Netflixでドラマを作ってみたら、地上波にはない自由を感じた〜プロデューサー関口大輔氏インタビュー〜

※この記事は、「テレビとネットの横断業界誌Media Border」に掲載したものの短縮版です。フルバージョンはこのリンクを押して登録すると読めます。

Netflixで配信されている日本のコンテンツ、というと、とかく『テラスハウス』に話が行きがちだが、ドラマも制作されている。下着業界を舞台にした桐谷美玲主演『アンダーウェア』がそれだ。この作品をプロデュースをした関口大輔氏にインタビューできた。地上波放送と配信とでのドラマの考え方、作り方の違いをじっくり聞くことができたので興味がある方はじっくりお読みいただきたい。

●気持ち悪い企画と言われても、意地で作った『ウォーターボーイズ』でヒットメイカーに
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関口さんの初プロデュース作品は吹石一恵さんのデビュー作でもある『ときめきメモリアル』ですよね。
関口:懐かしいですねえ。『ときメモ』はなぜかプロデューサーのクレジットにしてもらえましたけど、最初はアシスタントプロデューサーをずっとやっていました。自分でほんとに最初からやったのは『ウォーターボーイズ』からです。

『ウォーターボーイズ』は当初、小品ではないかと言われたら大ヒットしてみんな驚いた作品ですね
関口:企画を出したら、会社からはこんなキモチ悪い作品(男子高校生がシンクロナイズドスイミングをする物語。妻夫木聡はじめ、のちのスター俳優が初々しく出演している)やめろと言われました。ぼくももう30才になるのでそろそろプロデューサーとして一本作りたいんですと言ったら、じゃあ製作費3億を1.5億で作るならいいよと言われました。ほとんどやめろって意味だったんでしょうけど、わかりましたじゃあやります!って言って突き進んだんですよ。

いい話ですねえ
関口:当然宣伝費もなくて、コピーも自分で考えたんですよ「男のシンクロ!?」ってやつ。自分ひとりでやって「このコピーはこの側面から見たらどう思われるか」とか考えて作ったんです。宣伝もお金ないんで妻夫木君たちに夕方電話して、ごはん食べさせるから来てと呼び出して”勝手舞台挨拶”やったりしたらヒット作になりました。

あれがヒットして、矢口作品を続けて作りましたよね
関口:もともと彼は女の子のジャズの映画をやりたいって言ってたんですよ。『ウォーターボーイズ』がヒットしたのでそれやりましょう、となりました。あれは実際に大阪の高砂ってとこにある高校の話がもとなんですけど、東北訛りの女の子たちにしようと、谷口さんと二人でレンタカー借りて回ったんです。地元の高校生の訛りを聞いて回って、たどり着いたのが置賜(おきたま)弁っていって、山形の方言だったんです。それで『スイングガールズ』が生まれました。

『スイングガールズ』の次は『ハッピーフライト』ですよね
関口:ぼく飛行機が好きなんで、『スイングガールズ』の次はそういう映画やりましょうってことになり、そこから二人で二年半ですね。羽田から成田からボーイング社からいろんなところに取材に行って、その二年半の取材をまとめたのが『ハッピーフライト』なんです。二人ですごい悩んで苦しんで作った作品ですね。

『ハッピーフライト』のあと、ぼくはドラマ部に異動になってしまって。矢口さんはまたうちと『ロボジー』って作品やったり、TBSで『WOOD JOB』やってますけど、いまも時々会ったり連絡とりあってます。もう彼は巨匠になっちゃいましたけど、ぼくとは相変わらず友だちみたいな関係です。

●Netflixでは地上波ドラマの制作にはないクリエイティブの自由がある
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『アンダーウェア』についてお聞きします。どういう経緯でNetflixで作ることになったのでしょうか?
関口:ドラマ部に移った後、自分としては映画部時代の経験を活かせる企画がやりたいと思っていました。異動後にすぐやったのが『東京コントロール』という”史上初の3D連ドラ”だったんです。スカパーで放送したのですが、世界唯一の3D連ドラ。それから土曜深夜枠でやったのが、『間違えられちゃった男』。ワンセットシチュエーションで、一話完結じゃない不思議な物語をやりまして、そんな風に実験的なことばかりやってきました。
それをうちの会社の上層部が面白がってくれたようで、Netflixとやる話が出た時に「関口に企画持ってこさせろよ」みたいな話になったらしいんですよ。奇妙な番組ばかり作ってるからってんで。

新しい企画ばかりやってるんで、Netflixでやるんなら関口じゃないかと!
関口:そうなんです。呼び出されて企画を出せと。で、最終的に4本の企画をNetflixさんに出したんですよ。その中で『アンダーウェア』の企画がピックアップされて、4本の中でいちばん自信のないところに来たなと(笑

え?そうなんですか、やりたかったのは?
関口:飛行機ものがあったんですよ。空港って航空行政が難しくて撮影規制がかかっちゃうんですけど、ぼく『ハッピーフライト』やって『東京コントロール』やって『東京エアポート』ってのもやって、JAL、ANA、国交省の人たちとがっつり仲よくなっていて。信頼を得てるので、ぼくだったら誰も知らない撮影ポイントを見つけられる。羽田を相当大規模に使った航空映画が作れる。でもローンチのタイミングで女性のお客さんを獲得したいということみたいで『アンダーウェア』になったようです。

それにしても関口さんがどうして下着業界の話を?
関口:アメリカでビクトリアズシークレットのファッションショーを毎年一回放送してるんですけど、ものすごい視聴率を取るんです。ゴールデンタイムに2時間くらいどんとやる。その映像を観るとすごくきらびやかでいやらしくなくて、そんな派手なショーが出てくるドラマを作ったら面白いんじゃないかと。それが通ったけど下着の知識はまったくないので、慌てて脚本家と監督とトリンプさんに行って下着のイロハから勉強しました。

それって去年の夏くらいですか?
関口:いや今年に入ってからですよ(笑 企画を出したのは年末だった気がしますけど、『アンダーウェア』に決まったのは4月超えてました。もう大変でしたよ。秋にサービスがはじまるなら、どう考えても7月にインしないと間に合わない。その中で企画を起ち上げて本を書き上げて準備してクランクインするまでってほんとに時間がなかったんで、その中で最大限のことをやろうということで、ストーリーを組み立ててました。

桐谷美玲さんの主演はスムーズに決まったんですか?
関口:1話の本ができた時点でオファーして、そしたらわりとすぐ、いいですよとお返事いただけました。

ネットでやると言うと大きな事務所ほど「大丈夫なんですか」とよく言われますよね?
関口:Netflixがこれから主流になるとぼくは思い込んでいるんです。大学がアメリカだったので日米のメディア状況をずっと見てきたつもりですが、日本はアメリカから3~4年遅れてだいたい同じ道を歩むんですよ。アメリカであれだけNetflixが伸びてるのを見ると、日本でもいずれそういう時代がやって来るから、そのいちばんはじめのタイトルに出たほうがいいですよと、自分でも本気で思ってるので熱く語ったら、そこまで言うんだったらやりますと言ってもらえました。

大地真央さんも大物じゃないですか
関口:絶対断られると思ったんですけど(笑 『リッチマンプアウーマン』で一回仕事したことがあって知ってたんで、小さな高級ブランドの社長なんてどう考えても大地さんしかいないと思ったんですよ。でも長期間の連ドラでやってもらえるものかなあと思いつつ聞いたら、たまたまスケジュールが空いてたのと、もっと映像もやってみたいねとマネージャーさんと話してたちょうどその日にぼくが電話したそうで、偶然の一致でしたね。

テレビ放送向けの作り方との違いは、実際どうだったんですか?
関口:今回勝手に、いろんな実験をやってて。一話完結にせずに、二、三話でひとつの塊になるようにしたとか。だから一話だけ観ると不体裁なドラマになってます。あとは一話二話で大地さんが言ってるセリフを、最後のほうで桐谷さんが言ってたりするんですよ。それは、成長していくとだんだん社長の言ってることがわかってきて、むしろ社長が逆に言われちゃったりするみたいなことなんですけど。
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これはNetflixさんに聞いたんですけど、一話観たら二話を観る、二話を観たら三話を観る。そんな傾向だそうなんです。地上波だと、一話を観たら二話三話観なくて四話見るとか普通にあるわけですよ。だから途中を見なくても一話完結で作るのがドラマづくりの定説なんですけど、Netflixの場合は、視聴数は第一話がいちばん高いに決まってる。だんだん下がるんですよね。13話がいちばん低い。だから地上波のドラマみたいに毎回視聴率のでこぼこはないんです。

一話から順に見てくれる。しかも集中して。だったら、けっこう難しく作っちゃっていいのかなと。そういうことを今回トライしています。地上波でよくある”回想”も入れてないんですよ。”あの時あの人がこう言った”って時に、フラッシュバックを入れとこう、なんてことは今回やってない。だからちゃんと見ていただくと、「そう言えばこのセリフってひとつ前でこの人が言ってたな」とか「あの人が気にしてたことがここにひっかかってたんだ」とかわかるはずです。

あとハリウッドドラマでよくあるのが、主人公が主人公ではない回があるんですよ。脇役が主人公になる回。『ウォーキングデッド』のシーズン4でリックが出てこない回が4回あります。ワンカットも出てこないんですよ。『アンダーウェア』でも後半で大地さんが主役になる回を作ったんです。その時は完全に桐谷さんが脇役。そんな風に日本の地上波のドラマでは絶対やらないことを今回やってみて、お客さんがどういう印象を受けるのかを楽しみにしています。

関口さん、すごく楽しんでますよね!
関口:そうですね、地上波で作るよりはるかにクリエイティブの自由がありますから(笑

配信の場合、尺を気にしなくていいみたいですね
関口:それ、サイコーです。いちばん短いので40分くらい。長いのは50何分というのもあるんですけど、監督がこんな素晴らしい環境はないと言ってます。テレビだと放送時間に合わせないといけないので”尺調”と言われる作業をするわけですよ。ほんとはゆっくり使いたいカットも、時間がないと間を飛ばして使ったりするんです。尺を詰めないといけない。切らざるをえない部分が多発する。その呪縛から逃れられるので、こんな素晴らしい環境はないと言ってましたね。監督の希望通りの尺にできる。”泣く泣く切る”ということがなくなる。ただ、自由度がありすぎちゃって、長くなりがちなので、それは自分たちを律しないといけない。

Netflixとの関係についても聞きたいのですが、作っているステップの中で彼らのチェックはあるんですか?
関口:ぼくは不安なので要所要所で送って見てもらってますけど、あんまりどうしろとはないですね。「こうしてくれ」はない。意見として「ここがわかりにくい」というのは出ますが、それをどうするかは任せてくれる。意見が出るのは、日本人以外にわかりにくい、という点ですね。

ではつべこべ言わないし、製作は任せてくれるわけですね?
関口:クリエイティブに敬意を払ってくれる人たちです。わけのわからない押し付けもないし、大人の裏事情みたいなものもないし。だからこそ、こちらもきちんと作らねばならないと思いましたけど、とにかく口出しはほとんどないです。

『アンダーウェア』は海外でも配信されるんですよね?
関口: 海外の方にどこまで理解されるのか、すごく気になってます。例えばアフリカとか、日本のドラマを初めて見る人も出てくると思うんですよ。そういう人たちは我々のドラマを通して日本を知るのかもしれない。そこはすごく考えて作りました。だからほんとうに悪い人はいないものにしています。ぶつかりあっても、それぞれの信念があってやっている設定です。日本を知らない人が見た時に「日本人カッコいいなあ」と思ってくれたらと。あと、わざと寿司屋行ったりおでん屋行ったりさせています。ガード下の居酒屋とか。海外で初めて日本を知る方に日本は魅力あるなあと思ってほしい。

『テラスハウス』は地上波でも放送がはじまっていますが、『アンダーウェア』も放送するそうですね
関口:そうですね、『アンダーウェア』も地上波でもやります。『テラスハウス』も含めて、やればやるほどNetflixにお客さん増えるんじゃないかなあと思ってます。次を早く見たい人は会員になるでしょうから。
テレビと配信ではマーケット規模が全然違うわけですよね。テレビだと10%なら大ざっぱに言って1200万人となるけど、Netflixははじまったばかりですから。テレビでやるとNetflixを知らない方も見る。大きいほうから小さいほうに流れる部分が大きいのではと思っています。

またやってみたいですか?
関口:そりゃあもう!ぜひ違う企画もやってみたいですよ!『ウォーキングデッド』の日本版できないかなと思って。アメリカでああなっている時、日本ではどうなっているのかというドラマです。バルハラエンタテイメント(『ウォーキングデッド』の製作会社)に連絡しようかと、勝手に思ってます。

放送業界の人たちにメッセージをぜひ!
関口:そうですねえ・・・テレビのいいところは、ものすごくたくさんの人が見てくれる点ですよね。でもデメリットもあって。配信をやってみてわかったのは、同じ映像業界だけど全然ちがう。作り方も考え方もお客さんも違う。フィールドが広がるチャンスが来たなと思ってます。テレビが見られない、若者が離れたと言われますけど、面白ければ見るじゃないですか。どんどんトライしないと自らの首を絞めかねないと思います。だからぼくは、Netflixでチャンスがあれば地上波でできないことやっていきたいし、地上波でチャンスがあれば地上波でしかできないことに挑んでいきたいですし。バジェットとかマーケットとか環境が違うわけで、そこに適したソフトを作って行くだけかなと、思ってます。

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ほんの一時間ほどのインタビューだったが、関口氏の情熱に圧倒されてこちらも体温が上がった気がした。あれだけヒットを飛ばしてきたのに、20代の映画青年のような探求心と熱い意志がみなぎっている。関口氏はひょっとしたら、Netflixを舞台に世界中で次々にヒットを生み出すのかもしれない。この飽くなき探求心と情熱なら、全然ありえることだ。配信の時代がもたらしたのは、そういう可能性なのだと思う。

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