているので、出版後に起こったことを書き足している。それから、「調査情報」に書いた原稿も、市川編集長のお許しをいただいた上で掲載している。だから紙の方は持ってるよ、って方も、新たな原稿が読めるようにはなっている。まあ、どっちかって言うと、紙の本を買いそびれてね、って人にいいと思うんだけどね。

紙の本を出版したことは、ぼくに大きな影響を与えた。ブログを書いていて出会った方も大勢いるのだけど、出版したからこそお会い出来た方、お声がけいただいた方もまたたくさんいた。スマートテレビ研究会に呼んでいただけたのも出版があったからだよね。

ブログじゃダメで、紙の本の方がいいんだよ、と言いたいわけではなくて、ブログでも出版でも、書き続けることが大事なんだと思う。動き続けることが大切なんじゃないか。声を出し続けることこそが、自分の周りの状況を変えていく。そう、世の中をパッと変えることなんてそうそうできないけど、自分の周りを少しずつ、でも確実に変えることはできるんだ。

そのためにはもちろん、メッセージを持つことがまた大事なんだけどね。

うん、だからぼくはこれからも、まだまだ書き続けるんだ。書きたいこと、書かなきゃと思ったこと、メッセージを持ち続ける限り。

Bar境塾4月24日開催・「録画サービスはソーシャルへ向かう!」

毎度おなじみ、Bar境塾を今月も開催するよ。

今回もまた面白くなりそう!著名な方々にお声がけしてご快諾いただいたのだ!

先週、このブログでとりあげたSPIDERと有吉社長。その有吉社長をお招きする。さらに、スマートテレビ研究会でご一緒していた東芝の片岡秀夫さんもお呼びすることになった。

片岡さんは東芝でREGZA関連の開発をされている。去年の10月、CEATECに行った時、東芝のブースで丁寧に説明してくださった。“録画神”とマニアから呼ばれて尊敬されてきた開発者で、視点がどこかクリエイター寄りなのでぼくは共感してしまう。

その片岡さんは”タグラー”という、録画映像とソーシャル的な要素を組合せる仕組みを開発している。REGZAに録画してある番組の中のシーンを呼び出すことができるのだ。

これはSPIDERのソーシャル発想と近いものがある。

お二人にそれぞれの開発についてうかがいながら、録画とソーシャルでテレビ視聴が今後どう楽しくなっていくかを話していただこうと思う。

そしてこのテーマのきっかけをぼくにくださったアスキー総研の遠藤諭所長もお呼びする。遠藤さんはこのところ、テレビ視聴に関係するご発言や記事が話題になっている。ついこないだも、「戦後最大のメディアの椅子とりゲームがはじまっている」と題した記事を書かれていて、ぼくのFacebookウォール上ではみんなが話題にしていた。

SPIDERの有吉さん、東芝の片岡さん、アスキー総研の遠藤さんという三人の著名な方々をお招きして録画とソーシャルについて語り合う、豪華な企画となった。これは楽しみじゃないか。

というわけで、開催要項をちゃんと書いておくね。

Bar境塾「録画機はソーシャルへ向かう!」

司会:境 治(メディアストラテジスト・ビデオプロモーション)
パネラー:遠藤諭氏(アスキー総研・所長)
有吉昌康氏(SPIDERのPTP社長)
片岡秀夫氏(東芝 プロダクト&ソーシャル・インターフェース部 部長)

※パネラーの方の業務の都合などで変更がある場合がありますのでご了承ください。

日時:4月24日(火)19時開場・20時開始
場所:VOYAGE GROUP受付Bar AJITO(渋谷区神泉8-16 渋谷ファーストプレイス8F)
会費:500円(ビールなどドリンクフリー)
定員:40名


いつも通り、19時開場で、早めに着いたらビール飲みながらいろんな人と語り合って20時の開始までゆる〜く過ごしてもらえます。ここでの出会いも楽しみのひとつだよね。

申し込みは、ATNDから。今回は著名な方々で人気になりそう。お申し込みはお早めに!

SPIDERはソーシャルテレビの夢から生まれた〜PTPの有吉社長にお会いした(2)〜

さて、前回に続いて、SPIDERと有吉社長の話の続きだ。何だっけそれ、って人は先に前回の記事を読んでね。そして前回の記事はむしろ前振りで、核心は今回書くことにあるんだ。

SPIDERはどういう発想で生まれたのかを聞いてみた。当然、すべてを録画したら便利だから、てなことなんだろうと思って聞いたのだけど、270度くらいちがったんだ。

1999年に考えたのだそうだ。米国でTiVoを見てから。

TiVoというのは米国で大ヒットしたハードディスクレコーダーで、「セックス・アンド・ザ・シティ」によく登場したのでぼくは憶えている。非常に優れた録画機、というより月額制の録画サービスがSTBを貸し出す(んだったと思う)仕組みらしい。まあとにかく、初めて録画機を目にした有吉さん。すごいのは、そこからすぐに「こんなことができるのなら、ハードディスク容量は見る見るうちに増えていくから放送がすべて録画できるようになるだろう」とまでイメージしたということだ。

そして、有吉さんはそういう録画機を日本のいろんなメーカーが出す状況を想像した。そうすると、番組をどうやって探すんだろう、ということになるだろうと考えたそうだ。そこで出てきた答えがこういうことだ。

「番組評価互助会」。

番組の評価を互いに交換しあう仕組み、ということかな?そんなことを1999年に考えて、ちゃんと書類にまとめて特許をとったそうだ。

テレビ番組の評価をお互いにやりとりする・・・・それってそのまんま、ソーシャルテレビじゃないか!この話を聞いてぼくはとにかく面食らった。ぼくたちが2012年にようやくたどり着いた概念を、この人は10年以上前に夢想していたと言うの?大したもんだわ!

そして有吉さんは、その「互助会」をビジネス化しようと動き出す。まずは各メーカーに時間の問題だから全録マシンを作ってくださいと言って回った。マシンを作ってくれれば自分は「互助会」をやるので、持ちつ持たれつだよね、やりましょうよ、と。

ところがどのメーカーもやらないと言う。うむむむ、それじゃあ「互助会」できないじゃないかあ。よーし、だったら全録機、自分で作ろう!それしかない!

・・・ふつうそんな風に考えるかなあ・・・そう、ふつうは諦めるんだよね。でも有吉さんは思いっきりポジティブ思考なのか、怖いもの知らずなのか、全録機メーカーをやろうと決心した。

ものすごく特異なケースじゃないかなあ。モノが作りたいのではなく、サービスをやりたかったから、そのためにモノを作ることにした。これはいま、そう考えないといけないよね、と山崎秀夫さんなんかも言っている考え方だ。モノじゃなくてサービスだよ、と。有吉さんは10年前にそんな考え方をとったというわけだ。

それからまた驚くのは、そんな10年前の野望が、いまようやく達成されようとしている。一般ユーザー向けのSPIDERの発売に向けて着陸態勢に入ったそうだ。逆に言うと、10年間、待ったわけだ。

SPIDERはぼくも”業界向け”だと思っていたほど、業界には浸透している。でももちろん、「番組評価互助会」を実現するためには、一般ユーザーがSPIDERを使ってくれないとはじまらない。しかも、できるだけ多くのユーザーが使わないと。

そのための準備はもう整いつつあるらしいのだ。これは楽しみじゃないか!

近い将来、ぼくの家にもSPIDERがやって来るのかもしれない。それはテレビと自分との関係の再構築になるだろう。一週間分の地上波の番組が多様なやり方で視聴出来る。検索したり、ソーシャル上の感想を見たりして、興味を持った番組を観る。なんて面白そうだろう!

こう書いてると、じゃあCM見なくなるじゃないか、と言う人もいるだろう。でも有吉さんによれば、SPIDERでCMを見なくなるわけではないという。前回書いたように、タレント検索をすると出演CMも出てくる。AKBのCMだけを選んで見ることもできるのだ。ソフトバンクのCMを途中から見て、次はよく観ようと思ってもなかなか出てこなかったりする。SPIDERがあれば、検索すればいいのだ。そんな風に、CMがコンテンツ化する可能性もある。

それに、ぼくが思うに全録機を買ったからリアルタイムで観なくなるわけではないと思う。リアルタイムでこそ観たい番組はいっぱいあるはずだ。ドラマだって、オンエアに間に合えばリアルタイムで観たいもんね。SPIDERのポイントは、そういう、基本的な視聴に”加えて”一週間分の番組から選んでみることもできる、ということだと思う。

もちろん、だからテレビは安泰だ、ということでも決してないけどね。

さてところで、録画した番組を、ソーシャルの仕組みを活用して視聴する、というと思い出す人がもう一人いるんじゃない?そうだね、東芝の片岡さん。

というわけで、次回Bar境塾は、有吉さんと片岡さんにおいでいただき、そこにアスキー総研の遠藤さんから突っ込み入れてもらう。そんなことを考えているんだ。詳細は、近々発表するので、ちょっと待ってね。今度も面白くなりそうだよ!

SPIDERのインターフェイスは”完全にユーザー目線”だ!〜PTPの有吉社長にお会いした(1)〜

これは少し前の話。アスキー総研の所長、遠藤諭さんとお会いする機会があった。遠藤さんについては書きはじめるとどんどん長くなって独立した記事にしなくちゃならないので、それは別の日にとっておこう。とにかく遠藤さんと初めてお会いして緊張しながらカレー(!)を食べつついろいろお話しした。

遠藤さんが年末に書いておられた『「テレビ崩壊」はウソだと思う』という記事が印象に残っていた。そもそも、遠藤さんはテレビにまつわる論はあまり興味ないのかと思っていたし。そこんとこをお聞きしてみたら「いやー、ぼくはずっとBSやCSしか観なかったんですけど、最近はけっこう地上波の番組を観るんですよ。」とおっしゃる。

遠藤さんと言えばサブカル中のサブカルって方だし、オタク文化とは何かを(結果として)定義づけたような方でもあるのだから、地上波のようなメジャーなものは目に入らないだろう。だからBSやCSばかり観ていたというのはわかる。でも、それがどうして地上波を観るようになったのかな?

「うん、それはねえ、SPIDERを買ったから」

す、スパイダー?!

「あれはねえ、すごいんですよ。テレビの視聴体験がまったく変わるわけです。ぼくなんかあらかじめ”カレー”を検索ワードに登録しておくでしょ。そうするとね、地上波の中の”カレー”の部分だけをずっと観ることができる。ぼくだけの番組が編成されるわけですよ」(ちなみに遠藤さんがカレー好きで有名だってことはここで皆さん知っておこうね)

SPIDERとは全録機だ。日本で開発された製品で、一週間分の地上波の番組を全部録画してしまう。その中からテレビ番組なりCM映像なりを選び出して視聴できる。ぼくの印象ではプロ向けの機器で、実際前にいたロボットでもいまいるビデオプロモーションでも会社で使っている。デスクの女子に頼むと、一週間以内の番組を選び出してもらえるのだ。担当している番組をチェックしたり、CMを企画する際に他社のCMをまとめて観たりするのに使う。

だからぼくはごく身近にSPIDERがずっとあったのだけど、実は自分ではいじったことがなかった。デスク女子に頼む習慣が身に付いてしまっていたのだ。だからどうも、遠藤さんのおっしゃることが実感できなかった。

遠藤さんはある方に紹介してもらったのだけど、今度はSPIDERだ!とばかりに、そのメーカーであるPTP社の有吉昌康社長にお会いしたいと、別の方に頼み込んでPTPに行ってみた。

有吉さんはとても魅力的な方で、SPIDERをなぜ作るに至ったかの話が面白くてしょうがない。その話を書こうと思うのだけど、その前にSPIDERがどんな製品かを知っておいてもらった方がいいだろう。会社にあるSPIDERをいじくりながら写真を撮ったので、それを見せながら説明しよう。

これがSPIDERの基本画面

SPIDERは”アイコン”発想になっている。上にメニューが並んでいるけど、磁石とかクリップとかのアイコンが並んでいる。直感的に操作できるようになっているのだ。

リモコンはテレビ機器のものとしては見たことない形態だ

SPIDERの操作性はこのリモコンが担っている。気分としてはiPodが近い。十字ボタンでカーソルを移動させ、中央のボタンで決定。いやちがうな、って時はBACKを押す。下のテンキーは文字入力以外では使うことがないのでこの部分はふだんは”持つところ”になる。
番組表の画面
さっきの画面で並んでいたアイコンの中の升目上のやつを選ぶとこれが出てくる。番組表だ。普通の録画機では、どの番組を録るか決める時に番組表を使う。でもSPIDERの場合は録画済みの番組表になる。この中でどれを観るかを決めるわけだ。

普通の録画機の番組表は、同じように時間と局で区切られた枠の中にテキスト情報が表示される。でもSPIDERの場合はカーソルを合わせるとサムネイルが表示される。その上に、この小さな枠の中で映像が動き出す。

ここはSPIDERのインターフェイスを語る上で重要なポイントだ。表の中で番組に合わせると、映像が動くのだ。もちろん音声も出る。どれ観ようかなと選ぶ時にどんどん番組が動く。

しかもカーソルは十字キーで滑らかに動く。番組表の上をなでるように十字キーを操作するとそれに合わせて次々に番組の最初の部分が観れるのだ。

「えーっと、確か昨日か一昨日の深夜番組だったよなあ、テレ朝だっけか?いや、TBSだったかな?」そんなもやもやと考えながら番組表をなでているうちにお目当ての番組にたどり着いたり、「あれ?この番組なに?こんなのあったの?」と別の番組を発見もするかもしれない。

つまりSPIDERのインターフェイスは”完全にユーザー目線”で作られているのだ。

今度は、さっきのアイコンの並びの中から”クリップ”を選んでみる。これは検索メニューだ。

SPIDERの検索はまず、ワード登録しておくのが基本的な使い方だろう。遠藤さんのように”カレー”を登録しておけば、カレーが出てくるシーンが次々に視聴できる。嵐が好きなら、登録しておき、嵐だらけのテレビ視聴ができる。

もちろんあとから検索もできる。録画済みの番組の中から何でも検索できるのだ。“芦田愛菜”の検索する際、”あし”と入れるともう候補に出てくる

検索するには文字入力が必要。リモコンのテンキー部分を使ってケータイ電話の文字入力の要領で文字を選ぶ。よく使われている言葉なら、最初の二文字くらいでお目当ての候補が出てくるだろう。

”芦田愛菜”の検索結果がこれ。

検索結果が表示される。リストで並ぶのでわかりやすい。そしてここでポイントなのが、3つの分類で結果が表示されることだ。

「番組」「CM」はわかるだろう。芦田愛菜が”出演”している番組がこれだけあり、出演するCMがまたこれだけある。最後の「コーナー」は何だろう?彼女が”出演”しないまでも何らかの形で名前が出たり、一瞬だけ映像がでたりするケースだ。

「番組」と表示されるものは、彼女が出演する情報が公式にどこかに出ているものだ。でも「コーナー」の場合は、たまたま彼女の名前が出たとか、出演する映画が取り上げられたとか、そういうケース。そんなことまでピックアップしてくれるなんてすごいし、便利そうだ。

この便利さはさっきも書いた”完全にユーザー目線”がベースにあるからだ。そんな機器は日本では珍しいと思う。そしてプロユースの機器としても不思議だ。業界の会社が買う製品なら、そこまでユーザー目線にする必要がないんじゃないのかな?

といういよいよ核心の話は、次回にしよう。2回に分けるつもりもなかったのだけどね。

次回を書く前に、佐々木俊尚さんが書いた記事があるので、読んでもらうと参考になると思う。実は、去年と今年(つい先週の掲載)の2回もある。両方とも”現代ビジネス”の「ブレイクスルーな人たち」という佐々木さんのシリーズ記事の一環だ。

去年3月の『2011年、SPIDERが変えるテレビの「未来」と「可能性」』はこちら。
そして、先週掲載された『テレビが進化する可能性を追う!日本の閉鎖的な放送業界を揺り動かす「SPIDER」のさらなるチャレンジ』はこっち。

それから、ここで遠藤さんと有吉さんのお名前が登場するのは、次回のBar境塾につながってきちゃったりなんかするのかもねー、ってことは、近いうちにここで発表するので、乞うご期待!ってことで・・・

※Facebook”境塾”運営してます。よかったら、のぞいてくださいね!

『地デジ化の真実』〜西正さんからの激励文〜

画像にリンクを貼るやり方がわからん・・・(^_^ゞ

西正さんというメディアコンサルタントの方がいる。詳しくは検索すればいくらでも出てくるので知らないって人は調べてみてください。

ぼくも参加しているあやとりブログの書き手の一人でもある。こないだは「まるで幕末黒船騒動に近い日本のメディア業界」と題して、米国の情報におろおろしちゃダメだよ、というようなことを書いてらした。

2000年代前半、”地デジ化”ってのがゆくゆくあるらしいよ、と聞いてから、ぼくはメディア論にハマりはじめた。ぼくたちの世界がどうやら大きく変わるらしいぞと感じたからだ。メディアの未来を考えはじめ、さらにロボットで経営企画を担当して仕事としてそれを考えなければならなくなった。そんな頃、西正さんの本に出会った。

どの本をどう読んだか、もうわからなくなってるのだけど、とにかくその頃は、テレビを中心にメディア論を語る書籍はほとんどなくて、西さんの一連のものしかなかったと言っていいくらいだった。何冊もむさぼるように読んで、いろんなことを知った。例えば、米国ではケーブルテレビが成長して番組の二次市場が形成されシンジケーションと呼ばれているとか、フィンシン法のこととか、そういう、基本の基本みたいなことを西さんの本から教わった。

ぼくがこのブログでメディアはどうでコンテンツがどうのと書けるのは、言ってみれば西正ゼミを卒業したからなんだ。だからあやとりブログのトップページに西正の名前とともにぼくの名前が並んでいるのは光栄と言うかおこがましいというか。

西正さんにはそれぐらい”教えていただいた”という感じ。

『地デジ化の真実』は西正さんが最近出版した本だ。

地デジ後に何がどうなるのか、どうなっていきそうか、などなどを網羅して書いてある。放送局がどう考えていくべきかもサジェスチョンしている。

ものすごーく大ざっぱに乱暴にまとめてしまうと、今後はマルチスクリーンにコンテンツを視聴する世の中になるぜ、それに対応しようぜ、ということだ。

この本で面白いなあと思ったのは、”作れることが大事だから、そこに価値があるからがんばんなさい”と激励している感じなところだ。テレビ局は、放送局は、とくに日本の場合最大の制作プロダクションでもあるのだから、その価値は地デジ後も変わらない。放送以外にスマートデバイスなどアウトプットが増えていっても作ることができればいいんだから、怖れる必要ないよ。そんなことを書いている。

そう言われると、実際に作ってるのは制作会社なのだから、テレビ局は作ることなんかできないじゃないか、と言う人もいる。それはそうだけど、ちょっとちがう。実際に金槌を持って作るのは制作会社かもしれないけど、設計したり、そもそもこの土地に住宅を建てるのか公園にするのかを悩んだりするのも”作る”ということだ。どこからどこまでがテレビ局でどこからが制作会社かはケースによってそうとうちがう。

実際、ホントに何もしないテレビ局の人もいる。けっこういる。これは広告制作でも、代理店のクリエイティブ局にいるけどホントに何もしない人が意外に多いのとおんなじ。そして制作会社に優秀な人がいると一から十まで制作会社がやってしまうことも多い。テレビ番組でも広告制作でもね。

でも優れた仕事は、優れたテレビ局の人と優れた制作会社の人がいて着地する。そして日本の制作会社は非常に”受け身”な体質に陥りがちなのも事実。

話がそれたな。とにかく、西さんの今度の本は”作れる人は作れることに自信持ってね!”というメッセージに満ちている。放送局は”スタジオ機能”を強化すべきだと。

もうひとつ、この本では放送局の経営陣には痛烈にものを言っている。動かなきゃダメだと。今後を見据えて新しいことには積極的にトライしないとダメだと言っている。企業のトップはサラリーマン社長だと自分の任期限りでしか物事を考えないから十年先を見通して策を考えたりしない傾向がある。そんなこっちゃダメよ、と言っているのだ。

そう書くと暑苦しくて説教がましい本みたいだけど、ぜんぜんそんなことなくて、淡々と事実や考察を書き進めている。読みやすい文章でもあるので、わりとすぐ読めちゃうんじゃないかな。このブログを気にしてくれてる人は、読んでもらうといいと思うよ!