2月にコピーライターの梅本洋一さんが亡くなった。その時、ぼくはこのブログで柄にもなく感傷的になって、いやはっきり言うと涙をこぼしながら「コピーライターはコピーなんか書いてちゃダメだ、と教えてくれたコピーライター。」という記事を書いた。
この記事にコメントを書いてくれた加藤麻司さんや赤城廣治さんと梅本さんの追悼イベントをやろうとなり、旧知のツルタシゲタカさん、そして若い桑原さんも加わって、みんなでやり方を相談した。
宣伝会議が主催するコピーライター養成講座があり、ぼくたちはそこで梅本さんの生徒だった。80年代は銀座の中小企業会館というビルが講座の会場だった。週に二回だったかな、その場所にぼくらは集まり、梅本先生の授業を受けた。正直言って地味な建物だが、コピーライターのイメージが放つ華やかさとはかけ離れた地味さがかえってよかったのだと思う。地道に知的な技を磨く修業の場のようだった。
追悼イベントはその中小企業会館を特別にお借りして開催することになった。講座に通っていた頃の、地道な修業の場の空気を少しでも思い出し、みんなで吸い込むことで、ぼくたちはあの当時にタイムスリップできるのではないかと思う。時間を超えてあの頃に戻れれば、きっとそこに梅本先生がいて、笑って迎えてくれるんじゃないか。みんなでわいわいやって、調子に乗ったやつが出てきたら、きっと梅本さんが「おいおい、ちょっと境、あいつをなんとかしてやってくれよー」とぼくに言うのだ。
「夜空ノムコウ」という唄があって「あの頃の未来にぼくらは立っているのかな」という部分がある。ぼくはこの唄を聞くたびに中小企業会館での講座を思い出す。梅本さんを中心に近くの居酒屋で飲んだ夜を思い浮かべる。ぼくらはその後、コピーライターになったりならなかったりした。TCCをとって大喜びしたりとれなくて何度も悔し泣きしたりした。恋をして結婚し、子供を育てていたりする。ぼくなんかコピーライターなのかなんなのかわからない人になり本を出しソーシャルテレビだとかのたまい広告は広告じゃなくなるとかコンテンツがどうでメディアがどうだとかほざいたりしている。
これがあの頃の未来なのか、いまだにぼくにはわからない。ただ梅本さんに教わった頃の時間といまはまちがいなくつながっているし、梅本さんに言われた事柄が少なからずぼくの未来を形成している。あの頃の方が幸せだったとか楽しかったとか戻りたいとかは言いたくはないが、ひたすら自分を信じて未来は明るい光が射すのだと疑わなかったあの時代は振り返るとなんと輝いていたのかと思う。その輝きの中に梅本さんはいた。いや今もいる。いまもあの輝きを振り返ると梅本さんはそこにいるのだ。ルークを導くオビ・ワン・ケノービのように中空に浮かんでいる。そして「コピーライターはコピーを書いてちゃいけないんだ」とぼくに教えを説いてくれる。でもぼくは、具体的には何をすればいいのだろう、と相変わらず途方に暮れるのだ。
余計なおしゃべりがすぎたね。ここでは、追悼イベントについて知らせたかったんだった。
これを読んでる人の中で、宣伝会議の講座で梅本さんに教わったという人は、このリンクをクリックしてください。追悼イベントの申込ページにジャンプします。ここで概要を書くと・・・
日時:5月25日(土)14時〜16時
会場:中小企業会館 9F講堂
東京都中央区銀座2-10-18 Tel 03- 3542-0121
とにかくここに来てください。できればその前に、梅本さんに届ける「最後の宿題」を紙に書いて送ってください。そのあたりも申込ページに書いてあります。
具体的な申込は、ページの右側に「チケットを申し込む」というボタンがあるので押してください。申込フォームが出てきます。「チケット」という言い方になってますがこれはこのイベント告知システムの仕様で、申込時点ではお金は必要ありません。
ただ当日、会場で500円をお願いします。会場を借りるのに少々お金がかかるのでカンパ的に500円を集めたいということです。
わからないことがあったらこのブログのコメント欄に書き込んでください。
そうそう、宣伝会議で教わったわけではないけど、梅本さんをお見送りする催しには参加したい、という方でも来てもらってOKです。梅本さんを敬愛する気持ちこそが、参加要件です。
最後の宿題を、梅本さんに渡しましょう。
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