テレビの危機をもう一度考えてみる

「調査情報」という雑誌から原稿依頼をいただいた。この雑誌、知ってる?えー?知らないの?失礼きわまりないことに、ぼくも知らなかった。

TBSメディア総合研究所が出版している雑誌で、当然ながらテレビを中心としたメディアに関する批評を展開している。ぼくはまったく不勉強なことにTBSに総研があったことも、そこがこんな雑誌を出していることも、知らなかった。メディアコンテンツに関するブログをここで書き、テレビの将来についての本を出しているくせに、いかんいかん。これから、購読することにしよう。

さてその「調査情報」からいただいた依頼は、来年の1月に出る号で、テレビの過去と未来についてをテーマにするので、その中の未来に当たる部分を書いてくれないかというもの。過去にあたる部分の執筆者を見ると、マスメディア界の大御所の方々の名前がずらりと並んでいた。これはちょっとキンチョーしちゃう。ちゃんと書かないと恥ずかしいぞ。

『テレビは生き残れるのか』に書いたことをうまく要約して書いてくれていいとのことだったのだけど、あの本を書いた時点から事態は刻々と進んでいる。もちろん本の内容をベースにしながらもまた新たな気持ちで書いてみようと思う。そこで、今週のブログは、その原稿の前哨戦的な内容にするから、そこんとこよろしく。

さてテレビの将来とか、テレビの危機とか言う時、”テレビ”には多層な意味があることに留意しないといけない。
テレビの危機とは・・・
1)テレビ放送を事業とするテレビ局の危機
2)テレビで視聴する番組の危機
3)テレビ受像機の製造や販売の危機

このうち、1と2はセットで成立するものなので並列的に語りやすいが、3は1や2と少し離れた話だ。

ぼくは3についてはあまり考える対象としてこなかった。家電製品としてのテレビをどうのこうのいう知識はないし、そもそもそこは変化ないんじゃないんすか?などとのんびりした気持ちでいた。

無意識に「テレビは家電の王様」という認識が強くぼくを支配していたのだろう。ぼくが考えるべきはテレビ放送やテレビ番組の危機であって、テレビ受像機は安泰だと思い込んでいた。

それが今年のCEATECに行った時、おや?と感じた。これについては、このブログでもCEATECの感想を書いた時に少し触れている。テレビの展示が少なくなったのでは?と。

そしたら今度は、週刊ダイヤモンドが11月12日号で「家電淘汰!パナソニック、ソニー・テレビ事業の終焉」という特集を組んだ。そこでようやくぼくは強く認識した。テレビという家電製品が厳しいことになっていると。その深刻さは、放送や番組の方よりよほど深いのではないだろうか。少なくとも、産業としての規模は比べ物にならないほど大きい。

2000年代に”薄型・大画面”の潮流がテレビ受像機に起こり、各社が力を入れてそこに投資してきた。ところが、価格がどんどん崩れていった。ぼくが5年前に20万円くらいで買った液晶テレビは、同じサイズだと5万円くらいで買えてしまう。

さらに、今年の地デジ化までは買い替え需要が絶好調だったのが、7月以降ぴたりとテレビが売れなくなった。当たり前だよな、考えてみたら。

象徴的なのがこの記事で、有楽町のビッグカメラで「10月まで1階にあった薄型テレビやBDレコーダーのコーナーが2階に移動」したことを伝えている。何しろ、日本の5000万世帯にあったテレビがこの2年間ぐらいの間にイッキに買い替えられたのだ。その大反動が来るのは当然だろう。

テレビが売れなくなると、家電という日本の屋台骨にあたる産業が事業全体を見直さねばならなくなるだろうし、家電量販店も再編が起こるかもしれない。

ではテレビ放送や番組の今後にはどう関わるだろう。

スマートテレビ化が遅れてしまうかもしれない、ということだと思う。あるいは、スマートテレビ化とはテレビ受像機の進化とちがう現象になる、ということかも。

地デジ化以降、家電量販店では急にネット接続の訴求を始めた。遅いよ。もっと前からやってよ。まあつまり、日本ではいまようやくネットテレビが普通に販売されようとしているということ。ネットテレビ、ようするにVODサービスを楽しめるテレビだ。それはスマートテレビとは言いがたい。スマートテレビ第一ステップ、ぐらいだろう。

スマートテレビ(=アプリで楽しむテレビ)は、さらに次の段階で、日本ではまだまだだね、ということになってしまう。

むしろ、スマートテレビはテレビそのものではなく、スマートフォンやタブレット、そしてレコーダーやゲーム機などによってもたらされるのだと思う。山崎秀夫さんのいう、”2画面方式”だ。

そもそも、スマートテレビとはどういうものなのか、共通の定義は存在していない。ある人がアメリカで聞いてきた話では、向こうの連中も結局、「スマートテレビはまだまだこれからなんだよ」と言っているそうだ。

そうやって考えていくと・・・あれ?テレビの未来なんてわかんないじゃん・・・うーん、これは困った、ぼくは「調査情報」の原稿をどう書けばいいのだろう?・・・テレビの未来は、よくわかりません・・・なんてんじゃ、そうそうたる執筆陣の先輩方から叱られるかもしれない。やばい・・・夏休みの宿題をやってない中学生の気分になってきたぞ・・・

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