ビデオリサーチフォーラムは、視聴率だけじゃないですよ宣言だった


この12月5日6日と、ビデオリサーチ社のフォーラムが行われた。この会社にはお友達も多いし、最近何かとからむこともあるので、できるだけ見ようと2日間フル参加した。

このブログの読者の皆さんならご存知だろうけど、ビデオリサーチ社は視聴率を日々測定する日本で唯一の調査会社だ。少し前までは米国のニールセン社も日本で視聴率を測定していたのだが、いろいろあって撤退したそうだ。なので、いまは日本で唯一。

そのビデオリサーチ社が50周年を迎えたというので、今回のフォーラムが開催された。つまり、毎年やっているわけではないのだね、このフォーラムは。

2日間、多様なプログラムが組まれ、それをあっちこっち飛び回って聴講した。どれもこれもテレビがテーマなわけで、テレビの未来を考えるぼくとしては大いに勉強になった。それとは別に、2日間みっちり参加することで、今回のフォーラムの特別でスペシャルな意味が見えてきた。つまりこれは、ただの周年イベントではないのだ。もちろん50周年イベントなのだけど、50周年だからなんとなくやったのではなく、50周年だからこそ大きく変えていかなきゃね、次のステップへ踏み出さなきゃね、との宣言だったのだ。

それはつまり、これからは視聴率以外もやっていきますからねー、という宣言。

いや、そうはっきり宣言があったわけではないけど、ひと通り見て行くと、事実上そう宣言しているのだ。そして他ならぬ、日本で唯一視聴率を測定しているビデオリサーチ社がそんな宣言をしたことは、時代がくっきり変わることを意味すると言える。なんだろう、同じ大和朝廷の時代なんだけど、平城京から平安京に遷都したとか、それくらいの“ネクスト“な感じではないかな。

まずタイムシフト視聴。物議を醸すこの話題にも、きっちり切り込む。タイムシフト視聴とは、つまり録画視聴で、この数年レコーダーが便利になって急激に増えているわけだ。誰でも週にひとつやふたつ、録画を予約している番組はあるだろう。でも視聴率測定の範囲外だ。視聴率がCM枠の価値の指標である限り、録画視聴はそのまま加えにくい。でも、視聴率の2次データとして、視聴率は10%でしたが録画視聴は5%の人がしてました、なんてことになったら状況がガラリと変わる。

シンプルに言って、視聴率がいまいちでも録画視聴を加えるとけっこういくじゃん、ってことになれば番組の価値は高まるだろう。CM枠の価値も、上がるはずだ。もちろん、録画視聴ではCMは飛ばされがちだが、それも一定の割合であって、まったく観ないわけではない。ちゃんと調査すると録画でもCMは意外に観られている。そのデータをもっと精度を上げれば、録画視聴も広告価値の一助になるはずだ。

そして、ソーシャル視聴。これについてはすでに10月、ビデオリサーチがTweet件数も測定して出していくとリリースが出て、驚いてぼくもこのブログでとりあげた。この記事は他での転載も含めてけっこう読まれた。当然、ビデオリサーチはこのフォーラムでもTweet件数を発表する前提で物事を語っていた。

あるコマではTwitterJapanの牧野さんや日テレ・メディアデザインセンターの加藤さんのパネルディスカッションが組まれ、日テレの朝番組ZIPの中でモコズキッチンのコーナーになるとTweet件数が跳ね上がることなどが語られた。これはZIPの広告価値を高める効果があると言えるだろう。

2日間のプログラムの中でも、やはり圧巻は初日午後のパネルディスカッションだった。このイベントの総指揮を執るビデオリサーチの尾関さんをモデレーターに、日本テレビの小杉さん、フジテレビの大多さん、そして電通の山本さんにヤフーの川邊さん、ATカーニーの梅澤さんというメンバー。

話はどうしても、テレビマン小杉&大多両氏に対し、ネット側から川邊さん、第三者の立場で梅澤さんがツッコミをいれる、という構図になっていった。

いちばん面白かったのが、タイムシフト視聴の話題。録画視聴をデータで出したら番組がもっと見られているとわかってうれしいのでは?と問われると大多さんが「でもそれで制作者の気持ちが緩んではいけない」とストイックなことを言う。へー、そうなんだ!ちょっと驚いた。

「東京ドームのマウンドで投げてきた経験があるもので」つまり、リアルタイムで30%なんて数字をとって、他のメディアでも騒がれてドラマを作っていた大多さんからすると、そのスポットライトの浴び方こそがテレビマンの真骨頂であり、そこをこそ目指すのがプロのクリエイターだ、ということなのだろう。それはそれでわかるし、プロの矜持としてカッコいいと思う。

一方で、尾関さんが試験的に行った録画視聴の調査データを示し、ドラマはかなり録画されていることがわかった。それを見た大多さんは素直に「おお!そうなんだ!」と驚き喜んでいた。素直だなあ。でも、これも作り手の率直な反応だろう。

そういうテレビマンを、川邊さんや梅澤さんは、やや冷ややかに見ているのも面白かった。へー、どうしてそんなにこだわるのかなあ。そんな感じの態度を二人がとっていた。

最後に電通の山本さんが「テレビはいい方向に向かっている。そう思うことでこそ、いい方向に向かうのだと思う。」とおっしゃって、それも美しい姿勢だなあと思った。思ったけど、なんだろうなあ、結局そこで“守る側”の態度をとるんだなあとも感じた。

“守る側“の態度をとるかどうかは、何か決定的な違いではないかという気がした。同じようにテレビ局にいたり、電通や博報堂などにいる人でも、「テレビはこれから大変だね」と言われて“守る側“で「新しいこともとりこんで、だから大丈夫なんだよ」と結局は悲壮感ただよわせて言う人と、そうじゃない人との間には大きなギャップがある。そうじゃない人、守る側に立たない人がぼくは面白いと思ってしまう。

“守る側“の人たちは、その人自身はあまり変わろうとしていないからだろうな。そうじゃない人は、守る側にいなきゃいけない人のはずなのに攻める側に本能的に立っている。そして、自分自身をまったく変えようとしている。いままで知らなかった自分に出会おうとしている。そういう矛盾しかねない姿がぼくには面白くいてたまらないし、ぼく自身もどんどん自分を変えて生きてきたので、共感してしまうのだろう。

ビデオリサーチはどっちなのか、よくわからない。会社だから“守る側”なのだろうな。でもこのフォーラムからは生まれ変わろうとしているようにも見えた。そこはまあ、これからを見つめていこうかな・・・

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