今年の1月に”マルチスクリーン型放送研究会”についてこのブログで書いた。関西キー局を中心に推進している実験で、IPDCという仕組みを使っている。詳しくはこの研究会のサイトを見てもらうといいと思う。テレビ放送とスマートデバイスを連動してコンテンツを送り届ける仕組みだ。
放送とスマートデバイス上のコンテンツを連動させようとする際、画面が同期できるかの問題が出てくる。さらには、ネット上のトラフィックに支障がないかも課題となる。テレビのようにマスの人数を相手にしている場合、ネット上のトラフィックがものすごい量になりトラブルが起こりかねない。
マルチスクリーン型放送では、電波を使ってテレビモニターに映しだす通常の番組と一緒に、スマートデバイス用のコンテンツも送ってしまう。だから、完全に同期できるしトラフィックの問題もまったく起こらなくなるのだ。ただし、各家庭に特殊なルータが必要になるのだが。
同研究会では、6月のINTEROPでもちょっとしたデモを作成して展示していた。番組とスマートデバイス上の画面が同期して、面白くて見たことないコンテンツ体験ができた。
先週、11月14日〜16日に開催されたINTER BEEでは、さらに本格的なデモが展示され、パワーアップしていた。これはかなり驚いた。
関西キー局に加えて東海や九州など地方局も参加し、各局が独自のデモ番組を制作していたのだ。INTEROPでは合同でひとつのデモだったのが、十数種類のデモが体感でき、マルチスクリーン型放送の可能性がぐっとリアルに味わえた。そこで、いくつかをここで紹介しよう。
(関係者の皆さん、著作権や肖像権などで問題あったら言ってくださいね。)
まずこれは大雨を伝えるニュースのデモ。
手前のiPadを見ると、大雨の詳しい情報が配信されているのがわかるだろうか。
そしてこの画面ではわかりにくいが、地域ごとに異なる情報を配信している。雨が強い地域にはその詳細を地域に合わせて送り届けているのだ。
それから次は、テレビ大阪の人気番組「やすとものどこいこ!?」をベースにしたデモ。東京で言えば「もやサマ」に似ている、街歩き番組なのだそうだが、その中で買い物をする。
手前のiPadでは番組の中に出てきた商品が次々に並んでいっている。
商品で気になるものがあったら、iPad上でタップする。そうすると、個別の説明画面になる。ここで”おとりおき”しておくとあとで購入までできてしまう、という設定のデモだ。
テレビはいずれ買い物が出来るようになる、ということはスマートTVの概念が出てくるずっと前から言われてきたが、地上波を前提にした具体的なデモは初めて見たかもしれない。(CATVやIPTVではすでに可能だったりするが)
同様の仕組みはCMでも可能だ。ニッセンのCMでタレントが着ている服をECサイト同様、いきなり購入できる。
いままで認知させるしかなかったテレビCMが、直接売場になるかもしれないというわけだ。ファッションショーを見ながらケータイで服を買うのが最近ありになっているなら、これもありだろう。
最期は競馬。放送とは別のアングルの映像を映したり、オッズなどの多様な情報をiPadで見れたら便利じゃないか。
この研究会は去年の12月に起ち上がったばかりで、まだ一年に満たないのにここまで具体的なデモを作成しているのはすごいスピードだと思う。正直言って、この手法は特殊なルーターが必要になるので実際に普及させるハードルは高いと思っていたのだが、ここまで具体的なデモを見せられるとひょっとするかも、という気持ちになってくる。そういう狙いでここまで頑張ったのだろう。
テレビ放送の新しい価値付けが必要だと言われている中で、こういう”お金になりそう”なものを見せつけられると、人は動くというものだ。マル研の行く先が見逃せなくなってきた。ルーターの機能はテレビに内蔵することも可能でそういう機器も展示されていた。数年後には、テレビはこうなっているのかもしれないなあ。
関連記事