今日は書くべきネタがいっぱいあるのだけど、一度にかけないので少しずつ書く。で、今回は自分の会社の話をするよ。
6月に映像製作会社ロボットを辞めて、7月からビデオプロモーションという広告会社にいる。創業者はいまは名誉会長の役職となった藤田潔だ。
この日曜日、10月30日放送の朝7時からのフジテレビの番組「ボクらの時代」に、その藤田潔が出演した。大橋巨泉さん、永六輔さんと三人でのトーク番組だ。
大橋巨泉さん、永六輔さんと聞いても20代ぐらいの人だとわからないかもしれない。お二人とも放送作家でタレントでもある。いまで言えば秋元康さんが近いかも。それぞれ息の長いヒット番組を企画し、司会などで出演もしていた。
昭和30年代の、テレビ黎明期から活躍し、まだ海のものとも山のものともつかなかったテレビの形をつくってきた人々だ。
ビデオプロモーションの創業者がなぜそこにいるかと言うと、一緒に仕事をしてきたからだ。創業当初は、永六輔さんのマネジメントもしていたのだ。巨泉さんが司会者としての地位を不動にした「11PM」は藤田潔が企画した番組だ。
身内ながら褒めてしまうけど、藤田潔はほんとうにすごい人で、ビデオプロモーションはあまり世間に知られてないけど、規模が小さいわりにすごい仕事をしてきた会社だ。
「鉄腕アトム」のアニメ番組がはじまった時、藤田潔は手塚治虫を連れてアメリカに行き、NBCでの放送を成立させた。日本のテレビ番組が海外で売れるなんて当時は誰も思わなかっただろう。
その時NBCの人に、「うちのスタジオで番組を見ていけよ」と言われてみたのが、夜11時台のワイドショーだった。そんな遅くにテレビを見るのかい!と驚き、さっそく戻ってから日本テレビを口説いて成立させたのが「11PM」だった。
ある世代までの人なら、子供の頃に、こっそりふすまを開けて父親が見ている「11PM」を盗み見した経験があるだろう。そういう、画期的な番組だった。
規模の小さな広告会社なのに、そういう大胆な企画を立てて成功させてきたのが藤田潔とビデオプロモーションだ。番組を広告会社の側が企画するのは電通博報堂以外ではなかなかできないのだが、それをやってきた。いま放送しているものでも、「THE 世界遺産」「食彩の王国」「美の巨人たち」などがそういう成り立ちなのだ。
じゃあ番組制作会社なんですね?とよく言われるのだけど、そうではない。企画した番組の提供枠を扱う広告会社だ。ってわかりにくいよね?
話を戻すと、藤田潔にとっても、巨泉さんや永さんにとっても、テレビはまだ切り開かれていない荒野であり、フロンティアだったのだろう。テレビとは何なのか、まだまだわからないことがいっぱいあり、その分、何ができるか考えて成立させる醍醐味に満ちあふれていたんだろう。
映画という娯楽の王様が一方には存在し、テレビは敵視されながら、でも確実に成長してきた。時代の欲望をどん欲に呑み込んでぐんぐん成長してきたのだ。
いま、よく似た構図が出現している。当時の映画とテレビの関係が、いまのテレビとネットの関係に置き換えられる。ネットはきっと、否が応でも、新たな時代の欲望を呑み込んで成長していくのだ。
ぼくがビデオプロモーションでたくらんでいるのも、テレビでの実績を生かした上で、ネットで何ができるか、だ。もっと言えば、テレビとネットを組合せて何ができるか、だ。
藤田潔はよく、「視聴質」という言葉を口にする。視聴率では測れない番組の価値、視聴者との関係があるのではないか、ということだ。これも重要なポイントだと思う。テレビとネットを融合させた仕組みを、視聴率とはちがう尺度で提示できれば、この業界が大きく変わるだろう。
これは、いまやみんなが真剣に考えるべきことだと思う。
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