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コピーライター→映像製作会社ロボット→広告代理店ビデオプロモーション→再びコピーライター(フリーランス)。 メディアとコンテンツの未来を切り拓くコミュニケーションをデザインします。講演・執筆依頼もお気軽に!

近代化=製造業=マスメディア〜メディア事変その25〜

70年代にいままでの広告の仕組みが完成した、と書いたね。それはつまり、この頃に日本の”近代化”が完成したってことなんだ。

”近代化”と書くと、その前が”前近代”でなんだか情けない世の中だったみたいじゃないか。”近代化”ってえらそうに言ったって、しょせんは”製造業中心の産業資本主義”によって経済力が大増強して、誰もがそこそこお金を稼げるようになった、ってことにすぎない。

製造業は世の中をどどーんと変貌させる。いまの中国が好例だね。農業人口が都市に流入して”製造業”のブルーカラーかホワイトカラーになる。ホワイトカラーの方がえらそうに思えるけど、製造業の管理職だってだけの話だ。とにかく、日本でも、中卒高卒で農村から就職列車で都会にやって来て工場で働くようになった。大学まで出れた人はホワイトカラーになった。そんなことが50年代60年代に急激に日本で起こった。

製造業の従事者はその生産者であり消費者にもなった。真面目にやってたら”所得倍増論”にのっとってほんとに所得が倍増した。洗濯機と冷蔵庫とテレビまで買えるようになった。働いて多少イヤになってもテレビで長嶋が頑張ってるから自分も頑張れた。気がついたらローンで一戸建ても買えてマイカーまで手に入った。やった!おれ、がんばったじゃん!その頃、テレビ広告費が新聞広告費を抜いた。テレビがメディアの王様になった。

日本人はマジメにまだまだ働いた。子供らも育って”団塊の世代”となり生産者になり消費者になった。彼らはお父さんたちとちがって豊かさをエンジョイした。テレビと新聞で新発売が告知された商品をどんどん買っていった。クルマはもっと大きいヤツがいいし、洗剤は新しい成分のよく落ちるヤツがいいし、コカコーラよりおいしい飲み物が次々出るし、ビールはキリンもサッポロもおいしくなっていった。

広告とはそういう、近代化が完成された中、製造業がウハウハ新商品を売りだし、その告知システムとしてマスメディアが機能していった、そんな中で成長してきた仕組みなんだ。

変わろうとしているのは、そういう仕組みだってこと。マスメディアはどこまで行っても近代化の延長線上のものでしかないし、近代ってもんがもはやどうでもよくなってきている中、マスメディアもどうでもいいもんになりかけている。

つまり、ぼくたちが考えるべき”次のこと”とは、”製造業がウハウハ生み出す新商品をマスメディアによって告知する”システムはもうどうでもいいよね、って前提からはじまるってことだね。

わかる?・・・うん、ここで書いてることはわかるよね。でも、まだ”次のこと”はよくわかんない。そりゃそうだ。ぼくもまだわかんないもん。だからさ、考えようぜ・・・

そもそも、何が変わろうとしているのか〜メディア事変その24〜

そもそも、いままでの広告の仕組み、あるいはメディアの構造って、この30年ぐらい続いてきただけなんだよね。いまメディアやクリエイティブの世界で働いているぼくたちにとっては、物心ついて以降、あるいは物心ついたらすでに、そうなっていたから、普遍的なことのように思い込んでいがちだけど、30年。たったそれだけ続いてただけなの。

力道山と街頭テレビの時代が過ぎて、テレビがぼくたちの茶の間にあるのが当たり前になった。それは、日本に製造業中心の産業資本主義が本格的に根付いた高度成長とともに完成されていったわけ。完成したのが70年代前半。長嶋茂雄が現役を引退した頃、高度成長は高度な成長を終えた。同時に、テレビ広告費が新聞広告費を超えたんだ。

新聞広告はテレビ広告に王座を奪われはしたけど、そのあとは二つのメディアは手を組んで、広告キャンペーンと世論形成の中心となっていった。新聞15段を朝日毎日読売(略称:チョーマイヨミ)で同日に打ち、また同時にテレビ各局で一斉にテレビスポットが流れはじめる。雑誌でも同じキャッチと同じキービジュアルでややターゲットを絞って広告展開し、ラジオ広告もまあ流しましょうか。そんな”メディアミックス”がナショナルクライアントの新製品キャンペーンの定番になった。

80年代には”コピーライター”にはじまり広告ブームが巻き起こった。”クリエイター”という言葉が日常語になり、電通や博報堂が就職時の人気企業になった。”ギョーカイ人”という人種が世の中に登場し、ネクタイ締めない会社員もありなんだ、ってことになった。

そんな状況は、ほんの30年の歴史しかないわけ。そしていま、壊れようとしているのは、そんな20世紀のあだ花みたいな事柄たち。製造業を中心とした産業資本主義が産んだ、実はとってもあやふやで、もろい、はかない現象だったんだ。

さて、ポイントとなるのは、ここまでで2回も書いた”製造業を中心とした産業資本主義”って部分じゃないか。”モノ”をどどーんと製造してどかーんと売る。それと、いままでのマスメディア中心の広告の仕組みがひっついていた。

変わろうとしていることの実体が、そのヒントが、”製造業を中心とした産業資本主義”って部分にある。ぼくはそうにらんだね。・・・うわ、話が壮大なスケールでお届けする感じになってきた・・・こりゃ続きが大変だわ・・・

広告業界四半期決算〜メディア事変その23〜

まず電通。売上高が僅かに前年比減少。営業利益が4割と大きく減少。これ、テレビ局とそっくり。電通の収益構造がいかにテレビ広告とリンクしているかがよくわかる。

次に博報堂DYグループ。なんと、営業利益が2.5億の赤字だった。ええ?!どうしよう?!待て待て。慌てるな。このグループは最近オフィスを赤坂に移転した。その費用が21億かかったそうだ。他にも10億ほど、販管費がいつもより多くかかったそうだ。だから、ちょっと特別。ホッとした?

でも、去年は営業利益が50億の黒だったから、21億+10億を差引いても、営業利益が大きくマイナスだったのは変わらない。

ADKは決算期が12月なので単純に比べにくいけど、営業利益4割減は電通と同じ傾向。

大手代理店はテレビ広告もだけど、新聞広告も大きく減らした。前年比で15%ぐらいの減少。これも痛かっただろう。

一昔前は、新製品の発売キャンペーンと言えば、発売日に新聞15段広告を打ち、テレビスポットをガンガン流すのが通例だった。そのパターンが、もうなくなってるんだね。象徴的だ。

さてCMプロダクション。東北新社は、広告制作以外の事業領域がそれなりにあり、そこがここ数年不良資産の処理に追われて会社全体に影響したりしてきた。だから、営業利益は前年同四半期が赤だった。ということで、比較しにくいんだわ。ただ、第1四半期の制作事業に絞った数字は売上も営業利益も前年より上回っていた。

葵プロモーションは、売上げでは前年比アップ。なのに、営業利益では前年同四半期で8千万の黒字だったのが、3千万の赤字に転じた。

葵プロモーションの決算短信には、”受注状況”という欄もある。それをみると、去年より受注金額が大きく減っているようだ。

この葵プロモーションの傾向が、今期の広告制作業を象徴していると思われる。

第1四半期の売上高そのものは、去年よりいいくらい。なぜなら、昨年度に受注した案件がこの四半期はけっこうあるから。ところが、利益が減った。利益率が下がってきているのだろう。そして、今期に入ってからの受注額がストンと減少した。

あなたが、なんらか広告制作に関わる仕事をしているとしたら、似た傾向が出ていると思う。今期に入って、別に売上げは減ってないよ。あれ?でも利益率が悪くなってる。おや?よくよくみると、今期になってから発生した案件が減ってる?そう言えば、こないだのプレゼン、勝ったのに保留になってるっけ。先月の依頼も、プレゼンが延期になったんだよな。あれ?あれあれあれ?

どうやら大変なことになっているようだ。・・・などと、暗いことばかり書いていたら、先日ある方から「暗い話はいいから、次のこと書きなさい」と要望された。

じゃ、そろそろ、次のこと、に話を進めますか・・・

続報、テレビ局四半期決算〜メディア事変その22〜

キー局5局が出揃ったので表にしてみたよん。

TBSは営業利益が前年比5割減。テレビ東京に至っては7割減だ。まあいずれも激しいね。

この表には出してないけど、各局が上半期と通期の予測数値も発表している。びっくりしたのが、テレビ東京は上半期の営業利益が▲148百万と発表したこと。▲って”マイナス”って意味ね。つまりテレビ東京は上半期で赤字になるというわけ。

通期では当初の予想とさほど変わらない営業利益30億になると言っている。上期で赤字になるのに、どうなの?

通期の件はともかく、テレビ局が上半期とは言え赤字になるなんて、前代未聞だ。どうやったってこうやったって利益が出る、それがテレビ局経営だったはずだ。赤字になるなんて誰も想像してなかったんじゃないかな。

ふと気になって、関西のキー局も調べてみた。・・・と各社のWEBをみてみたら、知らなかったんだけど、上場してないんだね。・・・と思ったら、あった。朝日放送だけは上場していて四半期決算を発表していた。

驚いた。びっくりした。

朝日放送の今期第1四半期の営業利益は▲537百万だそうだ。ようするに、5億強の赤字・・・

決算短信をよくよく読むと、新社屋移転の費用がうんぬん、とあり、ああそうか、引越したのか、と、ちょっとホッとした。

しかし、通期営業利益予想を見てまたびっくり。▲1,000百万。つまり、10億の赤字。もともとの予想では15億の黒字だったので、当初の計画から営業利益が25億下がります、ってことだ。

テレビ局が赤字。・・・とにかく大変なことになってまいりました・・・

速報!テレビ局四半期決算〜メディア事変その21〜

テレビ局はどこもだいたい3月決算。だからこの四半期は4−6月の第1四半期決算の数字ってことだね。

まずフジテレビ。売上高は141,769百万円だった。(こう表記して、1417億69百万ってことね。会計的な数値表記だけどこの機に慣れようね)前年増減率は0.1%だけどプラスだった。あ、なーんだ、プラスじゃん。メディア事変とか言ってて、事変じゃないじゃん。・・・そう思う?

いやいや問題は営業利益だよ。9,530百万円(しつこいけど95億3千万ってことね)で前年増減率-19.6%。これは痛い。売上高は前年と変わらなかったけど、営業利益は2割ダウンだった。

売上高も事業規模の数字として大事だけど、それより大事なのが営業利益。事業としての収益性を表す数字で、ここが下がると、ダメじゃん、ってことになる。それがフジテレビは2割も下がったんだって。

ただ、フジテレビの場合は通期予想では去年よりプラスに巻き返す、と言っている。まあ、3月までに回復できれば、いいわけで。どうなることやら。

次に日本テレビ。ここはさらに痛い。売上高が8,052百万で-4.8%。まず売上高が去年より下がっちゃってる。そして営業利益は2,874百万と、なんと去年と比べると-61.8%。

ええー?!利益が6割も下がっちゃったよ。これはまずい!ってことで、日本テレビは役員報酬を10%下げます、って発表している。上場企業だから責任とりますって言わなきゃいけない。つらいね。ちなみに、他の局ではすでに役員報酬ダウンを発表しているところもあるよ。

それから、日本テレビは通期の予想も修正しますと言っている。通期の営業利益が13,400百万で-41.9%になると予想している。ちなみにこないだの3月の決算でも営業利益が-24.0%だったから、2年続けて営業利益が大きく下がることになるわけ。

最後にテレビ朝日。ここは意外に売上高64,252百万で去年より3.0%増えている。ただ営業利益は3,983百万と-10.1%。1割下がった。

あ、でも、フジや日テレと比べるとまだいいんじゃない?いやいやいや。テレ朝も通期の予想を修正していて、営業利益が-58.4%と発表した。利益が6割近く下がる!

テレビ朝日はこの3月の決算でも営業利益が-27.1%だった。おととしの3月決算では170億あった営業利益が去年の3月決算では136億になり、こないだの3月決算で99億まで減った。それが来年の3月決算では41億になると言っているわけ。3年で利益が4分の1以下になっちゃう!

すごい勢いで利益が減っている。

どうなっちゃうんだろう?・・・あれ?暗いことばっか書いてたんで、次から明るい話に入るつもりだったのに・・・ま、でも、落ち着いて、状況を把握していきましょ。ね。

イヤな試算をしてみよう〜メディア事変その20〜

まず確認しておこう。この試算の元の数字はどんな数字だろう。電通と、博報堂・大広・読売広告社の4−6月の数字と、ADKの4,5月の数字だと言った。この5社は広告代理店大手で、昨年度は合計で売上高が2兆9千4百億円あった。(ただし、ADKだけは決算期が12月なので”年度”から微妙にずれちゃうんだけどね)

広告業界(広告代理店に発注される額)はおおよそ6兆円ってことになっている。つまり、この大手5社で半分を占めているわけ。だから、この5社の数字をもとに広告業界全般のことを占える、と考えていいだろう。

5社の4−6月の数字が例年の通期で占める割合から類推すると、そしてこのまま売上高が前年比96.4%で今期終わるとすると、5社で1千1百億円の売上を減らすことになる。3%強ってことだね。さらにこの割合で広告業界全体の売上高が減少すると仮定すると、2千億円以上の減少、ということになる。

6兆円の市場が3%強の2千億円以上減る。・・・ん?数字が大きすぎて感じ取れない?・・・そういう時はねえ、個人の生活に置き換えてみるといいかも。

例えばね、年収6百万円の人が20万円減るってことだよね。・・・ふーん、なんか大したこと、ないんじゃない?・・・って感じ?だったら、夏の海外旅行をあきらめて千葉辺りですませばいいじゃない。

もちろんそうだね。でも問題はね、ここから先、また増えるのかい?ってとこなんだ。

これから先、増えるあてはない、としたら?毎年20万円ずつ減っていくだけだとしたら?もしあなたが上司から、600万円の年収を今年は20万円下げ、さらに毎年下げていくから、少なくとも増えることないから、って言われたら?どうする?辞めるよね?もっとマシな会社に行こうって思うよね?

すごーくイヤな想像をすれば、広告業界は、そういう”そんな会社いる意味ねえじゃん”って業種になりかねない、なりかけてるかもしれない、ってことなんだ。学生の就職希望の上位には電通や博報堂が相変わらず鎮座してるけど、来年からどうなることやら。

さて話をもっと絞ってクリエイティブ経営論ブログとしては、広告制作業界にフォーカスしなきゃね。

クリエーティブ売上はさらに前年比が低くて5社平均で94%だった。これはどういう数字だろう?

例えばテレビCM制作市場は2000億円と言われている。これが94%とすると、6%の120億円減るってことだね。この数字は置き換えなくても、けっこう生々しいんじゃない?2000億から120億減って、1880億円になる計算。うわ、減ったな、って感じしない?

CM制作はこの数年、大手集中傾向が続いている。市場規模の増加が止まり、代理店が安心の大手に仕事を集中している傾向も強まっているの。だから東北新社や葵プロモーションなどの大手プロダクションは売上げ数字を伸ばしている。

でもね、6%減るとすると。さすがに大きなところに影響が出るんじゃないかな。しかも売上より利益面での影響が出てくるだろう。市場が縮小するというのはそういうことなんだ。

制作費の前年割れはCM以外はもともとあった傾向なので、広告を作ることをなりわいとしている会社は今年、軒並み苦しくなる。相当深刻な状況じゃないだろうか。

なんだ暗い話ばっかじゃないか。あ、ごめん。でもさ、伸びてるカテゴリーもあるわけでね。そこいらあたりはまた、次回ね。今回は、くらーい試算がテーマだからさ。

ついに終わりがはじまった?〜メディア事変その19〜

広告業界は最近、非常にわかりやすくなっている。大手代理店は上場しているので、投資家向けに月次売上高をWEB上で報告している。テレビ局も上場しているけど彼らは四半期ごとの発表なので、代理店の方が姿勢がクリアだね。

電通の6月の数字がこないだ発表された。4月5月の数字と合わせてみて驚いた。3カ月連続、前年比マイナスなのだ。

内訳もちゃんと発表してくれているので、3カ月の数字をまとめてみると、合計が96.5%、新聞84.8%、雑誌94.6%、ラジオ92.9%、テレビ98.3%となっている。ようするに、マス4媒体がどれもこれも前年より減っている。

ちなみに去年も前年比ダウンだった。下げ幅は去年の方がむしろ大きい。これは、一昨年は5月6月がワールドカップで広告売上げがかなり上がったから。一昨年の反動で去年は下がったわけ。

ということは、今年のダウンは去年さがってさらに下がったことになる。なんだか深刻だぞ。

電通以外の、博報堂・大広・読広はグループなので一緒に月次を発表する。ADKも発表するけど、6月の実績値をまだ出していないので4月5月の2ヶ月間しかわからない。とにかく、大手5社の数字はわかるので、集計してみた。

そしたら、電通と同じ傾向で、電通より下げ幅が大きかった。5社の数字を合わせると、会社全体で96.4%、新聞81.3%、雑誌91.3%、ラジオ94.7%、テレビ96.1%だ。さらに深刻な数字となっている。

特筆すべきなのは、”クリエーティブ”の売上が前年より下がっている点。5社合わせると94.0%だった。オーマイガッ!

クリエーティブの売上とはCMだのポスターだのの”制作費”の売上、つまりクリエイターの収入源だ。それが前年から6%も下がっている!ここ数年、媒体売上が揺れてもクリエーティブは減らなかった。むしろ増え続けていた。それが、軒並みダウンなんだ。こりゃまずい!

マス4媒体が減り、つまりテレビ媒体売上げが減り、クリエーティブ売上げも減った。クリエーティブの7割ぐらいがCM制作なんだってさ。つまり、媒体も中身も、テレビ広告が減ってるんだ!

ほんとにほんとの”メディア事変”ってことになってきた。クライアントがマス広告費、その核のテレビ広告費を減らしはじめたんだ。

だってね、この不安定な経済状況だもん。そこへちょうど”インターネットなら広告費減らせるみたいよ”という流れがやってきた。二つの状況が合わせ技で広告業界を見舞いはじめた。

いま起こっているのは、予震。ごごごごご、あれなんか揺れてない?と、気づく人が気づく段階。大半の人は、ん?揺れたの?わかんなかった。てな感じ。夏のオリンピックで、予震は一時やむかもしれない。でも、秋になったら、本格的な激震がやってくる。それが果たして震度いくつなのか。机が揺れる程度なのか。棚から本が落ちてくるのか。立っていられないほどなのか。ひょっとして建物が倒れたりするの?

あなたは少なくとも、ラッキーだね。だって予震があったの、わかったでしょ、このブログ読んで。

ほとんどの人はね、気づかないんだよ。地震が来ること、前もって知っておくことができないまま、マグニチュード7の本格的な揺れが来たら・・・みんな、どうなっちゃうんだろうね?

番組と広告費の不思議な関係〜メディア事変その18〜

例えば、GyaOというメディアがあるでしょ。ネット上で無料でいろんな番組が視聴できます、っていう。登場した時は驚いたし、すげえなあーって思ったけど、けっこう苦労しているらしいと聞く。

がんばって番組を自社で費用も負担して製作して、それにCMくっつけて配信する。それによって、クライアント企業から広告費をいただく、って事業モデル。何に苦労しているかっていうと、番組製作費に見合う広告費がなかなかとれないらしい。

仮に1000万円で番組を作ったとして、それにCMくっつけて1000万円分の枠が売れなかったら、元がとれない。事業として成り立たない、でしょ?

そこで、あれ?と気づく。じゃあ、地上波テレビ放送はどうなってるのか?

番組製作費もクライアント企業が負担している。それが実情。

もう少し詳しく言うと、企業が番組枠の提供スポンサーになるには、番組製作費と電波費とを負担しないといけない。テレビ番組ってのはテレビ局のお金で作ってるんじゃなく、スポンサーのお金で作られているんだ。

これはそもそも、テレビ放送の事業としての成り立ちがそうだからね。放送事業は、新聞や雑誌などのメディア事業と根本的にそこが違う。広告収入100%で事業を成立させる構造になっている。だから、まあ、いままでは当然だと思われていた。

でも、GyaOと比べると、なーんだかおかしな気分になってくる。GyaOはものすごいリスクを払って運営されているわけだ。そりゃ大変だろう。

一方、少なくともいままで、テレビ放送は楽勝だった。番組製作はスポンサーがお金出してくれるんだもん。

GyaOの番組は、彼らがリスクを負って製作している。だったら2次使用の権利は彼らにあるのだろう。著作権法がどうのと言う前に、なんというか”スジ”としてそうだろう。

じゃあテレビ番組は?あれは、スポンサーのお金で作ってるんなら、スポンサーのものじゃないの?2次使用の権利は、スポンサーさんにあげなくていいの?

しかし現実には、テレビ番組は、それを放送したテレビ局が2次使用権を持っている。いま大人気のドラマ『CHANGE』がこのあとDVDになったら、2次使用料はまずテレビ局がもらうのだ。費用はスポンサーが払っていて、つくってるのは制作会社だったとしても、”テレビ局のもの”になってしまう。

昔はね、そういうものだと思ってたよ。当然だろ、って思ってた。でも、ネットが登場して、映像コンテンツと広告費の関係とか考えはじめると、あれ?おかしくね?って気分がムクムクわいてくる。わくでしょ?あなたも。

前回の話とはちがうのだけど、大枠は同じ。広告費とコンテンツの関係が、なんだかよくわからないことになってきたの。

何をどう考えてどうすれば、いいの、かな?・・・

広告映像はコンテンツビジネスになりえるか?〜メディア事変その17〜

このタイトルで言っている”コンテンツビジネス”とは、広告メッセージを伝えることを目的にするのではない、テレビ番組や映画作品、アニメーション作品などを指しているつもり。

広告映像は”費用”なんだね。勘定科目の”広告宣伝費”として使われるお金で制作費をまかなうわけ。だから”使い捨て”なの。

コンテンツビジネス、つまりテレビ番組や映画作品は、使い捨て、ってわけではない。”投資”だったりする。あるお金をかけて制作したら、劇場やDVDで制作費を回収する。元をとれたら、それ以上の収入は”利益”になる。大ヒットしたら大きな利益を生み出す。これは、広告宣伝費で作られた作品にはないことだ。

でもいまね、広告とコンテンツの境界が少しずつわからなくなってきそう。

こんなことを考えたくなるのは、ネットで動画を制作しましょう、という時、これまでのテレビCMのコスト感覚だと、とても見合わないバジェットになりがちなわけ。それはまあ、まだまだずっと書いてきたようにネット動画に経済価値が示せないからなんだけどね。

経済価値をつける努力をするのがいちばんなんだけど、制作しても見合わないのなら、二次使用でカバーできないか、と考えてみたくなるってものじゃないか。

理論上、こういうことは言える。例えば素敵なタレントが出てくる、ちょっと物語っぽいCMってあるでしょ?いい感じだなあと思うと、これの長いの見てみたい、とか思う人もいるかも。

テレビCMとしては15秒とか30秒とかなんだけど、ネット上で30分とか1時間のバージョン、流したりしてね。それが人気を博したら、DVDにして売れるのかもしれない。

もしそうなったらね、”広告宣伝費”という使い捨てのつもりで作った広告映像が、劇場映画のように”制作費の回収”もできるのかもしれない。回収しきってもまだ売れたなら、”利益”が出るかもしれない。”費用”のつもりが”投資”になって”利益”をもたらすとしたら。

そんな可能性はあるのか?あるはずだ。現に大友克洋のアニメ『FREEDOM』ってそういうことじゃなかった?

・・・さて、このことを考えていくと、メディアとコンテンツと広告費の不思議な関係に気づいてしまう。20世紀では問題なかった構造が、21世紀にはおかしいだろう、ということになるかも。というか、いままでの日本のメディアと広告の関係は奇妙だったのかも・・・何がって、それはまた、次回に言うからさ・・・

ネット動画はセグメントできる映像媒体〜メディア事変その16〜

これはある本の受け売り。

まずね、テレビ広告は高い、という印象がある。確かに、ゴールデンタイムの15秒スポットが数百万円もするんだ。高いって言いたくもなる。

でも、多くの人に一度に何かを伝えるメディアとして、少なくともいまはもっとも費用対効果がある。一人に送り届けるコストが10円なんだって。そう思うと安い。

ネット動画に広告の役割持たせても、一人に送り届けるコストはもっと高い。100円以上するんだってさ。

インターネットの価値は、そんなところにはない。ネット動画は、テレビが持ちえなかった機能を持っている。それは、送り届ける人をセグメントすることができる、ってこと。広告業界は、ネット動画によって初めて、映像を送り届けるセグメントメディアを手にしたんだ。そこから考えはじめないといけない。

新聞と雑誌の違いはなんだろう。大ざっぱに言うと、新聞はマスメディア、雑誌はセグメントメディア。広く世間に何かを送り届けるのが新聞で、ある限られた層に届けるのが雑誌だった。これらは静止画の世界の話。

映像はどうだったか。ずっとマスメディアしかなかった。そこにインターネットが登場し、ブロードバンドが普及して、インターネットという”映像を送り届けるセグメントメディア”が誕生したんだ。

しかもこのメディアは、やりようによっては受け手に”アクション”を引き起こせる。販売店に誘導したり、メールアドレスを収集したりもできる。”刈り取り”まで期待できる映像メディア。それがネット動画の広告価値の可能性なんだ。

広告クリエイターは、そこを考えないといけないの。セグメントされたメディアで、刈り取りまでできる。と、いうことは、広告クリエイティブはどうすればいい?クリエイターは何を考えないといけない?

そこをみんなで考えよう。うーん、そうだ!というアイデアを次々に考えよう。そうやってネット動画の広告価値を発見できれば、クライアントはひょっとしたらテレビ広告のクリエイティブよりも高い価値を認めてくれるかもしれない。そしたら、クリエイターの経済価値が示せるかもしれないんだ。

わかる?

ちなみに、”ある本の受け売り”と書いたけど、その本のタイトルはここには書かない。まあ、探してみてよ。どうしても知りたい人は、ぼくに聞きに来たら教えてあげないでもないよー。

ネット上の映像に広告価値を持たせること〜メディア事変その15〜

映像はコミュニケーションのツールとしてやっぱり強力な力を持つ。その映像を一日中全国のお茶の間に送り届けてきたテレビ放送というシステムは考えてみればすごい。

問題なのは、テレビ中心で進みすぎた、やりすぎた、ということ。そこに”インターネットで動画が流せる”という状態が生まれ、だったら馬鹿高いテレビ広告費をいままでほど使わなくてもいいかな、と、当然考えるだろう。

だからといって、現状ではテレビ広告の代価をインターネット上の動画が果たせる、とは言えない。つまり、そこに課題があるんだ。

代わりになるものがないのに、テレビ広告費がただ減っていっている。ただもやもやと、ワード検索連動みたいなサービスに、ぐんぐん広告費を吸い取られている。

こないだあるセミナーで出てきた予測値。2007年から2012年までの5年間で、日本人のメディア接触時間がどう変化するかを算出していた。それによると、地上波テレビ放送のリアルタイム視聴は5年間でいまの88%に減少するというのだよ。びっくりだ。12%も減るんだぜ。その減少分は様々に拡散するんだけど、インターネット上の動画視聴は2倍に増えるんだって。

その比率は、いまの12:1から6:1にまで差が縮む。これもびっくりだ。テレビを見ている時間の1割強が減って、ネット上の動画視聴時間は倍になり、テレビ放送に費やす時間の6分の1程度になる。あくまで試算だから実際にどうなるかはわからない。でも、かなり納得のいく数字でもある、でしょ?なんか、そんな感じになりそう。

この、ネットで動画を見る時間が、ただYou Tubeで前の日に見逃したバラエティ番組だったり、昔の歌謡曲を懐かしんで見たりすることになっちゃってはいけない、よね?広告クリエイターは、そこに立ち向かわないといけないんだ。見逃したバラエティ番組より面白い映像をネットでみんなに見せて、そこに広告価値を認めさせないといけない。

”いけない”と書いた。どうして?と思っちゃう?別にネットで動画見るのがいちいち広告になってなくてもいいじゃん。

そうだね、普通の人にとっては。でも、広告クリエイターは、そこ、やらないと”いけない”んだぜ。そのあたり、また来週ね。

広告制作受注の流れが拡散していく〜メディア事変その14〜

例えば、前回の仕事の話で言うと、ぼくはもしかしたら、ECサイトを構築しているシステム会社と組めばいいのかもしれなかったってこと。システム会社が発注しているウェブ制作のチームは、ウェブ制作だけの視点でデザインワークをしていた。でも、同じクリエイティブが新聞や店頭などでも展開されるようにつくれば、ブランディングをネットでもマスメディアでも店頭でも共通化させられる、ってことなんだね。

それにウェブに特化してデザインをやって来た人びとには、失礼ながら”ブランディング”の概念はあんまりわかっている人がいない。”広告”の作業の中で培われた考え方だからね。だから、ブランディングはもともとの広告クリエイターの方がよくわかっている。そしてそれはウェブでも基本的には同じなんだ。

そうなんだよ。クロスメディアになればなるほど、”ブランディング”は重要なんだ。情報があふれているからこそ、ブランドの本質を凝縮しておく必要がある。

あれ、話がそれたね。ともかく、システム会社経由での広告制作の依頼が、ありえる時代なのさ。あるいは、ネット専業の代理店かもしれない。あるいは、クライアント直かもしれない。ものすごく多様なルートから、広告クリエイティブの仕事が発生しはじめているんだ。

もちろん、それはネットベースのコミュニケーションのお仕事に限るけどね。

整理するとね、別にいますぐテレビ広告が必要なくなるわけじゃないから、相変わらずいままで通りの、広告代理店経由での広告制作の仕事は大きなルートとして存在し続ける。そういう場合は、やっぱりテレビCMが中心だね。

もうひとつ、大きなルートとして、しかも多様なバリエーションとして、システム系の会社を経由して広告制作の仕事が発生している。こっちはテレビ広告中心ではない。だから、全体の予算は大きくはない。でも、そこでは広告制作費の1割ルールは関係ない。きちんと”ソリューション”を提案できれば、それ相応の制作コストをクライアントは払ってくれるだろう。だったら、代理店経由のCM中心の仕事、と同じ制作費の仕事になるかもしれないわけ。

だから、広告クリエイティブは終わりなんかじゃない。ただ、テレビCM中心でしか考えられない人は・・・これから困っちゃうよー。立場なくなるかもよー。・・・アー・ユー・オーケイ?