赤ちゃんにきびしい国は、赤ちゃんにやさしい国に近づいている。

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※ビジュアル制作:BeeStaffCompany

気がつくと今さらだったのだけど、「赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない」と題した記事を書いてから一年が過ぎていた。ハフィントンポストに転載されたものが15万いいね!を越えてぼくにとっての大騒動が起こったのが2014年の1月23日からの一週間ほど。

ハフィントンポストでの「赤ちゃんにきびしい国で・・・」の記事

たくさんの反響にしばらく戸惑っていたような記憶なのだけど、2月10日には「赤ちゃんにやさしい国へ」のシリーズタイトルで”赤ちゃん先生プロジェクト”の取材記事を書いているので、二週間ほどの間で自分の中で急激にいろんな展開があったのだと思う。

【赤ちゃんにやさしい国へ】お母さんはメディアになり、赤ちゃんは先生になる〜赤ちゃん先生プロジェクト〜

この取材を皮切りに、ずいぶんいろんな人とお会いした。振り返ると、いろんな活動があるものだ。(それぞれの項目に、それぞれの活動を紹介したページへのリンクがはってあります)

・赤ちゃん先生プロジェクト
・自主保育野毛風の子
・たつのこ共同保育
・asobi基地
・子育てシェア・アズママ
・ごたごた荘
・まごめ共同保育所
・ママメディ
・映画『うまれる』
・コワーキングスペースbabyCo

最初のブログのメッセージは「子育ては社会みんなで支え合って行うべきだ」というものだったのだが、それを実践している人たちがこんなにもいたのだ。ぼくが知らなかっただけだった。ひとつひとつの活動が確実に世の中に影響を与え、社会を変えていっていることが、取材を通じて実感できた。

ぼくは最初の記事をほんとうにたまたま、なんとなく気になったので書いたのだけど、そういうことをこんなおっさんがブログに書いてしまうような、そんな流れがいま、あるのではないかと思う。ぼくは知らず知らずにそんな流れに乗っかっていて、たまたま思いつきで書いたように見えて、その流れに書かされていただけかもしれない。

それはつまり、ぼくの言い方で表すと、この国は「赤ちゃんにやさしい国へ」はっきりと向かっているということではないだろうか。

子育てをしやすい世の中にしよう。そんなメッセージが、気がつくと世の中を飛び交っている。あるいは、いつの間にかそういう気持ちになっている人も多い気がする。

それはもちろん、少子化がいよいよ深刻になり、人口の減少が実際に起こりはじめているからだろう。去年は国全体の人口の減少だけでなく、消滅する地方自治体が出てくるのだという踏み込んだ議論が巻き起こった。あの村は何年後に無くなるかもしれないとか、日本の人口が数十年で3分の2になるとか聞けば、その原因をなんとかしないわけにはと誰しも考えるだろう。

政府が「女性が輝く社会」うんぬんと言いだしたのも大きい。いかにもとってつけたようなかけ声だし、女性閣僚の顔ぶれを見ると疑問も多い。でもそのことを批判するより、自民党が「女性が輝く」などと言いだしたことはエポックメイキングだととらえた方がぼくはいいと思う。「だって女性が輝く社会をめざすわけでしょ」と大いに利用すればいいのだ。

子育てについては国の施策も大事だけど、地方自治体の施策のほうがずっとずーっと、重要だと思う。これについても、ぼくがまだ知らないだけで、どうやらいろんな自治体で多様な取組みがはじまっているらしい。「会社ムラから子育て村へ」というのが一年間のぼくの取材の結論なのだけど、これからその具体例として、地方自治体を取材してみたいと思っている。

世の中をほんとうに変えているのは、ニュースを日々にぎわす著名な政治家ではなく、各自治体で地道にがんばる名もない議員や職員たちではないだろうか。少なくとも、子育てについてはそうなのだと思う。実はこないだ「月刊ガバナンス」という雑誌の取材があった。地方自治体で読まれている媒体だそうだが、記者の方から子育て支援に奮闘する自治体の話を教えてもらったのだ。そうか、やってるところはすでにあるんだな!自分を取材に来た相手から、新たな取材のネタをもらえた気がした。

自治体の努力と同時に、ほんとうに変えた方がいいのは、働き方だ。とくに会社との関係。会社に縛られるから長時間労働になり、家族のために稼ぐには家庭より会社を大事にせざるをえないという、本末転倒な状況に陥ってしまう。

これについても、すでに多くの方たちが発言してきている。”ワークライフバランス”という言葉はすでに一般的になっているのではないだろうか。”流れ”ができている。働き方を見直そう、会社漬けになっていてはいけない。そして効率的な働き方をめざしたほうが経営効率上もいいのだ。そんな議論はすでにあちこちで起こっている。

サイボウズが自社メディア”サイボウズ式”で働く母親のストーリーを映像化して公開し話題になった。一作目は共感を得たけど二作目は女性たちの不評を買ってしまったようだが、内容の評価はおいとくと、企業が自分たちの事業とは直接関係ない映像を制作しただけでも画期的だと思う。あれは西田尚美さんの出演も含めてちゃんとつくられたドラマだ。そんな予算をかけて議論を巻き起こしたのは面白い現象だった。

極め付けは、いま放送中のドラマ『残念な夫』だ。産後に一変した妻と、それに対応できない夫。これをドラマの主題に持ってくるなんて、まさしく”流れ”ではないだろうか。ドラマは時代を映す鏡だとよく言われる。「いまこのテーマはどうでしょう?」という制作者から視聴者への話題提示になっている。そのテーマに”産後の夫婦関係”が選ばれたのは、まさにいま、「育児」に注目すべき時代である証しだろう。

いま”育児”は時代をつかんでいる。トレンドをつくれている。5年後か10年後かわからないが、子育てをしやすい施策を自治体の多くが整え、遅くまで働くより家に帰って家族と過ごす人間のほうが尊敬される、そんな社会になっているかもしれない。そういう方向に、世の中は向かっている。ぼくはそう、確信する。

そんな”流れ”の中、もしあなたが日々の育児で困ったり悩んだりしているなら、あなたにもできることがある。あなたにだって”流れ”はつくれるし、”流れ”を後押しする方法がある。

それは、言う、ことだ。

口に出して、言う、こと。

育児についてあなたが抱えている悩みを、いま直面している困った事態を、口に出して言うことだ。あなたが家族にして欲しいことを、口に出して言うといい。周囲の人びとや会社の中で、こうさせてください、と明確に発言するといい。電車など公共の場所で、誰かにして欲しいことがあるなら、どなたかこうしてくれませんかと、口に出して言うといい。

口に出すには勇気がいる。でも言った方がいい。家族は理解してくれないんじゃないか。そうかもしれないけど、言った方がいい。言われたら考える。その時は拒んだとしても、言葉を人は受け止める。公共の場で他人に頼るのは迷惑じゃないか。いや、迷惑のひとつくらい、かけたっていいんだ。こっちが思うほど、迷惑とは思わず、はっきり言ってもらえたら親切もしやすい。

少し前までは、言わないほうがよかったのかもしれない。言っても何も変わらなかったかもしれない。でもいま、”流れ”はできている。以前とは違う空気が、育児を取り巻く世の中に漂いはじめている。言っていい状況が、いま生まれつつあるのだと思う。

だからその悩み、その不満、その思い。口に出して言ってみよう。ケンカや摩擦を生むかもしれないけど、いいじゃない。少なくともそれがあなたのエゴじゃなく、あなたの赤ちゃんのためになるなら、そしてこれから生まれてくる赤ちゃんとその母親のためになるなら、それでいいのだと思う。

※2月15日(日)14時から、紀伊国屋書店新宿南店(南口サザンテラス)で『赤ちゃんにきびしい国で、赤ちゃんが増えるはずがない。』(三輪舎)刊行記念「境治×治部れんげトークイベント」開催します。

詳しくはこちらのページへ。→紀伊国屋書店イベント告知ページ

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→三輪舎のWEB SHOP(出版社的にはこちらのほうがありがたいそうです

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