広告と販促が交錯してきた〜メディア事変その27〜

90年代の半ばあたりから、日陰者だった”販促”がちょっと注目されるようになってきた。アバブザラインとビローザラインという言葉が業界で飛び交うようになってきた。こういう新ワードがいきなり登場し、あっという間に日常的に使われるようになるのが業界だ。

アバブザラインとは”Above The Line”。ビローザラインとは”Below The Line”。それぞれ、線の上と下という意味だ。マスメディアと販促の間には”Line”があった。その上(=マスメディア)をアバブザラインと呼び、下の方(=販促)がビローザライン。”販売促進略して販促”という、地味な言葉で語られていたのが”ビローザライン”と片仮名で呼ばれるようになるとなんだかカッコいいことに思えてくるから不思議だ。それも業界。ビローザラインも大事だよね、ということになった。

最初に反応したのはアートディレクターたち。それまで、ポスターや新聞15段(1ページ)が彼らの花形舞台だったのが、突然、店頭のPOPなんかを熱心につくりはじめた。

アバブザライン、つまりマスメディアだけでは単純に人が動かなくなってきた。店頭も重要じゃないか、ほんとうに”買わせる”力を持つのはBelow The Lineじゃないか、ってことで、販促物でもそれなりのデザイン費がつぎ込まれるようになってきたのだ。

さらにThrough The Lineなんていう言葉まで登場し、アバブとビローを一貫させるべきだ、なんてことも言われるようになった。やがてアバブザラインはエーティーエル(ATL)、ビローザラインはビーティーエル(BTL)とアルファベットで略して呼ばれたりもするようになった。

90年代後半以降のそんな動きは、考え方のひとつの定番になっていた。ただし、CMは例外だった。映像をビーティーエルの世界で流すのは、店頭のモニターなどであるにはあったが新潮流でもなかった。

インターネットで動画が当たり前になって、ちょっと、いや、かなり話が変わりはじめた。それがいま。

これまで販促部の人たちは、映像は管轄外な気がしていたのが、いや、ネットで動画流せるじゃん、ってことになってきた。映像を多くの人に送り届けるには、テレビ媒体を買わなければいけなかった。販促部の人たちの範疇ではなかった。ところが、ネットなら、媒体費はいらない。意外に映像を流すにはサーバー代がけっこうかかるが、とにかく、映像を流せるぞ。

映像にもビローザラインが選択肢のひとつになってきた。

映像も販促だ!これが、”今後”を考える大きな鍵になるんじゃないか。・・・疲れたので、また次回ね。

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コメント

  1. いつも勉強させて貰っています。BTLって、販促の仕事だったのですね。飲料や食品、し好品はコンビニとスーパーが販売地点ですよね?ここで、高精細でシズル感満点の映像〈マルチメディア)の販促を低コストで出来るのなら、即販売に誘導するトリガー〈引き金)広告メディアになるではありませんか。デジタルサイネージが最右翼になるロジックがたちます。良く似合う、もっともふさわしい媒体です。ここに至れば、日本の夜明も近いですね。

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