アナログ停波とテレビとiPad

アナログ停波まであと一年を切ってしまった。2011年7月24日は何が起こる日か、みんなわかってるかしら?地デジ化でしょ、って答える?そうなんだけど、地デジ化は対応する機器を買えば今でもできちゃうことなわけで。この日に何が起こるかといえば、地上波テレビのアナログ放送が止まる、ってことなんだよ正確に言えば。

このアナログ停波は、メディアコンテンツ業界に大きなインパクトをもたらすことだろう。

「2012」って映画は観た?別に観てなくてもいいんだけど、予告編で地面が割れて街が呑まれていく映像はなんとなく覚えてるんじゃないかな。大袈裟に言うと、あんな感じなんじゃないかとぼくなんかは今からビクビクしている。

えー?そんな大変なことになるの?でも地デジはもうかなり普及してるんでしょ。そう思った人も多いだろう。確かに今年3月時点で世帯普及率は83%だという調査結果が報道された。それはちゃんとした調査の結果なんだろうし、まちがいもないんだろう。

日本の世帯数は2005年の国勢調査で4906万世帯だったそうだ。そうすると残りはだいた800万世帯。・・・どうだろう。ビミョーじゃない?あと一年で100%になってもおかしくないような、ちょっとキビシイような。

と言うより、絶対に数%は地デジ化未達の世帯が出てくるのがフツーじゃないか。実際に、地デジ化を先にやったアメリカでも100%にならなかったので数カ月アナログ停波を伸ばしたそうだ。そもそも、いかに地デジ化の鹿くんや民放各局の美人アナウンサーが頑張ってアピールしても、テレビはいらないよ、という人たちは絶対に出てくるだろう。とくに若い人はPCやケータイでいいよおれは、って人がかなりの人数で出てきそう。

まあこのあたりについては池田信夫先生がこんな記事を書いておられるので、じっくり読んでくださいな。

さてここで「クリエイティブビジネス論」が言いたいのは、アナログ停波はクリエイティブビジネスに大きな打撃と大転換の必要性をもたらすだろうということだ。

というのは、日本のクリエイティブ産業はその原資のほとんどを企業が払う広告費にをアテにして成立してきたのだ。映像はとくにそうだ。テレビ広告費2兆円が映像制作業界をほぼ支えてきたと言っても過言ではないだろう。テレビ番組制作、アニメ番組制作、テレビCM制作、そしてこの十年間は映画制作も。その原資はテレビ広告費2兆円だった。その2兆円がこの2年間で3000億円減って1兆7000億円になった。それだけで、みんなよく知ってるこの騒ぎだ。急激なエネルギー衰退だ。もうダメだムードの蔓延だ。今年はやや持ち直して1兆7000億円台半ばぐらいまで戻すかもしれない。

それがまた1000億円とか2000億円とか来年は減るかもしれないんだ。だってたった数%でも「テレビはいりません」って層が出てきたら。いや、いまだって持ってるけど見てないねとか、持ってないね、とかの人はいっぱい潜伏してたのだろうけど、それが明らかになっちゃうんだ。なんかアナログ波止めたら、だったらテレビはいいですって人がいっぱい出現したらしいじゃない?って絶対話題になるだろう。日本のマスメディアは自虐的(に他社のことはとりあげる)だから、週刊誌とかこぞって書くだろう。

そしたら、またメディアパワー減退だね、ってんで、テレビ広告費が下がる気がする。そしたらもう、立ち直れないよ。

なんとか糸一本でつながってたクリエイティブ産業が、あちこちでぷっつんぷっつんと糸切れちゃうかもしれない。ああ怖い。

だからもう何かやるしかない。新しい成長性が少しでもありそうなら、そこ行くしかない。

あ、そこでiPadってことなんでしょう。うん、もちろんそう。でもね、iPadはいままでのテレビの代わりにはならないから注意してね。いままで、マスメディア、もしくはそれとセットの企業は、制作費を払ってくれました。あるいは制作費を持ってきてくれました。ザクッと言うと、いままではテレビがお金をくれるからモノが作れた。これまで、クリエイティブ業界の集金機能がテレビという装置だったの。

iPadはお金をくれません。一円もくれない。どっちかと言うと、お金をさっ引いていく人、それがiPadだ。お金はぼくたちが直接、世界中のコンシューマーからもらうしかない。そうすれば、iPadは30%さっ引いて、残りをぼくたちにくれる。

ぼくたちはずーっと、お金を誰かからもらう前提で制作物をつくってきた。そしてかなり確実にお金はもらえた。契約書が整ってるのとか、見積りはちゃんとしてるのとか、手形は何ヶ月後払いだとかいろいろ不安もありつつ、お金はもらえたし、お金がもらえるかはっきりするまで実際の作業はやらなかった。

でもこれからは、自分たちで労務を投資し、外注費が出たらそれも投資し、そうやってつくったモノをコンシューマーに直接売る。漠然とでも販売計画を試算して何部売れたらどう利益が出るねとか、考えないといけないわけ。

アナログ停波とiPadは、そんな風にぼくたちの今後に作用するんだ。

え?できるのかって?ドキドキしちゃうって?ハラハラしちゃうって?

昨日の「龍馬伝」見た?龍馬たちが長崎商人にカネ借りてカステーラの製造販売に乗り出すってエピソードだった。「お侍さんが商売やろうちゅうんね」とか珍しがられて。幕末のお侍さんもやったんだから、平成のクリエイターさんたちも、やったっていいんじゃない?ビクビクしてたら龍馬に「なんちゅうことなかぜよ」って笑われちゃうよ・・・

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コメント

  1. アナログ放送、終わる頃には、iTVできて半年くらいたってるので、ぎりぎりまで待って、シフトが終了してたら、デジタルTVは、買わないです。たぶん。新聞やめたのも、早かったです。実は。

  2. 今までは制作者は「受注」してたのが、iPadとかだと、売れるかどうか・投資資金を回収できるかどうかの投資リスクを下手をすると自分が負わなきゃならない可能性があるのですね。ただ、規模が大きい案件だとそれは現実的ではないので、現状の出版社が企画をまとめ上げてVC等からお金を調達し、制作会社に発注するような仕組みができあがっていくんだろうと思います。最近見かける、「○×制作委員会」っていうのがそういうのでしたっけ。

  3. TVと制作の間に、電通とか入ってますけどね。制作会社が、社長営業から、事業企画、販売企画、プロモーション等すべてやるということになります。

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