いろんな話題を記事にしているうちに、zeeboxに関するシリーズがないがしろになっていた。今回は続きを書こうと思う。
前の記事を読んでない方は、下記のリンクから読んでもらった方がいいと思う。
映画「スティーブ・ジョブズ」公開の日にやって来た男、アンソニー・ローズ~All About zeebox(1)~
コンテンツを上手に選ばせる仕組みが重要だ~All About zeebox(2)~
今回は、zeeboxがどう収益を得ているかをテーマにしよう。
zeeboxのビジネスモデルはようするに広告モデルだ。一部にはECのアフィリエイト収入もあるそうなのだが、メインは広告だということ。
そしてその手法は「テレビCMとの連動」である。
テレビ放送中にCMがオンエアされると、手元のzeebox画面上にも同じ製品の広告バナーが登場する。オンエア中は表示が続く。クルマの広告だったらIPアドレスに基づいて近くの販売店を表示することも可能。そしてCMオンエアが終わるとバナーもなくなる。ただし、タグが残っていて、あとでもう一度見ることもできる。
なるほどー、よく考えられている。
テレビ放送とネットでの広告の関係は難しい。番組の邪魔になってはいけない。他社のCMとかぶってもいけない。だから”同期”をさせないと、A社のバナーがB社のCM放送中に表示されつづけたり、CMが終わって番組に戻ってもバナーが表示されることになり、そこには営業的な問題がどうしても残ってしまうのだ。A社にはなんて言うのだ、B社に説明がつかない、てなことになる。
zeeboxはその込み入ったところを、同期によって解決しているのだ。
ただ、現状でzeeboxが実現できているのはこの”同期”までで、販売店を表示させる、ようなところまでだ。
先日の「テレビの未来を担う、セカンドスクリーンは定着するか〜マル研&JoinTV〜」と題した記事で紹介したJoinTVの構想ではO2O2Oつまり店頭で購買にまで誘おうという考え方なので、そこが少し違うことは言っておきたい。
さてこのzeeboxが実現しているテレビCMとネットでのバナー広告の”同期”はテレビCMの価値を大きく高める可能性を示している。実際、すでにzeeboxはこの仕組みでテレビ局に広告収入をもたらしている。ここがzeeboxの姿勢のポイントだが、あくまで広告収入を得るのはテレビ局だ。もちろんzeeboxもレベニューシェアを受け取るのだが、自分たちが前に出てくることはしない。
実はアンソニーに会うまで、こうした姿勢は知らなかった。もっとテレビ局と別に、勝手にビジネスしているのだと思っていた。だが彼らにとってテレビ局は重要なパートナーであり、”協業”している。セカンドスクリーン用のサービスはzeebox以外にも存在するのだが、彼らだけが成功者として聞こえてくるのは、テレビ局とのパートナーシップで優位に立っているせいなのだろう。
セカンドスクリーン用のサービスはそもそもが、テレビ放送ありきのビジネスだ。テレビに取って代わる新しいメディアではなく、テレビをより楽しめるようにすることで、ビジネスにもなる類いのもの。だったら勝手にやるよりパートナーシップでやった方がいい、ということだと思う。
放送と通信の融合、と言われはじめてから久しいわけだが、ビジネス上、融合のためには広告の仕組みが必要なのだと思う。zeeboxはその仕組みをテクノロジーによって初めて具体化したサービスだと言える。ようするに「こないにしたら、よぶんにもうかりまっせ」と胸を張って言えるようにすること。いろんな意味で学ぶべき点がそこにはあると思う。
コミュニケーションディレクター/コピーライター/メディア戦略家
境 治
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