Hulu(つまりはSVOD)の功と罪〜あるいは刑事コロンボがやっぱり面白い件について

週末はすっかり刑事コロンボになってしまった。

あ、いや、もちろんぼくが刑事になるって話ではなく、週末になると刑事コロンボを次々に観てしまう生活になっちゃった、ということ。

「うちのカミさんがね・・・」という独特の泥臭いセリフ回しで小池朝雄が吹き替えたドラマが定期的にNHKで放送されてたのは70年代前半。ぼくは小学生だった。よく知らない、って人にはとにかく一度観てみることをオススメする。

物語の冒頭で殺人事件が起こるので観客は犯人を知っている。犯人が誰かを探すのではなく、この犯人にどう証拠をつきつけるのかが焦点。一見サエない刑事が実は敏腕で、犯人のところを何度も訪れ推理の過程をあえてさらしながら犯人を追いつめていく。最後になんと!という形で証拠が提示される。それ「古畑任三郎」にそっくりだね、とか言わないでね。古畑のモデルがコロンボなんだから。

さてコロンボをどうして突然ハマるほど観はじめたのかというと、Huluのメニューに入ってきたから。

Huluって何なの?なんて言うんじゃないだろうね。去年の9月に日本に上陸したアメリカ生まれのVODサービス。月額定額でドラマや映画が見放題。最初は1480円だったのがいまや980年。すんごくおトク!基本はPCとスマホ向けサービスなんだけど、PlayStation3でも視聴可能だ。ぼくはウイニングイレブンから足を洗って以来とんとつけたことのなかったPS3のスイッチを、ここんとこ毎週末オンしているってわけ。

SVODという言い方、知ってるかしら?Subscription Video on Demandの略で、つまりは定額制のVODサービスのこと。AppleTVなどのVODサービスは一本400円とか500円といった単品サービスが基本だが、HuluのようなSVODがアメリカでは伸びているそうだ。

日本でもHuluに刺激されて続々VODサービスが登場している。携帯キャリアがスマホ向けにSVODサービスを出しているし、CATVやひかりTVでも出てきている。

Huluに刑事コロンボが入ったもんで、心置きなく次々に観れちゃうというわけ。シーズン1も2もひと通り観たのでシーズン3に突入なう。40年ぶりぐらいに観ているわけだけど、まったく鮮度が落ちていない。いま観ても抜群に面白いよ!

VODと、映像コンテンツのアンビエント化については何度かこのブログで書いてきた。

映像コンテンツのアンビエント化が進んだら
映像コンテンツのアンビエント化の実際〜AppleTVその後〜

SVODはこの傾向を加速するだろう。なにしろ、このぼくが格好のサンプルだ。

学生時代は名画座をハシゴして”文芸座地下・鈴木清順特集”なんて一所懸命に観たもんだ。ついこないだまではレンタルビデオ店に毎週末通い、映画館で見逃した作品や、「LOST」「HEROES」といった海外ドラマを借りまくった。

でもいまやぼくにはAppleTVがある。DVDでの発売と同時につい半年前にロードショーしていた映画が観たい時に観れる。ハードディスクレコーダーには映画チャンネルで放送された旧作と、地上波で放送された最近作が溜まっている。さあ、どれを観ようか。あれにしようか。こっちも観なきゃね。えーっと、うーんと、どうしようか・・・よし!・・・刑事コロンボにしよう・・・

そんなことになっちゃったのだ。そしてそれで十分満足したりしている。いやー!映画ってホントに素晴らしいですねえ!とヒゲの解説者が出てきそうだ。

いつでも観れると、いつまでも観ない。

どれでも観れると、どれも観ない。

そうやって、ほぼ100%面白いとわかっているコンテンツを選んでしまう。

もうひとつ、コロンボのよさは時間だ。1時間15分。2時間は必要ないのだ。休日に料理をしながら、観るにはちょうどいい。夜中、12時から観はじめて、1時半には眠れるのだ。

SVODにハマっていくと、一体ぼくたち人類にはこれ以上映像コンテンツが必要なの?なんてことを考えてしまう。Huluに入っているコンテンツを、残りの人生かけても見尽くせないんじゃないだろうか。その上に、新しい作品なんてお腹いっぱいで入らないよ。

映画が誕生して100年はとうに経った。学生時代に映画を観ることが習慣になって、名作と言われるものは全部観たいと思ったものだが、それから30年の間に見るべき名作がまた追加されている。もう追いつかないよ。

思うに、こんなにたくさんの映像作品を、人類は必要としていないんじゃないか。もう十分なのかもしれない。新しい推理ドラマをわざわざ作らなくても、刑事コロンボを観ればいいって気がしてくる。

なんて言いながら、この日曜日はTBSのドラマ「ATARU」の最終回をじっくり観て、笑って、涙した。必要ないなんて言ってゴメン!ぼくたちにはやっぱり新しいドラマが必要だね!

・・・と、能天気に終わっちゃえばいいんだけど、やっぱりそうもいかない。SVODがぼくたちの生活に何か新しいものをもたらそうとしている気がする。それが何かは・・・まだわかんないなあ・・・

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