8月にあるローカル局さんで社内レクチャーをすることになった。いいですとも!と引き受けたもののどんな内容にすればいいかと悩んでいたら、ちょうど参考になりそうな本が出たので即アマゾンでポチッとした。それがこの本。東洋経済新報社『5年後、メディアは稼げるか』。皆さん知ってる?
著者は佐々木紀彦氏で、東洋経済オンラインの編集長だ。老舗ビジネス誌のオンラインメディアの編集長と言われると、40代後半くらいのベテラン編集者をイメージするが、佐々木氏は1979年生まれだから30代前半だ。意外だなあ。
東洋経済オンラインは最近大幅にリニューアルし、急速にPV数を伸ばしたと、ちょっとした話題になった。その改革の首謀者こそ、佐々木氏なのだ。つまり、老舗ビジネス誌のオンラインメディアをビジネス的に成功に導いた。その佐々木氏がメディアの将来像を語る本らしい。
しかもタイトルが「稼げるか」というのも生々しくて興味が湧く。サブタイトルには「Monetize or Die」とある。稼げるようにならなきゃ死ぬぜ、という脅し文句つきだ。いよいよもってワクワクしてくるね。
興味ワクワクのまま読み進んだらぐいぐい引き込まれてあっという間に読んじゃった。読後も興奮しっぱなしなので、その勢いでブログに書こうと思う。たぶん1回じゃ足りないので2回に渡って書くつもり。どう書くかはまだ決めてないけど。
さてこの本、基本的には紙メディアの話だ。なーんだ、新聞や雑誌の話か。このブログの読者の方はそう聞くとがっかりしちゃうかな。だってぼくは主にテレビについて書いてるからね。でも、この本は確かに紙メディアについてだけど、書いてあることはかなーり、8割9割くらい、テレビメディアにも当てはめることができる。
紙メディア中心とは言え、すべてのメディアに応用が利くし、広告業界にとっても参照可能な話だらけだったりする。だから皆さんぜひ読んでみて。
この本のキーワードがこの「メディア新世界」だ。佐々木氏は今後の5年間で紙メディア、とくに雑誌メディアは激変にさらされると言う。その後にやって来るのが「メディア新世界」というわけ。
序章でまず、メディア新世界で7つの変化が起こると言っている。
書きだしてみると・・・
・紙が主役→デジタルが主役
・文系人材の独壇場→理系人材も参入
・コンテンツが王様→コンテンツとデータが王様
・個人より会社→会社より個人
・平等主義+年功序列→競争主義+待遇はバラバラ
・書き手はジャーナリストのみ→読者も企業もみなが筆者
・編集とビジネスの分離→編集とビジネスの融合
・・・どうすか?これだけですでに面白そうでしょ?
それに、紙特有の言い方を他のメディアの言葉に書き換えれば、すべてのメディアに、あるいは広告業界全体に、そのまま当てはまる。しかも、ベテランほど耳が痛い内容だ。
「番組の作り手はプロのテレビマンのみ→視聴者も企業もみなが作り手」なーんてね。ホントに当てはまる。もっとディテールに絞ってもいいかも。「ビジュアルを扱うのはデザイナーのみ→受け手も企業もみながデザイナー」なんてことは、すでにあちこちで起こりはじめているよね。
そんな序章の後につづく内容は、ひとつひとつ具体的だ。佐々木氏が紙メディアからネットメディアに移ってからの体験や、アメリカでの先行的事例など、実際のことが詳しく書いてあるのでわかりやすいのだ。
読み進むに連れて、どうやらメディアビジネスのひとつの解が、いわゆるフリーミアムにありそうだな、ということが見えてくる。もちろん、多様な可能性を紹介しているのだが、とくにアメリカでの成功事例などを知ると、最初は無料で深いとこは有料、というフリーミアムが大きな選択肢なのだなあと思えてくる。
同時にこの本には全編に渡って強烈なメッセージが込められている。それは、「皆さん、これまでのやり方考え方をばっさり捨てましょう!」ということ。しかもそれは、若い世代からベテラン層への「おっさんら、いつまでしがみついとるんや」という上から目線のものではなく、「ぼくもこれまで信じてきたものをいったん捨てなきゃと思ったんすよ!」と、仲間たちに呼びかけているスタンスだ。
メディアはこれから、どう稼げばいいのか。新聞雑誌のみならず、テレビやラジオも、そしてネット上での新しいメディア、例えばハフィントンポストのようなメディアでさえも、モデルがはっきり見えているわけではないだろう。この本はそんな思いのメディア人たちに、常識を捨てよと痛烈に呼びかけながら、具体的なヒントをわかりやすく整理して提示している。うん、みんな、読んだ方がいいと思うな。ちなみにぼくも、そのローカル局で話すことが少し見えてきたよ。
どう見えたのかって?そんな話も含めて、続きをまた書くから、待っててちょ!
コミュニケーションディレクター/コピーライター/メディア戦略家
境 治
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