一昨日”前編”と題して『電子書籍の衝撃』について書き、”後編”は翌日書くと宣言しておきながら、昨日はサボってしまった。やること満載で、肝心の本の方を読みはじめたのが夜中。読み終わったら猛烈な睡魔に襲われたのだった。約束やぶってすみません。個人的に書いてるブログだから、謝ればすむ、と、思う。
さてその間に『電子書籍の衝撃』を巡る事件が起こった。たぶんこれを読んでる人なら知ってるだろうからはしょって書くと、この本の電子版が当初1万人限定で110円ダウンロードだったのが、サーバーダウンを経て14日まで無制限の110円ダウンロードとなったのだった。たくさんの人が困っちゃったにせよ、なんちゅう大盤振る舞い!
この顛末は、当事者のみなさんには失礼かもしれないけど、ものすごく貴重なメディア体験になった。これについてはまた別に書こうと思う。
ところがこれによってぼくは困ってしまった。『電子書籍の衝撃』をひと足お先に手に入れたので、その内容に触れながら書いていたつもりなのだけど、たぶんみんな読んじゃったよね!後半にはこんなことやあんなことが書いてある、などと先に読んだ優越感たっぷりに書くつもりが、そんなこと書いても、いや私もう読んじゃいましたから、ってことになっちゃうじゃないか。
さあ、どうするこの後編!
ってことで、”後編”では全体を総括することに路線変更。
『電子書籍の衝撃』は思いのほか、話題が豊富な濃厚な本だった。書籍の未来を、音楽で起こった変化を参照しながら書いている。その中に、ISBNコードやアマゾンアカウントの具体的な取得方法や記号消費、ケータイ小説や取次制の成り立ちなどが刻銘に書かれている。佐々木さんの著作はいつも多岐に渡る話題のひとつひとつが刻銘に書かれているが、今回はいままでにも増して濃厚だった。濃厚だったので読むのに時間かかちゃったんだな。
中でも、自作の音楽を自分で配信して売っているミュージシャン”まつきあゆむ”についてのパートは興味深かった。ぼくはさっそく「1億年レコード」を申し込んだ。ここからダウンロードを申し込めるから、やってみたらいいかも。ぼくはこの週末あたり、どっぷりハマりそうな予感。
そして最終章では”コンテキスト”の話に入ってラストスパート。そうなることを予感して、ぼくは後編を「キーワードはコンテキスト」と題して書けばいいんじゃないかと思ってたんだけど、みんなが読んじゃったであろういま、そんなのわかってるよ、ってことになっちゃう。うーむ。
そこでぼくがここで読んじゃったみなさんに言いたいのは、こういうこと。
読んだあとでなぜか勇気がわいてこなかった?
『電子書籍の衝撃』は、確かに書籍の未来について書かれた本だ。それはまちがいない。でもこの本は一方で、自由と勇気についても書かれている、とぼくは思うのだ。そして佐々木俊尚さんの本のひとつひとつから、ぼくは自由と勇気をもらってきたよなとあらためて思い至る。
ぼくは最初、『2011年 新聞テレビ消滅』で佐々木さんと出会った。(意外につい最近じゃん!)そして『仕事をするのにオフィスはいらない』『ネットがあればオフィスはいらない』『マスコミは、もはや政治を語れない』と出るたびに読んできて、それから『インフォコモンズ』や『フラット革命』に遡ったりして、今度の『電子書籍の衝撃』にまでたどり着くことになる。そこでは一貫して既存の権威の崩壊がテーマになっていた。まるで一連の大きなストーリーを読んできたような感覚だ。
そして読むたびに自由と勇気を受けとめてきた。それは、ただ権威の崩壊が書かれていたからではなく、崩壊による解放を書いているからではないかな。いや、書いてなどはいないんだ。自由になれよ、勇気を持とうぜ、などとはひとことも書いていない。でも”感じた”んだ。自由と勇気を、一冊一冊に感じとりながらぼくは読み進んできた。
ここでいう自由と勇気は、だからと言ってそれぞれのテーマに直接結びつくわけではない。『電子書籍の衝撃』には確かにセルフパブリッシングについて刻銘に書かれているけれども、そこから感じる自由は「ぼくも自分で出版しよう」ということではない。そうではなく、これから自分で出版できる自由な時代になる、だったらぼくはどうしよう。何をはじめようか。そんな受け止め方だ。
つまりこの本の読み方とは、こういうことだ、と思う。
音楽は自由に→出版は自由に→だったらぼくは?
もちろん”ぼくは?”の答えは、自分がいまやっている仕事にダイレクトにつなげてもいいだろう。だからぼくは前編の中で、映像もアンビエント化し自由になる、と解釈して書いた。
でも佐々木さんの本を何冊か読んできた人ならわかると思う。ぼくたちが感じてきたのはそんな直截なことだけじゃない。もっと大きな自由と、力強い勇気を、読み終わったあとで受けとめてきたのだと。
ぼくたちはこれから、自由になっていく。もう、権威に気兼ねしたり、媚びたりする必要はない。ぼくたちは、何をして、何を表現してもいいんだ!ただ、したたかな戦略を忘れずに。
・・・というコンテキストを流布するマイクロインフルエンサー、ってことにしてもらって、いい?・・・
ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術 (宝島社新書)佐々木 俊尚宝島社このアイテムの詳細を見る |
関連記事
「電子書籍の衝撃」の“衝撃”は出版業界の話しではない、と理解
JUGEMテーマ:ビジネス
Twitter上ではそろそろ“周回遅れ”に近い話題ではありますが、先週ちまちまと読み進めていた佐々木俊尚さんの「電子書籍の衝撃」をようやく読み終えました。電子ブック初体験という興味もあり、読み始めたこの本ですが、書かれている…
ようやく周回遅れで、書籍とこの前・後編のまとめ読み完了しました!(それを元に自分のブログ書こうとしているのは、更に周回遅れ中・・・)『自由と勇気について書かれている』に賛成です。加えてワタシは、製造業やサービス業はこれまで以上に、それぞれのクリエイティビティが試される時代になる』と理解しました。