6月8日、日曜日の午後、さーて今日の夕飯はなにつくろうかなー、などとのんびり考えながらだらだらiPadをいじっていたら、飲んでたお茶を吹きそうになった。BLOGOSの記事にぼくのツイートが載っていたのだ。
「横綱・白鵬さんの告白「良いマスコミ」「悪いマスコミ」論に意見してみる」のタイトルで、こんな記事が出ていた。
英国在住のジャーナリスト木村正人さんの記事を”軽はずみな書き方”と批判しているのだけど、まさかご本人が読むとは思わず、ぼく自身が軽はずみなことをしでかしていた。あーあ、すんません、失礼なものの言い方で。
ちなみに木村さんの最初の記事「もう誰もマスコミを信じない 横綱・白鵬の告白」はこちら。
ただ、言い方は失礼だが内容的には間違ったことは言ってないつもりだ。そしてこの反論記事を読んでも何ら思いを新たにすることもなかったし、この反論記事がまたさらに反論したくなるものだった。ぼくも同じBLOGOSに転載される論者として、この記事にふれずに新たな記事を書くのも何だなあと思うし、記事の最後では「そう主張することが境さんのいうように果たして「軽はずみ」なことなのか。」と、また名前を出して問いかけられているので、何か言っとかないわけにはいかないだろう。ツイートしようかと思ったけど、きちんとまとまった文章にした方がいいと考え直したので、書いておきたい。
で、ここから先は木村さん宛てに書くので”ですます体”になります。
さて木村さん。ぼくのツイートへの反論のブログ記事を読みましたが、正直言って内容があちこち飛びすぎて何が言いたいのかわかりませんでした。(BLOGOSのコメント欄では何人かの方が冷静にその点を書いてくれていたのでホッとしましたが)
まず”「良いマスコミ」「悪いマスコミ」論に意見してみる”とタイトルにありますが、ぼくはそんな言い方してません。東スポなどが「悪いマスコミ」だから偏っていると言っているわけではまったくないですよ。
あの見出しでぼくのツイートがポンと出てくると、まるでぼくがそう言ったみたいで、なんだかなーって感じです。
東スポはマスコミと言えばマスコミですが、相当な異端児だと思います。それは自他共に認めるところではないでしょうか。「東スポ伝説」という本もあったくらいで、極端にセンセーショナルな(そしてありえないことも含んだ)見出しを一面にどかんと据えて人びとの興味をそそる新聞です。受け止める側も「おー!東スポ今度はこうきたかー」とその極端さをわかっていて楽しむ、そういうメディアです。その東スポの記事が「もう誰もマスコミを信じない 横綱・白鵬の告白」の中で2つも例として出てきます。
他の例も、日刊サイゾー、NEWSポストセブン、ZAKZAK、が出てきていますが、マスコミの代表例と言うにはあまりにも特殊なメディアだと思います。サイゾーやポストセブンは、”マスコミを批判する”記事も多く、つまり彼ら自身は自分たちをマスコミと思ってない可能性が高いです。
そういうメディアだから”偏った”と言ったわけで、「悪いマスコミ」だからではありません。
そして、そんなかなり特殊なメディアの記事を並べてそれを根拠に「もう誰もマスコミを信じない」と見出しを立てていることを”軽はずみ”と言いました。木村さんの反論記事を読んでもその考えは変わりません。
軽はずみとまで書いたのは、誤解を生むからです。いま、ネット上の記事を誰もがざざーっと読んでしまいます。ぼく自身もそうです。見出しを見たあと記事の中身は大ざっぱに拾い読みをしてしまいます。ですから「もう誰もマスコミを信じない」の見出しでこの記事をざざーっと読んだ人は、「そうか多くのマスコミが白鵬にひどい記事を書いたんだな」と受け止めてしまいかねない。だからぼくは2回もツイートしたのです。みんな誤解しかねないから。
木村さんの反論記事の後半、論旨があちこちに飛んでいてわかりにくかったです。ただ、大まかに言いたいことは分かります。日本のマスメディアは、そしてジャーナリズムは、インターネットの革新性を活用して変えていくべきだ。そこはまったく共感するところです。ぼくも同じ思いで動いています。テレビとネットの融合を日々考え、そのための勉強会を運営したりセミナーイベントを企画したりしています。ブログでも主要なテーマはそこです。
ぼくも日本のメディアやジャーナリズムには経年疲労があちこちに露呈していると思っています。それを変える鍵がネットだというのもまったく同感です。
だからこそ”言い方”は大事だと思います。批判する時は”ちゃんと”批判しないとそれこそスルーされちゃいます。ぼくが感じた以上に、マスコミの現場の人たちがあの記事を読んでも「一部だけあげつらうんじゃないよ!」と受け止めたでしょう。それでは意味がなくないですか?
ぼくはBLOGOSで木村さんの記事を前々から読んでいます。欧州在住のジャーナリストの視点で日本について書いている貴重な記事だと思う。その木村さんの記事が(ぼくの目からみて)軽はずみだったのでものすごくがっかりしました。リスペクトしていたのに、なんでこんな記事を書くの?そんな人だと思わなかったよ。そんな思いでツイートしました。
木村さんが書いていたように日本のテレビも新聞も、ネットへの対応が遅れていました。でも、それぞれの会社に少しずつ、ネットを軸にした改革への思いを持つ人びとはいて、去年から今年にかけてはその人たちの努力が実りはじめています。テレビ局にも、新聞社にも、小さいけれどダイナミックな動きはあって、これから大きな渦になっていきそうです。また外部のIT系の人たちの知恵と結びつきはじめてもいます。
そんな中で、木村さんのように日本のメディアのことを知っていて、欧州にいる人の情報や知見は大きな価値を持つと思いますよ。批判記事より、欧州の新しい動きを伝えて刺激していけばいいと思います。これは余計なお世話ですが。
あれ?反論に反論するはずだったのに、こういう終わり方でいいんだっけ。まあでも、もう激しいやり取りをするほど若くないんだよね・・・。
コミュニケーションディレクター/メディアコンサルタント
境 治
What can I do for you?
sakaiosamu62@gmail.com
@sakaiosamu
関連記事