昨日(12月10日)、ビデオリサーチ社が発表したプレスリリースがぼくのウォール上で話題になった。
「ビデオリサーチ 「Twitter TV指標」提供に関し、Twitter社との協業に合意」
このリリースを元にした記事は各ニュースサイトにも載ったので、読んだ人も多いかもしれない。
これを見た時、ぼくはデジャヴ現象のように感じた。昨年の10月にも似た内容のリリースが出たからだ。
「ビデオリサーチ 「Twitter TV指標」提供に関し、Twitter社との協業に合意」
これを見て、ぼくはこんな記事をブログに書いている。
「テレビは第2のステージへ〜ビデオリサーチがTwitterをもとに指標整備に着手〜」
書いたことを簡単に略して言えば、視聴率とは別の指標が出てくるのはいいことだよね、ということで、ビデオリサーチ社の発表を喜んで迎えたのだった。
去年のリリースには”いつから”かは書いていないので、時間はかかったけどリリース通り実現しますよ、ということではある。でも時間かかったなあ。時間かかったのは、まあ、いろいろあったんだろうなと推測してしまう。いろんな人にいろんなこと言われちゃったのかもしれない。だとしたら、それを乗り越えて正式発表にこぎつけたのは、頑張ったね、と言っていいのかも。何しろ、今回の発表は「「Twitter TV 指標」は、2014年6月よりご提供を開始いたします。」とはっきり書いてある。胸を張ってスタート日を書ける状況をつくれたんだろうね。
ビデオリサーチ社は”視聴率”を算出する会社だ。
視聴率はテレビが批判にさらされる時、何かと矢面に立たされてきた。「テレビがつまらなくなってきた。視聴率至上主義だからだ」的な批判がふつうに飛び交ってきた。それはそれで、的を得ているとは思う。視聴率を1%上げようとせこせこ工夫していくと、爆発的な面白い番組にはならないだろう。
でも視聴率が矢面に立たされる時、じゃあカーディーラーの社員にクルマを売るなと言える?とも思っていた。視聴率は直接ではないがテレビ局の売上を左右する数字だ。広告取引の基準になる数値だし、テレビ局は事業モデルが広告収入を軸にしている。気にしないわけにはいかないのだ。
一方で、視聴率ほど”数字が独り歩き”する例もないだろうとも思う。「あのドラマがついに○%を切ったらしい」とか「あのドラマがなんと△%を超えたぞ!」などと数字が飛び交う。言われるとどうしても「そりゃひどい!だってダメな企画だと思ってたしね」とか「ええー?!じゃあ次回は絶対見よう!」などと視聴する側まで振り回されていた。広告取引のために測定される数値だし、批判される時は「そんな600世帯だけで全体がわかるはずないよ」などと言われる一方で、「半沢直樹は40%を超えるか?!」と注目される。
視聴率はその本質をはみ出して絶対的な数字になってしまっていた。
実際には15%をとっているがしょうもない番組もあれば、3%だけどちゃんと見ると素晴らしい番組もあるのだ。3%だって単純計算で3百万人以上見ているわけでそんな数の人びとが支持してるならすごい価値があるはずだ。
視聴率に問題があるとすれば、その番組にどれくらい価値を感じて見ているかはわからない点だろう。見ている人の”気持ち”まではわからないのだ。
そこがテレビの不思議なところで、積極的に見ようと思わなくても”つけっぱなし”にしておく、よく考えたら奇妙な使われ方をしてきたメディアだ。なんとなくつけておく状態が視聴率にカウントされる。ちゃんと見てなくてもいい、むしろその方がいいのかもしれない。
ビデオリサーチが取り組む「Twitter TV指標」は、そこに新たな可能性をもたらす。視聴率は低いけど、Twitter指標ではこれこれでしたよ。そんなことが言えるかもしれないのだ。
去年の発表では「テレビ局のハッシュタグを含むツイートの件数を番組ごとに出す」というシンプルなものだったが、昨日のリリースではもっと多様なデータを出すと言っている。
「Twitter TV指標」は、『ツイートの投稿数』『ツイートしたユーザー数』『インプレッション数』『インプレッションユーザー数』などにより構成されます。
とあるので、ツイートの影響力のようなものが導き出せるのだろう。
さらには・・・
もうひとつは、テレビ番組に対する評判や話題性を、交わされるツイートから明らかにし、「番組コンテンツの価値」を探ることです。ツイートの密度(時間変化・集中度)や構造(投稿とインプレッションの比率)、そしてツイートの内容(テーマ・話題)などを俯瞰的に確認する必要があると考えています。
とある。まさに、視聴率とは別の番組の価値も出していくということだろう。視聴率とは別の”視聴質”が見えてくるかもしれない。
ぼくもブログで何度かデータを見せてきたが、ツイートを分析してそこに視聴者の”感情”を読み取れないかと試してきた。それは例えばこういう記事にまとめている。
2013夏ドラマTwitter分析(1)「半沢直樹」と「Woman」はTwitterでも熱い!
2013夏ドラマTwitter分析(2)半沢直樹のヒットはつぶやきから読み取れた?
このやり方もちょっとしたトライアルに過ぎないが、twitter分析の面白いところは、手法がいろいろある、ということだ。ビデオリサーチ社の言わば”公式データ”とは別に、考え方Aで出したデータ、考え方Bで出した結果なども出てくるだろうし、それらを見比べることでその人なりの価値基準ができてくるかもしれない。
もしそれが広告取引に調味料のように加わってくれば、”視聴率至上主義”から脱却したユニークな番組が出てくるかもしれないのだ。
そう考えると、来年の6月、この調査のスタートを楽しみに待ちたくなってくる。みんなでその結実を見守っていきたいものだ。
コミュニケーションディレクター/コピーライター/メディア戦略家
境 治
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