クリエイティブは世界を目指せ・・・とは言うものの・・・

今年のクリエイティブビジネス論を振り返るシリーズ。やっぱり「世界戦略」もおさえておかないわけにはいかないだろう。

どうして世界戦略を考えなければならないのか。

日本のコンテンツ市場は行き詰まりそうだからだ。というか、日本経済自体がもうすでに行き詰まっている。

コンテンツ市場とは何かを考えていくと、近代という時代とは何かとか、日本の高度成長とは何かという問題に突き当たる。そして、日本のこの60年間ほどがいかに希有な時代だったかがわかってくる。

まず日本の高度成長は結局なんだったのか。ぼくはずいぶん前に野口悠紀雄さんの「1940年体制」という論に学んで日本の戦後の納得のいく解釈を得ていた。それは1940年代に完成した戦時体制がそのまま戦後の経済的社会的制度となり高度成長を支えたというものだった。

最近また池田信夫さんのブログなどで知った新たな解釈によれば、人口の問題も大きかったのだという。人口がどんどん増えた上に、農村から都市部に大移動した。その人口が大量生産と大量消費をもたらしたのだという解釈。

そしてコンテンツ市場も、そんな大量生産大量消費の中から生まれたのだ。大量消費に必須のマスメディアの興隆とともにコンテンツ市場も成長してきた。

いま、そのコンテンツ市場が行き詰まっているのは、そんな高度成長の流れがとっくに止まったからと言えるだろう。

だから、世界、なのだ。

今年、K-POPの人気が出た。韓流ドラマはこの十年ぐらいで定着した。これは明らかな韓国の国策の成果。ではどうして韓国のコンテンツ産業は国を挙げて世界を目指したのか。韓国は国が小さく、人口も少ないからだ。

日本も高度成長が終わった上に人口が減少しはじめている。だったら世界を目指すべきなんじゃないか。幸い、世界を目指すに値するだけのクオリティを日本のコンテンツ産業は獲得しているようだ。世界へ行くべきタイミングなのだと言える。

世界を目指すべき理由はもう一つある。

マスメディアの時代が終わろうとしている中、いわゆるミドルメディア的な数の顧客を各コンテンツが獲得する必要がある。人口が縮小している日本だけでそんなファンを獲得するより、世界でファンを作っていった方がいいはずだ。

「おいらとあんたの世界戦略」では、だいたいそんなことを書きつづってきた。大筋は正しいと思う。

ただし、これはただの「りくつ」に過ぎない。論理的には正しい。でもこれを具現化するのは並大抵ではない。

まずもちろん、世界との物理的な距離がある。いくらネットで世界とつながるとは言え、世界の人がどんなコンテンツを求めていて、どんな経路でコンテンツに触れていくのか、ネットでの理解には限界がある。本気でやるのなら、主要各国に支社ぐらい必要だろう。

それから、言葉の壁も大きい。距離の壁はひょっとしたらネットがあれば超えられるかもしれないが、そこで言語は別の壁になる。魅力的なコンテンツを作れたとしても、数カ国語に翻訳しないと「世界戦略」にはならない。プロモーションなどの活動でも日本語だけでは何も伝わらない。

コンテンツ産業は楽天みたいに英語を公用語にするぐらいやらないといけないのだろう。

こうした困難を乗り越えるには、個々の企業では限界がある。日本のコンテンツ企業はほとんどが中小企業だ。いや、小さな個人事務所がいっぱいだ。世界に支社なんて持てるはずはないし、英語の堪能なスタッフをそれぞれで雇うなんて無理だろう。

たぶんぼくたちには何らかの形で、連帯が必要なのだ。

「おいらとあんたの世界戦略」を実現するための、コンテンツ産業の”連帯”。2011年への、宿題なのかもしれない。少なくともぼくは、強く意識していこうと思っている。

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コメント

  1. 私の今いる会社は随分前に中国語圏へ進出し、最終的に撤退した経緯があります。その時の最大の問題点であったロジスティックスの問題がデジタルコンテンツという形で解消されつつある今こそコンテンツ産業の連携が重要だと思います。

  2. コンテンツの概念だが、エンターテイメントの分野だけを考えず、市民や地域の生活文化だって立派なコンテンツになる。膨大なコンテンツを自動生成する仕組みを作りたい。金を稼ぐ発想の前に、個人ひとりひとりが得意な分野で勝手に自己発信し、これをクラウドサーバで多言語変換して世界とつながるコンテンツプラットホームを創出した方が話が早い。その中には映画好きな学生が作ったショートムービーがあって、もし世界規模でブレークすれば稼げるかも知れない。最先端の情報通信技術とコンテンツ流通エンジンさえあれば、日本が狙う世界戦略は成功すると信じたい。

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