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「日本型スマートテレビの未来像」〜スマートテレビ研究会・公開討論会に参加した〜

こないだ書いた通り、19日にスマートテレビ研究会の公開討論会に参加してきた。緊張もしたけど、かなり楽しかったよ。

このスマートテレビ研究会は、慶應大学大学院メディアデザイン研究科・中村伊知哉教授の研究室のプロジェクトとして去年の秋から半年間展開されてきた。10月にも公開討論会があり、ぼくもパネラーとして参加したのだけど、今回は研究会の締めくくりとしての討論会がまた行われたというわけ。前回は三田だったけど、今回は日吉の方。郊外らしい素敵なキャンパスだ。

討論会はニコニコ動画生放送で放送された。アーカイブ化されているので、ニコ動のプレミアム会員ならここで視聴できる。会員じゃないけど観たいって人は、この機に会員になっちゃえばいいんじゃない?

討論会は最初に研究会の活動報告が事務局の新志有裕さんからなされた。

スマートテレビの定義についてはこの図がわかりやすい。まずネット接続されていることが必須で、アプリが活用できたりマルチスクリーンで視聴できたりソーシャルメディアとの連携があったり。こうした要素のいくつかが組み合わさったサービスを楽しめるのがスマートテレビだというわけだ。

こうした研究会の成果は”活動報告書”の形で文書化されているので、興味があればこのリンクから見てほしい。恥ずかしながらぼくのインタビューも掲載されている。

活動報告の一環として、東芝とニワンゴの強力によって試作された、ソーシャル視聴のサービスのデモンストレーションも行われた。

録画された番組をレグザのタブレットで観ながら、ニコ動での書き込みを呼び出して画面にオーバーレイして視聴できるというもので、これがそのまま使えるようになったら楽しいだろうと思った。

討論会は二部構成になっていて、第一部は「新たなサービスの展望」というテーマ。

中村伊知哉教授と先ほどの新志氏がモデレーターで、パネラーとして田村和人氏(フォアキャストコミュニケーションズという日テレ系ネットコンテンツ会社の方)とITジャーナリストの西田宗千佳氏、ニワンゴの鈴木慎之介氏、東芝の”録画神”片岡秀夫氏、そして境塾にもゲストでお招きしたことのある野村総研の山崎秀夫氏が出演された。

ぼくは客席のいちばん前にいたのだけど、ふと気づいたのが、前回との会場の空気の違いだ。10月の討論会の時はややほのぼのした空気で「へえー、スマートテレビねえ、どうなんだろうねえ、面白そうではあるよねえ」という雰囲気だった。つまり、ゆるかった。

ところが今回はぴんと糸が張っているような張りつめた空気が漂っている。「スマートテレビだよ、スマートテレビ!あんたら、これからどうなるか見えてきてんだろ。ちゃんと教えろよな、な!」と、大げさだけどただでは帰らないぞというムードだった。それくらい、この半年でスマートテレビを取り巻く空気が変わったんだろう。本気でビジネスに結びつけようという気配、意気込み。

とは言え、境塾での”仲間”な皆さんもけっこう来ていて、うれしかったけどね。

第一部では、山崎さんがテンションを上げてこられていた。こういう場の空気をつかむのが上手いんだよなあ。ぼくは、第二部を待って隣に座ってらしたNHKの元橋さんと一緒に、「山崎さん、いつもながらパワフルですよねえ」と感心していた。

会場がホットになったまま、第二部に突入。テーマは「ビジネス・制度面の課題」。出演者は日本総研の東博暢氏、第一部に続いて山崎氏、さっき書いたNHKの元橋圭哉氏、総務省の松本和人氏、そしてぼくというメンバー。モデレーター役は新志氏に替わって上杉類氏が務めた。


松本氏は総務省からよく参加していただけたものだと感じた。そして役人的に言葉を濁すこともなく、意見を堂々と語ってくださったので良かったなと思った。

さて第二部もいよいよホットになっていく。温度を上げていくのはやっぱり山崎さん。同じくらい中村教授もぐいぐい力強い発言をしていく。引っ張られる形でぼくも含めて皆さんテンションが高まっていった。

詳しい内容はアーカイブ映像を観てもらうのがいちばんいいと思う。
何しろ第二部はテーマが「ビジネス・制度面の課題」なので、例えば既存の無料放送が後退するのではとか、ソーシャル視聴の際のオーバーレイの問題とか、広告での指標の問題とか、なかなか微妙でキワドイお題が次々に出てくる。どんどん白熱していくに決まってるわね。

ただ全般的に、”意気込み”的なところは皆さん一致していたような気がする。「おれたち変わらなきゃね、変わること楽しまなきゃね」とでも言えばいいかな。そんな気持ちが自然と共有されていた。変わらなきゃね。だから、緊張感があるし、高揚もするし、ホットにもなったのだと思う。既存の考え方とか、手法とか、ビジネス構造とか、変えないわけにはいかないよね、大変そうだね、でも面白そうでもあるね。そんな感じ。

終了後も、あちこちで名刺交換&立ち話が行われた。それはどうも、ビジネス上の社交と言うより、熱い気持ちを共有したくて話し込んじゃってたように見えた。かなり多様な立場の人たちがいたのだけど、思いをひとつにしていた気がする。

スマートテレビの議論はつまり、スマートテレビをネタに、新しいメディアのあり方を模索する議論なんだね。それはまたぼくたちの新しい姿を模索することでもある。ぼくたちの明日が、テレビの向こうに見えてくるということだろうね。

データ放送がスマートテレビを実現する!〜日テレiConでJoiNTVにジョインした〜

3月6日の記事で、日テレの新しいサービスについて書いた。とくに記事の後半に出てくるJoiNTVは画期的だ。テレビ画面上でFacebookと連携できるというのだ。その放送での利用がいよいよ13日深夜のIT情報番組iConで行われた。当然、頑張って寝ずに観たよ。

前の記事でも書いたけど、番組の前にやっておくべきことがある。テレビをネットにつなぎ、テレビ画面上でFacebookに登録することだ。番組がはじまって慌ててやろうとしてもおそらく間に合わないので、これはあらかじめやっておこう。

さてこのJoiNTVは、データ放送を利用してソーシャルテレビを実現する。1月に書いた記事でNHKの「おやすみ日本」を紹介したけど、あの番組でもデータ放送画面上でソーシャルテレビを実現していた。データ放送はBMLという特殊な言語を使うので少しややこしいらしいが、これを利用すればスマートテレビができてしまう。いわゆる1画面方式だ。

JoiNTVを利用した番組の画面はどんなものなのか、興味津々でiConの放送開始を待った。

放送がはじまるといきなりソーシャルテレビ状態になるわけではない。まず、テレビのリモコンについているdボタンを押す。すると、ログインボタンが画面に出てくる。登録してあれば、名前が画面にストレートに登場する。「境治さんとして接続しますか?」と聞かれているわけだ。もちろんOK!ログインボタンを迷わず押そう!

すると、こんな画面になる。右上にはFacebookにいるはずの自分の顔が出てくる。テレビに自分の顔が映るなんて不思議だ。

左下には「いいね!」ボタンとプレゼント企画への応募のボタン。JoiNTV友達一覧というボタンもある。とりあえずこれを押そう!

友達一覧ボタンを押すとこうなる。右部分を見てもらうと、アイコンと名前が並んでいる。ぼくのお友達の中でこの番組にジョインしている、つまりログインボタンを押した人びとのリストだ。ぼくのお友達の中でも、とくに新しいメディアに興味がありそうな方々ばかり。そりゃそうだよね。いちばん下にいるのは、この番組のプロデューサー、安藤さんだ。

この画面は本当に画期的じゃないだろうか。テレビとFacebookを同時に見ながらだと、FB上でおしゃべりしつつ、テレビも見ている。新しい視聴体験だ。Facebookでお友達がコメントをくれ、テレビでは一緒に見ている友人がまた増えていったり。”放送と通信の融合”が文字通り達成されている。


iConはIT関連の最新情報をレポートする番組だが、この回はユニークなサイトや新しいツールなどを紹介していた。この製品面白いなあと思ったら、青ボタンで「いいね!」してみよう。すると手元で見ていたFacebookのウォール上に、iConからその製品に関する情報が届けられる。これまた画期的だね!

情報番組以外でも、ドラマや音楽番組などへの応用を想像すると、テレビが多様に楽しくなりそうだ。

このJoiNTVの実験は、3月のiConで継続して行われるそうだ。当分、火曜日は眠れないなあ。

スマートテレビ研究会の公開討論会、3月19日に開催!

2月の記事で、スマートテレビ研究会が終了することを書いた。去年の秋から始まり、ぼくもオブザーバー的に呼んでいただいて参加してきた研究会。いろんな方からいろんな知見をいただいた。それがいよいよ終了だよと。

という記事を書いたあと、またさらに書かなきゃいけないことがあった気がしてたけど、なんだったっけなー?と思ってたら、そうそう、大事なことを書いてなかった。

3月19日にスマートテレビ研究会の大団円として公開討論会があり、ぼくも参加することになったよ、と。これを言わなきゃならなかったのだった。

もう2月末に慶応大学としてのリリースも出ているので詳しくはこのリンクから見てみてください。公開討論会は2回目で、10月にもやっている。この時も呼んでいただいたので、ぼくも2回目だ。前回は慶応大学の三田キャンパスだったけど、今回は日吉キャンパス。一度行ったのだけど、郊外にあって静かだし東横線の駅からすぐで便利だし、とってもいいところ。こんなところで学べる学生さんはうらやましい。

会場で見たい人はここから申し込んでもらえる。100名が定員だけど、まだ空きがあるのかは知らないよ。月曜日に日吉に行くのは無理だ、って人には、ニコニコ動画で生中継されるのでぜひ視聴してください。

内容としては、もちろんこの半年の活動報告がありつつ、2つのディスカッションが行われる。ひとつ目は「サービスの展望」と題して、そもそもスマートテレビはどんなサービスになっていくのかなという話。二つ目は、「ビジネス・制度面の課題」ということで、スマートテレビの進展にはどんな問題が潜んでいるのかを議論する。ぼくはこの2つ目の方に参加するので、後半だね。

スマートテレビはどうやらいま、非常に注目されているらしい。新たなビジネスの場ということかな?でも一方でこれほど具体像が曖昧なものもないだろう。はっきり言っていま世界中で誰も正確な像をつかめていないと思うよ。

まあ、だからこそ、考えたり議論したりするのが面白いのかもね。

というわけで、皆さん、19日は注目していてくださいねー。

3.11以降のメディア状況を振り返る〜そしてテレビとネットは仲良くなれたか?〜

3.11から一年経った。遅ればせながらこのブログでもこの一年を振り返ってみようと思う。このブログで書いてきたことを軸に、メディアをめぐる出来事を軽くたどってみる。

それにしても本当にすごい一年だった。いやその前に、本当にすごい出来事だった。地震が起こり津波が来て原発事故があった。被災地の復興もまだまだ途上だし、原発事故は何にも解決していない。その上、地震はこのところまた活発になっているようだ。何も終わっていないんだよな。

一年前、ぼくはこんな記事を書いている。「この終末が終わると、ぼくたちは何かをはじめられるのだろうか」というタイトル。地震の3日後、明るい街自由が丘が暗い街に変貌したのを見て異様に感じた。ぼくたちはこの一件を経験することで、大きく感じ方や考え方が変わるだろうという内容。まあだいたいその通りかな。

去年の3月に書いた記事や4月に書いた一連の記事を読むと我ながら面白い。日々ひどく考え込んだり悩んだり思い直したりしている。でも4月後半には震災の余韻的な記事はなくなっている。現金なもんだ。

さて3月4月は日本のメディア環境にとって大きな変化が起こった。ターニングポイントと言ってもいい時期だったと思う。

まず震災後の数日間はテレビ放送が通常とはちがう状態になった。レギュラー番組はすべてなくなり、震災情報をどの局も送り届け続けた。そしてさらに大きな出来事が起こった。広島の中学生がNHKの放送を断りもなくUstream配信した。これを見たNKHの人気ツイッターアカウント @NHK_PR の中の人が独断でOKを出した。さらにすごいのは、それを知ったNHKの立場ある人もそれを追認した。

テレビとネットが力を合わせた瞬間だ。そしてこれに限らずネットでのコミュニケーションが大活躍した。ツイッターがとくにその存在感を浮上させ、テレビにはできない細やかな情報発信をする人がどんどん出てきた。テレビと張り合ったと言うより、テレビと補完関係を築いた、という感じだ。地震の直後一週間ぐらいはそう言う、美しい関係がテレビとネット、と言うよりソーシャルメディアの間にできあがっていた。それまでツイッターを知らなかったり知ってはいたけど怪しいイメージを持っていた人たちが、大事で有益なツールだと認めてくれた。

これが、原発の問題が浮上してからムードが変わってきた。最初は原発事故も”あんまりみんな大騒ぎしない方がいいよ”という論調が強かった。ところがどうも原発関係者や東電や政府の言ってることがおかしいんでない?ということがわかってきた。するとだんだんムードが険悪になってきた。みんなのいうことがささくれだってきて、ツイッターの場も荒れてきた。揚げ足取りや間違い探しや犯人探しになってきた。

テレビで発表されることは信頼できないぞ、いやツイッターではデマばっかりだ。もうそういう、内ゲバ状態になってきた。

一方で、テレビとネットの新たな化学反応みたいなことも起こってきた。典型的なのが、「グレートありがとウサギ」のアニメだろう。テレビではCMが流れず代わりにACの公共広告が流され、その中でも「まほうのち〜か〜ら〜で」という唄で挨拶を促すアニメCMがちょっとテイストが変わってるので話題になった。そのアニメに途中から自作の部分を加えて作った作品がYouTubeでいくつも投稿されたのだ。テレビとネットでボケとツッコミの漫才を演じているような状態だ。いま思い返してもあんな奇妙で刺激的な状況はあの時しか起こりえない特異な現象だったのではないだろうか。

震災後2〜3か月はそんな風に、テレビとネットは不思議な関係をつくりあげた。ただとにかく、いままでよりもネットがソーシャルメディアの力で存在感を増してきて、もはやギークのものではなく、普通の人びとも(使ってないにしても)存在を意識するようになった。ということは、テレビの側もソーシャルメディアを強く意識するようになった。だから、テレビ局がツイッターやFacebookを利用する例が増えた。さらにはYouTubeで予告編を流したりするようになった。ほんの数カ月前、2010年にはテレビ局は(正確に言うとその上層部は)ソーシャルやYouTubeを敵視していたと言うのに!

そんな中、なぜだかわからない現象が起こった。ネット側によるフジテレビへの攻撃。フジテレビが韓流をひいきしすぎる、これは韓国に操られているのだ、というような言いがかり的な批判がネット上で火を吹き、8月にはフジテレビへの抗議デモまで起こった。具体的な行動にまでは至らないのではと予測する人が多かった中で、非常に多くの人が集まった。

「ネットはなぜマスメディアに腹を立てるの?」という記事で、このフジテレビ抗議デモについて書いた。この時は、杉本穂高氏が現地で取材してつぶやいたTweetをぼくがTogetterにまとめたら、一晩で10万人以上のアクセスがあってびっくりした。ちょっと怖かったな、この時は。

そうやって緊張感もありつつ、ぼくの印象としてはこの一年でテレビとネットは距離を縮めたという気がしている。スマートテレビ、そしてソーシャルテレビという言葉が急浮上し、それを具現化するような出来事がどんどん起こっている。

3.11から一年ということで、この3月11日はその記念番組が多かった。メディア状況という意味で面白いなと思ったことがある。午後2時46分。その瞬間を軸に、追悼イベントが行われていた。テレビ各局はその模様を中継する。それまで各局でそれぞれの記念番組をやっていたのが、2時46分の黙とうの瞬間には追悼イベントの会場に切り替わるのだ。黙とうの瞬間は、ツイッター上でも「黙とう」のTweetがずらずらーっと並んだ。

これは震災後のメディア状況を象徴させることだなと思った。いちばん大事な瞬間にはテレビ各局が同じ場面を放送し、ソーシャルメディア上では多くの人がこれに同期する。

結局テレビが中心だね、などと言いたいわけではない。そこには役割分担があるのだ、それがこの一年でできた、と思うのだ。テレビは集約する。それをソーシャルメディアが拡散する。そこにはいい補完関係があるのだとぼくは思う。それをぼくたちは学んで、使いこなすようになってきた。それがこの一年ではないだろうか。

もうちょっと言えることがある気がするのだけど、とりあえず今日はここまで。

好奇心のおもちゃ箱〜干場英男氏出版記念トークセッションのお知らせ〜

1月に「宇宙の中心は勇気だ」という本について書いた。干場英男氏が書いて出版した書籍だ。

干場英男氏、いや、干場さんはぼくより二回りぐらい上の、つまり70歳ぐらいの業界の大先輩だ。電通でクリエイティブセクションにいてCMをつくったり、電通米国の社長を勤められたりした。もっともその頃のことはぼくは知らない。何しろ、二年前に知り合ったばかりだ。

知りあったのは少し前だし、大先輩だし、だからうやうやしく奉らねばならないところなのだが、ぼくと干場さんの関係はそういう感じではない。気分的にはわりと年の近い友人のように接している。そういう、構えなくていいよ、というムードを身体から発している。疑問に思うと少年同様、疑問を相手にぶつけてくる。それも「教えてやるがね」という上から目線は微塵もない。「こういうことじゃなかったっけ?」と、議論のスキを与えてくれながらしゃべってくれる。

だからと言って気を遣っているわけではないようだ。むしろ、空気なんか読むつもりないもんね、と言ってはばからない。ということはつまり、対等な姿勢は考えてのことではなく、自然に振る舞った結果のようだ。

どうやら、干場さんの年齢の一般的な感覚から、干場さんは外れているらしい。そもそも、70を過ぎた人がmixiで日記を書いたりTwitterやFacebookでぐいぐい発言したりするのは、どこかおかしい。ズレている。

つまり干場さんとはそういう人なのだ。

その干場さんとはなぜか、過去にも対談してUst番組に出たりした。デジハリの荻野教授の活動の一環としてそめけん(=ソーシャルメディア研究会)というUst配信番組があり、去年の2月に二人で出演した。この時は、ぼくと干場さんが映画「ソーシャルネットワーク」について交わした議論が面白いということで、ソーシャルメディアと民主主義、というわりと壮大なテーマでお送りした。

なかなか面白かったんじゃないかということで、3月にも性懲りなくまたやった。もう何話したか憶えてないんだけど、かなりハイブローな内容だった気がする。

干場さんはそう言う、知的な議論をするのが好きなのだと思う。1月のブログにも書いたけど、干場さんの頭の中はのぞくと物理的な体積を超える容量になっていて、まるで宇宙のようにどこまでも広がっているのだろう。その中を泳ぐと、60年安保から今に至るまでの日本の文化状況が見えてくるのだ。

あれから一年、干場さんとまたトークイベントをやることになった。今回は書籍「宇宙の中心は勇気だ」出版記念が趣旨。水道橋のネコワーキングスペースで、3月17日15時からの開催だ。土曜日、やることもないね、って人はよかったらどうぞ。

お申し込みは、このリンクからATNDに飛んでください。まだ少し、ゆとりがあるようです。

けっこう多様な人たちが来るので、出会いの場としてもいいと思うよ。

今回もUst配信もやるので行けないけどって方も、このリンクからそのチャンネルに飛べるので、どうぞご覧ください。

面白いかどうかは、ぼくは知らないけどね・・・

大急ぎで大ざっぱに、ソーシャルテレビ実験番組「MAKE TV」視聴レポート

この6日の深夜、12時55分から、TBSで「MAKE TV」という番組が放送された。

なに、それ?という方は、このリンクの記事をざっと読んでください。ソニー提供で、双方向テレビの実験を地上波でやっちゃおうという意欲的で野望あふれる企画だ。こちらも、やる気満々でこの数日間楽しみに待っていた。それがいよいよやってきた!

できれば”DOT SWITCH”というandroidアプリをスマートフォンで用意しておこう、というので、娘の愛機Galaxyを懇願して借りた。テレビの前にiPadもMacBookも準備して、さあもういつでもかかってこい!という意気込みで深夜を迎えた。

TBSアナウンサー田中みな実と、いとうせいこう氏が司会で、ロッチがにぎやかしで出演。そして海外からKARMINという男女デュオが来ていた。彼らのミュージックビデオをみんなでつくるのが番組の趣旨。

大きな倉庫を借りたというスタジオに巨大なセットが組まれている。ひとつひとつに仕掛けがしてある。スイッチが入ると、ピタゴラスイッチ的な仕掛けが動き出し、何かが起こる。

そのスイッチをテレビを見ているみんなで押すのがポイント。もちろん”スイッチ”とはさっきダウンロードした”DOT SWITCH”アプリのことだ。画面の中に白い”丸”があるだけの、シンプルなアプリ。この丸い部分を押すことで”スイッチ”を押したことになるわけだ。

またWEBサイトもできていて、番組と同じ映像が流れる。”DOT SWITCH”はWEBアプリとしても用意されているので、PC上で”テレビ×アプリ”を体感できる。

いよいよKARMINたちが唄いはじめ、スタジオ中を踊り歩く。途中途中の”仕掛け”の前で、画面に”PUSH”の文字が出てくるので、”DOT SWITCH”を押す。たくさんの人が押して一定人数に達すると、仕掛けが作動して”CLEAR”となる。これを曲の最後まで繰り返していくのだ。
PC画面はこんな感じ。右上が”DOT SWITCH”

かなり慌ただしい。次々に”PUSH”の文字が画面に出てくるので、言われた通り”DOT SWITCH”を押す。見る見るうちに人数が増えて仕掛けが作動する。何がどうなったのかな?それを確かめる間もなく次のステージへ。”PUSH”と言われるのでまた押す!
各端末を総動員して4画面方式?
最初は気分が盛り上がった。ゲームをテレビ放送と一緒に楽しんでいるような。テレビ画面がある。PCで同じ映像が流れる。でもそこには若干時間差がある。指示が出たらアプリを押す。そんなことを次々に。2画面方式でさえなく、テレビ、PC、androidにTwitterを追うiPadも合わせると4画面だ。

テレビ放送とWEB上の画面には微妙に時間差が生じて、それも面白い

どどどどどーっと曲が進み、演奏終了。”PUSH”の指示もなくなって”THANK YOU”の文字が出た。

うーん、慌ただしかったなー。あっという間だったし。なんて余韻に浸っているうちに、番組は終わってしまった。あれー、早いねえ・・・

こうしてでき上がった映像が、KARMINの曲のミュージックビデオとして観られるらしい。そこが期待ポイントなのかな?・・・ただ、正直言って視聴者側としての”参加してる感じ”はあんまりなかったかなー。

結局いちばん盛り上がったのはそのあと、ソーシャル上でこの番組についてお友達とやりとりしたこと。けっこう皆さん観ていたんだよね。

などなど、感想とか、思うところはいっぱいあるけど、とりあえずのレポートとしてこの記事をあげておこうね・・・

テレビ局がホンキになってきた!〜日テレ新サービス続々!〜

先週も、ソーシャルテレビ用アプリが次々に登場していることを書いたけど、この月曜日はまたテレビの新しいサービスのニュースが入ってきた。中でも、日テレが2つの発表をしていて、注目だ。テレビ局がいよいよ新サービスにホンキになってきたのかな?日テレが半馬身抜きんでた形だ。

まず、日テレオンデマンドのニュース。記事によると”3月5日から同サービスのパソコンサイト、スマートフォンサイトで直接視聴が可能になった”とある。ぼくはこれまで日テレオンデマンドにアクセスしたことはなかったのだけど、この書き方からすると既存の日テレオンデマンドは他社のVODサービスにのっかる形しかなかったということかな?

VODをテレビ局がどう展開するかには2つ考え方がある。自社で配信を直接行うか、他社のサービスにのっかるか。自社で配信する場合は流し方や編成を直接コントロールできるし収益を丸々手に入れられるのがメリットだが、自社で配信環境を整えるのは手がかかりコストもかかるのが難点だ。

フジテレビはこの考え方で、他社での配信もしつつ自社でちゃんとサーバーを持って運営している。一方TBSは自社配信は行わず他社へののっかり型。この方がコストをかけずに済むが番組の流し方はそれぞれのサービスに任せるしかない。

というのが前提で、日テレはTBSと同じのっかり型だった、ということなのかな?それが自社で直接配信するようになった、ということなのだと思う。(ちがったら誰かご指摘ください)

さて自社か他社かもありつつ、スマートフォンでも視聴できるようになったのは大きい。

日本の映像コンテンツをスマートフォンで視聴できるサービスはまだ少ない。とくにiPadではほとんどないも同然。そんな中でhuluの便利さは際立っていた。PCで視聴した続きをiPadでも観られる。PS3があればリビングの大画面テレビでも視聴可能。複数のデバイスでシームレスに視聴できるのは素晴らしい。

その上、続々日本のコンテンツも登場していた。ただ、テレビ番組はまだ。

だから、iPadで気軽に視聴できる日本のテレビ番組のVODという意味では希有な存在。

iPad上の日テレオンデマンドの画面
さっそくPCで登録し、iPadでサイトを開いてみた。登録した上で、毎月何ポイント購入するかを決めなければならない。500ポイント/月でとりあえず登録してみた。試しにmoco’sキッチンを観てみる。速水もこみちが料理を披露する、いまちょっとした話題の番組で、朝の番組ZIP内のコーナー。再生してみたが問題なく快適に視聴できる。ぼくは料理好きなのだけど、iPadでこういう番組が視聴できると、料理しながら「ここはどう切るんだっけ?」と確認できそうで便利だろうなあ。

さて、あとは何を見る?・・・と思うと、あれ?うーん、観たいものがない、自分が何を観たいかわからない。最近のドラマやアニメは観たいものは観ているわけで、見逃した回がないと観るものがない。「星の金貨」とか「家なき子」とか、懐かしいドラマがいくつかあるにはあったけど、ぼくには興味ないものだ。昔のドラマで観たいのあるんだけどなあ、入れてくれないものかなあ。

さて日テレがこれとは別に大胆な発表をした。”JoiNTV”という名称の新サービスで、番組を見ながらFacebookと連動したことが楽しめる、ということだそうだ。なんと画期的な!

けっこうニュースになっていたので読んだ人も多いだろう。この記事なんか詳しく書いてある。“テレビ画面にFacebookの“友達”リストを表示して一緒に番組を視聴し、気に入ったシーンではリモコン操作で「いいね!」を残せるという”とある。そんなことできるなんて、面白そうだぞ!

3月13日の夜中のiConから連動した放送が始まるという。そして事前登録は6日の夜からとある。ただし、テレビをネットにつないでないといけない。

いま日テレを見ている時にデータボタンを押すと上のような画面が出てくる。”JoiNTV”というボタンが下の方にあるのがわかる?
その部分だけをクローズアップしたのがこの写真。これならはっきりわかるでしょ?

さあ、6日の夜にさっそく登録だ!と意気込んだのはいいけど、しまった、テレビをネットにつながなきゃ。

で、つないだのだけど、ちょっと大騒ぎだった。我が家のネット環境は、光経由でLANができていて、AirMacで無線LANも飛ばしている。うちのAQUOSはもう5年も前に買ったやつだけどLANはつながる。しかし有線LANはすでにAppleTVとPlayStation3に接続してある。まだジャックに空きはあるのか?テレビの裏をひっくり返して確かめ、ハブに空きもあったのでつながった。こう書くと簡単みたいだけど、実際には30分くらいテレビ台やこんがらがったケーブル群と格闘した末だ。

こういうこと、家庭でやるの、大変なんじゃない?テレビをネットにつなぐって、家電販売業界で一大運動起こして頑張らないとハードルが高すぎてやる家は限られてしまうんじゃないだろうか。

「テレビをネットにつなぐ」ことにはそういう問題がある。そのことは別でそのうち書こうかな。

とにかく、テレビ局が新たなサービスにホンキになってきた。こりゃいよいよますます、面白くなりそうだぞ!

第3回Bar境塾「ソーシャルと視聴率」かんたんレポート

前に告知した通り、3月1日の夜、第3回Bar境塾を開催した。境塾と題した勉強会を、デジタルハリウッド大学をお借りして数回催してきた。それに比べるとカジュアルな集いのつもりではじめたBar境塾。その名の通り、渋谷のVOYAGE GROUPのバースペースAJITOをお借りして、みんなで飲みながらやっている。

だけどだんだん、ソーシャルテレビに集約されていき、こっちの方がテーマがはっきりしてきちゃった。こっちがメインみたいになってきたぞ。ま、いいや、成り行きだ。

あ、でもデジハリでやる方も続けていくのでそっちも楽しみにね。

さて第3回は「ソーシャルと視聴率」をテーマに開催した。告知時に書いた通り、”tuneTV”と”みるぞう”の2つのソーシャルテレビ用アプリからのデータと視聴率データを照らし合わせて、果たして何か見えてくるのかな、という企画。いままでよりさらに”研究発表”的だった。準備も大変・・・と言ってもぼく自身は大したことできないわけだけど、みるぞうtuneTVそれぞれのスタッフの皆さんが集計したりグラフつくったり、大変だったと思うんだよね。おつかれさんでした。

当日の様子はUstream配信し、アーカイブ化してあるので、このリンクをクリックすればひと通り見てもらえる。これ、ほんとねえ、すごく貴重な発表になっていると思うなあ。あくまでぼく以外の皆さんの発表が、だけど。

大事なポイントだけ、ここでいくつか書いておこう。

最初にビデオリサーチの深田さんが「ソーシャルテレビの前提」として頭に入れておくといいことをあげてくれた。これ、けっこう大事なことがいっぱい入っていて、例えば視聴率の区分(F!とかM3とかいう例のやつ)を年齢別人口分布を重ねてみると、いかにM3とF3の比重が高まっているかがわかる。選挙と同じで、高年齢層ほど視聴率に反映されるようになってしまっている。おじさんおばさんが多く見れば、若者があまり見なくても高視聴率になりやすいわけだ。一方ソーシャルメディアは若い人が中心。ということは、そこにズレが生じやすいね。

で、実際、視聴率とソーシャル(=ほぼTwitter)の相関性は、若い世代だけの視聴率の方が相関性が高まる、とデータから読み取れた。M3F3中心に視聴されている番組は、やはりTwitterもあまり盛り上がってないのだ。

逆に、視聴率がいまいちでもTwitterで盛り上がる番組はあり、そういう場合は若い世代が視聴の中心であることが多いのだ。

そこには、何らかの可能性がある。視聴率には現れなくても、若くて熱心な視聴者が明らかにいます!それは価値があると言えるんじゃないだろうか。

視聴率に比べてTwitterで盛り上がる番組はアニメもしくはアイドル番組が多い。これはまあ当然といえば当然だろう。ただ、なぜかテレビ朝日のドラマ「相棒」もTwitterが盛り上がっていた。

ぼくは前もってデータを見ていたのだけど、これがいちばん不思議だった。「相棒」は視聴率が安定して高いのだけど、視聴者の年齢層は高い。なのにどうしてTwitterで盛り上がるんだ?

そうしたら、質疑応答の時にその謎が判明した。テレビ朝日の方が参加していて(古くからの友人なのだけど)、説明してくれたのだ。「相棒」のプロデューサーはシステム部門からドラマ班に移った方で、ネットには強い。だからブログやTwitterに早くから取り組み、ファンを大事にしてきたのだそうだ。なるほど!

これはかなりビックリすることだと思う。プロデューサーがファンを育ててきたのだ。その成果がデータに出始めている。この時点で視聴率をどこまで押し上げているかはわからないが、Twitterで明らかに突出した盛り上りが出ていることは、そのうち視聴率にも反映されるんじゃないか。

もちろんコンテンツの質が高いからだけど、テレビ番組はファンを育てることが可能なのだと言える現象だとぼくは思った。

そんな話になるのも、Bar境塾の面白さだなあと思った。IT関係の方と、テレビ関係の方と、一堂に集うからこそ見えてくるものや化学反応があるのだと言える。

実際、ほんとうに多様な方々が来てくれていて、その点も面白かった。つい先日知りあった「タイガー&バニー」に広告会社として関わっているADKの方々もいらしてくれた。このユニークなアニメーション番組については近々きちんと書こうと思う。

さて、ソーシャルと視聴率にはある程度の相関性があることは今回よくわかった。でも、その先がまだまだあるのだ。いちばん取り組むべきは、データマイニングだろう。番組と、その番組に対するTweetの”量”を見ることは第一歩だが、その次には”その番組に対して何をつぶやいているか”が必要になる。これについても、あるチームで取り組み中なので、そのうち書くことになるだろう。

それから、このBar境塾の場で、ある発表も行った。

ソーシャルテレビ推進会議の設立宣言だ。

これは今年元旦付けのこのブログで書いたことをいよいよ宣言したということだ。えらいなあ、有言実行だぞ、おれ。いや、でもまだ宣言しただけか。

このソーシャルテレビ推進会議についてもまた別途書くのでちょっと待っててね。

ということで、どんどんソーシャルテレビに集約されつつあるBar境塾。次回はあまり間をおかずにやろうと思う。もうテーマは決めてあるので、近いうちにまたここで発表するから、見逃さないでね。

TVアプス花盛り!〜ソーシャルテレビ用アプリ続々登場〜

去年の夏、ソーシャルテレビ用のアプリが続々登場し、それを10月のBar境塾で紹介した。tuneTVとテレBingの開発者の方に、その誕生の秘密をいろいろと語っていただいたのだ。

TVアプスはその後も次々に登場し、ニフティのみるぞうや頓智ドットのコレミタなど多様な広がりを見せていった。

さてこの29日はサッカー日本代表の試合となでしこジャパンの試合が一挙にテレビ放送された。こりゃTVアプリで楽しみたいところだねと思っていたら、またもや新しいものが次々に出てきていた。それぞれちがった楽しみ方ができる。今日はそれらをひと通り紹介しようと思う。


まずはおなじみtuneTV。いまやTVアプリの草分け、代表選手だ。特徴はこのチャンネルごとのバー。Tweetの盛り上りを視覚的に示している。tuneTVがバー形式なのに対し、ニフティの”みるぞう”は色合いで表示してくれる。tuneTV とみるぞうは、Tweetの盛り上り度合がひと目でわかるのが共通の特徴。


さてそこに登場したのが”テレコ!”だ。これはなんと、地上波だけでなくBSやCSつまり衛星放送の番組も選べる。番組を選んでチェックインならぬウォッチインする。そうするとウォッチインした者同士で番組について語りあえるというわけだ。

どうして衛星放送のチャンネルを対象としているかというと、このサービスはスカパーがやっているから。なるほどね。このアプリで地上波の番組についてつぶやいているうちに、BSやCSにも興味が湧くかもしれない。実際ぼくは、これを使っていてMXTVの番組見ちゃったもんね。


変わり種なのがチャノマTVだ。Facebookでログインするのだけど、番組ごとに”部屋”をつくる感じ。その部屋はお茶の間のイメージなのだ。なるほどね。見知らぬ人たちとお茶の間で出会って、同じ番組を見ながら語り合おうと。見知らぬ人がいやなら、自分だけの部屋を作り、Facebookのお友達に呼びかけることもできる。

テレコ!とチャノマTVは、限られた人数で特定の番組について語り合うのが特徴。使い方によっては面白いかもしれない。Twitterをオープンに使って番組を共有するのは、人数があまりにも多くなってあまり”やりとり”にならない。それぞれが勝手に喋るのを眺めることになる。それとは別に、人数を絞ってじっくり語り合うのもいいかもしれない。


さて、日本代表の試合の放送時限定でいうと、“サッカー日本代表STADIUM”というアプリがある。アディダス提供のブランデッドアプリとして、サッカーの試合に絞ったユニークな機能がいっぱいだ。

上の写真でわかる通り、基本画面はサッカースタジアムの客席のイメージだ。みんなでスタジアムにいる気分が満喫できる。


例えば”シャウト”機能。ボタンを押すと上の画面が出てくる。その中でシャウトしたい言葉を選ぶと連打画面が出てくるので3秒間頑張って連打する。

するとスタジアム画面に戻って、自分がシャウトしたことがわかる。

これとは別に風船を飛ばす機能もあってこれがまた楽しい!

ソーシャルテレビにとってアプリは重要だ。いろんな用途に合わせてもっと多様なものが考えられるのだと思う。あるいは、番組ごとにあってもいいかも。

とは言え、いま難しいのはマネタイズが見えてないこと。変に期待してつくってしまうと、開発費がリクープできない。しばらくはユーザー獲得期間と割り切って、いい意味で遊び半分ではじめるべきだろう。あるいは日本代表STADIUMのようにスポンサードアプリとしてがいいのかも。

まあとにかく、これからもどんどん新しいアプリが出てくるだろう。いまはそうやって種類が増えることでソーシャルテレビが活性化し楽しみ方が多様に広がることが大事だと思う。遊び半分でみなさん、どんどんつくっていこうね!

長いものが読めなくなってきた〜コンテンツ消費の夕暮れ〜

今日は知人の誘いで情報通信学会主催の「第30回情報通信ビジネス懇談会」という勉強会に行ってきた。NHK出版の編集者、松島倫明さんという方の発表だったのだけど、松島さんは『フリー』『シェア』『パブリック』を編集した方だ。テーマは、読書の未来、ってこと。

かなり刺激的で、書籍だけでなくコンテンツ全般に通じる話だったと思う。本を著作するとか、それを所有するとかの概念が急激に変化しつつあるという話。

本棚の悦楽、ってあるよね。自分が読んできた本がずらーっと並んでいて、それを見ているだけで自分の人生と知性が一覧できている、というような。でも松島氏が紹介している概念は、そういう読書家のこれまでの悦楽を台無しにするようなことだ。出版する際、フリーミアムでは第一巻だけ無料にする、とか、本をひとりで所有せずに”シェア”してもいいかも、とか、読書体験を共有するためにソーシャルリーディングというやり方ができている、とか。旧来の教養人ががっかりするようなことばかりだ。

でも確かに、ぼく自身にとってもコンテンツとの接し方が変わってきている。

もう本を棚に並べて悦に入ったりしなくなった。それどころか、どんどん売り払っている。入りきらないというのもある。でも、本を棚に並べることを楽しいと感じなくなったのだ。邪魔で邪魔で仕方ないと思う。そして、このごろは、やたらと買うのは控えている。

読まないんだ。”積ん読”状態なんだけど、前はそれはそれで楽しんでいたのに、このごろは「えーい、なんでおれは読まないのに買っちゃったんだよ」と苛つくようになった。余計なものを持っているのが不快になってきたのだ。

朝、通勤電車の中でTwitterやFacebookで情報収集する。面白そうな記事やブログをチェックして、会社に着いたら読む。読む。読む。読んでも読んでも興味深い記事、読むべきだぞなブログがどんどん出てくる。読む。読む。・・・でも、ものすごいスピードで流し読みだ。ちゃんとすべての文字に目を通してなんかない。だいたいね、だいたいわかった。はい、次!そんな勢いだ。

長い記事がどうも最近、ちゃんと読めなくなってる気がする。

土日は映画を見るのが長年の習慣だった。土曜の夜に、DVDなどを観る。日曜日に子供を誘って映画館で観る。

こないだの土曜日、AppleTVを起ち上げて、どれを見ようか、だらだらチェックして回った。これ、観たいかな。これ、こないだ観ようと思ったやつ、今晩観ようかな。うんうん、VODってホントに素晴らしい!観たい時、いつでも観ることできるね。

でも、”これ!”という気分になれない。そこがいつも難しい。映画大好きだから、観たらまず観たことに満足する。だからホントはどれ観てもいいんだ。でもやっぱり”これ!”という気分になって観たい。AppleTVにはユーザーのコメントがついている。それを参考にしようとするのだけど、4つのコメントのうち2つがけなしてると、観てはいかんのではないかと思ってしまう。そうすると、”これ!”になかなかならない。

いろいろ観ていると『SF巨大生物の島』というのがあった。これは!ずいぶん古い映画で、小学校時代にテレビで観た記憶がある。もう40年近く昔だ。

レリーハウゼンという特撮の大家がいて、コマ撮りでいろんな怪物を動かして見せた。そんな作品のひとつで、無人島にたどり着いた一行が、巨大なカニや怪鳥、どでかい蜂に襲われる。ヴェルヌの原作で、『海底二万マイル』のネモ船長も出てくる。その登場シーンでは奇妙な潜水服を着ていて、子供の頃ものすごくインパクトを受けた。

そんな強烈な記憶の映画なので”これ!”となった。観はじめるのだけど、その時点で夜中になっている。選ぶのに30分以上かけてしまったからだ。そこで、早送りをガンガンかけて、自分が覚えているシーンを選んで観て行く。なるほど、記憶ではこうだったけど、ちがったんだな。そんなことを確かめるためだけに映画を観ている。

あっという間に終わってしまった。

意外にまだ時間があるなと、今度はPlayStation3を起動し、huluを起ち上げる。そして、一話ずつ観ている往年のテレビシリーズの「スパイ大作戦』を観はじめた。若い人は知らないだろうけど、『ミッション・インポシブル』はこれの映画化で、もうとにかく面白いんだ。

・・・あれ?なんだろう、この生活?子供の頃の映画やドラマを観て、何やってんの?映画大好きじゃなかったっけ?

コンテンツを消費する。そういう生活文化が、大きく変わろうとしているんじゃないか。

松島氏の話にあったように、本は所有しないのかもしれない。本棚は”読書メーター”でバーチャルで済むのかもしれない。そのうち”本”というまとまりもどうでもよくなるのかもしれない。ぼくが『SF巨大生物の島』を早送りで観たり、通勤電車でブログや記事を斜め読みにするように、読書だの音楽鑑賞だのが、もっと慌ただしくドタバタしたものになるのかもしれない。

映像でつづる物語(=映画)が”2時間前後”というフレームを持つのは、映画館での映画鑑賞が、デートだの家族での買い物だのとセットで楽しむのに適していたからであって、自宅で夜中に視聴するにはもっと短い方がいいのだ、きっと。そのうち、通勤電車の中でぱぱっと映画を観るのでと、5分が基準になったりするのかも。

そうやってコンテンツは断片化しようとしているのだろう。そうするとぼくたちの思考までバラバラになってしまうのか?300ページにまとまるような思考はもうできないし、そんな思考は邪魔でしかないのかもしれない。300ページを読み終わる間にムーアの法則でデジタル機器はまた様変わりするのだろうから。

それでいいのか、悪いのかはわからない。でもそういう傾向はいま、進行しているのだと思うなあ。少なくとも、ぼくにはね・・・

テレビジンに遭遇したぞ!〜ソーシャルテレビの先駆者〜

テレビジンに会っちゃった!

と書くと、テレビジンって宇宙ジンとかフランスジンとか、そんなたぐいのことなの?って人もいるだろうけど。

正確に言えばテレビジンの開発運営者、福田一行さんに会ったのだった。

テレビジンはある意味、日本のソーシャルテレビの先駆者だ。テレビ番組についてネット上で語られていることを集約して見せてくれる。

なんて説明するのももどかしいので、ここをクリックしてみてみよう。見てみるだけじゃなくて、しばらく眺め続けたり、いじってみたりしよう。ふえええー!と感心するだろう。

と、えらそうなこと言ってるけど、ぼくも最近まで知らなかった。このところソーシャルテレビだぜいとほざいていたわりには、情報収集不足だ。

テレビジンを知ったのは、「テレビとネットの近未来カンファレンス 第16回 2012年大予測 全録 vs iTV:リビングルームの勝者は誰か? 」というイベントがあり、仕事で行けなかったのだけど、そのあとでブログでレポートを読んだからだ。このブログ記事自体がよくできていて、イベントの様子を詳細に書き込んであるので行かなかったのに行った気にさせてもらえた。その中でテレビジンと、それを開発した福田さんが登場していた。

記事を読み、テレビジンをサイトでいじってみて、その完成度の高さに驚いた。なんで知らなかったんだ、おれ!

この人、会ってみたいなあと思っていたら、3月1日のBar境塾に参加を申し込んでくれていた。おお、じゃあお会いできるな!と思っていたら、「仕事で行けないかもしれないなあ」とつぶやいていたので思わず、「福田さんお会いしましょうよ!」と話しかけた、というわけ。

渋谷で夕方待ち合わせして、飲み物だけで2時間ぐらいこってり話したかなあ。初対面同士でいきなりこってり話せるって、よほど相通じるものがあるんだろうね。

テレビジンはなんと、2008年10月に起ち上げたサイトだそうだ。うひゃー!ぼくなんか、Twitterをはじめる一年前だよ。まだソーシャルのソの字も体験できてなかった頃。

その前に、「話題のjp」というブログの話題ランキングサイトをつくった。ブログを、ネット上で話題になっている度合いでランクづけするのだ。その時、ネット上での話題の中でいかにテレビが大きな存在かがよくわかった。だったら今度は、テレビ番組を話題になってる順でランクづけしてみよう。それが形になったのがテレビジンだ。

テレビジンの詳細についてはご自身で作成したスライドショーがブログに置いてあるので、それを見るとよくわかるだろう。

さて福田さんは実は某大メーカーの社員だった。でも、大企業に頼り切っていてはまずいのではないかという問題意識があり、プログラミングができるので個人的にサイト開発をやってみた。それが話題のjpでありテレビジンなのだという。その個人的な活動が”実績”となり、アルファブロガー徳力さんが率いるアジャイルメディアに入社した。しかも、CTOの肩書きだ。チーフ・テクノロジー・オフィサー?

福田さんは今年30歳、ってことはぼくよりちょうど20歳若い。なのにCTOだよ。やるなあ!もちろん、実力を認めてその立場にしたアジャイルさんもたいしたもんだ。

そしてテレビジンは、アジャイルメディアの仕事ではない、つまりやはり”個人的な活動”なのだそうだ。会社の仕事にしてしまうと、収益目標だなんだになってしまう。テレビジンはもっと育てていきたいのだそうだ。だから、ひとりで全部やっている。

ひとりで?うっひゃー!

福田さんにお会いしたのはテレビジンの話を聞きたかったからなんだけど、話をしているうちに彼の生き方、世の中を歩いていく姿勢に惹かれていった。自分の二本の足でしっかり立って生きていかなきゃ。そんな力強さ、したたかさを感じた。

ふと思い出したのだけど、ぼくは二年前に「高度成長の焼け跡に、ぼくらはiPhoneを手に立っている」という記事をこのブログで書いた。日本はまた戦後の焼け跡みたいになっちゃったけど、そこで自律的に立って進んでいかなきゃね、iPhoneみたいなガジェットを武器にね、というような内容だった。

また、その前の記事の中ではこう書いている。「ぼくたちはもはや、会社員である前に、個人なのだ。」

会社員である前に、個人でいなければならない。これは、福田さんが個人的活動としてテレビジンを運営していることと、少し似ているのだと思う。

このところ、ソーシャル上で”ノマド論議”が変に盛り上がっているけど、ノマドに精神性があるとしたら、それは会社員であるかどうかはさほど関係ないのだと思う。会社員であるかどうかの前に、”おれ”がいる。そこが大事なんだ。

ぼくは30歳をすぎてすぐフリーランスのコピーライターになった。いまは紆余曲折の末、会社員だし、コピーライターでもない。でも大事なのは、フリーランスであるかどうかではないし、コピーライターかどうかでもない。大事なのはぼくがここで、ひとりの個人としてブログを書き、それを読んでいるあなたがいる、ということだと思う。

話がそれちゃったね。福田さんとの話は”日本人の受動性向について”みたいな、ソーシャルとテレビはどこ行ったんだ、というところまで広がった。まあしかしそれは置いといて、福田さんは近々、何らかの形で境塾に出演してもらおうと思っている。

それに前々からもやもやと言っている、ソーシャルテレビについての集まりというか集団にも引きずり込んじゃおう。

さっき紹介した福田さんのスライドには、テレビジンの開発理由としていくつかある中に、「視聴率以外の指標を作りたい」とあった。そこ!重要だと思う。視聴率だけが指標である状態は、あまり発展性がなくなってきている。世帯視聴率全体がじわじわ下がっているのだから。でもそこに別の指標が加わることで、新しい道筋が見えるかもしれない。ソーシャルテレビはその意味でも重要なことだと思う。

そんな野望に向けて、また少し、輪が広がった。次にお会いするのは、どんな方なのかな?

iPadとスマートテレビとで頭の中がごっちゃごちゃ

Facebookをだらだら眺めていると、いろんなお友達がいろんな投稿をしているので、思わぬ情報に巡り合えたりする。夕べも、こんなニュースをお友達を通じて知ったよ。

“アドビ、「Adobe Digital Publishing Suite, Single Edition」を日本で提供”

これを読んで、ぼくは思わず「おー、待ってたよー。」とシェアした。

2010年にiPadが日本でも登場してからの数か月。ブログ・クリエイティブビジネス論はiPad一色だった。最初の頃に書いた「電子雑誌はPDFじゃダメなんだよ!」はとくに熱が入っていて、アメリカのiPad用雑誌アプリがインタラクティブな仕掛け満載でクリエイティブなのに対し、さっそく出てきた日本の雑誌アプリが紙面をそのままPDF化したものばかりだったのに憤っていたのだ。フンガー!と憤慨して書いている。不思議とこの記事は2年近く経ったいまも一日三十人くらい読んでくれている。もうずいぶん古くて状況もかなり変わっているから恥ずかしいけどね。

とにかくぼくはこの頃、iPadで何が出来るかに夢中だった。iOSがどうしたでC言語がどうのとか、結局よくわかってないんだけど、そんな知識も仕入れたり。そして、コンテンツをiPadに配信できる形にどうしたらできるのかもいろいろ調べた。思い返すと、いろんな人にお会いしたよなー。そういう、興味が湧いたら猪突猛進なのはいまも変わっとらんね。

いくつかのやり方にたどり着いたのだけど、そのうちの大きなひとつが、AdobeInDesignだった。WIREDのiPad版がすごくカッコいいのだけど、これはAdobeが協力してオリジナルのプラグインを開発したからできたらしいと知った。日本のAdobeの方にもお会いして、いずれ製品として出る予定だという情報を得た。

情報通り、翌春(だったかな?)には製品として出たのだけど、高かった。当時ぼくはロボットにいたのだけど、中小企業が”試しに”買う金額ではなかった。

それが、3万円弱で出たというのだから、小さなデザイン会社でも試しに買えるレベルではないかな。

あと、iBook AuthorなんてのもApple自身が無料で出しているので、もっと気楽に電子雑誌が試せる状況だ。これだったらぼくでも使えそうだよ。

さてそれで思い出したのだけど、ぼくはiPadとインタラクティブな雑誌アプリに興奮しながら、同じことがテレビでも起こるんじゃないかと想像していた。その頃書いた記事に「放送はテレビの一部になる」というのがあって、山崎秀夫さんの”コネクトテレビ”に関するブログにもふれながら書いている。

“言ってみれば、テレビモニター上でも、コンテンツがアプリ化するのだ。”
なんてことを書いていて、これはいまの言い方だとスマートテレビだ。

iPadでインタラクティブな雑誌アプリに興奮し、同じようなアプリがテレビに乗る。そんなことをイメージしていたのを思い出したのだ。

このところ、そこは忘れていたなあ。思い出してみると、あらためてスマートテレビの面白さと可能性に気づいた。放送とVODと、あとはお天気アプリね、ぐらいしかイメージできてなかったのだけど、iPadのWIREDやPROJECTのような雑誌アプリのようなものがテレビ上でも見ることができれば、かなり面白そうだ。もちろんそこでは、スマートフォンやタブレットとの連携で、できることの幅は広がるだろう。

テレビと、手元のタブレットとの間で、映画のようなゲームのような雑誌のような、これまでになかった視聴体験をもたらすコンテンツはできるはずだ。

とかなんとか考えていると頭の中がごちゃごちゃになってきたじゃないか。スマートテレビについて整理するつもりが、どんどんとっちらかってきたぞ!どうするんだよ、おれ!