雇用を守りすぎると死んでしまう

内定を取り消した会社が続出してニュースになったわね。けしからん、ってんで。

もちろん、基本的にけしからんとは思うよ。

でも、わざわざ採用活動して一所懸命選んだ学生の内定を取り消すのは、当然のっぴきならない事情があったからだよ。迷惑料を請求していいと言えばいいけど、じゃあ内定取り消す会社に入りたい?

日本綜合地所の内定取消された学生が”じゃあ取消したことを取消すから入社してください”って言われてたら、どうなってたんだろう。迷惑料を払ってそのあと破綻したってんだから、日本綜合地所さんはけっこういいヤツだったんじゃないか。あるいは、もう破れかぶれだったんじゃないか。

派遣切りが話題になって、マスコミはこぞってけしからんの大合唱だ。企業は利益を内部留保にまわすなら雇用を守るべきだって、メディアの経済部のおじさんたちが真顔で言う。その人たちは、日本綜合地所のケースを見てどう思ってるんだろう。

内部留保は株主配当にも使われるけど、投資にも使われる。将来に向って何かの手を打つための資金なわけ。

投資よりも雇用をとにかく優先するかどうかは、相当悩ましいところのはずだ。そしてひとつ、みんなわかっとかなきゃいけないのは、投資より雇用を簡単に優先してたら、数年後破綻するかもしれないってこと。そしたら身もふたもないでしょ。

雇用の問題を感情的に語りすぎてる。しかも、経済記者なんて肩書の立派なジャーナリストが真剣に”とにかく雇用”と言い放つのに驚く。経済のことわかってる?

マスコミで感情的な”とにかく雇用が大事だぜ”論がまかりとおってるもんで、善良な国民の皆さんも”そうだそうだ”と大合唱だ。そりゃあね、日比谷に集まって炊き出しをもらってる人たちを見ちゃったらね、かわいそうだろ、という感情が先に立っちゃうんだろうなあ。

会社に守ってもらわないと生きていけない、ってみんなが思っちゃってる。でも会社たちはこないだまで立派だったはずなのに、のきなみうん千億円の赤字を発表している。赤字出してる会社が社員を守れるわけはないじゃない。

雇用を守りすぎると死んでしまうの。この国そのものが。

雇用を守ってばかりだと、新しい産業に労働資源が移動しないの。そしたら成長性の薄い大企業(大きい企業だって成長しないと死んじゃうかもしれないんだぜ)から人がなかなか出て行かない。そしたら新しい産業もなかなか成長できなくって、国全体の成長が立ち行かなくなる。すると、国がお金をあまり生み出せなくなるの。

つまり、雇用を守ってばかりだと、短期的には失業者があまり出なくて安心。だけど長期的には国全体が貧しくなってある日突然、大企業が次々つぶれたり縮小したりして、大勢が失業しちゃうってこと。

それくらい日本の既存の産業構造は行き詰まっているんだぜ。トヨタやソニーが10年後も存在し続けられるか、誰にもわからないんだもん。GMやフォードはもう、延命注射受けないと死んじゃうんだから。10年前は、誰もそんなこと予想してなかったでしょ。

いまマスメディアで”雇用を守れ、内部留保こそ悪だ”と平気で言ってるおじさんたちを、信じちゃダメだよ。

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