日本映画のすそ野が広がった?〜2012年映画産業統計発表〜

毎年1月後半、前の年の日本での映画興行の統計が発表される。日本映画製作者連盟という業界団体がまとめた結果だ。昨日、その団体のサイトで2012年の統計が発表された。まずはここをクリックして、その概要を見てみよう。見てもらえば分かる通り、興行収入は1951億円だった。内訳は、邦画が1281億円、洋画が670億円だった。

・・・どう思いますか?って言われても、それだけではなんとも言えないよね?そこで、下の表を見てもらおう。

2001年から2012年までの日本の映画興行収入をグラフにしたもの。緑が全体、青が邦画、赤が洋画だ。

これを見ればこの十年で日本の映画興行に何が起こり、またこの三年間が重要なターニングポイントだったことがパッとわかるだろう。

まず2000年代前半、日本映画は洋画つまりハリウッドにかなわなかった。圧倒的に邦低洋高だったのだ。若い人には信じられないだろうけど、もっと前、90年代の日本映画は、暗くてダサくてつまらなかった。と、思われていた。女の子を映画に誘う時、邦画に誘うことは少なかっただろう。2000年代前半まではその傾向を引きずっていた。

それが2000年代半ば、2006年あたりでがっぷり四つで同等になり、2008年にはついに邦画の方が洋画より上になったのだ。ぼくの本「テレビは生き残れるのか」にはこの辺の状況がこってり書かれている。テレビ界が映画を活性化させたのだ。

それが、2010年に新たな局面を迎える。映画興行全体がぐいっと上がった。それまでは邦画が上昇してもしなくても、全体は”2000億円前後“だった。それが2010年にはいきなり10%も上がって2200億円になった。原因ははっきりしている。3D映画のヒットだ。「アバター」を皮切りに、3D作品が次々に公開された。

ところが2011年に東日本大震災が起こり、また3Dがブームだったかのように動員力が減り、1800億円にどんと下がった。

去年、2011年の数字が発表された時、ぼくはこのブログで暗澹たる気持ちになり、このまま映画は下り坂になってしまうのではないかと暗い予測を書いた。だっていい要素がほとんどないと思えたし、VODサービスも伸びてきて家にいながらにして多様な映像視聴ができるようになっている。わざわざ映画館に行く人は減るんじゃないか。

それがどうだろう、去年の数字は!くいっと。グラフがくいっと上がっている。しかも、赤い線の方、つまり洋画は去年の下り坂勾配そのままに去年さらに下がったのに対し、青い線、つまり邦画はくいっと上がっている。邦画がくいっと上がったから、全体もくいっと上がって、もともとの“2000億円前後”の水準にほぼ戻っているのだ。

そしてもうひとつ、重要な傾向がある。また別の表を見てみよう。

※字が小さくて読みにくいよ、って人は表をクリックすると拡大して見られる。

2000年代の映画興行は、メガヒットで保っていた。「ハリーポッター」や「パイレーツ・オブ・カリビアン」のようなハリウッド超大作シリーズ。「ハウルの動く城」のようなジブリ作品。「踊る大捜査線」「海猿」のようなテレビ局が生み出したヒットシリーズ。ほんとにメガヒットで、100億とかいう数字が並んでいる。

去年はどうだろう?相変わらず「踊る大捜査線」と「海猿」だ。・・・だが、数字をよく見ると、前のようなメガヒットと言える興行成績ではない。

一方、興行収入10億円以上の邦画の数は39本と、史上最多。突然数がくいっと上がっている。

つまり、すそ野が広がったのだ。

100億円を超えるようなメガヒット作はなくなったが、”けっこう稼いだ“作品の数が増えたのだ。

ぼくはほんとうに、この先は下り坂を下るだけだと思っていたので、よかったと思う。でもなぜかがわからない。こんなに映像があふれているのに。我が家なんか、AppleTVで、ついこないだロードショー公開されてた作品が観れる。huluでは大ヒットドラマが無尽蔵と言いたいくらい観れる。

・・・あれ?でもそう言えば、ぼく自身も映画館に行く回数は増えたなあ。なんでだろう?・・・うん、そうだ、観たいと思う作品が次々に出てくるからだ。・・・作品のすそ野が広がった、そして同時にエンタテイメントとしての水準も上がったのかもしれない。

面白いことに、去年ぼくが観た邦画で上の10億円以上のリストに入っているのは、39本中、9本。10億円圏外の作品をたくさん見たのだ。

順不同で挙げると、「桐島、部活やめるってよ」「その夜の侍」「鍵泥棒のメソッド」「ポテチ」「夢売るふたり」「希望の国」「黄金を抱いて翔べ」これらは、劇場で観たのだけど、10億円以上のリストに入ってなかった。でも十分に面白かったよ。

面白い映画が増えている。そんな感触はあるなあ。これはどういうことなのかなあ・・・もう少し考えてみるからね・・・

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