映画『ソーシャルネットワーク』は、とくに強く期待していたわけでもない。ただ、ソーシャルだソーシャルだと言ってるんだから観とかなきゃなと思ってて、どうせなら公開初日に観ておくことにした。
そうしたらね、面白かったんだよ!
まあ、映画の感想って、事前の期待度との相関関係が大きく、ぼくは期待してなかったから大きくプラスに働いてるのかもしれない。でも、Facebookという題材の旬さとは関係なく、純粋に映画として面白かった。あらゆる面でのクオリティが高かったと思う。3Dだなんだという映像がどうのという映画じゃない分、脚本の完成度は素晴らしいものがある。
映画について語る時、ネタバレを気にする人は多いけど、たぶんまだ観てない人も心配しなくてもいいと思うよ。ストーリーをばらしちゃうような事は書かないから。(実はネタバレって『シックスセンス』や『ユージュアルサスペクツ』のような映画じゃない限り気にすることはないんだけどね)
物語は、かなり”いきなり”動き始める。出だしから本題に入る感じだ。で、おしまいまでずーっとそのままのスピード感で飛ばしていく。そのテンポの良さがまず楽しい。と言ってももちろん、カーチェイスもないし殺人も起こらない。主人公たちが新しいサイトビジネスを進めていく。だからビジュアル的には若者たちの会話だらけ。それでいてスピード感を感じる、なんとも不思議な映画なんだ。
そしてまた、かなり最初の方で、この物語は「成功後のいがみあい」の話だということもわかる。だから、少しずつ成功していくステップを見守る、アメリカンドリームの映画でもない。わりと最初から、陰鬱かもしれない。後味が悪そうな話だな〜、という感じで進んでいく。
登場人物はたくさんいるようで、実は少ない。主人公たるマーク・ザッカーバーグ。起業時の相棒、エドゥアルド。Facebookの企画のもとになったハーバード・コネクションの開発を依頼した双子のウィンクルボス兄弟とその友人ディヴィヤ。そしてナップスターの創業者で途中からFacebookを指導するショーン・パーカー。
いや、もっと言えば、登場人物はたった二人だ。マークとエドゥアルド。この二人の友情の話なんだ。あるいは、マークがエドゥアルドとの友情を裏切りながら成功する青春ストーリーだとも言える。この二人はいがみあうのだけど、最後まで互いを友だちだとも思っている。そこがいちばんこの話の美しいポイントだ。
観ているうちに、なんだかどこかで聞いた話だという気がしてくる。まず、Appleの創業時に似てる気がする。スティーブ・ジョブズとウォズニアック、そしてジョン・スカリーの話のようでもある。
それからさらに、ビートルズみたいだ、って気もしてくる。ビートルズの成功と友情の亀裂はまったくちがう流れだったわけだけど、ザッカーバーグの成功談はビジネスマンというよりロックンロールスターの方が近いのではないか。実際、Facebookの仲間は会社というよりサークルみたいで、ムチャをする場面も多々出てくる。
そう言えばぼくは「スティーブジョブズというロックンローラー」と題した文章を書いたことがある。ジョン・レノンのメッセージと、ジョブズがMacintoshに込めたメッセージは似ているんじゃないかと。
IT起業とは、つまりロックンロールに似ているのかもしれない。新しいITサービスを考え出して世の中に送り出す行為は、ポップスターが世の中にウケる曲を創り出して録音するのと似ているのかもしれない。
そんな視点に立ってこの映画を観た時に、また感心することがある。アメリカという国のどん欲さだ。Facebookの連中が若かろうと、ムチャをしようと、”こいつら成長するぜ”と読んだら、ベンチャーキャピタルだの弁護士だのがハイエナのように寄ってくる。でもそのおかげで、Facebookというサークル活動が、世界を動かすビッグビジネスになる。
アメリカには、イノベーションを成長させるシステムが(たとえハイエナのようだとしても)しっかり存在するのだ。若者だからと鼻であしらったりしないし、ネクタイを締めてないからと足げにしたりもしない。ましてや、出る杭を打つように突然法律をある方向に解釈して、検察団が乗り込んだりもしない。若者たちのイノベーションを支えた方が、世の中全体がトクをすると知っているのだ。
まあ、そんな風に、いろいろと多面的に面白いし、語るべき切り口がいっぱいあるんだ。それだけ、豊かな映画なのだと言えるだろうね。
物語の最後に、成功してもなお、主人公がコンプレックスを持っていることがわかる。起業の原動力は実は、そのコンプレックスだったのだ。それがいちばん、人生では大事なのかもしれない。「ちっくしょー!今に見てろよ!」その想いは、成功しても決して満たされはしないのだけれど・・・
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ウザい程、毎日コメントしてごめんなさい。余りに旬な話題ばかりでついつい書いてしまうのです。これの書籍が出たのをたまたま知って立ち読みしただけですが、マーク氏が贈与経済学のビジネスモデルをベースに、全く新しいWEBコミュニケーションプラットホームを構築し、世界に普及させたというくだりがありました。ブレークスルーするビッグビジネスとは、現在の世界がパラダイムシフトする発想でなくてはならないのだろうな・・としみじみ感じました。今、通信と放送が融合する新規産業が模索されていながら既得権にしがみつく放送業界を擁護する政治勢力もあって、日本ではこういう斬新な事業がやっぱり生まれてこないのだろうか?否、そんなことは決して無い筈だ。起業マインドのある者たちが自己責任で<新メディアとコンテンツの大陸発見>に勇気持って立ちあがれば良いだけなのだ。ビジネスアイデアとそのソリューションとデジタルマーケティングを創造するのだ。リアル〈実在)ポータルサイトはまだ処女地だ。チャンスはまだある!断固、アメリカに負けじとやり遂げようぜ!!
ビルゲーツに関するジョークを思い出しました。”Why is not Bill married?””‘Cause his thing is Microsoft.”