テレビ局3Q決算〜メディア事変その50〜

大変なことに、と煽っておいて、意外に、少なくとも製造業ほどには赤くないぞ、って話なんだけどね・・・

各社の連結業績予想を並べてみよう。

フジメディアHD  売上高:5585億円 営業利益:171億円(△29.8%)
日本テレビ放送網 売上高:3225億円 営業利益:75億円(△67.5%)
東京放送(TBS)  売上高:3700億円 営業利益:165億円(△20.0%)
テレビ朝日    売上高:2475億円 営業利益:8億円(△92.0%)
テレビ東京    売上高:1183億円 営業利益:4.5億円(△85.2%)

・・・というわけで、どこも赤字にはなっていない。

あ、なーんだ、って安心した?

もちろん、テレビ朝日やテレビ東京の利益を見ると寒くなる。売上が1000億とか2000億とかあって、利益が8億とか4億とか。営業利益率で見ると1%にもなっていない。そう言う意味では赤字も同然かな?少なくとも、こういう状態だとキャッシュフローが相当悪化しているはずだ。

とは言え、かろうじて赤字はまぬかれそう(あくまで”予測”だからまだわかんない)な民放キー局。よかったよかった・・・いやいや、そう簡単ではない。

まず問題なのは、来期。前に書いたように、テレビ広告費の減少は今期より来期の方がすさまじいだろう。確実にタイム枠が売れなくなる。本格的な価格ダウンをしないわけにはいかなくなるはずだ。なにしろ、今期はスポットが10%減少して大騒ぎだった。来期、タイム枠が売れなくなったらその影響は計り知れない。

もうひとつ、重要なポイントがある。テレビ局はリストラクチャリングやりようがない業態なのだ。

この正月に話題沸騰だった派遣切り。テレビ局は自分自身では派遣労働者をほとんど雇っていない。その代わりに制作会社をこき使ってきたわけで。

製造業が派遣を切ったのは、工場の稼働率を下げざるをえず、労働力が余ってしまうからだ。でもテレビ局は稼働率を下げられない。あまり視聴率のとれない昼間の放送を大幅にやめるなどの大決断でもしない限り、朝から晩までいままでと同じように番組を放送せざるをえないのだ。

また製造業は売上げが減ると、工場を閉鎖したりする。売り払ったりできる。さらには、工場でつくる製品を別の事業に転換することで事業の再構築ができる。

テレビ局は、テレビ放送を続けるしかない。別の事業なんて、放送から派生する事業しかできないんだ。

正社員をちょっとやそっと辞めさせたり給料を下げたりしても、大きなリカバーはできない。テレビ局の社員数は数千人で、”切る!”ってほどの人数じゃないんだ。

できるとしたら、売上原価、つまり番組製作費を下げることぐらい。これも、限度がある。これ以上下げると、各制作会社がやっていけなくなるから、それはそれで困るだろう。

つぶしの利かない事業、それがこの国のテレビ放送事業なんだ。

あ、TBSのように不動産事業とか、まったくちがう業態に手を出す、という手はある。でもこれは本末転倒だよね。テレビ放送を続けるために、不動産業をやる。だったら不動産だけやってれば?と言われちゃう。

もはや、にっちもさっちもいかなくなった。テレビ放送は完全に衰退産業だ。かつての石炭産業みたいなものだ。

・・・なんてことになるとは、たった一年前でも、夢にも思わなかったよね・・・

ところで、あまりおおっぴらなことにしてこなかったこのブログ。トラバも避けてきたし、おそらくぼくのことを知っている人間だけが読んでたと思う。

ところが、この一週間、そしてこの数日、訪問者のIPが急増している。

誰か、言いふらしてくれてるのかしら?

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