去年の暮れや今年の初めに書いたことは、なかなか厳しいけど、光明が見えるような、明るいトーンを帯びていた気がする。今年一年を終えてみて、そういう明るい気分は持てなかったなあ。
メディアコンテンツ業界の住人たちは、次に何をすればいいのか。さっぱりわからないよ、というのが今年の結論だった。
痛感しているのは、いままでのシステムがいかに、野放図に大量のお金を循環させてきたかということ。テレビ広告費だけに絞っても2兆円。それがこの二年でたぶん4000億円ぐらい減ったのだと思う。その減り方、急激さにはものすごいものがある。あれだけ能天気だったギョーカイ人たちを一気に気弱な人たちにしてしまった。あるデータによれば、いま会社を辞めたい度合いがいちばん高いのが、マスコミ広告関係の社員なんだとさ。
4000億円、つまり5分の1が急減し、その代わりにこうすれば穴埋めができる、というモデルがない。イメージさえつかめない。さらに、これから数年間、減る傾向はつづく。ほぼ、まちがいなくね。
いやもちろん、インターネットだしケータイで穴埋めするに決まってる。でも具体的な埋め方がどうも見えない。その上、どうやったって埋まらないことがはっきりしてきた。ぼくたちが、とくにクリエイティブな制作物にかけていたお金は、どうもいままでと同じでは絶対にこの先いかないみたいなんだ。
ここでやらないといけないこと、考えないといけないことはたくさんある。
でも、どれもかなりハードルが高い。
例えば、商習慣を変えていかないといけないだろう。どう変えるべきか、ひとことでは言いがたいけど、既存の大きな組織が束ねる仕組みを変えるべきだろう。それはもう、その大きな組織の側も認識しているはずだ。ところがそれは変えにくい。大きな組織みずからも変えにくい。
あるいは、これからはいわゆるクリエイティビティの経済価値を高めないとまずいだろう。だがこれも一筋縄ではいかない。なにしろ「ここにお金がかかります」という要素にみんなで寄ってたかってマージンのっけてきた世界だ。クリエイティビティ?そんなあやふやなもんにお金なんか払ってたまるかよ、と言われてしまうだろう。
業界の大きな再編も必要だろう。ところがこの国はそういう動きへの抵抗が限りなく強い。新陳代謝を起こさないためのシステムが張りめぐらされている。聞くところでは、アメリカでは5700万人がいままでの職を離れ、そのうち5100万人が新しい職に就いたそうだ。600万人があぶれたのだけども、それくらいダイナミックに人材というリソースが動くと、新しい何かもぐいぐい動くのだろう。この国はそういうわけにはいかない。
ただひとつ、救いかもしれないことを言うと、動きは遅いけど、必ず変化は起こる、ということ。政権でさえ変わったのだ。業界だって変わるはずだ。
でも政権がこれから数年混とんとする気配が早くも漂っているように、業界も混とんがつづく。混とんとしながら、煙が微風に乗って結局はある方向に流れるように、かならず動く。あるべき方向にまちがいなく動いていく。
ぼくたちがなすべきは、その煙の動く先を読んで、いちばん出口に近い流れに泳いでいくことだ。
その読み方は、日々の作業になるだろう。毎日アンテナを張りめぐらして、あっちだ!と光をめざしていくことだ。
そのためには、大まかに光の方向を頭に入れておかないといけない。
あなたのそんな動きに少しでも役立てばと、そして自分自身がその光に少しでも近づこうと、ぼくはまだまだ、このブログを書いていこうと思う。
というわけで、みなさん、よいお年を!
関連記事