西正さんというメディアコンサルタントの方がいる。詳しくは検索すればいくらでも出てくるので知らないって人は調べてみてください。
ぼくも参加しているあやとりブログの書き手の一人でもある。こないだは「まるで幕末黒船騒動に近い日本のメディア業界」と題して、米国の情報におろおろしちゃダメだよ、というようなことを書いてらした。
2000年代前半、”地デジ化”ってのがゆくゆくあるらしいよ、と聞いてから、ぼくはメディア論にハマりはじめた。ぼくたちの世界がどうやら大きく変わるらしいぞと感じたからだ。メディアの未来を考えはじめ、さらにロボットで経営企画を担当して仕事としてそれを考えなければならなくなった。そんな頃、西正さんの本に出会った。
どの本をどう読んだか、もうわからなくなってるのだけど、とにかくその頃は、テレビを中心にメディア論を語る書籍はほとんどなくて、西さんの一連のものしかなかったと言っていいくらいだった。何冊もむさぼるように読んで、いろんなことを知った。例えば、米国ではケーブルテレビが成長して番組の二次市場が形成されシンジケーションと呼ばれているとか、フィンシン法のこととか、そういう、基本の基本みたいなことを西さんの本から教わった。
ぼくがこのブログでメディアはどうでコンテンツがどうのと書けるのは、言ってみれば西正ゼミを卒業したからなんだ。だからあやとりブログのトップページに西正の名前とともにぼくの名前が並んでいるのは光栄と言うかおこがましいというか。
西正さんにはそれぐらい”教えていただいた”という感じ。
地デジ後に何がどうなるのか、どうなっていきそうか、などなどを網羅して書いてある。放送局がどう考えていくべきかもサジェスチョンしている。
ものすごーく大ざっぱに乱暴にまとめてしまうと、今後はマルチスクリーンにコンテンツを視聴する世の中になるぜ、それに対応しようぜ、ということだ。
この本で面白いなあと思ったのは、”作れることが大事だから、そこに価値があるからがんばんなさい”と激励している感じなところだ。テレビ局は、放送局は、とくに日本の場合最大の制作プロダクションでもあるのだから、その価値は地デジ後も変わらない。放送以外にスマートデバイスなどアウトプットが増えていっても作ることができればいいんだから、怖れる必要ないよ。そんなことを書いている。
そう言われると、実際に作ってるのは制作会社なのだから、テレビ局は作ることなんかできないじゃないか、と言う人もいる。それはそうだけど、ちょっとちがう。実際に金槌を持って作るのは制作会社かもしれないけど、設計したり、そもそもこの土地に住宅を建てるのか公園にするのかを悩んだりするのも”作る”ということだ。どこからどこまでがテレビ局でどこからが制作会社かはケースによってそうとうちがう。
実際、ホントに何もしないテレビ局の人もいる。けっこういる。これは広告制作でも、代理店のクリエイティブ局にいるけどホントに何もしない人が意外に多いのとおんなじ。そして制作会社に優秀な人がいると一から十まで制作会社がやってしまうことも多い。テレビ番組でも広告制作でもね。
でも優れた仕事は、優れたテレビ局の人と優れた制作会社の人がいて着地する。そして日本の制作会社は非常に”受け身”な体質に陥りがちなのも事実。
話がそれたな。とにかく、西さんの今度の本は”作れる人は作れることに自信持ってね!”というメッセージに満ちている。放送局は”スタジオ機能”を強化すべきだと。
もうひとつ、この本では放送局の経営陣には痛烈にものを言っている。動かなきゃダメだと。今後を見据えて新しいことには積極的にトライしないとダメだと言っている。企業のトップはサラリーマン社長だと自分の任期限りでしか物事を考えないから十年先を見通して策を考えたりしない傾向がある。そんなこっちゃダメよ、と言っているのだ。
そう書くと暑苦しくて説教がましい本みたいだけど、ぜんぜんそんなことなくて、淡々と事実や考察を書き進めている。読みやすい文章でもあるので、わりとすぐ読めちゃうんじゃないかな。このブログを気にしてくれてる人は、読んでもらうといいと思うよ!
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