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大げさに言えば、中海テレビはすべてのメディアのモデルになるケーブル局だと思う

中海テレビは第57回ギャラクシー賞報道部門大賞を受賞した

放送業界のアカデミー賞とも言えるギャラクシー賞の報道活動部門で今年、大賞を受賞したのは並み居る地上波局ではなく鳥取県米子市のケーブルテレビ局、中海テレビだった。私は、おおさすがギャラクシー賞!と感心した。中海テレビの素晴らしさを、他ならぬギャラクシー賞が評価するのは、当然と思う一方で、そういう時代が来たのだなと受けとめた。

ジャーナリズムの役割に感じるうさん臭さ

映画「さよならテレビ」を見た時、東海テレビの報道の人が学校に行って子どもたちにジャーナリズムの役割を3つだと説明する場面があった。

  • 事実を調べて伝える
  • 権力の監視
  • 弱者への寄り添い

これを見た時、私は「ええー?!」とかなりビックリした。そしてイヤだなと感じた。読者視聴者として報道に期待するのは「事実」に尽きると私は考えている。もちろん権力が何かしでかしたら事実として伝えてほしいし、社会的立場が弱い人が困窮してたらそれを事実として伝えてほしいとも思う。ただ、その二つがわざわざミッションとして挙げられるのは奇妙に感じた。そして時々、ジャーナリストと呼ばれる人びとに感じる何とも言えない近寄りがたさ、もっと言うとうさんくささはここにルーツがあると思った。

ジャーナリストを自認する人に言うと喧嘩になりそうだが、サラリーマンに過ぎないのに世界から使命を与えられてるような彼らの正義感が、私は本当にイヤなのだ。全員がそうということでは決してない。だが時折、そう言う人を見受けるし、不思議とそれが全体になるとその鼻につく正義感が漂ってくるのだ。

ネット民がマスゴミと呼ぶのも、この辺りの感覚の反映ではないかと思う。30〜40代の男性はむしろ私より強くこの感覚を持っているのではないか。

中海テレビのニューススタジオ。ここから朝夕のニュースを放送する

「地域のために」報道部を持つケーブル局

2年前に取材した中海テレビは、ケーブル局ではおそらく唯一、報道部を持つ局だ。だが取材して理解した彼らの感覚は、上に書いたような使命感と違っていた。使命感の方向が違うのだ。

正義感が鼻につくのは、そこに「上から目線」を感じるからだ。だが中海テレビの報道姿勢は、住民と共にある姿勢だ。そして権力監視ではなく、行政に疑問があったら住民を巻き込み、行政を責めるのではなく行政と共に解決を求める態度なのだ。あそこに欠陥がある!あの首長の失政だ!そんな態度とは180度違う。

中海テレビの成り立ちがそうさせているのだと思う。地元の170の企業・自治体・個人が100万円ずつの均等出資で設立された。自治体寄りでもなく、企業寄りでもなく、ひとりの地域の名士でもなく、その地域こそが設立の基盤だ。「地域のために」がDNAになっている。

(中海テレビに取材して2年前にGALACに掲載した記事を私が運営するMediaBorderに再掲しているのでよかったらご覧ください→MediaBorder該当記事

中海テレビの姿勢はすべてのメディアのモデル?

中海テレビの姿勢は、少し前なら「そういうケーブル局もあっていいね」で終わったかもしれない。だが私はいま、中海テレビの報道姿勢はすべてのメディアにとって見習うべきモデルなのではないかと考えている。ひとつには、鼻につく正義感がないからだが、もうひとつは「地域密着」のお手本のような理念だからだ。

例えば地上波ローカル局は最近、テレビ広告市場の減退で危機に見舞われている。それでもそのエリアに生き残るとしたら、地域で必要とされるかどうかに尽きるだろう。ローカル局は地域に根ざしているようでどこか、中央を向いていた。在京キー局を慮りナショナルクライアントのケアをしていれば営業効率は良かったのだ。だがいま、ナショナルクライアントの広告出稿の受皿として名乗れるためにも、地域に密着し必要とされ愛されていることが必要だ。当たり前のことに日本中の放送局が気づきはじめている。

それはまた実は、キー局にも同じことが言えるはずだ。あるいは新聞にも言えることだろう。メディアは実は「ひとびと」のコミュニティに支えられており、だからこそ広告出稿も生まれる。ひとりよがりにいいものを作っていても、あるいは例え莫大なアクセス数があったとしても、コミュニティに向き合っていないとビジネスにならないのだ。

すべてのメディアにとって中海テレビがモデルになるのではないか。少なくとも学ぶべき点を見出せるのではないか。いま、そういう時代にさしかかっていると思う。コロナはそのことを明示させる機会になっているかもしれない。

ウェビナー「地上波の知らないケーブルテレビ」8/19開催

8月19日に中海テレビをフィーチャーしたウェビナーを開催します。よかったら参加してください。手を挙げたら発言してもらえる参加型をめざしているので、ぜひ楽しんでもらえればと思います。

※本ウェビナー解説記事はこちら→8月19日ウェビナー「地上波の知らないケーブルテレビ〜中海テレビにNHKが聞く」開催

7月1日ウェビナー「アフターコロナ テレビ局の選択肢」開催

お申し込みは上の画像のリンクからどうぞ↑

2月25日に「地域とテレビの未来を考えるシンポジウム」を福岡で開催しました。100名近い方々に全国からお集まりいただき、良い催しになったと思います。

シンポジウムのレポートは、私が運営するWEBマガジンMediaBorderに掲載されています。(→レポートへ)

このシンポジウムを機に、定期的に「地域とテレビの未来を考える」セミナーを企画していくつもりでした。またそれを社団法人化し、皆さんに参加していただける研究会の形を作るつもりでした。

そこへコロナ禍が起こり、考えていたことを一旦停止せざるを得なくなりました。

その一方で様々な会議システムが注目されたのはみなさんご存知の通りです。中でもZoomはセミナーをオンラインで開催する機能もあり、私も小規模な催しで何度か使ってみて便利さを実感しました。何と言っても、リアルな場を借りる必要がなく手軽に集まれるのが便利です。また全国どこからでも、海外からでも距離を感じずに集まってもらえます。

「地域とテレビの未来を考える」活動にはぴったりなのでは?この活動の理念は、「東京中心からの脱却」です。どこでも開催できて、どこからでも参加できる。それにZoomなら参加者が登壇者と並んで発言することも可能です。地域の将来を議論するフラットな場ができそうです。

そこで、「地域とテレビの未来を考えるウェビナー」をシリーズで開催していこうと考えました。その第一弾を、7月1日に開催します。

今月初めに告知を開始したところ、100名の定員が残り10枠ほどになりました。そこで、定員を増やし150名にします。もしご興味あれば、ぜひお申し込みください。以下にイベント概要を掲載します。

アフターコロナ テレビ局の選択肢

7月1日17時〜19時 オンラインセミナー
参加費:2,200円 参加予定人数:100名(要望が多ければ増員します)
出演
問題提起:塚本幹夫氏(スタジオ出演)
質問者:田中和彦氏(リモート出演)
企画・進行:境治(スタジオ出演)

コロナ後の時代、テレビ局はどう動くべきか?塚本氏の提言に田中氏が物申す!
緊急事態が解除されたものの、コロナの影響はまだまだ続きます。放送業界は前年比マイナスは確実、キー局もローカル局も厳しい状況に苦しんでいます。もともと、業界再編がじわじわささやかれていた中、変革は待ったなしになったと言えるでしょう。放送業界全体は「新しい様式」に移行せざるを得ません。
具体的にどう考えるべきか、メディアストラテジストの塚本幹夫氏は「3つの具体的方策」を放送業界に提案しています。「ハードソフト分離」「放送同時配信を放送と定義」「資本規制の緩和」です。前々から部分的に言われていたことではありますが、この3つの制度改革で何がどう変わるのか。本ウェビナーでは塚本氏に具体的なイメージを描き解説してもらいます。「改革から革命へ」を主張する塚本氏の構想を共有しましょう。塚本氏と進行の境はスタジオ出演になります。
そしてその構想はローカル局から見るとどうなのか。経営レベルでの見方を聞きたいところです。そこでこの6月末に、南海放送の社長を退き会長に就任される予定の田中和彦氏に愛媛からリモート出演していただきます。質問者として塚本構想を深掘りしながら、その具体性を議論します。
ヘビーなテーマですが、お二方の人柄で楽しい議論になることでしょう。みなさんも肩ひじ張らずにご聴講ください。
このウェビナーは2月26日に開催した「地域とテレビの未来を考えるシンポジウム」の続きとして、主にローカル局の方を対象に開催するものですが、キー局やケーブル局、代理店などどなたでも参加いただけます。ヒマナイヌスタジオ大手町からZoomを通じての開催ですので、全国どこからでも参加可能。同スタジオの品質の高い配信により不自由なく聴講していただけます。チャットを通じて質問や議論への参加もできます。ぜひ積極的にご意見もお寄せください。

2月のシンポジウム以降、「地域とテレビの未来を考える」活動はコロナでストップを余儀なくされていましたが、これからしばらくはウェビナー形式で月一本のペースを目指して開催してまいります。ご興味ある方はぜひご参加を。

Peatixでお申込みいただけば参加情報をお伝えしますが、Zoomのインストールは前もってお済ませください。

お申し込みはこちらのPeatixページからどうぞ。↓

出演者
田中 和彦 氏
南海放送株式会社 代表取締役社長

1954年 愛媛県伊予市生まれ。1977年 早稲田大学政治経済学部卒。同年4月 南海放送株式会社にアナウンサーとして入社。ニュースキャスターや野球・サッカーなどスポーツ中継、「POPSヒコヒコタイム」などの人気ラジオ番組を担当。ライフワークとしてふるさとの歴史再発掘をテーマにしたオリジナルのラジオドラマの制作を続け、現在までで30作を超える。1985年「赤シャツの逆襲」で文化庁芸術祭賞。2005年「ソローキンの見た桜」で第1回日本放送文化大賞ラジオ・グランプリ。2014年「風の男~BUZAEMON~」で日本民間放送連盟賞ラジオ・エンターテインメント部門の全国最優秀賞を受賞。編成局長、ラジオ局長、社長室長などを経て、2014年6月に南海放送株式会社 代表取締役社長。2020年6月に同社代表取締役会長に就任(予定)

塚本 幹夫 氏
株式会社ワイズ・メディア取締役 メディアストラテジスト

1958年東京生まれ。横浜聖光学院高校、筑波大学社会学類卒。1981年フジテレビジョン入社。バラエティAD、報道記者、デスク、ニュース編集長を経て、2007年デジタルビジネス推進部長。2008年在京キー局で初めて地上波プライムタイム番組の配信を実現。2010年IT戦略担当局長。2016年退職し、株式会社ワイズ・メディアを設立。取締役メディアストラテジストとして、ネットサービス企業などのアドバイザーや顧問を務める。他にフラー株式会社常勤監査役。NHK放送技術審議会委員。元筑波大学客員教授(メディア論)。

企画/進行
境 治
株式会社OSzero代表 コピーライター/メディアコンサルタント 
1962年福岡市生まれ。東京大学文学部を卒業後、1987年、広告代理店I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターとなる。1993年に独立。2006年から株式会社ロボット、2011年からは株式会社ビデオプロモーションに在籍。2013年7月から、再びフリーランスになり、メディアコンサルタントとして活動。2014年より株式会社エム・データ顧問研究員。著書「拡張するテレビ」「爆発的ヒットは想いから生まれる」