ネットテレビの衝撃 —20XX年のコンテンツビジネス | |
志村一隆 | |
東洋経済新報社 |
AppleTVを発売日に即買いし、ここで書いた記事がTechWaveにも転載されてはや一週間。AppleTVを買った興奮も、TechWaveデビューした感激も、落ち着いたよ。
さてここでおもむろに書籍の紹介。佐々木俊尚さんの著作じゃないよ。志村一隆さんという、放送について研究されている方。志村さんは少し前にも『明日のテレビ〜チャンネルが消える日』という本も出している。どちらも、アメリカのテレビを取り巻く状況をレポートしたもの。その志村さんの最新作がこの『ネットテレビの衝撃』だ。
期せずして『電子書籍の衝撃』と似たタイトル。実際今年は、iPadの登場とともに”電子書籍の衝撃”が出版界を走り、AppleTVの登場によって”ネットテレビの衝撃”が放送界を揺さぶっているのかもしれない。
とは言え、『ネットテレビの衝撃』にAppleTVの話はほとんど出てこない。AppleTV登場以前に書かれたものだからね。それでも、充実した内容。AppleTVはテレビの新しい姿のひとつに過ぎず、もっといろんなことがアメリカではすでに起こっているからだ。そのアメリカの状況をもとに、日本の”地デジ後”のテレビのあり方を考えようという趣旨だ。
非常に象徴的な話として、いちばん最初に書かれていること。地デジ後のテレビ放送の指標は視聴率つまりパーセンテージから実数つまり”何万人が見たか”に変わるでしょうと言うのだ。なぜならば地デジ後はテレビの普及度が100%ではなくなる可能性があるから。
よく考えたら、視聴率をパーセントで出してメディアの強さの指標にしたのは、変なことだったのかもしれない。だって、これは100%の世帯にテレビがある前提だったわけだ。どこの家庭にも必ずテレビがある。そういう前提で、テレビ広告のビジネスモデルはできあがっていた。
変なようで、立派に通用していたのは、実際にテレビの普及率がほぼ100%と言えたからだろう。そんなメディアありまっか?よく考えたらスゴイことだ。テレビがメディアとしてどれだけ強かったか、この点を考えるだけでもわかるね。
ところが、地デジ後は、(何度か書いてきた気がするけど)「うーんと、テレビはもういいよ」という人が少なからず出てくる。そしたら、テレビは100%ご家庭にありますよね、という前提ががらがらがらと崩れ去るのだ。だから、何%見ていたか、から、何万人見ていたか、に指標が変わるかもしれないと志村さんは言うわけ。
そこへAppleTVだのGoogleTVだのがからんでくると、いよいよわけわかんなくなる。うちのテレビは、37インチのiPadだ、ってことになっていくのかもしれない。番組はアプリになり、見たいと思ったらダウンロードしてきて楽しむ、とかね。
と、いうようなことを考えたい方は、この本買っとくよ、いいよ。という記事を夕べ書きかけて途中で寝ちゃった。昼休みになんとか、書き足したぞ!・・・
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境さんの読みには、いつも驚愕します。ファンの1人で、2011年元旦に当ブログを読んでそう感じました。デジタルTVはIPネットワークされることを前提に設計されています。放送業界が通信との統合・融合を拒絶しても止める事はもう出来なくなります。最初に出るテレビ画面がサムネイル風に自分好みの番組が自動的に表示されるようになるか、キーワード入力で瞬時に見たいインターネット放送番組が見られるのが一般化するでしよう。自分の仕事でも今、大型地デジTVをデジタルサイネージにして、動画や3D表現の「電子チラシ番組」が出来る仕組みに取り組んでいます。「地域店舗情報」は定番のテレビ番組になるでしょう。結果、地デジテレビが”上書き”される時代が来るのです。”見るテレビ”から”使うテレビ”の時代になるのはほぼ間違いないでしょう。在来型の放送はその中の1つになります。