前回、これからはソーシャルメディアとスマートデバイスだ、と書いた。2011年はそこに出口があるにちがいないから、走っていくよ、どんどん試すよ、と。
でも2011年が動き出して、もう1点の重要なポイントが今年はあるなと気づいた。気づいたとかいう前に、すでに今年はひとつ大きな山場があるのはわかってたんだけど、その山場以上に今年はそのポイントが動く。揺れる。激変する。そのことと、「ソーシャル&スマート」はすごく強く関係する。
その重要なポイントとは、テレビだ。
テレビが今年は激変の舞台になる。テレビの行く末が、テレビの変化の道筋が、今後のソーシャル&スマートの流れとも関与し、ぼくらの業界の今後が決まってくるだろう。
そこにはもちろん、7月24日にいよいよアナログ停波がやって来る、というのがある。これについては何度か書いてきたし、池田信夫先生がよくブログでとりあげている。先生によれば、地デジ化に取り残される世帯が半端じゃない数出てくるだろうとのことだ。2010年7月24日のブログでは、その数を500万世帯だとしている。2005年時点での日本の世帯数は約4900万世帯だから、500万世帯は1割だ。もしホントにそんな数が取り残されたら大変だろう。
1割が5%とか3%とかだったとしても、テレビ放送に大きな影響をもたらすのはまちがいないはずだ。さらに、個室や寝室などリビングルーム以外のテレビのかなりがデジタル化されないのではないかとの説もある。とにかく、”日本人がテレビ放送を見る量”が少なからず減少するのはまちがいないだろう。
でも今年はテレビが重要だとぼくがあらためて言うのは、アナログ停波のことだけではない。
ラスベガスで毎年この時期にCESという家電製品の展示会イベントが行われる。今年も当然いま展開されていて、ネットニュースでは連日、CESについて伝えている。
そのCESで、どうやら各社がテレビに力を入れて展示しているらしい。そのムードを象徴的に語っているのがこちらのブログだ。「”グッバイ・コンピュータ”までのラスト・ワン・マイル」と題したこの記事。UEIという開発会社の社長さんのブログで、CESのレポートを書いておられる。
今年はPCの展示がほとんどなくて、各社がスマートTVの展示を競っているのだそうだ。もちろん、スマートデバイスも華やかだという。
これ、よく考えると面白い現象じゃないだろうか。スマートデバイスとPCではなく、スマートデバイスとテレビで家電ショーが盛り上がっている。PCはもう、要らないとでも言うのだろうか?
もちろん実際にPCが不要になっているわけではない。ただ、進化が止まっちゃってるんだろう。それに代わって、スマートフォンと、テレビがいまホットなんだ。
テレビがホットだというのは、GoogleTVやAppleTVなどのネットTV、コネクトTVだ。放送のためのテレビではなく、ネットにつないで新しいスタイルで番組視聴をする機器としてのテレビだ。
なんてことを言うと、テレビ局の人はげんなりするのかもしれない。GoogleTVなんて断固許すまじ?・・・でも皆さんおわかりのはず。もはやその流れには逆らえない。
アナログ停波は起こるし、ネットTVはやって来るし、テレビの危機なのだろうか?
もちろん、こと”放送事業”に限れば危機だろう。それはもう、大きな大きな危機だろう。テレビとは放送事業なのだから。
でも一方で、テレビ事業は最大のコンテンツ製造システムでもあった。それからテレビ放送は最大のリーチ達成装置でもある。そこは変わらないと思う。これまでのテレビの莫大なパワーはどうしても減退するだろう。それでも、もっとも影響力のあるメディアであることには変わりない。新聞や雑誌がただひたすら存在意義が失われているのに比べると、テレビはその本来の放送の部分でも生き続けるとぼくは思う。
生き残り方の重要なファクターが、ソーシャルメディアとスマートデバイスにある。Twitterを日常的に使い、iPadを使い倒しているからこそ、それを実感している。ソーシャル&スマートとテレビは相性がいいのだ。見方を変えれば、ソーシャル&スマートで何かをやろうとした時、テレビとの連携があれば大きな力になりそうなんだ。
2011年はソーシャルメディアとスマートデバイスが本格的に成長する。その鍵を握るのが、実はテレビなんじゃないか。
この話は、もう少しずつ考えを進めていこうと思う。
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TwitterTVとかFacebookTVが欲しいです(笑)
佐々木俊尚氏が指摘しているのが、これらは世界規模でのプラットホームの戦いが始まると。ソーシャルとスマートとスマートVが1つのプラットホーム上で動くことが理想の姿だろう。今、そこを鋭意研究している。この分野だけは、アメリカには負けたくない。