2009年興行のびみょーな結果〜日本映画産業論その9〜

はい、またグラフを作ったよ。あ、これは解説しないとわからないか。

その前にまず、このサイトを見てみよう。日本映画製作者連盟という団体が毎年1月末に、前の年の興行データを発表しているんだ。ほおほお、ふむふむ。そうか、去年の日本国内の映画興行収入は2060億円だったのか、前年比105.7%か、すごいじゃない!てなことがわかる。そのうち邦画は56.9%で1173億円か。

・・・でもここだけ見ても、2009年がどういう年だったのか、いまいちピンと来ないでしょ?そこで、こっちのページも見た方がいい。一番下に、2000年代のデータがあるよね?すると、邦画1173億円の興行収入の意味がわかってくる。これまででいちばん邦画の興行収入が高かったんだ!しかも2000年は543億円だから、この10年で倍以上になったんだ!

さてそこで、上のグラフの意義がわかってくる。邦画と洋画それぞれの興行収入10億円以上の作品数と、30億円以上の作品数をグラフにしたものなわけ。

するとあからさまにわかるのが、2005年をピークに、洋画の10億円以上作品数がガクンと下がっていること。2006年から邦画の方が多くなり、そして去年はぐいっと増えて洋画との差が開いている。一方30億円以上の作品数も、2005年あたりからデッドヒートとなり、一昨年、そして去年と、完全に邦画優位になっている。

へー、そうなんだ。だったら邦画、君はすごいじゃん、がんばってるじゃん。なんか、ついに洋画を突き放したって感じじゃん。順風満帆じゃん。これからは日本映画の時代だね!

うーんと、まあ、そう、ね。そうなんだけどね。これがね、びみょー、なんだわ。

2009年は、”ヒットと言える水準”の10億円を突破した作品数がグンと増えた。34本にもなった。

ただ、30億円以上の作品は前年並だった。つまり、10億〜30億円の作品数が増えた。もう少し詳しく言うと、10億円台の作品数が増えた。これはほんとに、一昔前のことを考えるとすごい変化で、90年代は邦画が10億円を越えると大騒ぎだった。それが去年はわりと”ふつう”なことになったのだから、画期的だよね。

でもね。

前にも書いたけど、興収20億円でも、ちょっと製作費がかさむ映画だと、あんまーり収益性がない。興行側(つまり映画館)や配給会社はわりとストレートに喜べる話だけど、製作の立場からすると、”もうちょっと行って欲しかったねー”って感じ。

少なくとも、10億円台の作品は、スペクタクルなものにはしにくい。テレビドラマの延長線的なものならオッケー、って感じ。そうすると、わりと日常的な設定や恋愛ものが安心だね、ってことになる。

もちろんね、日常的な設定でも面白い物語は企画次第ではある。

でもさあ、一方で、ここでも数回に渡って書いた『アバター』みたいなもんが映画館を席巻しているわけでさー。

・・・というわけで、書ききれないので、2009年の映画興行を見ながらもう少し語りましょか。・・・って次はまたちがう話題で書きたくなったりするかもしれないけど・・・

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コメント

  1. 記事拝読しました。(今日は有給休暇にて、こんな時間に書き込みをさせていただいています)http://www.eiren.org/toukei/index.htmlこのサイトは映画における多くのデータが揃っていてすごいですね!初めて知りました。参考になります!これを見てふと思ったのですが、邦画の配給会社は、あまりにも東宝が多いですよね。これは何かカラクリがあるのでしょうか?個人的には松竹や東映がもっと健闘してもいいはずだと思っていたのですが・・・映画制作サイドから見て、東宝に配給権を与えた方が何か相当メリットがあってのことなのかな?とふと思いました。

  2. コメントどうもです。東宝が多いのは、この10年の彼らの企業努力の成果だと言えるでしょう。それから、TOHOシネマズというシネコンネットワークを持っているのも強さのポイント。これは、ヴァージンシネマズを買ったのです。東宝が配給すると興行が成功しやすい、するといい企画は東宝で、となる。そうするとますます東宝の映画はヒットする。そんな好循環ができたというわけです。このあたりはまた書きますね。

  3. 解説ありがとうございます。なるほど、そういう理由があったのですね。ネットワークを持っていて、興行が成功しやすい配給会社があれば、必然的に制作サイドも東宝に魅力を感じますもんね。ありがとうございました。

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