再生の町〜万博の夢の終わりに〜

「20世紀少年」と「官僚たちの夏」について前回ぼくが書いたことに何か感じた人は、「再生の町」もぜひ見るといいと思う。きっと近いうちに再放送されるんじゃないかな。

筒井道隆演じる主人公は、横浜の百貨店で働いていたが、勤めていた店舗の閉店を機にふるさとの大阪に帰る。大阪府の郊外に位置する”なみはや市”の市役所に再就職したのだ。百貨店という華やかな職場を去った彼は、公務員を地味に演じて過ごすつもりだったのだが、市の財政が破綻しかけていることが判明。その建て直しプロジェクトチームに選ばれてしまう・・・

なみはや市の往年の発展時代の象徴として大阪万博が何度も登場する。あの頃は、希望があった。この国も、この町も、未来永劫発展しつづけるとみんなが信じていた。

市の財政再建には、そんな過去の夢を捨て去る必要があるのだが、市政のボスである市議会議長(近藤正臣)は、まだ過去の夢を”ニュータウン計画”に求めている。だがその計画は、過去のしがらみの温床でもあった。急逝した前市長の跡を継いだ現市長(吉田栄作)は、議長とプロジェクトチームの間で板挟みにあい苦悩する。

主人公は少しずつ、町の再生に本気で取組みはじめる。実は、10年前に市の財政課長だった彼の父親は、財政危機を予見してニュータウン計画を止めようとしたが議長たちの圧力で頓挫していた。そのことを知った主人公は、現市長にほんとうの再建を理解してもらおうと奮闘する。

こうした設定が、”日本国”の現状を見事に集約していてリアリティがある物語になっている。

と、ついドラマについて書きすぎたけど、万博以外にもいろんな点が、「20世紀少年」や「官僚たちの夏」と交錯するのだ。

再生のために苦闘する主人公、父親の野望だったニュータウン計画を止めるか悩む現市長は、”ともだち”と闘うケンジたちの姿とダブる。また悪の権化のような市議会議長は、若かりし頃はきっと「官僚たちの夏」の風越たちのように、成長のために粉骨砕身してきた人にちがいない。

いや、しかし、そういう、3つの物語のシンクロニシティを書くことが今回の本題ではない。ぼくが言いたいのは、”なみはや市”はあらゆる組織の象徴だと解釈できる、ということだ。もちろん、この国の全体の象徴であるのが第一だ。あるいは当然ながら、他のすべての公共自治体も多かれ少なかれ同じようなものだろう。

でもそれだけでなく、いろんな業界、いろんな会社も、似たような状態なのではないか。少なくとも、バブル時代を経験している組織は、どこも”なみはや市”なのだと言えるだろう。

メディアコンテンツ業界も、業界まるごと”なみはや市”なのだと言えなくもない。そこには、10年前にやるべきだったことが、まだなしえていないで残りつづけているのだ。

“なみはや市”と、ぼくたちの関係性を次に書こう。そこから、ぼくたちがなすべきことが垣間見えるかもしれない。「再生の町」の主人公が地味に、地道にがんばったように、ぼくたちがやるべきことは、決して華やかなことではないのだろう・・・

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