興行収入は作り手にどう還元されるかの補足〜日本映画産業論その1.95〜

前回のシミュレーションの例は、製作費が5億円、興行収入が30億円だった。

これはものすごく幸福な例だ。どれくらい幸福なのかというと。

日本映画製作者連盟という団体が毎年1月末に、前の年の日本映画のデータを発表している。例えば2008年で興行収入が30億円を越えた作品の数は?・・・11本だ。ではその年に公開された日本映画の数は?・・・418本だ。

つまり日本映画の大半は、こないだ書いた例ほどには儲かっていない。

興行収入20億円でトントンだったね。では2008年で20億円以上30億円以下の映画は何本か?・・・4本だ。

ものすごく大ざっぱに言えば、もしすべての映画が製作費5億円だとすると、残りの400本以上の作品はトントンにもならなかったってわけ。

もちろん、すべての映画が製作費5億円ってわけじゃない。

興行収入が20億とか30億の作品は、製作費5億円では済まない、ことが多い。ヒットを狙う作品はスターがいっぱい出たり、スペクタクルな映像にどうしてもお金がかかる。製作費が多くかかる作品はもとをとるにも興収のハードルが上がる。

そこまで狙わない作品はまた、製作費を5億円もかけない。3億円、2億円、いや平均とると1億円ぐらいじゃないのかな?製作費のデータはないのでわからないが、けっこうそんなところだろう。製作費が低いと、制作会社が残せる利益も当然少なくなりがちだ。

つまり、大半の作品は作り手が制作利益で儲けにくい。というか無理して作っている。ヒットを狙うものは製作費はかけるけどその分、興行収入からのリターンは得にくくなる。

どっちにしろ、作り手はあんまり儲からない構造になってしまっているのだ。

そこをDVD販売で補っていた。DVD販売はシミュレーションしにくいのだけど、まあ何億かは委員会に入る。大ヒットすると7億とか8億とか。まあまあだったね、だと2億とか3億とか入る。ヒットしそうな作品はビデオ販売会社がMG(ミニマムギャランティ)を出してくれる。すると、数億円があらかじめ約束される。

興行収入でトントンだったなら、DVD収入から5%とかの成功報酬が入る。3億だと1500万だね。出資もしていればその分も追加で入る。10%なら3000万か。

これも、大ヒットだねとか、まあまあだったね、の話で、そんなにDVD収入が見込めるのはやはり、興行収入が10億円くらいまで。それは2008年だと30本程度。残りは、DVD収入もごく僅かだ。

その上、このところ急激にDVDが売れなくなってきている。かなり激しく。映画のDVD化で入る収入が、これまでの8割とか7割とか、になってきている。

てな感じで、作り手は儲からない。あんまり儲からないんだよ。

てことを理解してもらった上で、じゃあ日本と世界は何が違うの?という話に移っていこう・・・

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