ソーシャルメディアが何かを動かす力について〜『電子書籍の衝撃』の衝撃:続編

前編と後編で終わりにしないんだな、『電子書籍の衝撃』については。ほんとうにぼくは衝撃を受けた。それは書籍の内容そのものと、その周囲で起こったコミュニケーションとが響きあいながら、大きなメタコンテンツとしてぼくに何かを教えてくれたからだ。

おっとその前に、何が起こったかあんまりわかってないんだけど、って人に、軽くレクチャー。

4月6日夜:『電子書籍の衝撃』の講演会が行なわれ、来場者約100名に発売前の書籍(紙)が配られた。
      その場で、書籍(電子版)を1万人限定で110円で販売する旨が発表された。
 7日正午:限定販売開始。すぐさま”つながらない”状態になりやがてサーバー不具合。深夜になりやっと復旧。
 8日?時:電子版が購入できるようになり、110円販売を14日(書店発売前日)まで人数無制限にすると発表。
ざっとこんな展開だった。これはTwitterでハッシュタグ<#denshi>を追っていけばわかる。あるいはいろいろ検索すれば出てくるし、出版社ディスカバー21の「社長室ブログ」のこのエントリーあたりを読んだりそこで紹介されているブログに飛んだりすればわかるはず。

その流れを追っていくと、最初は不満と応援の両方のTweetが交錯していたのがだんだん応援の方が大勢を占めていく過程がわかる。それはもちろん出版社のスタッフたちの必死のサポートに誠意が感じられたからでもあるし、途中で著者本人たる佐々木俊尚さんがこんな感動的なTweetをしたことも大きいだろう。

やがてダウンロードできないという騒ぎは収まり、<#denshi>は今度は内容へのTweetとともに”電子書籍を読む興奮と発見”にメインがシフトしていった。とくにiPhoneで読んだ人が読みやすいと発言するのが印象的だった。

さて、ここでぼくが注目したいのが、この瞬間だ。4月9日午後1時52分にディスカバー21干場社長がこうつぶやいた瞬間。「ほんとだ!今16位。書店さんからの注文も増えています。」

『電子書籍の衝撃』の発売前の売れ行き(だから予約状況?)について佐々木俊尚さん自身が4月5日にこうつぶやいている。「Amazon予約、再び100位以内に復活。」つまり講演会前は100位前後だったということだろう。それが上に書いたような”騒動”のあと、16位に急浮上しているのだ。いまは少し落ちたがそれでも34位となっている。これは”すべての和書”で、第1位には村上春樹の『1Q84』の3巻目が堂々と位置するようなランキングの中での話だ。そんな中で100位前後から急浮上したのだ。

そこから、コンテンツ流通についてとマーケティング(=ものを売る)に関して、ぼくたちは何かを学びとれるんじゃないだろうか。

だってこれ、よく考えたら不思議だしすごく面白いことじゃない?まず、どうやらTwitter上で、しかもハッシュタグ<#denshi>の小さな世界で起こった”騒動”が書籍の”売れ行き”の順位を実際に上げたんだよ。しかも!電子版を110円の大サービス価格で発売しているのに”紙の本”の予約が大きく増えたんだよ。いったいこれは、どういうこったい?!

つまりね・・・

1)Twitterで盛り上がったらものが売れた
2)電子版が流布したら紙の方も売れた

そういうことが起こったんだわ。

『電子書籍の衝撃』の最終章の中で「ソーシャルメディアの中でのコンテキスト構築がこれからの出版ビジネスの課題」という見出しの部分があるのだけど、ちょっとちがうとは言え、ほぼそれに近い現象が他ならぬ『電子書籍の衝撃』を取り巻く”コンテキスト”を通じて起こってしまったということだ。

今回のケースはサーバートラブルが起こったからでしょ?なんてこと、言う人もいるかもしれない。確かにそうだし、それに対し出版社と著者の読者を思う誠意があったからでもある。また読者の側も寛容な姿勢で受けとめる人が多かったからかもしれない。そういう偶然と特殊な状況が引き起こしたと言えなくもない。

でもよく考えてみて。そんな”誠意”だの”寛容”だのがコンテンツ流通にこんな風に強く関与することって不思議じゃない?なかったことじゃない?それに電子版は紙の書籍を駆逐するもので、電子版が流布すればするほど紙の方が売れるのは理屈にあわなくない?

しかし、実際にはその不思議な現象が起こったんだ。

ぼくたちはそこから多くのことを学べそうだ。ここで書き進めてきた「広告の新たな地平線」を見出すためにも、「VODに未来にあるのか」の答えを見つけるためにも、大いに参考になる出来事だ。

というわけで、これからしばらく、『電子書籍の衝撃』がぼくの頭に及ぼした余波をもとに、書き進めていこうと思う。15日の発売の際も、また何かが学べる出来事が起こるのかもしれないなあ・・・

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