日本映画は生き残れるのか・・・配給会社にはカラーがある・・・

前回は「日本映画は生き残れるのか・・・映画らしさとか、もやもやと・・・」なんていうもやもやしたタイトルで映画について書いた。これに続いてしばらく映画の話をしようと思う。

『探偵はBARにいる』が興行収入ランキング1位になったのに驚いた。そのことも前回書いたね。なにしろ、東映の映画が、しかも東映の若者向け(少なくとも年配向けでも子供向けでもない)作品がトップに立ったのは、ほんとうに珍しい。

というのは、ここ数年、いや十年ぐらいかな、トップに立つ日本映画はほとんど東宝だった。このあたりは『テレビは生き残れるのか』でも触れなかったことだよ。

東宝の独走は、この十年ぐらいの日本映画の特徴的な現象だ。日本映画製作者連盟という団体が毎年、前年の映画興行のデータを発表している。過去のデータもあるので、とても貴重なサイトだ。そこへ行って、この十年間の興行収入ランキングを見てみよう。毎年、興収10億円以上の作品が発表されている。

2010年は10億円以上の日本映画は29本あった。そのうち東宝配給作品は19本。東映は5本。松竹3本。なぜかワーナーブラザーズが2本ある。ざっと2/3が東宝。

2009年は・・・34本中東宝22本、東映4本、松竹4本(共同配給含む)、その他4本。
2008年は・・・28本中東宝21本、東映2本、松竹4本、ワーナー1本。
これがもう少し前だといくぶんちがう。
2000年だと・・・18本中東宝10本、東映6本、松竹2本。

十年前はそもそも、興収10億以上の作品が少ない。東宝の比率は半分程度。一方近年は、30本前後と増えた中、東宝比率が上がっている。

・・・というか、要するに、東宝だけ伸びて、東映と松竹はさほど伸びていない、ということなんだ。

『テレビは生き残れるのか』の中でぼくはしきりと、日本映画がいかにテレビの力を借りて2000年代に成長したかを書いている。でもそれをもっと詳細に厳密に言うと、テレビの力で伸びたのは日本映画全体ではなく東宝なのだ。

どうして東宝だけ伸びたのか。すべての要因を調べ上げてつぶさに述べられたものをぼくは知らない。印象分析的に言われていることをまとめるならば、東宝の戦略的勝利なのだろう。

例えば、映画館の立地。東京で言えば新宿や銀座から日比谷の辺りのそれぞれの映画館の場所を思い浮かべてみよう。どことなく華やかな場所に東宝の映画館があり、そこから少し離れた、でもなんだかうらぶれた場所に東映の小屋がある。これが、全国の繁華街でほぼ同様。

そもそも、3つの配給会社にはおのおののカラーがある。

東宝は、阪急文化なんだ。阪急や宝塚を生み出した戦前の事業家、小林一三が東宝の生みの親。関西でも”山の手”文化を作り上げた一環で育った映画会社。だから、洗練されていて、華やかで都会的だ。加山雄三の若大将シリーズや、クレージーキャッツの喜劇映画など、現代的で都市のにおいがする映画。

一方、東映は時代劇で一世を風靡し、さらに高倉健のヤクザ映画、これを現代風にした「仁義なき戦い」シリーズ、極道の妻たちシリーズのように、バイオレンスの香りぷんぷん。

松竹は、大船撮影所でつくられてきた人情物語の会社。古くは小津安二郎の家族映画、寅さんシリーズ、釣りバカ日誌シリーズのような泥臭く温かい物語が松竹らしい。

こういうそれぞれのカラーがあるから、東宝は華やかな場所に、東映はちょっとうらぶれた場所に、立地するのがふさわしかった。

ここからは、書きながら考えるのでかなり印象論になるけどね。

東映の映画は、ぼくが若かった頃つまり80年代までは独特の魅力があった。『探偵はBARにいる』にも受け継がれている、カウンターカルチャーの匂いを放つ作品群があったのだ。そしてそれはひとつの映画的な世界だった。80年代の映画青年にとって、映画とは、カウンターカルチャーの最たる存在だったのだ。

でもカウンターカルチャーを走っていてもお金にならない。若い女の子には「ださい」「くらい」と忌み嫌われていた。90年代に入り、映画界はテレビの力を頼りはじめた。東映だって頼ろうとはしたんだぜ。でもテレビ界から見た時、東映の”うらぶれ”は邪魔だった。あまりプラスにならなかったんじゃないかな。

東宝の、現代的で洗練された文化の方が、テレビにはハマった。テレビのメインストリームは、垢抜けていなければならなかったのだ。

かくして、東宝だけが、テレビの力の恩恵を享受した。東映や松竹は東宝にはかけられない作品が回ってきて、東宝が享受した分のおこぼれしかもらえなかった。

日本映画の2000年代の隆盛を、テレビとの関係からさもしい視点で書いてしまうと、そうなる。

そして、この傾向は、いま現在の話にすぎない。これからまた、新しい流れの軸がはじまろうとしている。ただ、それが日本映画にとっていい流れなのかどうかはわからないなあ。いい流れなんかこの先、あるのだろうか・・・と、次回に続く・・・

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