DONの蛸三郎さんにお会いした

金曜日は東京ビッグサイトで開催されているデジタルパブリッシングフェアに行ってみた。午前中の2時間ほどいただけなんだけど、ちょっと物足りなかった。これまで電子書籍について情報収集してきた以上の内容ではなかったのだ。まあ、ぼくが先を急ぎすぎているだけかもしれなけれど。

前回、「とにかくはじまったんだなあ」というタイトルで書いたように、日本の電子出版はまだスタートしたばっかりで、具体的なサービスになりきれていない、という印象。いちばん気になったのは、中国の電子書籍端末のブースに、なんともいえない”勢い”があったことかな。

さてその夜、明石蛸三郎さんにお会いした。新聞業界の最新情報についてのブログ「DON」を書いておられる方だ。あるいは、Twitter上で@Akashitakosaburのアカウントでやはり新聞に関してTweetをどんどん発信している方でもある。

お会いしたのは新橋のもつ焼屋。蛸三郎さんファンの方数名によるオフ会にぼくも駆けつけたのだ。途中からだったのだが、すでに飲み会は”できあがって”いて、蛸三郎さんもどんどん酔っぱらっていく。

「DON」を読んでいる人ならわかることだけど、毎日4〜5本のブログを次々に更新されている。そしてその多くは、海外の新聞などメディアに関する情報を翻訳したものだ。ぼくはそのペースになんとか追いつきながら記事に目を通している。そしてその内容の濃さに圧倒される。

新聞業界に警鐘を鳴らしているのだろう、という意図は読んでいるだけで感じとれた。そしてぼくはそこに、どこかシンパシーを感じていた。このクリエイティブビジネス論だって、クリエイティブに携わる”仲間”のために書いているつもりだった。これから大変なことになるよ、いままでと同じ考え方じゃまずいよ。そんな気持ちで書いてきて、08年後半からホントに大変なことになってしまった。

蛸三郎さんのブログにも似たモチベーションがあるのかな、と思っていた。でもまた、もっと深刻で、真剣な危機意識を日々の文章の奥底に感じてもいた。そしてまた、どこか哀愁というか、悲哀というか、淡々とした文章の裏側に人間味めいたものもにじんでいた。だからぼくは蛸三郎さんに強い興味を持っていたのだ。いったいどんな人なんだろう?

名刺交換をすると、<新聞・電子出版評論Blog「DON」主催 明石蛸三郎」と堂々と印刷してある。その下に()付けで小さくご本名が入ってはいるけど、”明石蛸三郎”でセルフブランディングがなされているわけだ。

「DON」はその内容が新聞業界の人にとっては”キツすぎる”ようで、いろんな意見をもらうそうだ。だから、あまり本名や素顔を明かさないようにしているという。ぼくもここで、うかがったご経歴や外見の印象は書かないでおこう。

ただ、お話をうかがって、ブログを書くモチベーションが何なのかはよくわかった。やはりそれは、新聞に携わってきた仲間への警鐘なのだけど、彼にとっては具体的な他業界の例がある。その悲惨さを目の当たりにしてきたからこそ、真剣にメッセージしているのだ。

そのあたりは、DONの今日の記事の中で3つに分けて書いておられる。「失われた10年に於ける金融業界のようになって欲しくない」と書いている。金融業界の信頼崩壊の顛末を間近で見てきたからこそなのだと。

それからもうひとつ、ブログにも書いておられるが、「新聞業界はどうなってもええんですよ、ジャーナリズムが崩壊してしまったらあかんのですよ」と、ぐでんぐでんに酔いながらぼくに熱く語った。そうだ、大事なのは、業界や会社じゃないんだ。そこで働く人間が大事で、その人間たちが拠って立つべき精神が大事なんだ。それを支えるビジネス的な根拠が、このままただ失われてしまっていいのか。失われてならないなら、どうすればいいのか。そんなことを、蛸三郎さんは問いかけているのだろう。

さてぼくが「DON」にもうひとつ感じていた”人間味”。その発信源はもちろん、蛸三郎さんの人柄にあった。ブログのシリアスな内容とはまた別の、ユーモアとペーソスの入り交じった蛸三郎さんのキャラクターがブログからもにじみ出ているのだ。飲みながら話していると、ホントに”関西のおっさん”だ。Twitterでも夕方から突然「いけーーーーっ!」「逆転だあー!」などと阪神戦実況Tweetに変身するのだけど、阪神大好きな関西人のおちゃめなおっさん。なんと言うか、誰からも愛されてしまうようなキャラクターだった。

彼はこれから、新聞業界のコンサルタント的な人になっていくんじゃないだろうか。記者を引退して大学教授などになって古巣の業界への意見を言う人はいるけど、もっと現場に近い意識と、ビジネス的な見地を併せ持って業界に提言できる人は意外に他にはいない。彼が鳴らしてきた警鐘が、実際に各新聞社の上の層にまで届く日は近いとぼくは思う。

蛸三郎さんはぼくたちとの飲み会に感激してくれて、何度も握手を求めてきた。そのたんびにふれる蛸三郎さんの手は意外に柔らかく、温かかった。その感触が蛸三郎さんという人、そのものなんだなあと感じた。またきっと、お会いできるんじゃないかな。

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コメント

  1.  有り難うございます。お褒めの言葉、恐縮です。ちょっとばかり、弾けすぎました(苦笑)。次の日も、オフ会を2つはしごしました。肝臓が破裂しそうです。 非常に明瞭な分析をして頂き、有り難うございました。少し補足するなら「書く話に困らない」というのがあります。Twitter経由で情報収集していると、1日4〜5本さばかないと溜まっていく一方なんですよ。神戸に戻って来て、貯まってるのをどうしようかと今悩んでいる所です。 後もう一つ「マスコミの方々は、案外自分自身の職場事情や、業界のカルチャーに疎い」というのがあります。これは今回の在京で発見しました。次の日、東京の超有名私大のマスコミ関係の授業を聴講させて頂き、その後で現職のマスコミ関係者の方とお話ししました。 席上、ロイターの東京支局にお勤めの経験がある方に、「あそこの労組のHPは凄いですよね〜」と話した所「えっ、労組があったんですか」と驚きのご様子。こちらがブログの当該記事を見せたら、食い入るようにご覧でした。 その方はロイター在職中、上司の命令は絶対だと思っていたそうです。現在の職に変わられ、同僚が上司と取材を巡って言い合いしているのを見て「あ、そんなのオッケーなんだ」とカルチャーショックをお受けになったのだとか。頭脳明晰な方でしたけど、案外そんな事があるんですよね。いろいろ考えさせられる5日間でした。 今後なんですが、教壇に立てるものなら立ちたい。「マスコミ道」を説く元記者さんは多いのですが、「ビジネスとしてのマスコミの今後」について説く人はいないからです。超有名私大の学生さんが、マスコミを志望なさってる姿を見て、そう思いました。 併せて、コンサルティングもやれるならやります。というか、今からやります。前に電子新聞化について相談をなさって来たある地方紙の方に、今回のオフ会で知り合った別の業者さんの開発した技術を紹介してみます。アメリカの新聞で行っている、面白いサービスを、その技術で移植出来そうなんです。これで両者が化学反応を起こしたら面白いだろうなと思ってます。結果はまたお知らせしますね。ではまたお会いましょう。今度は酒をセーブします(苦笑)。 

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