興行収入は作り手にどう還元されるか完結編〜日本映画産業論その1.9〜

興行収入はなかなか作り手に還元されないぜ、という話を書いてきた。

しかし書いている事例が悪いんじゃないの?うん、それはある。トントンじゃあねえ。

じゃ、こうしよう。思いきって、興行収入が20億じゃなく30億円になった。その前提で考え直そう。

前に教えたでしょ、公式。みなさんも計算できるんじゃない?えーっと・・・
興行収入30億円ー15億円(劇場取り分50%)ー4.5億円(配給手数料30%)ー2億円(A&P料)=8.5億円

製作費が5億円だったから、8.5億円ー5億円=3.5億円

あ、これはなんかいいぞ。まず元とってまだ利益が残ってる。・・・30億円の大大ヒットなのにA&Pが2億円ってのはちょっとありえないか。ま、そこはおいとこう。シミュレーションだから。

とにかく3.5億円も利益が残った。そこから作り手にはいくら還元されるの?

うーん、まず基本的に、この利益は製作委員会が手にするものだ。え?そうなの?そうなの!だから作り手が製作委員会に参加していないと、つまり出資していないと、還元されない。余計な利益は手にできない。そうなの?ひどーい。

ってんで、最近は作り手(=制作会社)に成功報酬が契約で設定してある場合も多い。これは5%とか10%とか、さまざまね。30億ぐらいのヒットがあらかじめ見込める作品だと、5%くらいかなー。

というわけで、3.5億円の5%=1750万円が作り手に還元される。これはうれしいね。ボーナス出せるね。少しはね。

あれ、でも残りはどうなるの?まず幹事会社つまりいちばん多く出資して責任をいちばん負ってる会社が幹事手数料を持っていく。これもケースバイケースで、だいたいはテレビ局が幹事となり、少ない時は2%、多い時は10%とる。この場合、3%だとすると、1050万円、よかったね。

3.5億円から1750万円と1050万円を引いた残り3億22百万円。これを出資比率に応じて分ける。50%出した(と仮定して)テレビ局は1億61百万円。さっきの1050万円と合わせると1億7150万円だ、おめでとう。30%出した配給会社は9660万円だ。配給手数料と合わせて約5.5億だね、すごいねー。あとは出版社と広告代理店とビデオ販売会社が残りを分け合ったんだって。みんな儲かって良かった良かった。

・・・おや?なんかさー、テレビ局や配給会社が何億も利益出してるのに比べて、作り手代表の制作会社は?1750万円?これでおしまい?何言ってるんすか、あんたのとこは5億円渡したじゃないすか、5億円。それで好きなことやってスーツ着なくて良くて現場楽しそうで、いいじゃないすか。えっと、でも5億円は9割方使っちゃって、いちおう5000万粗利出してるけど、この3年間のこの作品の人件費と会社経費を差引くと・・・いや、だから成功報酬1750万円ももらえたじゃない、いいじゃなーい。ええ、うれしいっすけど・・・

てことで、最近は制作会社が出資する動きも出てきた。もしいまのケースで10%出資していれば、成功報酬と合わせて5000万の利益にはなる。まあ、これなら3年間費やして準備して脚本書いてもらって委員会で揉んでまた書き直してキャスト交渉してスタッフ集めてセット組んでCG制作して撮影してロケ場所確保して人止めてエキストラ集めて音入れして仕上げて完成披露やって公開にこぎつけた苦労も報われる・・・のかな?

まあ結局、資本主義社会なのだし、出資を大きくしないとね、リスクとらないとリターンも薄いわけで仕方ないんじゃないすか?まあ、もちろん、そう。基本はそう。ぼくも資本主義賛成。むしろ市場原理主義賛成。友愛反対。それはそうなの。

そうなんだけど、なんだろう、この徒労感は・・・

そいでね、調べていくと、これは少し、世界の常識とは、ちがうらしいんだな・・・てわけで、いよいよ日本映画産業論その2へ進もう・・・

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