干場さんと知りあったのはいつだったか。つい最近の気がしていたのだけど、ほぼ2年前のこのブログ記事に登場している。iPhoneを買おうかと考えはじめていたぼくの前に、そのiPhoneを手に登場したのだ。ぼくより二回りほど年上の(つまりずいぶん年配ってことだ)その人が、平気でiPhoneを手にしていたので、もはやぼくには買わない理由がなくなった。
電通の友人が紹介してくれたのだった。やはり電通のクリエイティブで仕事をしてこられ、電通アメリカの社長も経験されている。いやその前に、70年代にアメリカ留学してMBAを取得している。
70年代のMBAって、きっといまほど認知度もなかったんじゃないかな。しかもそれを、広告制作の仕事をしている人間が。ものすごく珍しい、いやおそらく日本初の出来事だったのではないかな。
つまり干場さんはそれくらい学があるというか、教養人だ。広告制作界では今の世代でもなかなかいないんじゃないか。
そんな干場さんが本を出版した。「宇宙の中心は勇気だ」というタイトル。同じ題名でブログを書いておられるのは知ってるかな?もっとも、ブログの方は「宇宙の中心は勇気だ」part2、という表記になっている。このタイトルの由来などは、本を読んでもらえばわかる。
教養人・干場英男がブログを本にまとめた。ブログもけっこう読みでがあるのだけど、やはりこうして書籍の形になると、なんというか、”かたまり”になる。干場さんの”教養”がぎゅっと押し固められて凝縮されて机の上に転がっている。この濃度は、ちょっと濃いぞ、比重がすごく高そうだぞ。
干場さんを教養人だというのは、何かそれこそ、広大な宇宙のように知識や語彙が果てしなく広がり続いている、そんなイメージを、干場さんの文章を読むと感じるのだ。
書籍の文章から少しとり出してみよう。
曰く・・・
とても真似のできない新しい日本語のクリエイトに、横っ面にビンタで左頬が腫れ上がった。
曰く・・・
アインシュタイン物理学とか量子力学なども、ずんずん哲学の中に行軍していくのもわかるような気がする。
はたまた曰く・・・
ここにもファイがいう<時間>が飛車筋なのか角筋なのかで効いているのかなって思う。
ここでぼくが何をとり出しているかというと、豊富な語彙を操って繰り出す比喩的な表現だ。面白いのだ、それが。しかも、どうやらすっと出てくるようだ。同じようにユニークな比喩的表現、独特の言い回しがFacebookのちょっとしたコメントにも出てくるのだ。うん、おそらく”すっと”出てくるんだろう。
干場さんの”広大な宇宙”はさらに、取り扱うモチーフや過去の経験の縦横無尽さにもつながってくる。カリフォルニアやパリなどでの体験や向こうでの友人の話が出てくるし、ミュージシャンや作家など多様なアーティストが登場する。
何かの機会に話してくれたことがあった。学生時代に60年安保闘争に参加し、その興奮を持ったまま電通に入社したのだそうだ。ぼくは62年生まれで、20代の若者時代は80年代のバブルと重なっていた。でも干場さんはその20年前、高度成長期に20代をすごしたのだ。
彼の宇宙には”戦後”のほとんどの時代が入っている。その上に、平成もぼくなんかと同じ程度の厚みで入っているのだ。ネットにも早くからアクセスしていたようだし、何と言ってもぼくがiPhoneを買うきっかけになるくらい、そういうデジタル機器に手を出す。ツイッターが盛り上がればツイッターをやるし、どうも今はFacebookだとなればすぐにFacebookに入ってみる。
好奇心旺盛?そうだけど、そうでもない。”好奇心”というレベルよりずっと自然感覚で、変に意気込みもなく最新ツールを使っている。
干場さんは、常に”現在”に向き合わずにいられないんだなあと思う。”現在”にアクセスし続け、どんどん更新していっている。それを60年安保の頃からずーーっっと続けているんだろう。70年安保も80年代のバブルも90年代の失われた十年も、次々にアクセスし続けて今に至っている。だから当然iPhoneだって使うんだよ。そんな感じなんだろう。
ほんものの”教養人”とは、そういうものなんだろうと思う。アクセクして最新情報を必死こいてたぐり寄せ続ける貧しい感じではなく、大した苦労もなく、自然に情報が入ってくるのだろう。そしてそれをひけらかしもしない。ん?だってこれはみんな知ってるんでしょ?てな感じ。
教養人だと強調してしまったけど、そこだけ見て読むとちょっと苦い思いをするかもしれない。美味しいんだ、そうなんだと料理に手を出したら、なんだこれ、苦味もいっぱいじゃん!となるだろう。何しろ干場さんのもうひとつというか、最大のというか、特徴は毒舌!ビートたけしも目じゃない毒の強さに、うかつに手を出すとやられちゃうのでご注意を。まあ、そういうところも”現在”にアクセスし続ける感じで、年配の方なりの落ち着きなんて微塵もないのだわ。
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