この土日の間に、”EDIT THE WORLD”というステキな名前の、女性編集者の方のブログの記事がぼくのウォールで話題になっていた。「若者がある日突然、雑誌を読み始めることなんて、ない。」というタイトル。朝日新聞社の社長の新年の挨拶を取り上げていた。
木村伊量という名の社長は、こんなことを言ったのだそうだ。
「デジタル・ネイティブ」と呼ばれるいまの若者たちが社会の中核を担うことになっていくと、彼らに紙の新聞はどこまで読まれるでしょうか。彼らがある日突然、紙の新聞を読み始めることは期待できるでしょうか。
さらに・・・
厳しい言い方になりますが、紙媒体に書くことだけこだわる記者は数年後には仕事がない、くらいに思っていただかなければなりません。
とも言ったと。
うむむ、確かにすごいメッセージだ。大新聞の社長が、若い世代はもう新聞を読まないし、紙媒体にこだわってちゃ仕事ないぞ、とまで言ってのけた。
これを読んで、頭の中で連動して思い出したニュースがある。“電通が早期退職者100人募集”というニュース。それだけ聞くと、ああ、いわゆるリストラね、としか思わないだろう。だって大手製造業なんかもやってるしさあ、と軽く受けとめてしまう。
でも、ちょっと業界に通じてる人なら、”あれ?今期の業界は悪くはなかったのに、なんでこのタイミングで?“と不思議に思っただろう。これからはともかく、少なくとも2013年3月期は、前期が震災で大きく沈んだ反動で、前年比は悪くはないのだ。いわゆるリストラをするタイミングだろうか?
ぼくも、いまいち解せないなあと思っていたら、“電通が早期退職を募る狙い 広告業界のガリバーが直面する構造変化”という解説記事が出ていた。ふむふむ、なるほど。業績が悪いからリストラしたのではなく、むしろ悪くないタイミングで今後に備えるためらしい。そして、広告業界のデジタルシフトに備えてのことらしい。
“従来型のマス中心の広告ではなく、成長分野であるデジタル領域に経営資源をシフト”するため、とある。
さらに・・・
来期は、グローバル化が一気に進み、デジタル領域に強いイージスとのシナジーを追求することで、「ビジネス構造の変化によってもたらされる節目の年になる」(電通経営企画局)。
最大手代理店の経営企画が、2013年度を“節目の年になる“と言っているというのだ。
大新聞の社長が、大手代理店の中枢の人間が、“デジタルシフト”を公式に口にして、対応しようとしている。
デジタルが来るぞ、というのはもう、何年も前からみんなが言っているじゃないか。もちろんそうだ。でもここでポイントなのは、社長や経営企画が言っているという点だ。これまで、マスメディア関係の中でデジタルに携わるのは“周辺の部署にいる変わり者“だった。中心にはいなかったのだ。真ん中じゃなかった。それはそれで、そういうものだと思っていた。変化は周縁から起こるものだからだ。
でも、真ん中がデジタルシフトを唱えた。備えるのだと言った。そういう年になると認識した。これは大きなことだと思う。
みなさん、どうやら今年はそういうことらしいですよ!変化はいつ来るのか、来てはいるがゆっくりしすぎじゃないか、そんなイライラはもうおしまいらしい。待ったなしの2013年がやって来たのだ。
あとは、そうだな。いろんな会社や組織の真ん中の人たちが、正しい認識をして、適切な対応を打ちだせるかどうかだ。そこを誤ると、数年でかなりまずいことになると思う。
“デジタルシフト“を問われて、「うん、そうだね、だからデジタルの部門をつくったよ」とか「デジタルに強い人材を採用したんだ」とか言って満足しているようではダメだ。必要なのは、そういう付け焼き刃な対策ではない。もっと根本的な策を具体化しなければならない。
組織全体が、デジタル化しないといけないんだ。年齢も部署も関係なしにね。一部じゃなくて、全員が変わるんだよ。
そう、正解はこういう考え方。その違いは明らかだろう。デジタル人材をとってつけて安心しているようでは、安心なんかできないのだ。いまアナログな連中も含めて、一切合切デジタル化するのだ。無理があるけど、その無理を押して実現しないと、組織として生き残れない。
なぜならば、これから起こるのは、旧メディアとデジタルメディアが並ぶ存在になるだけではないからだ。旧メディアがほとんどすべてデジタル化していくからだ。朝日の木村社長が言っているのはそういうことだ。電通がリストラするのは、デジタル化できない人は辞めてもらうかもよ、というメッセージでもあり、それによってぶつぶつ言わせずおっさん社員もデジタル化させようとしているのだ。
社会が変わるというのは、そういうことだ。当たり前なのだけど、それが分かってない人は、まだまだ多い。そして今年は、その変化についていけないとまずい状況になるのだろう。パラダイムシフトが起こりつつあるのだからね。
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