ACRという技術について、何度かこのブログでも書いてきた。
Auto Content Recognitionの略で、”自動的にコンテンツを認識する仕組み”という意味だ。代表的なものではShazamというアプリがある。
スマートフォンでダウンロードしてもらえばすぐわかるのだが、音楽が聞こえている時、Shazamを起ち上げて聞かせると、誰のなんという曲かを教えてくれる。
指紋を読み取るようにあらゆる音楽を記憶しているサーバーがあり、聞こえてきた曲と照らし合わせるのだ。だからそういう技術の総称を”Finger Print”と呼んだりする。
Shazamと同じくらい世界的に知られているACR技術がGracenote社のものだ。アメリカの企業だが日本にもブランチがあり活動している。
GracenoteのFingerprintはテレビにも使える。さてここからが本題なのだが、テレビのACR技術を駆使することで、テレビCMにターゲティングの手法を加えることが”理論上”可能となる。ただしそのためには、多くの家庭のテレビ受像機にGracenoteの技術があらかじめ搭載されている必要がある。家庭のテレビの側で番組の音声認識をするのだ。
詳しくは、去年の春のこのブログの記事を読んでもらうとわかりやすい。
さあ、セカンドスクリーンを本気で考える時が来たぞ!〜Future Of Smart TV by Gracenote〜
CMの時間になったらACRが認識し、外部サーバーに入っているCM映像をテレビ受像機別に送り込む。仮に自動車メーカーのCMを出すにしても、独身の男性若者にはスポーツカーのCMを、子どもがいる家庭にはRV車のCMを、初老の夫婦には高級セダンのCMを、それぞれ送りだすことが可能なのだ。
去年の春にデモンストレーションされたこの仕組みは、今年、実際にアメリカの数百世帯をサンプルに実験運用をしている。どんな進捗か、気になるというものだ。
ぼくたちの勉強会”ソーシャルテレビ推進会議”が主催する8月28日のSocialTV Conference2014では、最初のセッションでGracenoteの西川氏が来てくれ、まだ詳しい結果は出ていないものの、実験の概要や途中経過を教えてくれる。それに対し、スポンサーの立場での意見をいただくべく、カゴメの重友氏にもご登壇していただく。
今回のカンファレンスには谷口さんや眞鍋さんなど派手な人が出るので、この最初のセッションは一見地味に見えるかもしれない。だが実は、いちばんラディカルな内容になるだろう。楽しみにして欲しい。
SocialTV Conference2014
【プログラム】
19:00-19:10
1) 活動報告と提言 境 治
提言:TVアプリのこれから
19:10-19:50
2) 2020年のターゲティング広告
モデレーター:深田航志
パネラー:西川正樹(Gracenote)
重友大樹(カゴメ)
19:50-20:30
3) コンテンツがメッセージになる・ネイティブ広告
モデレーター:手島湖太郎(インフォバーン)
パネラー:谷口マサト(LINE)
嶋瀬宏(アウトブレインジャパン)
休憩(10分)
20:40-21:20
4) 映像の冒険者たち
モデレーター:境 治
パネラー:眞鍋海里(BBDO J WEST)
瀧 祐夏(東京倉庫)
合田知弘(テレビ東京)
歓談(約30分)
22:00終了予定
テレビでターゲティング広告、なんてホントに可能なのだろうか。理論的には可能だが、Gracenote搭載のテレビが普及し、テレビ局側もちゃんと参加しないとできない仕組みだ。来年とか再来年にいきなり実施できるものではない。
ただ、十年先くらいにはもっとリアルになっているかもしれない。
テレビでターゲティング広告をやるについては、異論反論オブジェクションがひしめきあいそうだ。「テレビ広告のよさは、自分に関係ないCMでも接触できることで世の中全体のトレンドが把握できることだ。テレビでもターゲティングしてしまうと、そういうメリットが失われてしまう。」反論のポイントはこんなところだろう。
ぼくも少し違う立場から、テレビでのターゲティング広告は落ち着いて見守るべきだと思う。
アドテクって、すべてがほんとに効果あるの?と最近思うからだ。みんな経験している通り、一部のサイトを一度でも訪れると、別のサイトを見ている時に、先のサイトのバナー広告が出てくる。それが、もういまでは頻繁に起こるので、不快にさえなってきた。
あるいは、年齢や性別、経歴などに合わせた広告が目の前にどんどん出てくる。それがなんだか、的外れなのだ。50歳越えてるからって、性的な意味も含めたエナジー商品がどんどん表示される。かえってその商品を嫌いになってしまう。いったいアドテクって効果あるのか?
それでも、テレビにはいずれターゲティング広告をはじめアドテクが押し寄せてくるだろう。時代の流れというやつだ。どうしようもない、とお手上げになるか、だったらこんなことできないか、と新しい考え方を巡らすか。後者の方がトクをするのだろうとぼくは思うが、どうだろうか。
さてSocialTV Conference2014のお申し込みはこちら。
まだ少し席があるのでお早めに。
コピーライター/メディアコンサルタント
境 治
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sakaiosamu62@gmail.com
@sakaiosamu
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