興行収入は作り手にどう還元されるかのつづき〜日本映画産業論その1.5〜

前回、20億の興行収入の映画が、そのあとどうなるかを書いた。製作費に5億円かかってたとしたらプラマイゼロだぜ!

実際にはDVDで利益が出たりはするので、がっかりしなくてもいいよ。あくまで興行収入、つまり劇場公開でどうなるかを書いたのだからね。

ところで、本題は、興行収入は作り手にどう還元されるか、だったね。前回は製作委員会にお金がいくら戻ってくるかを書いた。製作委員会と作り手は同じなの?ちがうの?

正解は、同じといえば同じだけど、ちがうといえばちがう。あ、ぜんぜん意味わかんないね。

作り手=製作費を出した人たち、と考えると、同じってこと。でも、作り手=実際に映画をつくる作業を担った人たち、と考えると、ちがう。

製作委員会とはそもそも何なのだろう?これは一種の匿名組合なのだ。匿名組合とか言うとますます意味が分からないので、いくつかの事業者が少しずつお金を出し合って組成された集団、と書こう。

一般的なのは、テレビ局と配給会社がまず2大勢力だ。これにビデオ会社が加わったり、原作小説の出版社も参加したり、広告代理店も手を上げたり、いろいろ入る。最近は主演俳優が所属する芸能プロダクションも加わったり、Yahoo!も入ったり、プレイヤーの種類は増えている。

で、製作費を出し合うわけ。テレビ局がいちばん多く出す傾向が強い。配給会社もその次ぐらいの出し手。この2社で7割ぐらいは出すことが多い。残りは参加プレイヤーでそれぞれ1割とか5%とか。

いちばん多く出資した人が幹事会社になる。幹事は主たる責任を負うし、お金の管理もする。匿名組合で会社をつくるわけではないので、幹事会社の口座でお金を管理するわけね。テレビ局がかんでる映画は、テレビ局が幹事の場合が多い。

製作委員会に戻ってきたお金は、幹事会社の管理のもと、出資比率に応じて分け合う。これはビジネスなんだから当然だろうね。

ん?をいをい。じゃあ作り手はどうよ。

映画の作り手って誰でしょう?これがねえ、いっぱいいるよね。みんなすぐ監督だ!って思うでしょ?それからプロデューサーとか脚本家とか・・・あとは?・・・ふつう、それくらいまでしかイメージできないよね。でもカメラマンとか照明さんとか助監督とかプロデューサーの下とか、何しろ一本の映画のスタッフは何百人にもなる。

ぼくが言う作り手は、そういう人たち。

彼らには興行収入は還元されないの?

ベーシックな答えは・・・還元されません・・・

えー?そうなの?って思った?いや、思って欲しくて書いてるんだけど、そうなのです。

映画の興行収入は狭義の作り手(実際に作る作業をした人たち)には還元されない(基本的には)。

そ、そんなあ!あ、でもちょっと待ってね、この映画は製作費5億円。つまり、興行収入は還元されないけど、5億円の製作費がスタッフ(だけじゃないけど)に支払われている。

なーんだそうか、安心した。ホッとした。だったらいいじゃない。だって製作委員会にはそもそも戻ってこなかったわけでしょ?お金を出した人たちは、トントンになったんだから損はしてないし、ほんとの作り手にギャラは支払われているし、めでたしめでたし、じゃないの?

うんそうだよ、そうなんだけどね、ぼくが言いたいのはそのもっと奥の話。でもまた長くなっちゃったから、続きはまた次回ね。ごめん、長くって・・・

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