VODはテレビ受像機をめざす!〜dTVターミナルの使用感、VODの市場観〜

dtv&hulu
VODが今年はホットだ。

なんと言ってもNetflixの2月の発表は業界ではちょっとした騒動だった。これについては発表のタイミングに合わせて、AdverTimesに記事を書いた。

今年秋、上陸決定!Netflixは黒船なのか?VODの進路が日本のテレビの将来を左右するかもしれない

ここで「黒船」という言葉を使ったのは刺激的だったようで、さらになぜかNetflixに対してはやや感情的になる人が多い。あんたはNetflixが日本のテレビ局を崩壊させると言っている!という濡れ衣的なことを言われたりもした。よく考えてほしいのだけど、幕府を滅ぼしたのは黒船ではなく薩長だ。国内勢力だ。黒船は国内を揺るがせただけで、つまりこんな騒動が起こってあらぬこと言われたりするのだからまさにNetflixは黒船であり、直接テレビ局を崩壊させると言いたいわけではない。

一方、絶妙なタイミング、4月初めにdビデオが大々的な発表会を行った。これについてもAdverTimesに書いた。

VODは入り口にたどり着いたにすぎない。dビデオのリニューアルから未来は見えるか?

この記事では、自分の体験をベースに日本でのVODのこれまでを振り返っている。NetflixやVODについて書く人は、ユーザーとしての体験があまりないまま書いている例が多く残念だ。長年VODを待ち望み、使い倒してきた視点で、dビデオがdTVにリニューアルされることがいかにエキサイティングなことかを期待を込めて書いた。

さてこの記事で書いた説明会では、参加したプレス全員にdTVターミナルをプレゼントする、という、うれしすぎるおまけがついていた。800人くらいいたと思うので、大盤振る舞いだ。そのdTVターミナルが、dビデオがdTVにリニューアルした数日後に自宅に届いた。それから三週間ほど経ち、いまやすっかりぼくの生活に溶けこんでいる。その使用感を簡単に書いておこう。

dTVを使うには、テレビに接続する必要がある。実はそこが心配だった。ぼくのテレビはかなり前に買ったのでHDMI端子が2つしかなく、すでにBluRayレコーダーとAppleTVで埋まっている。分配器とか使うしかないのかなあ、面倒だなあ、という不安があったのだが、そんな心配はいらなかった。

dTVターミナルにはHDMIの出力とともに入力端子もある。HDMI入力?つまり、別の機器をそこにつなげるのだ。かくして、わが家ではこういう接続になった。
dTV&AppleTV
左側がdTV、右がAppleTVだ。端末の形状はよく似ている。

dTVにはLAN、HDMI出力、HDMI入力それぞれのケーブルが刺さっている。そしてAppleTVにはHDMI出力。この白いケーブルで2つの端末はつながっているのだ。

リモコンも見てもらおう。
remo

左側がdTVターミナルのリモコンで、左上に「HDMI」というボタンがある。これを押すと「HDMI入力」につながっている機器が表示される。この場合はAppleTVだ。こうなると、おのずから先にdTVをつけてAppleTVはあとになる。既存の機器と共存できる上に割って入ることになるちゃっかりした、でもよくできた機能だ。なにより、分配器などが不要なのはユーザーにとってもいい。

dTVターミナルで楽しむVODライフはなかなかこれまでにないものがある。発表時にアピールしていたザッピングUI。VODがテレビ放送と違うのは、番組を選ばないとただ動かない画面が表示されることだ。これはテレビという機械に慣れている者にとっては不思議な時間で、賑やかなのがテレビなのに、じーっと黙りつづけるテレビとしばらくにらめっこすることになる。このにらめっこは、見る番組を決めるまで数十分でも続く。静かで退屈な時間だ。

これが、dTVの場合はとりあえず何かのコンテンツがチョイスされ、予告編が動きはじめる。違うなと思えば、リモコンの横ボタンを押すと次の予告編が、うーんと思ったら次の予告編へ・・・とどんどん違うコンテンツが出てくる。番組を選ぶことそのものがある種の”楽しさ”を持つ。映画館で予告編が次々に流れる時間がそれなりに楽しいのと似ている。

もちろん、一覧表示もできるし、見たいものがはっきりしているなら検索もできる。この検索もよくできていて、「赤」といれるだけで「赤ずきん」「赤と黒」「赤毛のアン」などがリスト表示される。これまでのテレビのVODは検索に難があったのが、dTVは使いやすくできている。

検索もひとつだが、既存のテレビ受像機用のVODサービスは、PCで開発されたものをテレビに流用していたようで、テレビ用にできていなかった感がある。よく言う、リーンフォワードかリーンバックかで、リーンバックつまりソファにもたれてリラックスして見るために設計されていなかったのだ。dTVは明らかにテレビを意識して開発されている。

一方huluはいま、「フールーオン」というキャンペーンをやっている。テレビでhuluを見てもらうために、それが可能になるデバイスをプレゼントするというものらしい。

huluも、テレビ受像機をこれからの主戦場として意識しているのだ。

VODはこれまで、PCで、そしてスマホ用のサービスとして伸びてきた。もちろんそこにもニーズはあった。だがそのニーズはネットを使いこなす層、若者でありその中でも濃いネットユーザーが中心だった。もっと”普通の人”つまりマーケティングで言うマジョリティ層に普及するためにはテレビ受像機で使うサービスにならなければいけない。dビデオはそのためにdTVにリニューアルし、huluも同じ場所に躍り出ようとしている。

それは簡単な道のりではないだろう。奪うべき市場としては、一千万人とも二千万人とも言われるレンタルDVD市場がある。4〜500万で足踏みしていたdビデオが一千万を目指す場所ははっきりしている。huluだって100万人達成で喜ぶつもりもなさそうだ。ただ、レンタルユーザーにVODの話をしても「へー、でもTSUTAYAで満足してますが何か・・・」と言われることが多い。年がら年中面白い映画を探してるぼくなんかあまり一般的ではないのかもしれない。さらには、家電量販店のテレビ売場に行っても4KだらけでVOD訴求なんてほとんどしてない。Netflixボタンがついたテレビあります?と聞いたら店員がしばらく悩んで別の店員を連れてきてやっと説明が聞けた。

つまりテレビ主体のVODサービスは、まだニーズを喚起できていないし販売店もそもそも知識が薄い。誰が買うのか、なぜ買うのか、どこで誰が売るのか、が整っていないのだ。

それが秋までにどうなるのか、だろう。Netflixが9月だかにスタートしていきなりホットになりdTVとhuluもからめて三つどもえで盛り上がるのか、全体的に空振りになるのか。

この際ホットになってほしいし、そのために三社はかなりプロモーションをかけるのだろう。それによって日本のメディア状況が変わるのか、楽しみだ。

使用感をもっと書くつもりだった。また日をあらためて書こうと思う。

コピーライター/メディアコンサルタント
境 治
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