産業振興法は、来たるべき貿易自由化に対し日本国内産業が持ちこたえられるように守っていこうというもの。ドラマの中で、風越に「戦時中の産業統制の再来じゃないかね」と皮肉を言われるシーンがあった。
その通りじゃない?
もうひとつ、ドラマの中で通産大臣が次官人事に介入する場面があった。前任者が風越を内々に指名するのだが、大臣が「省内人事を内々に決めるのはおかしい、人事権は大臣にあってしかるべき」と言う。
これも、その通りじゃない?
官僚が、国内産業を守っていこうというのは美しいようだけど、そんなことやっていても競争力はつかない。指針を示すのはいいと思うし、そういう戦略級こそは国が指し示すべきとは思うけど、守ってやるからああせえこうせえというのは大きなお世話だろう。
実際の経済史でも風越のモデルとなった通産官僚・佐橋が起案した特定産業振興臨時措置法は廃案となったが、それでも日本経済は高度成長を果たした。
さて、ここで我がメディアコンテンツ業界に話を転がそう。日本経済を国家が守る法案は廃案になったが、一方で日本の産業界はそこここで国家に守られてきた。いわゆる”護送船団方式”というやつね。銀行がその典型としてよく例に出されるけど、似たようなことはあちこちの業界にあった。
そしてメディアコンテンツ業界は護送船団方式の最たるものだった。
まずテレビだ。テレビ放送は認可事業だ。だから認可されないと参入できない。東京民放キー局は日テレ、TBS、テレ朝、フジ、テレ東の5局しかない。その5つだけが関東圏で民間テレビ放送を許されているのだ。
地方に行っても同様で、キー局と系列化された地方局が全国津々浦々に存在する。これも、国家に統制されているのだ。
新聞は少しちがうけど、やはり政治による整理があった。さらに、テレビ局は新聞資本と結びついている。これも政治による整理なのだ。
ちっとも自由競争してないんだ。
クリエイターはちがう?それはミクロではそうだ。でもマクロでは同じだ。もともとのもとが統制経済なんだから。
いま、テレビ局と新聞社の業績が急速に悪化し、その広告費でやってきた大手代理店も業績が最悪になっている。これはようするに、メディアコンテンツ業界の”護送船団方式”が崩壊しつつあるということだ。
護送船団の周りにくっついて小さな船を一所懸命漕いできたクリエイター界も、護送船団と一緒に風前の灯。
でも、だからこそ、ここが勝負だ。護送船団と一緒に沈没するか、船団抜きで大海原に出られるか。
あるいはいっそ、別の船団を自分たちで組む、という奥の手もあるのかもしれない。
勝負だ。持ちこたえつつ、自ら舵を取り、自ら推進力をつけるしかないんだ。護送船団の推進力がまだまだ大きいからってあてにしてたら、沈没する。なんとか、手で水をかいてでも、進んでいくしかないんだぞ。はぁはぁ、ぜぇぜぇ・・・
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