Netflixとフジテレビの共同制作の先には、テレビの”もうひとつのベクトル”が見えてくる

IMG_5878NetflixについてはこのブログやAdverTimesなどで何度か書いてきた。

●今年秋、上陸決定!Netflixは黒船なのか?VODの進路が日本のテレビの将来を左右するかもしれない

●VODにとってテレビが大事だ、ということはどこから市場を奪うか?〜AdverTimesの記事への追記その1〜

●映像業界の「 r > g 」をVODがくつがえすかもしれない〜AdverTimesの記事への追記その2〜

なぜだか知らないが、Netflixについて書くと、テレビ界の一部(あくまで一部)の人たちが妙に感情的な反応を示す。急激に契約者数を増やしているNetflixの日本上陸は脅威に感じるのだろう。だが心配しなくても、日本でも契約者数をどんどん増やせるかというと、そう単純な話ではないだろう。

ただいずれにせよ、いろんな側面で面白い存在だ。ぼくはツテをたどって接触し、新たに開設したオフィスに行ってみたりした。そして日本代表にじっくり話を聞くインタビューを申し込んだのだが、なかなか時間がとれそうにない。ぼくのブログは読んでくれていて、好意的になんとかしようとはしてくれるのだが、何しろ日本の体制を整えている最中なのでスケジュールがとれない様子。

そこへ『新・週刊フジテレビ批評』のスタッフから連絡があった。土曜朝5時という微妙な放送時間だが、地上波テレビで唯一「テレビを中心にしたメディア論」を扱う奇特な番組だ。ぼくは2011年に『テレビは生き残れるのか』を出版した時にゲストで読んでもらい、以来時々コメント取材を受けたりしてきた。しばらくぶりの連絡はなんと、「Netflixの日本代表へのインタビュアーをやってくれないか」との依頼だった。

なんでも、フジテレビとNetflixの共同会見があるので、その合間を縫って日本代表グレッグ・ピーターズの時間をもらえたのだそうだ。もちろんぼくは即座に引き受けた。なかなか実現できなかったインタビューが願ってもない形でできるのだから、結果的にはなんて幸運だろうと思った。

その模様は、6月20日午前5時に放送で見てほしい。残念ながら関東圏だけの放送だが、西山喜久恵さん、渡辺和洋さん、両アナウンサーの助けを借りてインタビューするぼくの高揚した姿が見られるはずだ。

さて、その話はまた放送後に書こうと思うが、共同会見にもふれておきたい。いや、もう6月17日当日にニュースが飛び交ったのでご存知だろう、フジテレビがNetflixで配信される2つの番組を制作すると発表されたのだ。

ひとつは『アンダーウェア』という新作ドラマ。そしてもうひとつは『テラスハウス』だ。

ここで『テラスハウス』が出てくるのがなんとも面白い、とぼくは受けとめた。

説明するまでもないと思うが、『テラスハウス』は無名の男女6人が同じ屋根の下で暮らす日常を番組化したもので、twitterをうまく使って話題になった。放送中に出演者たちもツイートし、視聴者と一緒になって語り合いながら番組を視聴するスタイルができあがった。YouTubeでもどんどん番組映像を流し、再生回数が合計で1億回を超えたという。

新しいスタイルが話題になって若者の間ではブームが起きた。ところが視聴率は結局最後まで10%を超えることはなかったと聞く。若者たちの熱気と視聴率の間のギャップは、それはそれで時代を表すものだと思う。世帯視聴率を動かすには、若者だけでは難しいのだ。

『テラスハウス』は今年2月に映画が公開され、その時まで1位を続けてきたベイマックスを追い落としその週の興行収入トップに立った。最終的には興行収入12億は越えたというからヒット作と言えるだろう。

その『テラスハウス』の新作を、メンバーもネットで募集して制作し、Netflixで独占配信するという。

ここでぼくたちは、地上波放送での視聴率ではヒット作と呼べなかった『テラスハウス』が、Netflixではキラーコンテンツになる可能性があることに気づく。

仮に『テラスハウス』の平均視聴率が5%だったとしよう(あくまで仮にで正確な数字をぼくは知らないのであしからず、高い時はこれよりもっと高かったらしい)。日本の世帯数はざっくり5000万と言われるので、5%だと250万世帯だ。つまり少なくとも250万人がこの番組を平均的に見ていた計算ができる。この250万人の10%くらいが新作を強烈に見たがってNetflixに加入すると、25万、という数字が出てくる。

さてVODサービスではどうやら会員数最多のdTVがこの3月末時点で468万人、huluは3月に100万を越えて話題になった。そんな市場でほんとうに25万が一度に契約してくれたら、Netflixにとってはこんなにいいコンテンツはない、となるだろう。あながちありえなくもないのは、映画が12億円になったことからも言える。映画は入場料の平均は割引なども計算すると1200円程度になる。ということは映画は100万人規模が見に行ったと計算できるのだ。

テレビ放送では250万世帯が見ても視聴率5%のさえない番組と言われてしまう。でもVODではその10分の1の25万人が見てくれたらありがたいヒットコンテンツになるのだ。興味深いことではないだろうか。

それは逆に言うと、視聴率5%のテレビ番組が本来はどれだけすごいことなのか、ということでもある。ただしそれは”熱く”視聴してくれる番組に限る、ということだが。有料課金の世界に入ってきても”熱い”視聴者なら見てくれるはずだから。だらだら見続けるタイプの番組のほうが視聴率の世界では数字を取りやすいのではないかと思う。でもそういう番組がVODのほうで力を発揮するかは別だ。

VODになると、”選んで見てもらう”ことが最重要になる。それはベクトルの違う話だ。VODの活性化によって、テレビはこの”もうひとつのベクトル”を持つことができるのかもしれない。それは、今のテレビ界を”もう一つの世界”に導く経路なのかもしれない。

だから放送にVODが取って代わる、と言いたいわけではない。これからテレビは放送と配信との両立をめざし、バランスをとって運営することになるのではないか。そしてその方が現状の「放送を世帯視聴率をもとにマネタイズする」だけのやり方より、制作者にとっても視聴者にとっても幅が広がり楽しめるのではないか。

Netflixの面白さは、こういう新しいパラダイムを提示してくれるところだ。今後もコツコツ情報収集していこうと思う。

コピーライター/メディアコンサルタント
境 治
有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」
最初のふた月はお試し期間、翌々月から660円/月
ディープな情報を、コアなあなたにお届けします。

テレビとネットの横断業界誌MediaBorderのFacebookページはこちら
対談 本編㈰

What can I do for you?
sakaiosamu62@gmail.com
@sakaiosamu
Follow at Facebook

Pocket

トラックバック用URL:

Facebookアカウントでもコメントできます!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>