著作権は20世紀エンタテイメント産業の副産物〜違法ダウンロード罰則化が成立しちゃった〜

前回20日に違法ダウンロード罰則化について記事を書いた。15日に衆議院を通過し、参議院の議論に向けて19日に参考人質疑が行われたが、記事を書いた日にはとっとと参議院を通ってしまった。想像はしていたけど、参考人質疑は儀式に過ぎなかったんだろう。あの質疑を見たら罰則化はいかがなものか、となったはずなのに。

ぼくの記事について「でも著作権は守るべきでしょう」と言ってくる人がいた。あれ〜?罰則化への反対は違法ダウンロードを認めることではないのだけど。著作権は当然守るべきものだし、音楽業界の縮小は心配だ。だけど今回の罰則化はその解決にはならないよ、むしろ逆効果でさえあるかもしれない。そんなことを書いたつもりなんだけど、議論って難しい。

難しい議論をさらにややこしくするようなことを書いちゃう。前回の記事の最後の方でごにょごにょっと書いたことの続きというか拡張だ。

著作権とは近代になっての概念で、印刷技術の発展と関係するらしい。英語で”copyright”というのはつまり複製の権利だ。日本語では著作権と表記し、でも英語では複製権と言っている。著作物には著作した人の権利があるよね、というのが著作権。一方、著作物を複製する際のルールが必要でしょ、というのが複製権だろう。著作権にはこういう二面性があるのではないだろうか。

そして、印刷物はちょっと置いといて、音楽と映像(今回の著作権改正で問題となったのはこの2つの分野だ)を大量に複製する手段が確立し、それが大きな産業になったのは20世紀の話だ。大きな産業だし、大きな投資が必要だ。大きく流通させる営業力や販売網も必要だ。

音楽や映像を複製して大きな産業の上で流通する前までは、音楽を演奏したり物語を人前で演じたりするのは、劇場やホールで行うしかなかった。だから、そんなに多くの人に見せられなかっただろうし、そんなにたくさんの人が従事する業態でもなかっただろう。演奏したり演じたりする人の中で才能ある人はきっと人気者になり豊かにもなったろうが、限界もあっただろう。

20世紀は、そこを大きく変えた。リバプールのスタジオで演奏した楽曲がものすごい数の複製を生みレコードとなって世界中で売られる、なんて現象が起こった。アメリカの西海岸の撮影所で撮られた映像がフィルムに収められて世界中の映画館で人びとを魅了する、という現象も起こった。ギターを弾く若者が革命家のような存在となったり、西部のガンマンを演じる青年が大富豪並みに大邸宅を構えたり。あり得なかったことが起こった。

エンタテイメント。そう呼ばれる世界が生まれ、国によっては巨大な産業となり、大量の雇用も生んでその人びとの生活を支えるものになった。一体となって育ったマスメディア産業と支え合い、絡み合いながら成長していった。そんな100年があった。

著作権とは、そんな世界を支える概念なのだ。法律的な、そしてどこか精神的な面も支えるバックボーンなのだ。

だから著作権を守らなきゃ、という人びとは、せっかくここまで育ったエンタテイメントの世界を、そして産業を、インターネットが台無しにしようとしているんだぞ!と怒っているのだ。どうするんだよ。みんな生活できなくなるじゃないか!

ここでぼくが思うのは、そこで言う著作権とは、複製権の方を言っているんじゃないかということだ。

複製権こそが、富の背景であり、源泉だ。たくさんの人を支えてきたのは、著作者の権利を大事にすることではなく、著作物の複製に関するルールなのだ。著作物の複製には特殊な技術と装置が必要で、それらを調えるには莫大な費用がかかってるんだぞ。なんだその、デジタルってのは。マウスひとつで複製だと?なんてことしてくれるんだ。

いやもちろん、複製権は守らなきゃいけない。ただ、それは著作物だからであり、著作物の複製によって生きてきた人びとの生活を支えるかどうかは少しちがう話だ。

複製コストが革命的に安くなった。大した装置も必要なくなった。装置を動かす技術者も要らなくなる。これについては、著作権を守ろうが守るまいが、止めようがない流れだ。印刷業界で写植という設備と技術が要らなくなったようなものだ。

著作権の問題は、語りはじめると語り尽くせないし、結論もカンタンには出てこない。でも、すごく重要なテーマだ。

重要なテーマなので、7月15日の境塾@デジハリでとりあげるよ。コラムニストでMIAU代表として著作権問題に向き合っている小寺信良さんと、NHK出身で現場も知っている珍しい弁護士である四宮隆史さんをお招きするパネルディスカッション。これは行くしかないんじゃない?申込はここをクリックしてATNDから、どうぞ。

いや、別にイベントの宣伝でこの記事を書いたわけでもないんだけどね。

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