おいらとあんたの世界戦略・その10〜セミナー・クールジャパンと日本の産業〜

ジョン・レノンまで引っ張り出して夢想家みたいなこと書いた”おいらとあんたの世界戦略”。あそこで区切りをつけたようなつけてなかったような。

ところへ、今週はちょっと面白いセミナーがあったので、その紹介を書こうと思う。

大手町ニュースカレッジという今年はじまったらしい催しの一環で、「クールジャパンと日本の産業」と題したシリーズ。全5回のうちの初日と第2回に参加してみた。
プログラムはここに書いてある。『日本のポップパワー』の著者、小野打恵氏をコーディネイターに、クールジャパンが世界に進出するために、という内容になっているようだ。

初日は、経産省にこの6月にできたクールジャパン室の室長補佐、渡邊郷氏がご登場。クールジャパン室設立の背景や、今後の施策の方向性を説明してくださった。

その内容はとても面白く、また勇気がわいてくるものだった。

日本がこれまでいかに製造業、中でも自動車産業に頼ってきたか。そしてこれからは、文化産業が新たな成長産業として期待されていることなどがクールジャパン室設立の背景。ここで言うクールジャパンはかなり広い意味で、コンテンツ産業だけではなく、ファッションや食、観光なども含んだものだという。

例えば韓国。彼らは”韓流”としてドラマが日本でもたくさん見られている。日本だけでなく、アジアの各国でかなり浸透しているのだそうだ。そして、ドラマが浸透することで、ファッションや電機製品なども輸出する下地となった。サムスンやLGの成長には、実はそうした国家的戦略があったのだ。(もっとも、これをどこまで国が主導したかは不明らしい)

クールジャパン室としては、そうした韓国などの事例にも学びながら、クールジャパンの海外進出を支援したいという。つまり、多様な文化が相互に組み合さって世界へ出て行く手助けをする、ということ。あるいは、クリエイターとビジネスプロデューサー、リスクマネーを集められる金融家にチームを組ませるなど。

できたばかりの部署なので、予算の確保などもこれから。施策の実現には時間がかかるかもしれないけど、こういう動きを行政がしてくれるというだけでも心強いというものだ。”経済”という世界の中で、メディアコンテンツ業界はどこかみそっかすな扱いだった気がするし、それに甘んじていた気もしないでもない。自動車産業が例に出たりすると、それくらいの存在にならなきゃねと、胸を張りたくなってくる。

つづいて2日目は、日本のサブカルチャーに詳しい海外ジャーナリストが大集合、という回。フランス、イギリス、アメリカ、韓国、ブラジルそれぞれの方たちが、各国でのクールジャパンの普及や愛され方などを解説してくださった。

例えば、フランスでは80年代半ばにテレビ局が民営化されたのを機に番組が不足。そこで、当時安価にセールスされていた日本のアニメ番組をどんどん買い付け、子供向けに放送した。そうやって育った子供たちが大人になって、子供の頃から見慣れた”アニメ”をずっと愛してくれるようになった。だから、現代フランス人は日本びいきなのだそうだ。そういえば、パリで開催されたジャパン・エキスポは年々盛大になっていると聞くよね。

フランスはひとつの例で、日本のポップカルチャーはこの二十年ぐらいで各国にかなり浸透してきた。日本のアニメで育った子たちが各国の文化の担い手になってきたいま、日本はセールスすべきタイミングなのかもしれない。だって「アバター」や「インセプション」は、明らかに日本アニメ文化の子供だよ!

ただ、海外のジャーナリストたちが最後の方で口を揃えて言ったことがある。日本のカルチャーは素晴らしい!ただ、売り方は下手だった!

フランスの方が例として出したのが、ウォシュレット。日本滞在で気に入ったウォシュレットをパリで注文しようとした。だが調べても日本のTOTOはパリに支店がないようだ。輸入業者がいるにはいるが、値段がとんでもなく高い。さらに調べると、韓国や中国のメーカーがほとんど同じ機能の製品を出している。値段も十分リーズナブル。

TOTOの方が読んでいたら気を悪くしないでほしい。TOTOのことをことさらに言いたいのではなく、ぼくたち日本人がいかに海外セールスが下手だったか、そもそもできてなかったかがよくわかる話のひとつ、なのだ。

もっと言うと、ぼくはウォシュレットはとっくに世界中で売れてるんだろうと思っていた。日本で有名な企業は、イコール世界で売っているのだろうと思い込んでいた。ちがうのだ。世界にセールスできているのは、自動車と家電だけなのだ。それ以外は、コンテンツ産業同様、売る体制づくりができてなかったのだ。別の見方をすれば、ウォシュレットもクールジャパンの一員なのかもしれない。他の国にはないもんね。そして、いままで海外セールスできてなかったからこそ、売れる余地もまだあるということも言える。世界に売れそうなクールジャパンはきっと、いっぱいいっぱいあるんだよ!

とは言え、具体的にぼくたちがどうすればいいのかは、まだよくわからない。大きな捉え方では、”その9”で書いたグローバルな共同製作だとは思うんだけどね・・・

このセミナー、3日目以降は出れそうにない。誰か、行ったらどうだったか教えてくださいね・・・

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