マスメディアよ、お前はただのインフラに過ぎない〜メディア事変その46〜

さて今年、はっきり起こったね。メディアの大政奉還が。明治維新の大政奉還はマツリゴトを帝にお返ししたのだけど、メディア維新の大政奉還は、メディアをクライアント企業と一般視聴者にお返ししたんだ。

試算してみたのね。

前に、09年までの広告費減少額を試算したけど、そのつづきもやってみたわけ。いまの勢いでマス広告費が減少したとしたら2011年には?ざっくり言って、テレビ広告費は2兆円から1.5兆円に減る。新聞広告費は1兆円から0.5兆円に減る。

つまりこれから3年間でテレビと新聞の広告費が1兆円減るんだ。

テレビ局と新聞社はすごい勢いで力が弱くなり大リストラをはじめる。

一方、広告代理店業界は?電通と博報堂DYグループとADK(大手代理店5社)の売上高を合計すると約3兆円らしい。

さっきの1兆円は、この5社で大ざっぱに推測すると7割ぐらい影響するだろう。だとすると3兆円は2.3兆円に減少する。

大手代理店もすごい勢いで力が弱くなり大リストラをはじめる。

これから大変なことになっていく。

マスメディアや代理店にぶら下がっていたクリエイターは3年間の暴風雨に堪えなければならない。そしてそれらにぶら下がっていなかったクリエイターなんて存在しないんだ。大手所属も、一流も、中小所属も三流も、みんな、一様に暴風雨。

暴風雨が去ったあと、周りを見回すとなぎ倒された木々、崩壊した街、ひっくり返ったクルマ、てな光景になる。

その時、暴風雨が去ったあとを見越して準備をしてきたやつらが、せっせと新しい街づくりをはじめる。

マスメディアはどうなっているだろう?ただのインフラになっているんだ。クライアント企業と一般視聴者を結ぶインフラ。電話線とか上下水道とか、そういった事業になっている。

もう、何やら大衆を啓蒙しようとする傲慢な意志や、自分たちこそが時代をつくるのだという野心や、クライアントを牛耳っているのはわしらじゃという強引さは持ちえない。こっちのクライアントさん、いいですか?あっちの視聴者さん、問題ないすか?じゃあ、情報を流しておきますね。そういう役割になる。その役割に限定すれば、けっこう安定した事業になる。高い成長はしないし、社員は高給取りじゃないけど、安定はする。なくなりはしない。だってインフラってそんな存在でしょ?

マスメディアよ、お前はただのインフラに過ぎない。

奇しくも40年くらい前のテレビ創成期後半に、テレビの時代をきり開いた先輩クリエイターたちが似たことを言っている。「テレビよ、お前はただの現在に過ぎない」そう、もともと、マスメディアは”現在”というインフラに過ぎなかった。ただ”現在”というインフラが有り余る価値を持ちえたんだ。近代化と高度成長の余韻が残っている間は。

メディアが力を持とうが、ただのインフラになろうが、コンテンツは必要だ。ただのインフラになったらますます、コンテンツを生み出す能力がある人間の価値は高まる。ただし、高い能力には高い価値がつき、低い能力にはあまり価値がつかなくなる。

コンテンツを生み出す人間は、だから強い意志を持たねばならない。

いままでは、インフラの立場が強く、要望をしてきた。クライアント企業や視聴者の意志はメディアがわかっているんだ!だからこうつくってくれ、と要望してきた。コンテンツ側は、はいはいわかりました、と、その要望に沿って生み出せばよかった。

何しろクリエイターは、とにもかくにも何かを生み出して毎日暮らせれば幸せだと感じてしまうお人よしだ。マーケットだのニーズだのビジネスモデルだの、考えるのめんどくさいから、お絵描きだけを毎日できればうれしいいいい!ってんで、至福の日々を過ごしてきた。

でもこれからは、自分で考えなければならない。消費者のニーズだのマーケットだのを調べて考えてクライアント企業に自分で提案しなければいけない。ビジネスモデルの創出しなきゃってことで、3年分の損益計算もしないといけない。

だけど、ひとたびそういうノウハウを身につければ、自分の生み出したコンテンツがメディアを自在に駆け巡る。クライアント企業からお金を引き出し、複数のメディアを闊達に駆け抜ければ二次収入をもたらしてもくれる。

よく考えたらそれは、二十世紀にハリウッドの連中がやってたことと似てるじゃないか。なーんだ、あいつら、こうやってたんだ。

終わろうとしているのは、あくまでマスメディアがすべてを握っていた時代であり、はじまろうとしているのは、コンテンツがすべてを指揮する権利を持つ時代なんだ。

これから2011年まで、いよいよ激しくなる暴風雨を乗りきろう。2011年まで準備しよう。それが2008年メディア維新の年の終わりに、このブログの読者のみんなに送るメッセージだ。アジテーションだ。

アー・ユー・オーライ?

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コメント

  1. 投稿欄よりスイマセン。03年頃、京都のメーカーに飛んで入ったNです。大変ご無沙汰してます。新たなステージでさらにご活躍されているのですね!こちら、広報職から2年前より宣伝部署に移り、BtoB企業の「宣伝する意味は何か?」の社内禅問答に苦戦しながら過ごしております。メディア事変で書いていただいたことの多くは、僕らが感じ悩んでいることと当てはまっており、大変勉強になります。携帯電話は変わっておりませんか?東京に行ったらぜひご挨拶させてください!

  2. おお、びっくりした!京都に行ったNしまくんだね!ブログってこゆことあるからおもろいね。ケータイ変わってないよ。電話しなさい。いますぐ!京都にはいま縁があるのよ。

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