VODにとってテレビが大事だ、ということはどこから市場を奪うか?〜AdverTimesの記事への追記その1〜

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AdverTimesの連載で、VODについて書いた。

VODは入り口にたどり着いたにすぎない。dビデオのリニューアルから未来は見えるか?

VODは書きたいことがいっぱいあるので長くなってしまったが、それでも書きそびれた部分があるので、追記記事をここで書こうと思う。追記でさえ2回分にもなる予定だが。

ちなみに、クリエイティブビジネス論はVODについて何度も何度も書いてきた。数えようとしたら何十本もあってあまり多いので数えるのをあきらめた。

興味あったらここから読んでください。

→クリエイティブビジネス論の”VOD”の検索結果

さて書き足りなかった点とは、テレビという端末の重要性だ。

VODで非常にややこしいのが、サービス端末として、PCもあればスマホもあるしタブレットもあってテレビもある点だ。そして今や、どのデバイスでも使えるサービスがほとんどだが、そうは言っても使い勝手はサービスによってずいぶん違うし、テレビで使う際にどういう仕組みかは大きな要素だ。

そして確かにスマホでも見るし、人によってはスマホでいちばんよく見るとか、スマホだから利用しているんだとか、様々だろう。

だが、VODの”本拠地”は結局、テレビになるだろう。dビデオがdTVになるのも、サービスとしてテレビをめざすことを宣言した、ということだ。

というのは、今後のVODはいよいよ、TSUTAYAユーザーを取り崩すことになるからだ。

前にNetflixの記事を書いた時、なまじ「黒船」という言葉を使ったために、「Netflixという黒船がテレビを崩壊させると言いたいのだな」と誤解する人がいたようだ。でも実際には記事の後半で「(日本とアメリカはテレビ事情が違うので)アメリカ同様に普及するかは疑問ですね」と書いているのに。

Netflixがテレビを凌駕するわけがない!とチカラを込めていくつもの論拠を挙げて書く人もいるが、あんまり意味がないんじゃないかなあと思った。だって、どんなサービスかいじれもしないし、プロモーションコストをどれくらいかけるのかもわからない。そしてどうなるか見えるのは何年も先だ。いまテレビ放送にとってどうなるかはわからないとしか言いようがないと思う。huluだって日テレが買うなんて、上陸時には誰も想像してなかったことだ。

テレビにとってどうかを語る前に、ずっと生々しいのが、TSUTAYAなどレンタルビデオ業界への影響だ。初年度から影響が出るとしたら、まずそこに決まってる。そしてだからこそ、テレビが大事なのだ。

TSUTAYAの会員数ははっきり公開している数字は見当たらない。だが、少し古いがこのページの数字から類推すると、3年前には2500万人はいたことになる。

→TSUTAYA年間DVDレンタル枚数過去最高の7億4,224万枚 ~1人当たり年間DVDレンタル枚数も過去最高の28.9枚に~

単純な算数で、7億4000万を28.9で割ると、2500万人overという結果が出てくる。3年間で減少はしただろうけどライバルのGEOや中小事業者も考えると、3000万人くらいはいる市場だと言える。

実際、いまもたまにTSUTAYAに行くと、休日ならレジに列ができるほどお客さんがいる。

ただ、レンタルDVD市場は2007年以降縮小の一途をたどっている。これはGEOが安売り攻勢を仕掛けてきてTSUTAYAも対抗せざるをえなかったからだ。お互いに消耗してデフレスパイラルを自ら作って吸い込まれている。単価は下がったが、一人が借りる枚数は増えた。そのため、利益は減るのに人件費はかかってしまい減益の底なし沼にすっかり入って抜けられなくなっている。

一方TSUTAYA TVつまり彼らのVODは大変残念なことに使い勝手が悪い。これは早く手を付けすぎたために一昔前の技術で構築してしまったからだ。そこで家電販売などいろんな新機軸を打ち出すようだが、この春の二子玉川の出店がどうなるかだろう。かなりきびしそうだ。

そんな弱ってるレンタルビデオ業界の顧客こそがVODのターゲットだ。つまり、テレビでDVDソフトを楽しんでいる人びとが何千万人もいる。その人たちには潜在的にVODを選ぶ可能性があるのだ。

そしてAdverTimesの記事にも書いた通り、テレビ向けのVODサービスがはっきり言って使い物にならなかったので、彼らにアピールできてこなかった。プロモーションもちゃんとできてなかったし、家電量販店でもセールスポイントにしてこなかった。使いにくいしわかりにくいから。

2000万だか3000万だかの潜在顧客がいて、これまでのサービスがふがいなかった。だから新しいVOD事業者はテレビをめざすべき、なのだ。dビデオがdTVに装いを変えるのは、そういう背景だ。

だが、だからと言って簡単ではないだろう。何しろ、VODはわかりにくい。

30代前半の、かなり映画好きの友人はVODを使っていない。どこがどんなサービスをやっているか、ほとんど知らなかったし、MacユーザーなのにAppleTVについてまったく知識がなかった。Netflixで大騒ぎしているなんてごくごく一部の人たちで、普通の人は「ていうか、VODってどうすればいいの?」って感じのようだ。

そして実はもうひとつネックなのが、サービス分類だ。huluはSVOD、NetflixもSVOD、そしてAppleTVはTVOD。

SVODは月額固定料金で、何をどう見ても料金は変わらない。TVODは都度課金で、ひとつの作品を見るのに、300〜500円かかる。

そのぶんTVODには新しい映画がラインナップに並ぶ。いまや、DVD発売と同時にラインナップされるのだ。いまだとAppleTVには「インターステラー」が入っているが、これは2014年11月劇場公開作だ。半年も経っていない。

SVODにはそこまで新しい映画は入っていない。huluは日テレが買収したので戦略的に今クールのドラマを配信しているが、他のドラマや映画は何年か前の作品しか入っていない。SVODは基本的には新しいコンテンツを見るものではないのだ。だから80年代の不朽の名作を揃えたほうがずっといい。

その違いは、しばらく使わないと感覚的につかめないだろう。huluで「インターステラー」を探して入ってないからと腹を立てても仕方ないのだ。

だから、SVODとTVODは両方使うことになる。そしてこれがなかなかややこしい。

ぼくはAppleTVとhuluの両方を使っている。新しめのをAppleTVで探し、見そこねていたものをhuluで探す。ただ時々、AppleTVで300円出して見たものが、よくよく見るとhuluに入っていたりする。AppleTVでお金を払ってみた映画が、次の月にhuluに入ってることもあった。こういう時はすごく悔しい。

実はdTVは、ひとつのサービスで両方ある。月540円で見放題のリストの中に「¥」アイコンがついたものが混じっていて、それは「レンタル作品」と呼ばれ、300円とか500円とか払わねばならない。でも上に書いたようなややこしさはなくなるわけだ。

ここもゆくゆく、ポイントになりそうだ。SVODだけではおそらく多くの人が満足できないので、TVODは誰が提供するのか、ユーザーも事業者側も考えるようになると思う。

ということで、これから五年間ぐらいの間に、テレビ端末を主戦場とした競争が展開される、というのがぼくの読みだ。・・・というか、すでにはじまってるし、間違いないことなんだけどなあ。テレビが大事、と言うと引っかかる人がいるようだ。テレビが大事と書くとつっかかられ、テレビが崩壊と誤解されてイヤなこと言われる。VODの議論はいろいろ逆なでする傾向にあるらしい。

その2も書くから、また読んでね。

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境 治
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