走りながら考える。それは正しい〜iPadから見えるコンテンツの未来・その31〜

昨日はダイヤモンド社でDreaderを開発した方の話を書いた。けっこう勇気をもらえる話だったでしょ?で、前々から書こうと思っていた別の方とのお話を、昨日の記事に続けて書くといいぞ、と思い立った。そちらの方とは、先週お会いしていて、これはいつ書こうかなと思っていたのだけど、うん、ここがそのタイミングだぞ、と。

iPadについて書いているこのシリーズは、日本の雑誌コンテンツがどれもこれもPDFだったことに大失望したところからはじまって、その数日後に「国産の電子雑誌も頑張ってるぞ!」と題した記事を書いた。がっかりしてたら、なんだ、ちゃんとiPadのための雑誌コンテンツが登場したじゃないかと。実際ぼくは、すごくうれしかったんだ。

その”頑張ってる”国産の雑誌「photo J」に関わっている毎日新聞社のTさんとお会いしたのだ。同社の別の方と、五反田でホルモン焼き食べたのね。そのホルモン焼きがね、って話は関係ないか。

Tさんは最初、あまりしゃべらなかった。その会は、もうお一方の毎日の方とぼくがお会いするのがメインの催しだったせいだろう。でもホントにあんまりしゃべらないので、大人しい方だなあと思っていた。

ところが話が「photo J」に及ぶと、キャラが一変。と言ってもすごい勢いでしゃべり出したってほどでもないんだけど、懐に隠していたあっちっちーと熱いものを、もう隠してらんないって感じで情熱的に語り出した。

「photo J」は編集後記に、4月にiPadを入手してから創刊することになったようなことが書いてある。DTPboosterに参加した人なら、WoodWingの説明の中でアイルランドの火山が噴火して「photo J」のスタッフが帰国できるか危うかった、というエピソードが出てきたのを憶えているだろう。この流れを生々しく聞くことができた。

ホントに、「photo J」をつくった部署のみなさんはiPadを手に入れて、ある日の会議で全員一致で「こりゃおれたちもやろうぜ!」と創刊を決めたのだそうだ。責任者の方もiPadを触ってしまうと、「やれ!進めろ!」とGOサインをくれた。

と、軽く書いてしまうと、あ、そうなの?と流されそうだけど、でもよく考えるとけっこうとんでもないことだ。普通なら、どうやってつくるか、いくらかかるか、どれくらい売れればもとがとれるのか、よく考えような、検討しような、となるだろう。ところが、そのチームの皆さんも、そして上司の方も、”まず決めるところから”はじめているのだ。しかも、こう言っちゃなんだけど、歴史ある新聞社の組織の中で、だよ。

そこからはホントにてんやわんや(死語?)のしっちゃかめっちゃか(これも?)だった様子。2カ月だもん。4月初めにiPadを見て、6月頭に出しちゃったんだもん。しかもiPadってどうやってつくるんだ?ってとこからはじめたんだもん。それは大変だわ。

TIMEはどうやったんだこれ?え?WoodWing?オランダのシステム?じゃオランダ行け!って勢いで、飛行機に乗ったスタッフ。オランダでWoodWingを学び、アイスランドの火山灰にゴホゴホいいながら飛んで帰る。記事の構成は誰がやるの?じゃあおれだ。あの作業はどうする?お前やれ。そんな感じで役割分担どんどん決めて、進めていったそうだ。そしたら、6月にできちゃったんだって。すごくね?

このプロセスでいちばん大事だったのは、最初なんだと思う。「まず、やると決めるところからはじめた」という点だ。これね、なかなか決められないよ。それは利益でるのかね?わからないのかね?わからないのはハンコ捺せないよ。そんな役人根性がどの会社でも蔓延している。でも彼らは「やる!」と決めた。決めたなら、なんとかなる。走り出せば、あとは走りながら考えればいいんだ。そしてだいたい、走りながらちゃんと考えれば、ゴールにはたどり着けるものなんだ。

ではなぜ最初に「やる!」と決められたのだろう。きっと、全員が「やりたい!何かここで見るものをつくりたい!」と強く感じたってことだと思う。これも昨日の”面白いが大事”という話とすごく近いんじゃないかな。やりたい!その感覚はすごく大事だ。

どんなにキレイな事業計画書を作っても、魔法のように単年度で黒字化するようなPLをつくったとしても、誰も「やりたい!」と思ってないことは、成功しないんじゃないか。逆にPLなんかなくても{やりたい!」があれば、黒字化できるのだと思う。

やりたい!と強烈に感じることには、PLには反映できないポテンシャルがあるのだろう。何しろいま、世の中全体の未来が見えない。ましてや出たばっかりの端末用に何かつくっても、利益が出るほど売れるかどうかなんてわかるはずがない。わからないからやめとこう、ではなく、わからないけどみんながやりたい!と感じたのなら、たぶん”やるべき”なんだな。そのチーム丸ごとの「やりたい!」には、実はマーケティング的な意味があるのだね、おそらく。

毎日新聞社のTさんとのホルモンミーティングは、そんな話が聞けてすごく楽しかった。iPadには不思議な力があるんだ、たぶん。「なんかやりたい!」と胸の中にあった情熱をぐいぐい引き出し、そしてまたそういう人たちを結びつけてしまう、そんな魔法をiPadは持っている。もやもやとくすぶっていた自分の中の何かをごごーっといきなり大きな炎にしてしまう発火剤みたいなものかもしれない。現業にどっか疑問を感じていた人たちを、ピピーッと集合させてしまう魔法の笛なのかもしれない。

だってさ、きっとこのブログを読んでくれてるあなたも、そうなんじゃない?胸の中でごごーっと炎が燃え出してるんじゃない?それが熱いうちに、走り出そうか。なーに、走りながら考えればいいんだから。イノベーションって、ようするに、走り出すことなんだからさ。

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コメント

  1. やると決定するマネジメントと、やりたいと成し遂げる担当。プロジェクトXに出演のための、必須条件です。 笑

  2. 今回のエントリを拝読してこの言葉を思い出しました。日本はマネジメントをもっと育てるべきですね。

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