テレビとはブースターなり(アイドルの話でもあり、広告の話でもある)

自分が出演して以来、毎週観ている「新・週刊フジテレビ批評」。この22日(土)は評論家・宇野常寛氏が出演し、AKBとテレビについて語るというので期待満々。コメンテイターが稲増教授だということで、これは新旧アイドル論が展開か?との予感も一部にはあったらしい。

宇野常寛氏は少し前、9月17日にも登場してこの夏のテレビドラマについて語っている。この時ぼくははじめてテレビで彼を見たのだけど、すごく面白かった。言っている内容が新鮮で納得がいくだけでなく、テレビ映えするキャラクターだと思った。”人間味”が伝わってくるのだ。思わず『リトル・ピープルの時代』という宇野氏の近著を買ったのだけど、まだ読んでない。積ん読状態だ。

22日の番組は「AKBとテレビ」がテーマだったのだけど、その中で宇野氏が、ぼくにとって興味深いことを言った。

よく知られている通り、AKBは2005年のデビューからずっと、秋葉原の劇場を活動拠点にしている。テレビで見るようになったのはごく最近、はっきりいろんな番組に出演するようになったのは去年あたりからではないだろうか。

そこはこれまでのアイドルと際立ってちがうポイントだろう。テレビが拠点ではないのだ。

これについて宇野氏がこう言った。

「テレビというのは、ある程度の足場を作ったあとの増幅器としてしか使えない。逆に、増幅器としてはかなりまだ使えるんだということを証明していると思うんですよね。ブースターですね」

「おご・・・」おご、というのは、宇野氏のこの発言を聞いて声に出して驚いた時のぼくの声、なんだけど。それくらい驚いた。

うーん、ものすごく大事なこと、言ったね、いま。

それに、これはこのところ、ぼくが企業に今後のコミュニケーションとして提案する時のひとつの重要なポイントになっている。つまり、まずテレビから、マスメディアから考えるのをやめましょう。ネット上で(あるいはリアルな場で)活動して、それをソーシャルメディアでコミュニティにしていき、重要なのがマスメディアで増幅することです!そんな感じの、カタカナだらけでいかにも広告屋な感じのことを、ぼくは企業に言っている。

いま、コミュニケーションを真剣に考えようとすると、こう考えざるをえない、と思うのだ。マスメディアから紙媒体に落としていき、なんだったらネットでも、というのがこれまでの姿勢だったのだけど、順番がちがうのだ。もちろん、商品の状況によるので、全部これね、ってことでもないのだけど。

とにかく、自分がわりといま正面から取り組もうとしていることと、AKBに関係があるとは。いや、AKBの話はぼくもこの番組に出た時に”農耕型”の例としてあげたわけで、ぼくも結びつけていたはずなのだけど、宇野氏にあらためて強く言われたので、あ、そ、そうだよね、そうだったよね、という気分になったというわけ。

この「テレビはブースターだ」の考え方は、例えばいま話題の”さとなお”さんの『明日のコミュニケーション』にも少し出てくる。

でもぼくにとって忘れられないのは、実は前の会社、ロボットにいた時、博報堂の著名なクリエイティブディレクターの方が、ぼくらロボット社員のために講演をしてくれたことがあって、その時にも増幅装置としてマスメディア(=テレビ)を使う、ベースはまずネット上でつくる、という考え方をレクチャーしていた。大手代理店の人がマスメディアを二次的に捉えるのを聞いてかなり驚いたものだった。確か2年ぐらい前で、まだ”ソーシャルメディア”がいまほど浮上していたわけではない。

テレビは、ブースターだ。

これはテレビを外から見た言い方だ。アイドルをどう売り出すか。広告をどう効率良く送り届けるか。だから、テレビそのもののテレビ論ではない。

それから、テレビがブースターであることは副次的な話で、先に小さな範囲でも深い関係を結ぶことこそが重要だ、ということでもある。そこの方が本質だ。AKBの「会いに行けるアイドル」というコンセプトは、だから先見の明がある。2005年からこのコンセプトを掲げていたのは、いまという時代を見通していたとしか思えない。すごいなあ、秋元康、って。

とにかくこの「テレビ=ブースター」の考え方は、アイドルのみならずコンテンツビジネス全般、そして広告戦略の中でもすごく重要。ある種、ひとつの主流になるかもしれない、とぼくは思う。頭に入れといて、損はないんじゃないかな。

番組の終わりで、宇野氏が最後に「ありがとうございました」と言うのだけど、気鋭の批評家のわりにキュートで愛想もいい。なんか、この人、面白いなー。今後も楽しみだわ。

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