日本の子供たちのために言うけど、彼らはそんなアホじゃないよ

「More Access,More Fun!」という、わりと有名なブログがあってぼくもよく読んでいる。ITマーケティング日誌というサブタイトルがついていて、いつもなかなか鋭い視点で感心している。のだけど、こないだ読んだのはちょっとあんまり偏っていたので、をいをい、と思った。

「先の見込みが無い日本と日本の電子書籍の未来を明るくする、たったひとつの方法」と題して書かれた記事で、日本人はどんどんバカ化していて本を読まなくなっているから、電子書籍だって読まれるはずがない。解決するには著作権フリーの青空文庫をあらゆる端末で読めるようにするべきだ、と、ざっくり要約するとそんな内容。

この記事、どうやら今の若い人が本を読まなくなっていることへの強い憤りがあるようだ。

少し引用すると・・・

ゆとり教育がいけないとか、日教組のせいだとか、国家の絶頂期から衰退期に向かうときにはみんなこうとか、ほかに楽しいことがあるとか、いろいろな見方があるだろうが、その大きな原因に学童期(小〜高校生まで)の読書比率が大きく下がっていることが絶対にあると思う。

学童期の読書比率が大きく下がっている・・・そうなの?

うちの娘は読書オタクだ。ものすごい勢いで本を読む。テレビは「はねとび」と「メチャイケ」ぐらいしか観ない。食事が済んだら部屋にとっとと引っ込んで、本を読む。あとは、勉強かケータイいじるかだ。

ミステリーが好きで、小学生の頃はあさのあつこのジュブナイル的なものを読んでいたが、高学年になると乙一とか、かなり際どいものに走り、山田悠介をすべて読破し、最近は伊坂幸太郎にハマっている。宮部みゆきを試しに貸したら、あのヒューマンな感じが好きになれないのだそうだ。

そんな娘はめずらしい中学生のようで、そんなにめずらしくはないようだ。けっこう、いまの子供たちは本を読む。

これについて友人の広告制作者 @norizos がこんなTweetを寄せてくれた。

@sakaiosamu うちの娘もヒマさえあれば本読んでます。小さい子向けのおもしろい本が昔より圧倒的に増えて、小さい頃から本を読むクセがつき、それが続いている感じ。本読む子、実は昔より多いんじゃないかなあ。本とテレビはあんまり関係ないと思う。本をおもしろいと思うかどうかだと。

子供向けの面白い本が増えたのではないか。先述のあさのあつこもそうだが、面白いジュブナイルの書き手がいまたくさん出てきている。

先のブログにはこんなことも書かれている。

我々の子供の時代には教育熱心な家の子供部屋には本棚があり、文学全集や百科事典が入っていた。「勉強しなさい」って言われて部屋に入って勉強しないで本を読む。うちにも少年少女文学全集と岩波の世界文学全集で合計数百冊あり、高校時代にほとんど読破した。

ぼくが子供の頃、家にも世界文学全集があったけど、3冊ぐらいしか読まなかった。面白そうじゃないんだもん。読書が好きな理由は別にそんなことにはないなあ。

確かに出版不況と言われて久しい。でも、例えばこのブログ「数字で見る出版業界の動向 本当に活字離れは進んでいるのか」を読むと、いろんなことがわかる。雑誌は明らかに落ちているが、書籍は雑誌ほど落ちてはいない。広告費でも雑誌メディアの急降下は痛々しく、出版不況とは雑誌不況なのだとわかってくる。

さらに、先のブログを読むと、書籍の販売部数はさほど減っていないこともわかる。一点あたりの販売部数は落ちており、一冊一冊が売れなくなってはいるけど、書籍は嘆かわしいほど減ってはいないのだ。

日本人は相変わらず本が好きだし、若者人口が減っているのに書籍販売がさほど減っていないのは、若い人もそれなりに本を買っているということだろう。

ここでぼくが言いたいのは、メディア接触を、自分のころと比べて語るとまちがいを起こしかねないよ、ということだ。メディア接触は、個々人の価値観形成にも大きな影響を与えているので、自分が経験した接触が最良だと思ってしまう。そんな傾向があるんじゃないだろうか。

ぼくが子供の頃、子供たちはテレビに釘付け。ドリフターズの全員集合をブラウン管にかじりつくように観て、意味もわからず「チョットだけよ」とカトチャンの真似をした。大人たちは、これからの日本を担う世代がバカになっていく、と嘆いたものだ。

テレビばかり見てるとバカになるぞ、と言われながらテレビを見た。当時のぼくたちのメディアの選択肢の中で、テレビがダントツに面白かったからだ。

いまの子供たちのメディアの選択肢の中では、テレビよりケータイだけど、小説だってかなり強い存在になっているんじゃないだろうか。面白くなったからだ。それから、作家も多様になり、小学校低学年にはそれにふさわしい作家がいる。さらに育つとそれに見合う作家がいる。娘の作家遍歴を見てきた父親からすると、子供にとっての読書体験もずいぶん幅が広がったもんだなと思う。いかにもかしこまった世界文学全集より、面白そうな本がいっぱいあるのだ。

別の見方をすると、書籍はもともとロングテール的メディアだったのが、この十年ぐらいでさらにその傾向が進んだ。作家のすそ野が広がったといえないだろうか。実はいま、書籍は素晴らしい多様性を迎えているのかもしれない。

繰り返すけど、自分の時代だけを物差しに、メディア接触を語ってはいけない。物事を見誤る。テレビを中心にマスメディアが、ががががーっと発展した時代に育ったぼく(1962年生まれ)たちは、そうとう特殊な育ち方をしているのだと、思った方がいいかもしれないよ。

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